馬太傳第二十七章

提供:Wikisource
  • : この文書ではルビが使用されています。ここでは「単語ルビ」の形で再現しています。一部の古いブラウザでは、ルビが正しく見えない場合があります。

第二十七章[編集]

[1] 平且よあけ[旦]になりて すべて祭司さいしのをさたちとたみ長老としよりは耶穌につきて これをころさんとてともにはかれり
2 すでにかれをしばひき方伯ほうはくポンテヲ ピラトにわたせり
3 こゝにおいて耶穌をわたせしユダにさだめられしをくやみ そのぎん三十を祭司さいしのをさたちと長老としよりにかへして
4 いひけるは 無辜つみなきをわたして われつみをなせり かれらいひけるは われ〳〵においてなんぞや みづからかへりみよ
5 ユダぎん殿みやになげすてゝさりゆきてみづからくびれ
[6] 祭司さいしのをさたちこの銀をとりていひけるは これはのあたへなれば賽錢箱さいせんばこにいるべからずとて
[7] ともにはかり このぎんをもつて賓旅客たびびとをはうむるために陶工やきものしのはたけをかひたり
[8] ゆゑにそのはたけをいまにいたるまでのはたけとなづけられたり
9 こゝにおいて預言者よげんしやイエレミヤによりていはれしことばに かれらは直積ねづもられしもの すなはちイスラエルよりねづもられしものゝあたへのぎん三十まいをとりて
[10] しゆのわれにめいぜしごとく陶工やきものしのはたけをかふためにこれをあたへしといへるにかなへり
11 さて耶穌方伯ほうはくのまへにたつ 方伯ほうはく耶穌にとふていひけるは 汝はユダヤびとわうなるか 耶穌これにいひけるは 汝がいへるごとし
[12] 祭司さいしのをさたち長老としよりとかれをせめうつたふるに なにもこたへず
[13] こゝにおいてピラトかれに この人〴〵汝にいかやうなる證據しやうこをたつるときこえざるかといひしに
[14] 方伯ほうはくいとあやしめるまでに耶穌一言ひとこともかれにこたへざりし
15 さてこのまつりの日には方伯ほうはくのねがひにまかせてひとりの罪人をゆるすのためしあり
[16] そのときバラバといへるひとりのきこえし罪人つみびとありければ
[17] たみあつまりしときピラトかれらにいひけるは バラバかあるひはキリストといへる耶穌なるか 汝らたれをゆるさんとほつするや
[18] これ娼嫉ねたみによりて耶穌をわたせしとしれは[ば]なり
19 方伯ほうはく吟味所ぎんみしよせしとき そのつまいひつかはしけるは そのたゞしきものになにもかゝはることなかれ いかにとなれば今日けふいめにこの人によりおほくうれひたればなり
[20] 祭司さいしのをさたち長老としよりバラバをゆるし 耶穌をころすをねがへとたみにすゝめたり
21 方伯ほうはくこたへてかれらにいひけるは ふたりのうちわれいづれを汝らにゆるすをほつするや かれらバラバなりといひければ
[22] ピラトいひけるは さらばキリストといへる耶穌にわれなにをなすべきや みな十字架じうじかにつけよといへり
23 方伯ほうはくいひけるは かれなにのあしきことをなせしや かれいよ〳〵十字架につけよとさけびいひければ
24 ピラトそのかひなくして かへつてさはぎにならんとするを みづをとりてひと〴〵のまへにをあらひいひけるは この義人たゞしきものにはわれはつみなし 汝らみづからこれをかへりみよ
25 民みなこたへていひけるは そのはわれらとわれらのすゑにかゝるべし
26 こゝにおいてバラバをかれらにゆるし 耶穌をむちうちて十字架につけられんためにわたせり
27 こゝにおいて方伯の兵卒つはもの耶穌を公廳こうてうにひきつれて組中くみぢうをかれによびよせ
28 そのころもをはぎてむらさきのうはをきせ
29 いばらのかむりものをあみてそのかうべにかむらしめ またよしを右のにもたせ かつそのまへにひざまづき嘲弄てうろうしていひけるは ユダヤびとわうやすかれよ
