鼻 (新美南吉)

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昆蟲の好きな少女、

詩をつくる少女、

まねをする少女、

まねをすることによつて

彼女は戀を吿白してゐる。

彼女は何かを期待して來る。

しかし彼女は鼻がひくい。

彼は彼女の顏を時に美しいと思ふ。

特に鼻以外の部分――例へば眼や

頰の線は美しいとさへ思はれる。

しかし一番大切なところに一番醜い鼻が

あることは彼女にとつて又󠄂とない不幸だ。

彼女はよく知つてゐるらしい。――自分の鼻

が對手に奇異な感じを與へてゐることを。

彼女はだから耻しくてたまらないのだ。

くちのまわりがぴくぴくするのだ。

この著作物は、1943年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。