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馬可傳第十章

提供:Wikisource
  • : この文書ではルビが使用されています。ここでは「単語ルビ」の形で再現しています。一部の古いブラウザでは、ルビが正しく見えない場合があります。

この翻訳には差別語が含まれていますが、歴史的著作物であることを考慮し、原文のまま掲載いたします。

第十章

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[1] 耶穌こゝをたちてヨルダンのあなたをとほりユタ[ダ]ヤのさかひのうちにきたるに 大勢おほぜいひと〴〵またかれにあつまりしかば つねのごとくまたかれらををしへ
2 パリサイひときたりかれをこゝろみんとて ひとそのつまをいだすはよろしきやととひければ
3 こたへていひけるは モーセなんぢらになにとめいぜしや
4 かれらいひけるは モーセ離縁状りゑんぜうをかきてこれをいだすことをゆるせし
5 耶穌こたへてかれらにいひけるは モーセなんぢらの薄情はくぜうなるによつてこのをきてをかきたり
[6] しかれども開闢かいびやくのはじめかみひと男女なんによにつくり
7 このゆゑにひとはその父母ちゝはゝをはなれ そのつまにそふて
8 二人ふたりはすなはち一体いつたいとなるべし よつてなほふたつにあらす[ず] たゞ一体いつたいなり
9 ゆゑかみのそはせしところのものはひとこれをはなすべからず
10 いへにおいて門徒でしまたこのことをとひければ
11 かれらにいひけるは およそそのつまをいだしてほかのをんなをめとるものはそのをんなに姦淫かんいんをおこなふなり
12 またもしをんなその夫をつとをいだしてほかにとつぐならば このをんな姦淫かんいんをおこなふなり
13 ひと〴〵耶穌にさはらせんとて小兒せうにをつれきたりしに 門徒でしそのつれきたりしものをいましめたり
14 耶穌これをみていかりをふくみかれらにいひけるは 小兒せうにのわれにきたるをゆるしてこれをきんずるなかれ いかにとなればかみくにひとはかくのごときものなり
15 まことにわれなんぢらにつげん およそかみくに小兒せうにのごとくにしてうけざるものはこれにいるべからず
16 すなはちこれをいだきをそのうへにのせて そのために賞美しやうびせり
17 耶穌みちにいづるにひとりはしりきたり ひざまづきてかれにとひけるは ぜんなるや われかぎりなきいのちをえんとてなにをなすべきや
18 耶穌かれにいひけるは なんぞわれをぜんしやうするや ひとりのほかぜんなるものはなし すなはちかみなり
19 なんぢおきてをしる 姦淫かんいんするなかれ ころすなかれ ぬすむなかれ いつはり證據しやうこをいふなかれ かすむるなかれ なんぢ父母ちゝはゝをうやまふべし
20 かれこたへていひけるは や われいとけなきときよりこれみなまもれり
21 耶穌これをつら〳〵みていつくしみいひけるは なんぢひとつをかけ所持しよぢのものをうりてまづしきものにほどこせよ さすればてんにおいてたからをもつべし しかしてきたり 十字架じうし[じ]かをとりてわれにしたがへ
22 かれこのことばによつてうれひかなしみてゆきし いかにとなればかれはおほひなる身代しんだいをもつものなればなり
23 耶穌まはしてその門徒でしにいひけるは とめるものゝかみくににいるはいかにもかたひかな
24 門徒でしかれのことばにおどろきたり 耶穌はまたこたへてかれらにいひけるは 小子せうし身代しんだいたのむものゝかみくににいるはいかにもかたひかな
25 とめるものゝかみくにいるより駱駝らくだはりあなとほるはやすきことなり
26 門徒でしことのほかにおどろきたがひにいひけるは さらばたすけらるゝものはたれぞや