30 またかれにつばきし そのよしをとりてそのかうべをうてり
31 かれを嘲弄てうろうしおはりて その外衣うはぎをはぎ もとのころもをきせ十字架じうじかにつけんとてかれをひきゆけり
32 いづるときクレネの人シモンといへるものにあひ かれにしひてその十字架をおはせり
33 かれらゴルゴタといへるところ これをとけ髑髏されかうべのところにきたれは[ば]
34 をあはせて耶穌にのませんとせしに なめてのむをこのまざりし
34[35] さて耶穌を十字架につけしのちに預言者よげんしやのことばに かれらたがひにわがころもをわかち わが外衣うはぎくじにすといはれしにかなふて 䦰びきしてそのころもをわかちぬ
36 つはものこゝにして耶穌をまもれり
37 またこれはユダヤ人のわう耶穌なりと 罪状標ざいしやうがきをそのかうべのうへにたてり
38 そのときふたりのぬすびと ひとりは耶穌の右 ひとりは左にともに十字架じうじかにつけられたり
39 往來わうらいするもの耶穌をけがし くびをふりていひけるは
40 殿みやをこぼちて三日みつかにこれをたつるものや みづからをたすけよ 汝神のならば十字架よりをりよ
41 祭司さいしのをさたち士子がくしや長老としよりともまたおなし[じ]く嘲弄てうろうしていひけるは
[42] 人をたすけしがわがをたすくることあたはず もしイスラエルわうたるものならばいま十字架よりくだるべし さらばわれらかれをしんぜん
43 かれは神にまかせり われは神のなりといひしうへは 神かれをいつくしまばいまたすけたまふべし
44 ともに十字架につけられし盗賊とうぞくもおなじく耶穌をのゝしれり
45 ひる十二より三までその土地とちみなくらくなりぬ
46 三ころ耶穌大聲おほごゑによばゝりて ヱリ ヱリ ラマ サバクタニといへり これをとけば わが神 わが神 なんぞわれをすてたまふやとなり
47 かたはらにたちしものきゝて かれはヱリヤをよぶなりといへり
48 やがてそのうちのひとりはしりゆきて 海賊うみわた[絨]をとりをふくませ よしにつけて耶穌にのませたり
49 そのほかのものいひけるは まてよ ヱリヤきたりてかれをたすくるやいなやを
50 耶穌また大聲おほこゑによばゝりてそのたまをはなちぬ みよ
51 殿みや戸牃とてううへ よりしたまでさけてふたつになり またふるひいはさけ
52 はかひらけ すでにいねたる信者しんじやおほくよみがへり 耶穌のよみがへりしのち
53 はかをいで聖城みやこにいりておほくの人にあらはれたり
54 百夫ひやくにんかしらとともに耶穌をまもるもの地震ぢしんおよびありしことを見ていとおそれて これはまことに神のなりといへり
55 ガリラヤより耶穌にしたがつてつかへしおほくのをんなはるかにのぞみてゐたり
56 そのうちにマグダラマリアヤコブ ヨセはゝマリア ゼベダイはゝとありし
57 日くれてアリマタヤとめる人 すなはちでしなるヨセフと名つくるものきたれり
58 かれはピラトにゆき耶穌のしかばねをこひしに ピラトしかばねをわたせとめいぜり
59 ヨセフしかばねをとりて きよきぬのにつゝみ
60 これをいはにほりしおのれのあたらしきはかにおき はかもんにおほひなるいしをまろばしてさりぬ
61 マグダラマリアとほかのマリアはかのむかふにしてそこにたり
62 まつりのそなへ日の翌日よくじつ祭司さいしのをさたちとパリサイの人ピラトにつどいひきていひけるは
63 しゆや かの僞者いつはりものいけるとき 三日みつかのちよみがへらんといひしをおもふに おそらくはそのでしよるきたり これをぬすみてたみせしよりよみがへりといはん
64 ゆゑにめいじて三日まではかをかためさせよ さなくはのちのまどはしはさきよりいやますべし
65 ピラトかれらにいひけるは 汝らにまもるものあり ゆきておもふまゝにかためさせよ すなはちかれらゆきていし封印ふういんし まもるものをしてはかをかためさせし