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鐵道震害調査書/第一編/第二章/第八節

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第八節 横須賀線(大船󠄂横須賀間10哩)

切取 切取の被害󠄂は沼間橫須賀間最も多く,就中最大なるは吉倉隧道󠄁船󠄂方坑門口に於ける土砂約3,000立坪󠄁崩󠄁壞にして,七釜󠄀道󠄁船󠄂方坑門約1,200立坪󠄁,沼間隧道󠄁橫須賀方坑門口約1,000立坪󠄁,及び大船󠄂起󠄁點8哩10鎖󠄁近󠄁300立坪󠄁崩󠄁壞これに亞ぐ。尙その他小被害󠄂數箇所󠄁あり。(寫眞第百二乃至第百四參照)

築堤 築堤の被害󠄂は大船󠄂鎌󠄁倉間最も甚しく,大船󠄂驛橫須賀方坑門口の延󠄂長約2,440呎に亘り約8呎沈下せしもの最も大にして,1哩50鎖󠄁近󠄁延󠄂長330呎最大約6尺の沈下これに亞ぐ。その他鎌󠄁倉架道󠄁前󠄁後より滑川橋梁前󠄁後に於ける最大沈下約5呎,3哩70鎖󠄁近󠄁の最大沈下3呎,外數箇所󠄁の小被害󠄂あり。

土留壁 築堤土留壁の被害󠄂鎌󠄁倉驛地築間知石空󠄁積約120面坪󠄁崩󠄁壞を主なるものとし,切取土留壁は法面崩󠄁壞のため間知石空󠄁積の上部崩󠄁壞を來したるもの數箇所󠄁あり,合計約113面坪󠄁達󠄁す。

橋梁 橋梁の被害󠄂最も大なるものは鎌󠄁倉驛橫須賀方の滑川橋梁(徑間30呎單線2列)にして,上り線兩橋臺とも前󠄁進󠄁大傾斜󠄁をなし,大船󠄂方橋臺バラス止崩󠄁壞し且徑間19呎5吋に短縮し,下り線亦兩橋臺とも前󠄁進󠄁大傾斜󠄁をなし,尙バラス止崩󠄁壞し橫須賀方橋臺水平󠄁に切斷して徑間21呎2吋に短縮し,又󠄂上り線鈑桁墜󠄁落せり(寫眞第百五參照)。これに亞ぐものは鎌󠄁倉驛の橫須賀方八幡架道󠄁橋(徑間17呎2連,30呎1連)にして,大船󠄂方橋臺は前󠄁方に約1呎2吋傾斜󠄁し,バラス止破壞し,第一號󠄂橋脚は上り線のもの約1呎,下り線のもの約6吋橫須賀方に向ひて傾斜󠄁し,第二號󠄂橋脚は上り線のもの地盤附近󠄁にて切斷約4吋,下り線のもの約2吋橫須賀方に向ひて傾斜󠄁し,上下線とも橋脚の頂部破壞し,橫須賀方橋臺は約4吋前󠄁方に向ひて傾斜󠄁せり。その他の橋梁に在りては橋臺の前󠄁方傾斜󠄁し,徑間の短縮,アンカー・ボルトの切斷等の被害󠄂を生じたるもの多し。尙拱渠は前󠄁面壁拱に罅裂を生じたり。

道󠄁 吉倉隧道󠄁及び七釜󠄀道󠄁は坑門口の切取法面崩󠄁壞のため坑門附近󠄁破壞して隧道󠄁を閉塞し,名越隧道󠄁は穹拱及び側壁に大なる罅裂及び剝落を生じたり。而してその他の隧道󠄁に於ても坑門に罅裂を生じ,穹拱及び側壁に縱橫の罅裂及び切斷箇所󠄁を生じたる等何れも多少の損害󠄂を蒙れり。(寫眞第百六參照)

停車場 停車場本屋の倒潰せしものなかりしも,多くは沈下又󠄂は傾斜󠄁等を生じたり。その內鎌󠄁倉逗子兩驛の被害󠄂最も大なり。

上家 乘降場上家に在りては鎌󠄁倉及び田浦驛のもの倒潰し,逗子驛のものは大破せり。尙橫須賀驛のものは古軌條を使󠄁用せるものなりしため被害󠄂輕微なり。

貨物積卸場上家に在りては鎌󠄁倉驛のもの倒潰し,田浦驛のものは約10度傾斜󠄁したり。逗子及び橫須賀兩驛のものは被害󠄂小なり。

擁壁 乘降場擁壁は鎌󠄁倉驛のもの(約15呎の盛︀土)不規則に沈下して傾斜󠄁,罅裂,崩󠄁壞等を生じ,その他の各驛に於ては鎌󠄁倉驛の如く被害󠄂大ならざるも,笠石移動し軀體に罅裂を生じたるものあり。積卸場擁壁は各驛とも縱に罅裂を生じ,乘降場上面は不規則に沈下して數箇所󠄁に縱橫の龜裂を生じたり。

跨線橋 逗子驛に於ける跨線橋は鑄鐵脚柱を繫ぐ筋違󠄄切斷し,田浦驛に於ては乘降場上家潰倒のため階段下部の屋根一部破壞せり。

地下道󠄁 鎌󠄁倉驛地下道󠄁の側壁沈下して床との間に龜裂を生じ,尙地下道󠄁側壁と階段側壁とは切斷され幅約9吋の大龜裂を生じ,その他側壁に數條の龜裂を生じたり。(寫眞第百七及び第百八參照)

信號機 逗子驛の遠󠄁方信號󠄂機折損倒潰し,田浦驛のものは崩󠄁壞せる土砂のため埋沒破損せり。

道󠄁 道󠄁の被害󠄂は築堤の沈下に伴󠄁ひて沈下移動せるものと切取法面崩󠄁壞のため埋沒屈曲せるものとにして,前󠄁者に在りては大船󠄂驛の橫須賀方に於ける約8呎の沈下を最も大なるものとし,大船󠄂起󠄁點1哩50鎖󠄁近󠄁に於ける6呎の沈下これに亞ぎ,その他各橋梁前󠄁後等に數箇所󠄁の小被害󠄂あり。又󠄂後者にありては吉倉隧道󠄁船󠄂方坑門口のものを最大とし,その外七釜󠄀,沼間隧道󠄁船󠄂方坑門口外數箇所󠄁の被害󠄂あり。

列車 鎌󠄁倉驛に於て停車中なりし貨物列車の貨車5輛脫線し,尙沼間田浦間に於て進󠄁行中なりし旅客列車客車2輛脫線して乘客に死傷者を生じたり。