コンテンツにスキップ

鐵道震害調査書/第一編/第二章/第十三節

提供:Wikisource


第十三節 常磐線(日暮里土浦間39.6哩,隅田川支線2.7哩,田端三河島間1哩)

切取 切取の被害󠄂は特に記すべきものなし。

築堤 築堤の被害󠄂は馬橋北小金間に於て高16呎のもの約400呎に亘り約8呎沈下せしを最も大なるものとし,北千住金町間に於ける4箇所󠄁延󠄂長約5,300呎に亘り最大約1呎以下の沈下及び龜裂を生じたるものこれに次󠄁ぎ,その他數箇所󠄁に最大1呎以下の沈下を生じたり。

土留壁 隅田川驛岸壁(粗石練積)延󠄂長約4,600呎沈下せり。

橋梁 南千住北千住間隅田川橋梁(徑間200呎構桁2連,60呎鈑桁19連)に於ては,第三號󠄂橋脚及び第四號󠄂橋脚(井筒2個の上端に拱を架し一體と爲せるもの)に罅裂を生じ,井筒も亦一部損傷せり。我孫子取手間利根川橋梁(徑間200呎構桁8連,60呎鈑桁22連)は上り線第十七號󠄂橋脚の地盤附近󠄁に水平󠄁罅裂を生じ,又󠄂第十八號󠄂橋脚はその中央部に於て水平󠄁の大罅裂1條とそれ以下に鉛󠄁直の大罅裂2條を生じ,ために軀體及び井筒に亘りて4分󠄁せられ,その一部分󠄁は後脫離して水中に墜󠄁落せり。この外橋臺に罅裂及び沈下を生じたるもの3箇所󠄁,拱渠に罅裂を生じたるもの2箇所󠄁あり。又󠄂荒川放水路新橋梁は被害󠄂輕微なりしも,これと平󠄁行する約400呎下流なる東武鐵道󠄁の橋梁(省線と同一構造󠄁)は西新井方最初の構桁桁坐を脫して川下に移動し,床桁は川下の桁坐に支󠄂へられて僅に墜󠄁落を免れたり。

停車場 隅田川驛に於ける貨物上家の內2棟,及び同構內大宮工場派󠄂所󠄁建󠄁物,並に南千住驛の本屋は燒失せり。震災に因る被害󠄂は隅田川馬橋兩驛最も大にして,隅田川驛に在りては官舍悉く倒潰又󠄂は大破し,經理課倉庫は半󠄁ば倒潰し,船󠄂渠は沈下せり。馬橋驛に在りては本屋,貨物上家,便󠄁所󠄁,向待合所󠄁及び官舍何れも大傾斜󠄁し,本屋の一部倒潰せり。尙その他の驛に在りても本屋並に附屬建󠄁物の傾斜󠄁,屋根の破壞等の被害󠄂(その程󠄁度は幾分󠄁異るも)あらざるものなし。

跨線橋及び地下道󠄁 特に記󠄂すべき被害󠄂なし。

給水器 隅田川驛に於ける木製水槽は臺と共に倒壞し,取手驛に於ける鐵製水槽臺は傾斜󠄁せり。

道󠄁 道󠄁の被害󠄂は火災のため隅田川驛側線約1哩20鎖󠄁を燒損せる外,馬橋北小金間約400呎に亘り約8呎の沈下を生じたるものを最大とし,その他約2呎以下の沈下數箇所󠄁あり。

列車 柏我孫子間に於て進󠄁行中の貨物列車の內4輛脫線轉覆󠄁し,又󠄂東信號󠄂所󠄁に於て旅客列車の內8輛轉覆󠄁して死者9名,重輕傷者21名を生じたり。