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柱鋼製小屋組亞鉛󠄁引鐵板葺なりしが,鑄鐵柱切斷し小屋墜󠄁落せり。

乘降場及び積卸場 蕨驛に於ける乘降場の擁壁一部崩󠄁壞し,その他は沈下傾斜󠄁等被害󠄂小なり。

跨線橋 跨線橋は殆ど被害󠄂なし。

地下道󠄁 王子驛の地下道󠄁に罅裂を生じたるのみにして他は殆ど被害󠄂なし。

給水器及び信號機 上野秋葉原兩驛に於ける給水器及び信號󠄂機の燒損せし外被害󠄂殆どなし。

道󠄁 火災により秋葉原上野間の軌條枕木等燒損したるも地震動による被害󠄂は輕微なり。

發電所󠄁 赤羽發電所󠄁は鐵筋混凝土造󠄁にして,地盤極めて軟弱󠄁なるを以て建󠄁造󠄁當時基礎杭打を充分󠄁になしたるため被害󠄂は豫想外に少く,建󠄁全󠄁體約9吋沈下せる外柱とタービン据付床との間に罅裂を生じタービンのベーン小破せり,尙煙󠄁突2基小罅裂を來し煙󠄁道󠄁中央絕緣部に約1呎喰違󠄄ひを生じたり。

第十二節 山手線(品川赤羽間13哩及び池袋田端間3.3哩)

切取 切取法面石垣の崩󠄁壞及び孕出せるもの2,3箇所󠄁あり。

築堤 新宿新大久保驛間,靑梅街道󠄁道󠄁前󠄁後に於て築堤延󠄂長約1,450呎に亘り最大約1呎沈下し,又󠄂下目黑川橋梁,五反田陸橋及び目黑乘越橋梁(電車線)前󠄁後に於て約200呎乃至270呎間最大約1呎の沈下を見,その他十條赤羽間並に2,3橋梁前󠄁後にも最大約6吋の沈下を生じたり。

土留壁 新宿驛構內土留石垣間知石空󠄁積約124面坪󠄁崩󠄁壞し(附圖󠄃第十六參照),尙惠比壽及び原宿驛構內に於ても土留石垣間知石空󠄁積の崩󠄁壞並に孕出を生じたるものあり。

橋梁 目黑惠比壽間乘越橋梁(電車線)に於ける橋脚の混凝土工にして方柱7箇を拱にて連結せるものゝ一部起󠄁拱線附近󠄁に於て剝落切斷し(附圖󠄃第十七及び寫眞第百九十二參照),これと略々同樣の構造󠄁より成る代々木新宿間乘越橋梁の一部亦水平󠄁に切斷せり(寫眞第百九十三參照)。又󠄂大崎驛構內大崎跨線道󠄁路橋橋脚(混凝土工)の下部切斷し,市外側橋臺の床石上面斜󠄁に切斷せる外橋臺の傾斜󠄁移動せるもの2,3あり。

尙當時新築工事中なりし新宿驛甲州街道󠄁跨線道󠄁路橋,及び出札所󠄁支󠄂ふる混凝土方柱(橋脚)14本は何れも數片に切斷して顚倒散亂せり(附圖󠄃第十八並に寫眞第百九十四乃至第百九十六參照)。又󠄂同じく工事中なりし淀橋乘越橋梁は,框構橋脚の上に鈑桁4連を架したるものなりしが,桁の固定端に當る橋臺上の混凝土面著しく破壞し,又󠄂可動端は最大約2 1/2吋の移動を示し,框構橋脚下端は浮󠄁上りたり。(寫眞第百九十七及び第百九十八參照)

停車場 驛本屋の最近󠄁改築せられたるものは悉く木造󠄁スレート葺なりしが何れも被害󠄂頗る輕微なり。又󠄂新築中なりし新宿驛新本屋は鐵筋混凝土造󠄁にして,軸部構造󠄁は大半󠄁竣成し內部造󠄁作に著手せんとせる際なりしが,壁と梁との接續部及び空󠄁洞煉化石を用ひたるカーテン·ウオルに龜裂破損を生ぜしため震災後接合部を修理し,間壁は全󠄁空󠄁洞煉化石を廢して鐵筋混凝土造󠄁に改めたり。(附圖󠄃第十九乃至第三十二參照)

又󠄂同驛貨物上家は古軌條造󠄁にして,屋根にプレカストしたる鐵筋混凝土スラブを用ひたるもの4棟の內1棟倒潰し3棟傾斜󠄁せしを以て(附圖󠄃第三十三參照)震災後古軌條造󠄁鉛󠄁引鐵板葺に改築せり。尙その他の乘降場上家及び貨物積卸場上家は木造󠄁又󠄂は古軌條造󠄁なりしが何れも被害󠄂輕微なりき。

乘降場及び積卸場 代々木驛新設乘降場は盛︀土に代ふるに鐵筋混凝土スラブを以てせしが,柱と梁との接合部殆ど全󠄁部破損せり(附圖󠄃第三十七並に寫眞第百九十九乃至第二百參照)。この外五反田,惠比壽,外2,3驛の築堤上に設けたる乘降場の路面沈下せり。(附圖󠄃第三十八參照)

跨線橋 惠比壽驛の跨線橋は乘降場面の沈下に伴󠄁ひて脚柱基礎並に階段昇り口沈下し,ために階段上部と橋體との接合部約1吋分󠄁離せしが他には殆ど被害󠄂なし。

地下道󠄁 板橋驛地下道󠄁壁に罅裂を生じたるのみなり。

給水器 給水器は殆ど被害󠄂なし。

信號機 自働信號󠄂機の倒壞せしもの1基,傾斜󠄁せるもの2基,小罅裂を生ぜしもの1基あり。

第十三節 常磐線(日暮里土浦間39.6哩,隅田川支線2.7哩,田端三河島間1哩)

切取 切取の被害󠄂は特に記すべきものなし。

築堤 築堤の被害󠄂は馬橋北小金間に於て高16呎のもの約400呎に亘り約8呎沈下せしを最も大なるものとし,北千住金町間に於ける4箇所󠄁延󠄂長約5,300呎に亘り最大約1呎以下の沈下及び龜裂を生じたるものこれに次󠄁ぎ,その他數箇所󠄁に最大1呎以下の沈下を生じたり。

土留壁 隅田川驛岸壁(粗石練積)延󠄂長約4,600呎沈下せり。

橋梁 南千住北千住間隅田川橋梁(徑間200呎構桁2連,60呎鈑桁19連)に於ては,第三號󠄂橋脚及び第四號󠄂橋脚(井筒2個の上端に拱を架し一體と爲せるもの)に罅裂を生じ,井筒も亦一部損傷せり。我孫子取手間利根川橋梁(徑間200呎構桁8連,60呎鈑桁22連)は上り線第十七號󠄂橋脚の地盤附近󠄁に水平󠄁罅裂を生じ,又󠄂第十八號󠄂橋脚はその中央部