別勒古訥台ベルグヌタイ、不古訥台ブグヌタイなる我ワが〈[#「が」は底本では「か」。昭和18年復刻版に倣い修正]〉二人フタリの子コよ。我ワレを「この三人ミタリの子コを生ウめり。誰タレの何ナニの子コなるか」と疑ウタガひ合アひて噂ウハサし合アへり。汝等ナンヂラの疑ウタガふも是モツトモなり。
§21(01:13:01)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
夜ヨごとに光ヒカる黃色キイロの人ヒト、房ヘヤの天窻ソラマドの戶口トグチの明處アカルミより入イりて、我ワが腹ハラを摩サスりて、その光ヒカリは我ワが腹ハラの內ウチに透トホるなりき。出イづるには、日月ヒツキの光ヒカリにて、黃狗キイヌの如ゴトく爬ハひて出イづるなりき。輕率カルハズミ迭列篾に何ナンぞ言イふ、汝等ナンヂラ。これ帖兀別兒にて察ミれば、明アキラ忝迭克かに彼カレの(光る人の子)は、皇天アマツカミ騰格哩の御子ミコなるぞ。黑クロ合喇き頭カシラ帖哩兀の人ヒト(謂はゆる黎民 又は黔首)に比クラ合泥勒罕べて何ナンぞ言イふ、汝等ナンヂラ。合木渾 合惕カムクン カト(普き君、すめらぎ、合木渾 罕の複稱)とならば、民草タミグサ合喇除思はそこに覺サトらんぞ」と云イへり。
§22(01:14:01)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
又マタ 阿闌 媛アラン ビメは、五人イツタリの子コを敎ヲシふる言コトバに言イはく「汝等ナンヂラ、我ワが五人イツタリの子コは、獨ヒトリの腹ハラより生ウマれたり。汝等ナンヂラは、恰アタカも五條イツスヂの箭ヤの如ゴトし。獨獨ヒトリビトリにならば、彼カの一條ヒトスヂづゝの箭ヤの如ゴトく、誰タレにも容易タヤスく折ヲられん、汝等ナンヂラ。彼カの束ツカねたる箭ヤの如ゴトく、諸︀共モロトモに一ヒトつの商量ハカラヒあるとならば、誰タレにも容易タヤスくは何ナンぞならん(何ぞ敗られん)、汝等ナンヂラ」と云イへり。かく住スめる程ホドに。阿闌 媛アラン ビメなる彼等カレラの母ハヽは無ナくなれり。
§23(01:14:09)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
その母ハヽ 阿闌 媛アラン ビメを無ナくなしたる後ノチ、兄弟アニオトヽ 五人イツタリにて、馬羣バグン 糧食リヤウシヨクを分ワけ合アふに、別勒古訥台ベルグヌタイ、不古訥台ブグヌタイ、不忽 合塔吉ブク カタギ、不合禿 撒勒只ブカト サルヂ、四人ヨタリにて共トモに取トれり。孛端察兒 蒙合黑ボドンチヤル モンカクは弱ヲヂナ