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鐵道震害調査書/第一編/第三章/第二節/五

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  五 熱海線玉川橋梁

  構造概要  (附圖第五十九及び第六十參照) 本橋梁は早川根府川間國府津起點5哩78鎖10節の地點に架設せられ全長563呎8吋にして,大正八年四月起工同十一年十二月の竣工に係り,單線用上路鋼鈑桁徑間40呎1連及び徑間60呎8連2列より成る。橋梁上線路は半徑25鎖の曲線をなし,且1100の上り勾配中に在りて,その方向は國府津方橋臺に於て約南26度西,熱海方橋臺に於て約南7度西なり。架橋地點は溪谷にして橋下に人家散在し,地質は玉石混り粘土なるを以て基礎工は橋臺橋脚何れも杭打を用ひざる混凝土工なり。而してその根入りの深は約10呎乃至15呎なりとす。

 軀體は橋臺橋脚とも複線式にして外側石積內部混凝土工とし,その形狀は矩形なり。混凝土の調合割合はセメント1,砂3,砂利6(桁座に對してはセメント1,砂2,砂利4)にして,各部寸法等は附圖第五十九及び第六十に示すが如し。尙鈑桁に對する設計荷重はE33なり。

  被害狀況  (附圖第五十九,第六十並に寫眞第二百六十三乃至第二百七十一參照) 橋臺及び橋脚の損傷を受けざるものなく,何れも水平に龜裂を生じ或は切斷せり。而してこれ等切斷部は何れもその下部分に對して時針と反對方向に廻轉せり(附圖第六十及び寫眞第二百六十九參照)。尙損傷の詳細は第二十一表及び附圖第六十に示すが如し。

 而して墜落せる鈑桁8連中,上り線は僅に1連なるに,下り線は7連の多きに達せるは,上り線は營業線にして護輪軌條も敷設せられ,且常に充分保修せらるゝも,下り線は營業線ならずして軌條は兩橋臺間のみ敷設せられ,護輪軌條は敷設せられず,又保修も施されざるを以て各鈑桁間の結合上り線に比し遙に劣りしに基因せるならんか。

 次に國府津方の桁端のみ墜落せるは,橋脚の切斷部前述の如く何れも時針と反對方向に廻轉せるため,下り線に於ては國府津方桁端墜落し易きと,且桁は概して震源地に近き方に摺動せるもの多きが如きを以て,本鈑桁も熱海方に摺動し,國府津方の桁端墜落せるならんか,尙墜落せる桁端は何れも固定端にして墜落を免がれたる桁端は可動端なり。

 又第四徑間の下り線鈑桁は徑間の中央に略々水平に墜落せるも,桁自身には著しき損傷なし。

 尙大正十四年四月十日復舊後の上り線(山側)床石面に沿ひて徑間を測定せしに,附圖第五十九に示すが如く大半は短縮し,2,3の伸長せるものあるも結局全徑間に於て約3.5呎餘の短縮を來せり。(桁座構造圖は附圖第六十に示す