27 耶穌かれらをつら〳〵みていひけるは ひとにおいてはあたはず かみにおいてはしからず いかにとなれば萬事ばんし[じ]かみにおいてはあたはざるところなきなり
28 ペテロかれにいひはじめけるは みよ われら一切いつさいすてゝ夫子あなたにしたがへり
29 耶穌こたへていひけるは まことにわれなんぢらにつげん われと福音ふくいんのためにいへあるひは兄弟きやうだいあるひは姊妹しまいあるひはちゝあるひははゝあるひはつまあるひはどもあるひは田畑たはたをすてしものは
30 いまこのにおいて百倍ひやくばいうけざるものなし すなはちいへ兄弟きやうだい姊妹しまいはゝども田畑たはたくるしみとともにうけ またのちのにかぎりなきいのちをうくべし
31 しかしながらおほくのさきのものはあとになり あとのものはさきになるべし
32 さてかれらヱロソルマにのぼるとき 途中とちうにて耶穌門徒でしにさきだちゆきければ かれらおどろきかつしたがつておそれし 耶穌また十二じうにをつれてまさにおのれにかゝらんとするところのことをかれらにつげはじめけるは
33 よ われらヱロソルマにのぼりてひと祭司さいしのをさと學者がくしやにわたされて かれらこれを死罪しさ[ざ]いにさだめ 異人いじんにわたし
34 またこれを嘲弄てうろうしむちうちつばきしおよひ[び]これをころし かつ三日みつかめによみがへるべし
35 ゼベダイの子ヤコブヨハンネ耶穌にきたりていひけるは や われらがもとむることどもをわれらになしたまはんことをねがふ
36 かれらにいひけるは われのなんぢらになにをなすをねがふや
37 かれらいひけるは 御威光ごいくわうのあるとき われらのひとりはあなたのみぎひとりはあなたのひだりさしめたまへ
38 耶穌かれらにいひけるは なんぢらはねがふところをしらず 汝らわがのむところのさかづきをのみ わがうくるところの洗禮せんれいをうけうるや
39 かれらいひけるは よくすべし 耶穌かれらにいひけるは なんぢじつにわがのむところのさかづきをのみ またわがうくるところの洗禮せんれいをうくべし
40 しかしながらわがみぎまたわがひだりすることはわれのあたふることにあらず たゞたれにもせよそのそなへられしそのものにあたへらるへ[べ]し
41 十人じうにん門徒でしこれて[を?]きゝてヤコブヨハンネをいきどほれり
42 耶穌かれらをよびていひけるは 異國人いこくにんかみたるとおもふものはこれをれうし またてうたるものと[ど]もはかれらを支配しはい
43 なんぢらのうちにはしかすべからず かへつてたれにてもなんぢらのうちにてうたらんとほつするものは汝らにつかはるゝものとなるべし
44 またなんぢらのうちたれにてもかしらとならんとほつするものはすべてのひとのしもべとなるべし
[45] いかになればひとひとにつかへらるゝためにきたらず かへつひとにつかへ またおほくのひとにかはつていのちをあたへてつくなふためなり
46 さてヱリコにいたれり 耶穌門徒でしとおほひなる群集ぐんじゆひと〴〵とヱリコををづるときテマイの子なるめくらバルテマイみちのかたはらにしてこひけるに
47 ナザレの耶穌なりときゝてよばゝりかゝりていひけるは ダビデ耶穌よ われをあはれみたまへ
48 おほくのひと〴〵これにだまれといましめけれども なほます〳〵 ダビデよ われをあはれみたまへとよばゝりければ
49 耶穌たゝずみて かれをよべよとめいじけれは[ば] ひと〴〵めくらをよびてかれにいひけるは 安心あんしんせよ て 耶穌なんぢをよぶ
50 めくらその外套うはぎをすてゝたちて耶穌にきたれり
51 耶穌こたへてかれにいひけるは われなんぢになにをなすをねがふや めくらいひけるは しゆよ みることをうけたくおもふ
52 耶穌かれにいひけるは ゆけなんぢ信仰しんかうなんぢをたすけり たゞちにかれみることをうけ 耶穌にみちをしたがへり