2014ダ22789
所有権移転登記抹消
[編集]主文
[編集]上告を棄却する。上告費用は,原告が負担する。
理由
[編集]上告理由(上告理由書提出期間が経過した後に提出された上告理由補充書等の各記載は,上告理由を補充する範囲内において)を判断する。
1.上告理由第1,3点について
[編集]イ.親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法(以下,「法」という)第2条第2号(以下,「本件推定条項」という)は,「親日財産というのは,親日反民族行為者が国権侵奪が開始された露・日戦争開戦時から1945年8月15日までに日本帝国主義に協力した対価として取得し,又はその相続を受けた財産又は親日財産であることを知りながら遺贈・贈与を受けた財産をいう。この場合において,露・日戦争開戦時から1945年8月15日までに親日反民族行為者が取得した財産は,親日行為の対価として取得した財産と推定する。」と規定している。
ところで同法第1条は,その立法目的が,日本帝国主義の植民統治に協力し,わが民族を弾圧して反民族行為者が親日反民族行為により蓄財した財産を国家に帰属させることにより,正義を具現し,民族の精気を正立し,日本帝国主義に抵抗した3.1運動の憲法理念を具現するところにある旨規定している。一方,近代的意味の所有権創設の基礎と理解されている日帝の土地調査事業及び林野調査事業は,1910年以降に施行されたにも拘らず,同法は,親日財産の取得期間を露・日戦争開戦時(1904年)からと規定しており,これは,土地及び林野調査事業による査定のある前から既に親日反民族行為者らが日帝の侵奪に協力し,財産に対する実質的支配権を取得した場合があるということを前提としたものである。こういった点等を考慮してみると,本件推定条項にいう財産の「取得」には,土地及び林野調査事業を通じた査定を原因として所有権を取得した場合はもちろん(最高裁判所 2013.3.28.言渡 2009두11454 判決等参照),その査定名義を第3者に信託して取得した場合も含まれると解することが相当である。
ロ.原審判決理由によれば,原審が確定した事実関係は,次のとおりである。
- ① 原告の祖父である訴外1は,個人債務の整理のため,東洋拓殖株式会社から訴外2,訴外3,訴外4の3人名義で資金を借り入れることとし,その担保として提供するため,1921.6.10.本件分割前の土地の名義を右3人に信託し,査定を受けた。
- ② 以降,原告が戸主相続人として本件分割前の土地を含む訴外1の財産の相続を単独で受けた。
- ③ 1954.12.14.本件分割前の土地に関して前登記の受付年月日,受付番号及び原因日時を各「不明」として「回復」による訴外5長官名義の所有権移転登記が経由され,1965.7.31.原告名義で1965.5.24.付け契約解止を原因とした所有権移転登記が経由された。
- ④ 本件分割前の土地は,林野台帳が滅失され,1967.8.8.に地籍復旧されて以降,行政区域名称の変更及び分割により,本件土地ほか9筆地となった。
- ⑤ 原告は,2006.3.28.頃本件土地中,本件持分を除いた残りの1,809,478/1,855,336持分を第3者に売り渡した後,2009.5.12.に持分所有権移転登記を経由した。
- ⑥「親日反民族行為者財産調査委員会」は,2009.5.22.訴外1が財産の国家帰属対象である親日反民族行為者に該当し,本件土地中,本件持分について,国家帰属対象である親日財産に該当する旨決定した。
- ⑦ これに伴い被告は,2009.7.23.本件持分に関して1921.6.10.国家帰属を原因として本件所有権移転登記を経由した。
ハ.右事実関係を前にみた法理に照らして見ると,本件分割前の土地は,訴外1が訴外2等に対し名義を信託して査定を受けた後,訴外1とその相続人である原告が実質的に支配・管理してきたものであって,本件推定条項に定める期間内に親日反民族行為者である訴外1が取得した財産に該当するというのであるから,ここから分割された本件土地は,親日財産と推定される。
従って,原審が本件分割前の土地を訴外1が原始取得したと判示した部分は,誤りであるが,本件土地中,本件持分が本件推定条項により訴外1が親日行為の対価として取得した財産と推定されると判断したことは,正当である。ここに理由主張のような論理及び経験の法則を違反し,自由心証主義の限界を逸脱し,又は本件推定条項の意味若しくは適用範囲に反する法理誤解,憲法違反,審理未尽,判断欠落等の誤りはない。上告理由であげる判例は,事案を異にし,本件に援用できない。
2.上告理由第2点について
[編集]イ.本件推定条項による推定力を覆すためには,財産の取得時期が露・日戦争開戦時から1945年8月15日までの間であるという前提事実について裁判所の確信を揺るがす反証を提出するか,又はその期間中に取得した財産は,親日行為の代価であるとする推定に反対する事実の存在を証明しなければならない(最高裁判所 2013.3.28.言渡 2010두28335 判決等参照)。
ロ.原審判決理由によれば,原審は,その判示のような事情を考慮し,哲宗が全溪大院君墓所を抱川仙壇里に移葬し,その境界を四方300歩と定めて賜牌地を下賜した事実のみでは,疎外1が露・日戦争開戦時から1945.8.15.までの間に本件分割前土地を取得したという右認定を覆すに足りず,別途反証がなく,疎外1が債務整理のため東洋拓殖株式会社に担保として提供することとして疎外2等に名義を信託し,本件分割前土地の査定を受けた事実及び原告が提出した証拠のみでは,疎外1が取得した本件分割前土地が親日行為の対価でないと認定するに足りないと判断した。
関連法理及び記録に照らして見ると,原審の右のような判断は正当である。ここに論理及び経験の法則に違反し、自由心証主義の限界を逸脱し,又は親日財産推定の反復に関する法理誤解,理由矛盾又は判断欠落等の誤りがあるとする上告理由の主張は,理由がない。
3.結論
[編集]よって,上告を棄却し,上告費用は,敗訴者が負担するものとし,関与最高裁判所判事の一致した意見で主文のとおり判決する。
最高裁判所判事 クォンスンイル(裁判長) パクビョンデ(主審) パクポヨン キムジェヒョン
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