馬太傳第十二章

提供:Wikisource
  • : この文書ではルビが使用されています。ここでは「単語ルビ」の形で再現しています。一部の古いブラウザでは、ルビが正しく見えない場合があります。

この翻訳には差別語が含まれていますが、歴史的著作物であることを考慮し、原文のまま掲載いたします。

第十二章[編集]

[1] そのとき耶穌安息日あんそくにち禾田むぎばたけをすぎしに そのでしたちうゑければ をつみくひはじめたり
2 パリサイの人これをみて耶穌にいひけるは みよ あなたのでし安息日あんそくにちになすべからざることをなす
3 かれらにいひけるは ダビデとそのともうゑたりしときなせしをよまざるや
4 すなはち神の神殿にいりて 祭司さいしの外おのれあるひはとものものくらふべからざるそなへのぱんをくらへり
5 また安息日あんそくにち祭司さいし神殿みやのうちにて安息日あんそくにちをおかせどもつみなきことを律法おきてにおいてよまざるや
6 われなんぢらにつげん 殿みやよりおほひなるものこゝにあり
7 われあはれみをこのみてまつりをこのまずと このこゝろをしらばつみなきものをつみせざるべし
8 それ人の安息日あんそくにちしゆなればなり
9 こゝをさりてかれらの會堂くわいどうにいるに
10 みよ かたなへたる人ありければ かれら耶穌にとひけるは 安息日にいやすことはなすべきことか これかれをうつたへんとほつするためなり
11 かれらにいひけるは 汝らのうちひとつのひつじをもつもの そのひつじ安息日あんそくにちあなにおちいらば これをとりあげざるか
12 いかに人は羊よりすぐるゝものならずや ゆゑに安息日あんそくにちによきをなすはよし
13 つひにその人に汝がをのべよといひければのばせり すなはち外ののごとくいえたり
14 パリサイの人いでゝ いかにしてか耶穌をころすべきやとあひはかれり
15 耶穌これをしりてこゝをさるに おほくの人〴〵これにしたがへり かれらをみないやせり
16 おのれを人にあらはすべからずといましめり
17 こゝによげんしやヱザヤのいひしことばにかなへり いはく
18 みよ わがゑらみししもべ わがいつくしみ心にかなひしもの われこれにわがたまをあたへ 異邦人いほうじんにさばきをしめさすべし
19 かれはきそはじ さけばじ 人ちまたにおいてそのこゑをきくまじ
20 たゞしきをかちとげさするまでいたみしあしをらじ けぶれるあさをけさじ
21 異邦人いほうじんもその名によるべしと
22 こゝにおににとりつかれたるめくらのおしなるものつれられて耶穌にきたれり めしひにておしなるものをものいひゆるやうにいやせり
23 人〴〵みなあやしみて これダビデにあらずやといへり
24 パリサイの人きゝていひけるは この人はおにのかしらベルゼブルをつかはざればおにをおひいださず
25 耶穌そのおもはくをしりてかれらにいひけるは すべてあひあらそふくにはあらさるゝなり すべてあひあらそふむらいへはたつべからず
26 もしサタナ サタナをおひいださば おのれとあひあらそふなり しからばそのくにいかでたつべきや
27 もしわれベルゼブルによりておにをおひいださば 汝らの息子むすこたれによりておひいだすや ゆゑにかれらは汝らの裁判人さいばんにんなるべし
28 もしわれ神靈みたまによりておにをおひいださば 神のくに汝らにはやのぞめり
29 あるひはまづつよきものをしばらざればつよきものゝいへにはいり いかでその道具どうぐをうばふことをえんや そののちにこそそのいへをうばふべけれ
30 われとともにあらざるものはわれにそむき われとともにあつめざるものはちらすなり
31 ゆゑに汝らにつげん すべてひと〴〵のおかせるつみと神をけがすことはゆるされん されどひと〴〵の聖靈せいれいをけがすことはゆるさるべからず
32 人のにそむきていふものはゆるさるべし 聖靈せいれいにそむきていふものはこの世においてもまたのちの世においてもゆるさるべからず
33 あるひはもよくそのもよくせよ あるひはもあしくそのもあしくせよ いかにとなればはそのによりてしられたり
34 あゝまむしのたねよ 汝らあくにしていかでかよきことをいふべけんや それこゝろにみつるよりくちにいふものなればなり
35 よき人はこゝろにつみたるよきことをいだし またあしき人はこゝろにつみたるあしきことをいだす
36 われなんぢらにつげん 人のいひしすべてのむなしきことばゝ審判さばきの日にそれについてうちあかすべし
[37] それなんぢのことばによりてつみなしとせられ また汝のことばによりてつみありとせらるべければなり
38 ときにある學者がくしやとパリサイの人こたへていひけるは よ われら汝よりのしるしをみんとほつす
39 こたへてかれらにいひけるは 姦惡かんあくなるはしるしをもとむれと[ど]も 預言者よげんしやヨナのしるしのほかしるしをこれにあたへられざるべし
40 それヨナ三日みつか三夜みよ巨魚うをのはらのなかにありしごとく 人のも三日三夜のなかにあるべし
41 ニネベの人このとともに審判さばきによつてこのをつみにさだむべし いかにとなればかれらはヨナのいひふらせしによりてくひあらためたり しかるに みよ ヨナよりまされるものこゝにあり
42 みなみ女王によわうこのとともにさばきにたちてこのにつみにさだむべし いかにとなればかれはのはてよりソロモン智慧ちゑをきくためにきたれり しかるに みよ ソロモンよりまされるものこゝにあり
43 惡鬼あくき人よりいでたるとき みづなきところをまはりて やすきをもとむれどもえず
44 よつてわがいでしいへにかへらんといひ すなはちかへりたれば あけはなし掃除そうじしてまたかざりたるを
45 ついにゆきておのれよりあしきなゝつ惡鬼あくきをともなひ入てそこにをる その人のおはりのありさまは前よりなほわろくなるべし このあしきもまたかくのごとくならん
46 耶穌人〴〵にかたれるうちに みよ そのはゝと兄弟そとにたちてかれにものいはんとほつす
47 ある人耶穌にいひけるは みよ あなたのはゝと兄弟あなたにいはんとほつしてそとにきたり
48 つげしものにこたへていひけるは わがはゝはたれぞ またわが兄弟はたれぞや
49 手をのばし そのでしたちにさしていひけるは みよ わか[が]はゝと兄弟なり
50 いかにとなればわがてんにましますちゝむねをおこなふものはそれこそわが兄弟わが姊妹しまいわがはゝなれ