(卷六の豁哩 失列門)を、千センの侍衞ジヱイを、緊要キンエウなる軍イクサを、都︀スベてを敗ヤブりて、大中軍タイチウグンに到イタりて、桑昆サングンの紅アカき腮ホヽを兀出馬ウチユマ(箭の名)にて射イたる故ユヱに、長生トコヨの上帝アマツカミに門ミカドの手綱タヅナを引開ヒキアけられたるぞ。桑昆サングンに傷キズツけずあらば、いかにかもなりけん、我等ワレラ。主兒扯歹ヂユルチエダイの緊要キンエウなる大オホき功イサヲにそれは做ナりたるぞ。かくて離ハナれて合勒合 河カルカ ガハに沿シタガひ起タつ時トキ、
主兒扯歹ヂユルチエダイを高タカき山ヤマの遮護シヤゴの如ゴトく思オモひて行ユきたりき、我ワレ。かく去サりて、巴勒主納バルヂユナの湖ミヅウミに水飮ミヅノみに到イタりたるぞ。さて巴勒主納バルヂユナの湖ミヅウミより出馬シユツバする時トキ、主兒扯歹ヂユルチエダイを先鋒センポウとして、客咧亦惕ケレイトに出征シユツセイして、皇天アマツカミ 后土クニツカミに力チカラを添ソへられて、客咧亦惕ケレイトの民タミを窮キハめて虜︀トラへたり。緊要キンエウなる國クニを滅ホロボされて、乃蠻ナイマン、篾兒乞惕メルキトは、顏色カホイロを挫クジきて、立タち合アひ(對陣し)かねて散チらされたるぞ。篾兒乞惕メルキト、乃蠻ナイマンを散チらしたる戰タヽカヒの內ウチに、客咧亦惕ケレイトの札合敢不ヂヤカガンブは、二女フタリの女ムスメの緣チナミに依ヨり、己オノレの從シタガふる部眾ブシウにて圓全マトマリテ 住スみたりしぞ。
二フタたび敵テキになり離ハナれたるを、主兒扯歹ヂユルチエダイ 誘イザナひて、計略ハカリゴトにて札合敢不ヂヤカガンブを離ハナれ畢ヲへたるを手テに掛カけて拿トラへて事コト 了ヲへたりしぞ。かくて札合敢不ヂヤカガンブの部眾ブシウを二フタたび滅ホロボし虜︀トラへたり。主兒扯歹ヂユルチエダイの第二次ダイニジなるその功イサヲは、かくありしぞ」[と宣ノリタマひき。]
殺︀コロ阿剌勒都︀し合アふ日ヒに命イノチ阿米顏を出イダしたる故ユヱに、死シ兀忽勒都︀に合アふ日ヒに、鏖戰アウセン斡魯木列したる故ユヱに、成吉思 合罕チンギス カガンは、亦巴合 別乞イバカ ベキ(札合敢不の長女。元史 朮赤台 の傳