鐵道震害調査書/第一編/第三章/第二節/六
六 熱海線白糸川橋梁
構造概要 (附圖第六十一參照) 本橋梁は根府川眞鶴間國府津起點8哩4鎖66節5(建設哩程7哩68鎖5節4)に位し全長645呎,大正十一年に竣工せる複線式にして橋梁上線路の方向は直線南12度西なり。徑間は40呎4連,150呎3連にして,兩端40呎各1連のみ單線鈑桁を架し,他の40呎2連は各單線鈑桁竝列,150呎3連は何れも上路複線構桁なり。
兩橋臺竝に橋脚は基礎軀體共に混凝土工にして,唯第四號橋脚のみ下部高17呎間は周圍に厚平均1呎3吋の張石積となせり。鋼桁の設計荷重は構桁はE45,鈑桁は構桁に隣れるものE40,その他はE33なり。
被害狀況 (附圖第六十二並に寫眞第二百七十二乃至第二百七十八參照) 國府津方橋臺(高30呎23⁄4吋,頂部の幅26呎)は翼壁全潰し,バラス止破壞して軀體は床石面の下方20呎附近に於て水平に切斷し,上部は約1⁄2吋前進し,床石面にて約3呎6吋前方に傾斜せり。第一號橋脚(高約47呎6吋,頂部の幅23呎6吋)は床石面より約19呎6吋下方にて切斷して國府津方橋臺に向て倒れ,その位置は線路中心線に略々平行して約2呎6吋川下に移動せり。而して下部は更に10呎6吋の所にて水平に切斷し,且切斷面の上下に龜裂を生じたり。
第二號橋脚(高27呎,頂部の幅27呎)は床石面より下方10呎附近にて水平に罅裂を生じたり。
第二號及び第三號橋脚の中央部より熱海方橋臺に至る間は全部泥流に蔽はれて被害程度は不明なりしが,復舊工事の際掘鑿せる結果によれば次の如し。
第三號橋脚(高66呎,頂部の幅27呎)は頂部より35呎附近に於て水平に切斷し,上部は國府津方橋臺に向て轉倒し,2片に破損せり。
第四號橋脚(高75呎,頂部の幅27呎)は頂部より55呎附近に於て切斷し,上部顚倒して泥流のため行方不明となれり。
第五號橋脚(高38呎,頂部の幅27呎)は頂部より20呎附近にて切斷し,上部は泥流のため行方不明となれり。
第六號橋脚(高64呎,頂部の幅23呎6吋)及び熱海方橋臺(高71呎3⁄4吋,頂部の幅26呎)は泥流のため行方不明となれり。
第一號鈑桁の一端は第一號切斷橋脚上に約8呎乘出し,他端は國府津方橋臺を外れて顚倒せる第一號橋脚上に墜落せり。
第二號鈑桁は上下線とも熱海方の桁端は第二號橋脚上に支柱と共に乘出し,國府津方の桁端は地上に墜落せり。
第一號構桁は國府津方の端は第二號橋脚より熱海方に約9呎離れて墜落し,第三格間以外は泥流中に埋沒し,墜落構桁中心と線路中心とは約20度の角(方向南32度西)をなし,桁の上面を川上に向けて橫はれり。
第二號構桁は墜落大破して泥流中に埋沒せり。
第三號構桁及び第六,第七徑間に架する鈑桁は泥流のため押流されて行方不明となれり。
國府津方橋臺,第一號橋脚及び第二號橋脚は全く地震動に因る被害なるも,第三號,第四號,第五號,第六號橋脚及び熱海方橋臺は地震動竝に泥流に因る被害なり。而して第三號橋脚の切斷部は第一號橋脚と同じく國府津方橋臺に向て倒れ,その位置は線路中心線に略々平行したるに依り(附圖第六十二參照)推察するに泥流のため切斷せしものなれば泥流の方向に倒るべきに,これと直角に倒れたるは地震動に依り切斷顚倒したることを證するものならんか,即ち行方不明の橋臺橋脚は何れも地震動に因り切斷顚倒したる後,泥流のため一掃せられ海中に流失したるものゝ如し。
第二號橋脚の被害比較的小なるはその高低くして斷面積大なると,且橋脚は一方鈑桁なるがため積載荷重も從て小なる等與て力あるべし。
鋼桁の墜落位置は何れも川上にして,約10呎乃至12呎熱海方に向て移動し,その方向は鈑桁は南20度西,前後,構桁は南32度西なり。而して橋梁附近に於ける地勢上,國府津方は熱海方の如く泥流の激突を受けざりしを以て,墜落せる構桁も泥流のために位置を變ぜざりしものゝ如し。