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Page:鐵道震害調査書 大正12年.pdf/40

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は床鈑に楕圓孔を穿ちこれに圓形定着桿を挿入定着せるものなり,尙鈑桁の重量に約5噸の差あるも,E33型は工務型に比し約2呎高きため橋脚軀體工の重量に約7噸の差を生ずるを以て,全體の重量としては僅の差あるに過ぎず。

 又上り線第十五號,下り線第十號及び第二十三號橋脚の床石は,鈑桁に定着したる儘軀體工より分離墜落したり(他の橋梁には床石の定着せる儘墜落せし鋼桁なし),これ床石据付の際施工法不完全にして目地の附着力缺乏せしためならんか。

 尙上り線橋脚の改築に當り,井筒にも地下數尺の處にて龜裂,切斷,偏倚,壓挫,傾斜等あるを發見し,地表上の露出部に大破損を與ふるが如き力の加はる場合には,地下にも亦地質及び構造物の地表上下の質量等に應じて相當の被害の存在を考慮するの要あることを指定せり。

  應急工事  (寫眞第二百五十二參照) 被害の狀況は前述の如くなるを以て應急工事用材料蒐集の關係をも考慮し,左記の如く施行計畫を決定せり。

一,單線にて開通せしむること。
二,在來下り線の橋脚基礎を利用してこれに木造橋脚を組立つること。
三,木造橋脚に使用の材料は神奈川縣廳に於て施行中に係る馬入川人道橋改修用の米松を借入使用すること。
四,鈑桁は殘存せる橋脚のものはその儘とし,これに續く5連は上り線の第一號乃至第五號を使用し,第十號以西の9連は元上り線に於て新桁と架換たる舊桁の平塚驛構內に存留せしものを組立て使用する事とし,最後の9連は下り線の墜落せる桁を引揚げて架渡すこと。

 應急工事はこれを請負に附せず直營の方法を以て萬事臨機の手段に出るを得策とし,九月十日現場の調査完了と共に,前述の計畫に從ひ材料の蒐集と相俟て直に準備作業に着手せり,然るに同十四日降雨に依り馬入川の出水平水位より約7呎に及び,一部材料を流失せしと共に,激流のため墜落せる桁及び倒壞橋脚の位置に異動を生じ,當初計畫の幾部分を變更するの餘儀なきに至りしも,同十七日作業に着手し,十月一日第28徑間を架設し,これに續く8連相次いで成り,同十日には爾餘の架桁用足代組立竣工したるに,同日夕刻よりの暴風雨は夜半遂に旬日の苦心に成れる前記足代を大部分流失せしめしも,豫定竣工期前五日即ち十月二十日午後全部の工を竣へ試運轉の結果頗る佳良の成積を得,翌二十一日早朝より營業列車の通過を見るに至れり。

    三 東海道本線第五相澤川橋梁

 構造概要  (附圖第五十七參照) 本橋梁は駿河足柄(信號所)間汐留起點66哩29鎖5節に位し,全長146呎單線竝列式にして,徑間70呎の上路鈑桁2連より成る。架橋地點の地質は砂利混り砂層にして,兩橋臺の基礎は幅15呎6吋,厚16呎,高14呎の混凝土工2個を3呎距てゝ竝置し,その上に高37呎の粗石練積凹字形軀體工を築造せり。橋脚の基礎も略々橋臺に等しく幅16呎6吋,厚14呎,高14呎の混凝土工2個より成り,その軀體は粗石練積にして幅31呎9吋,厚9呎9吋,高37呎6吋あり。而して橋臺橋脚共に外側に120の竪勾配を附す,尙根入りの深は共に約22呎なり。

 本橋は始め單線として明治二十一年一月起工,同年九月竣工せるものなりしが,明治二十四年二月複線工事成り,その後明治三十六年冬及び同三十八年秋の兩度に鈑桁及び橋臺上部を補修せり。降て大正四年一月乃至八月の間に於て,駿河足柄間に於ける一部線路の變更に伴ひて現在の位置に架換へたり。尙大正六年十月暴風雨のため川床著しく洗堀せられたるを以て橋臺橋脚の根固め沈枠工を施したり。

  被害狀況  (附圖第五十七並に寫眞第二百五十三乃至第二百五十五參照) 東京方橋臺はバラス止に罅裂を生じ,その一部は崩壞して軀體中央部に龜裂を來し,側壁も亦上部崩壞或は移動し,その最大移動量約8呎に及べり。沼津方橋臺は桁座以下約20呎間側壁と共に崩壞せり。中央橋脚は上端より約25呎の處にて切斷して東京方に約6吋移動し,又鈑桁は沼津方橋臺崩壞のため上下兩線とも桁端墜落するに至れり。この外アンカー・ボールト及び床鈑の損傷を受けたるものあり。

    四 熱海線酒勾川橋梁

  構造概要  (附圖第五十八參照) 本橋梁は鴨宮小田原間國府津起點2哩53鎖27節,酒勾川に架設せるものにして大正九年十月の竣工に係り國府津方に徑間60呎の單線用上路鈑桁8個を竝列して4徑間を塞ぎ,これに續て徑間150呎複線用ワーレン型構桁8連を架し又小田原方には徑間60呎の單線用上路鈑桁單列12連を架し全長2,323呎10吋,線路方向南55度30分西なり。橋桁材料は鋼にして,設計荷重は構桁に對してはE45,鈑桁に對してはE33なり。

 架橋地點の附近は平野にして河床は砂利層より成り,從て基礎は國府津方の橋臺及びこれに續く4橋脚に對しては杭打混凝土工なれども,小田原方の橋臺及びこれに相隣接する12基の橋脚に對しては單なる混凝土工に止まれり。又構桁用橋脚の基礎は鐵筋混凝土井筒工2個より成る。

 基礎の深は國府津方橋臺は25.5呎,橋脚第一號及び第二號は22.5呎,第三號及び第十二號乃至第十五號は21呎,第四號乃至第十一號は25呎,第十六號乃至第十八號は18呎,第十九號乃至第二十三號は16呎にして,小田原方橋臺は10呎なり。

 橋臺及び橋脚の軀體は混凝土工にして表面に粗石張を施したり。尙これ等各部の寸法は附圖第五十八に示すが如し。而して混凝土の調合はセメント1,砂3,砂利6なるも,桁座の