Page:鐵道震害調査書 大正12年.pdf/35

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に於て水平󠄁の大罅裂1條とそれ以下に鉛󠄁直の大罅裂2條を生じ,ために軀體及び井筒に亘りて4分󠄁せられ,その一部分󠄁は後脫離して水中に墜󠄁落せり。この外橋臺に罅裂及び沈下を生じたるもの3箇所󠄁,拱渠に罅裂を生じたるもの2箇所󠄁あり。又󠄂荒川放水路新橋梁は被害󠄂輕微なりしも,これと平󠄁行する約400呎下流なる東武鐵道󠄁の橋梁(省線と同一構造󠄁)は西新井方最初の構桁桁坐を脫して川下に移動し,床桁は川下の桁坐に支󠄂へられて僅に墜󠄁落を免れたり。

停車場 隅田川驛に於ける貨物上家の內2棟,及び同構內大宮工場派󠄂所󠄁建󠄁物,並に南千住驛の本屋は燒失せり。震災に因る被害󠄂は隅田川馬橋兩驛最も大にして,隅田川驛に在りては官舍悉く倒潰又󠄂は大破し,經理課倉庫は半󠄁ば倒潰し,船󠄂渠は沈下せり。馬橋驛に在りては本屋,貨物上家,便󠄁所󠄁,向待合所󠄁及び官舍何れも大傾斜󠄁し,本屋の一部倒潰せり。尙その他の驛に在りても本屋並に附屬建󠄁物の傾斜󠄁,屋根の破壞等の被害󠄂(その程󠄁度は幾分󠄁異るも)あらざるものなし。

跨線橋及び地下道󠄁 特に記󠄂すべき被害󠄂なし。

給水器 隅田川驛に於ける木製水槽は臺と共に倒壞し,取手驛に於ける鐵製水槽臺は傾斜󠄁せり。

道󠄁 道󠄁の被害󠄂は火災のため隅田川驛側線約1哩20鎖󠄁を燒損せる外,馬橋北小金間約400呎に亘り約8呎の沈下を生じたるものを最大とし,その他約2呎以下の沈下數箇所󠄁あり。

列車 柏我孫子間に於て進󠄁行中の貨物列車の內4輛脫線轉覆󠄁し,又󠄂東信號󠄂所󠄁に於て旅客列車の內8輛轉覆󠄁して死者9名,重輕傷者21名を生じたり。

第十四節 總武本線(兩國橋成東間45.7哩)

切取 切取の被害󠄂殆どなし。

築堤 築堤の被害󠄂は稻毛千葉間兩國橋起󠄁點22哩3鎖󠄁近󠄁延󠄂長260呎に亘る約7呎の沈下,及び千葉都賀間に於て延󠄂長330呎約4呎の沈下を最も大なるものとし,その他龜戶千葉間3箇所󠄁,千葉成東間に16箇所󠄁の沈下崩󠄁壞あり。

土留壁 記󠄂すべき被害󠄂なし。

橋梁 兩國橋龜戶間の橋梁は全󠄁部火災の損害󠄂を受けしが(寫眞第二百二參照),震災に因る直接の被害󠄂は兩國橋錦糸町間高架線用橋脚の水平󠄁に切斷せしもの11基,縱に大なる罅裂を生ぜしもの8基の外,橋脚の移動沈下せしもの(最大沈下2.12呎)77基あり。尙床石の破損頗る多し。

その他の橋梁に於ては橋臺の罅裂せしもの1基移動沈下せしもの5基あり。又󠄂袖石垣に罅裂を生ぜしもの數箇所󠄁あり。

停車場 兩國橋及び錦糸町兩驛構内に於ける本屋,並にその他の建󠄁物及び諸施設全󠄁部燒失せり(寫眞第二百三參照)。震災に因る被害󠄂は龜戶驛最も甚しく,本屋及び上り乘降場上家は倒潰,貨物上家は傾斜󠄁,上下乘降場及び待合所󠄁は大破し,その他の建󠄁物亦傾斜󠄁し,乘降場及び積卸場擁壁並に盛︀土沈下せり。その他の驛に於て倒潰せしものは平󠄁井驛の貨物上家のみにして,本屋の傾斜󠄁せしものは下總中山,千葉,佐倉及び日向驛等にして,就中千葉驛の被害󠄂大なり。この外乘降場並に積卸場擁壁の沈下,乘降場上家並に貨物上家の傾斜󠄁等の被害󠄂あり。

諸建物 兩國運󠄁輸事務所󠄁及び同保線事務所󠄁附屬建󠄁物,龜澤町及び石原町に於ける官舍,木材防腐工場並に錦糸町工場等總て燒失し,この延󠄂坪󠄁約3,366坪󠄁達󠄁せり。

跨線橋 特に記󠄂すべき被害󠄂なし。

地下道󠄁 錦糸町驛の地下道󠄁上家の燒失せる外被害󠄂なし。

給水器 燒損の外被害󠄂なし。

信號機 兩國橋驛構內上り場內信號󠄂機1基折損せり。

道󠄁 兩國橋龜戶間(龜戶驛構內を除く)に於ては火災のため軌條枕木等全󠄁部燒損せしが,直接地震に因る軌道󠄁の被害󠄂は比較󠄁的少く,稻毛千葉間兩國橋起󠄁點22哩3鎖󠄁近󠄁に於て延󠄂長920呎に亘り約7呎沈下せし外,4呎以下の沈下十數箇所󠄁あり。

列車 列車には殆ど被害󠄂なし。

第十五節 房總線(千葉大網間14.4哩)

本區間に於ける被害󠄂は土氣大網間土氣隧道󠄁(延󠄂長1,159呎)千葉方坑門口內約170呎附近󠄁の穹拱延󠄂長約60呎崩󠄁壞し,上部土砂陷落して隧道󠄁を閉塞せし外大なるものなく,その他築堤に在りては本千葉蘇我間都川橋梁前󠄁後約70呎に亘りて最大3呎沈下し,尙7吋以下の沈下數箇所󠄁ありしも切取土留石垣橋梁暗󠄁渠等には殆ど被害󠄂認󠄁めず,又󠄂停車場に在りては蘇我驛本屋の一部傾斜󠄁し,本千葉,土氣及び大網驛本屋の壁一部剝落し,大網驛乘降場の擁壁一部傾斜󠄁せしに過󠄁ぎず,又󠄂停車場附屬建󠄁物にも大なる被害󠄂なし。

第十六節 北條線(蘇我江見間69.3哩)

切取 切取の被害󠄂は比較󠄁的大にして崩󠄁壞總土坪󠄁約7,200立坪󠄁達󠄁し,その內約6,900立坪󠄁は上總湊濱金谷間の軟砂岩又󠄂は凝灰󠄁質頁岩より成れる山腹切取法面の崩󠄁壞にして,蘇我起󠄁點35哩2鎖󠄁近󠄁の約1,500立坪󠄁,35哩21鎖󠄁近󠄁の約2,000立坪󠄁,38哩50鎖󠄁近󠄁の約3,000立坪󠄁崩󠄁壞を大なるものとす(寫眞第二百四乃至第二百七參照)。その他大貫佐貫町間に1箇所󠄁,南三原和田浦間に2箇所󠄁崩󠄁壞あり。

築堤 築堤の被害󠄂崩󠄁壞沈下最も多く,罅裂亦少からず。崩󠄁壞の最も甚しきは那󠄁