鐵道震害調査書/第一編/第二章/第十四節

提供:Wikisource


第十四節 總武本線(兩國橋成東間45.7哩)

切取 切取の被害󠄂殆どなし。

築堤 築堤の被害󠄂は稻毛千葉間兩國橋起󠄁點22哩3鎖󠄁近󠄁延󠄂長260呎に亘る約7呎の沈下,及び千葉都賀間に於て延󠄂長330呎約4呎の沈下を最も大なるものとし,その他龜戶千葉間3箇所󠄁,千葉成東間に16箇所󠄁の沈下崩󠄁壞あり。

土留壁 記󠄂すべき被害󠄂なし。

橋梁 兩國橋龜戶間の橋梁は全󠄁部火災の損害󠄂を受けしが(寫眞第二百二參照),震災に因る直接の被害󠄂は兩國橋錦糸町間高架線用橋脚の水平󠄁に切斷せしもの11基,縱に大なる罅裂を生ぜしもの8基の外,橋脚の移動沈下せしもの(最大沈下2.12呎)77基あり。尙床石の破損頗る多し。

その他の橋梁に於ては橋臺の罅裂せしもの1基移動沈下せしもの5基あり。又󠄂袖石垣に罅裂を生ぜしもの數箇所󠄁あり。

停車場 兩國橋及び錦糸町兩驛構内に於ける本屋,並にその他の建󠄁物及び諸施設全󠄁部燒失せり(寫眞第二百三參照)。震災に因る被害󠄂は龜戶驛最も甚しく,本屋及び上り乘降場上家は倒潰,貨物上家は傾斜󠄁,上下乘降場及び待合所󠄁は大破し,その他の建󠄁物亦傾斜󠄁し,乘降場及び積卸場擁壁並に盛︀土沈下せり。その他の驛に於て倒潰せしものは平󠄁井驛の貨物上家のみにして,本屋の傾斜󠄁せしものは下總中山,千葉,佐倉及び日向驛等にして,就中千葉驛の被害󠄂大なり。この外乘降場並に積卸場擁壁の沈下,乘降場上家並に貨物上家の傾斜󠄁等の被害󠄂あり。

諸建物 兩國運󠄁輸事務所󠄁及び同保線事務所󠄁附屬建󠄁物,龜澤町及び石原町に於ける官舍,木材防腐工場並に錦糸町工場等總て燒失し,この延󠄂坪󠄁約3,366坪󠄁達󠄁せり。

跨線橋 特に記󠄂すべき被害󠄂なし。

地下道󠄁 錦糸町驛の地下道󠄁上家の燒失せる外被害󠄂なし。

給水器 燒損の外被害󠄂なし。

信號機 兩國橋驛構內上り場內信號󠄂機1基折損せり。

道󠄁 兩國橋龜戶間(龜戶驛構內を除く)に於ては火災のため軌條枕木等全󠄁部燒損せしが,直接地震に因る軌道󠄁の被害󠄂は比較󠄁的少く,稻毛千葉間兩國橋起󠄁點22哩3鎖󠄁近󠄁に於て延󠄂長920呎に亘り約7呎沈下せし外,4呎以下の沈下十數箇所󠄁あり。

列車 列車には殆ど被害󠄂なし。