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鐵道略則 (明治5年太政官布告第61号)

提供:Wikisource

今般東京橫濱ノ間鐵道建築落成不日運轉相開候ニ付別紙略則ノ通相定候條此旨相達候事

但開局日限追テ治定ノ上可相達事

(別紙)

鐵道略則

第一條  賃金之事

何人ニ不限鐵道ノ列車ニテ旅行セント欲スルハ先賃金ヲ拂ヒ手形ヲ受取ルヘシ然ラサレハ決テ列車ニ乘ル可ラス

第二條  手形檢査及渡方ノ事

手形檢査掛ノ來ラハ手形ヲ出シ改メヲ受ケ又手形取集ノ來ラハ之ヲ渡ス可シ右檢査ノ節手形ヲ出サス及渡方ノ時ニ手形ヲ渡ササルハ更ニ最初發車ノ「ステーション」

ステーショントハ列車
ノ立場ニテ旅客ノ乘リ
下リ荷物ノ積ミ下ロ
シヲ爲ス所ヲ云フ

ヨリノ賃金ヲ拂ハシムヘシ尤途中ヨリ乘來リシニテ其確證判然タル時ハ其乘リタル場所ヨリノ賃金ヲ拂ハシムヘシ

第三條  途中「ステーション」ニテ乘組並手形ノ事

途中「ステーション」ニ於テハ列車中餘地ノ有無ニ應シテ乘リ組ムヲ得ヘシ若シ其手形ヲ買取シ總人數ヲ容ルヘキ餘地ナキ時ハ其中ニテ最遠キ地ニ赴ク手形所持ノ人丈ケ先ツ乘込ムヲ得ヘシ若シ又同里程ノ地ニ赴ク客數人アル時ハ其手形ノ番號ノ順序ヲ以テ乘ルヲ得ヘシ

第四條  僞欺ノ扱方ノ事

何人ニ不限賃金ヲ拂ハス列車ニテ旅行セント計リ或ハ遂ニ旅行シ又ハ其拂ヒシ賃金高相當ノ車ニ乘ラスシテ更ニ上等ノ車ニ乘組又ハニ車ヨリ下ルヘキ場所ヲ過キ增賃金ヲ拂ハスシテ遠キ場所ニ至リ遂ニ其賃金ヲレント計リ又ハニ拂ヒタル賃金ニテ到ルヘキ場所ニ到リナカラ車ヨリ下リ去ルヲ肯セス又ハ其外如何ナル仕方ニテモ賃金拂方ヲ逃ントスルハ夫々法ニ隨テ罰スヘシ

第五條  列車運動中出入禁止ノ事

總シテ列車ノ運動中ニ出入スル又ハ車內旅客ノ居ルヘキ場所ノ外ニ乘ルヲ禁ス

第六條  疱瘡等ノ病人ヲ禁止スルノ事

疱瘡及諸傳染病ヲ煩フハ乘車ヲ禁ス若シ此等ノ病人車中ニ在ラハ見當リ次第鐵道掛リノヨリ車外並鐵道構外ニ退去セシムヘシ

第七條  吸煙並婦人部屋男子出入禁止ノ事

何人ニ限ラス「ステーション」構內別段吸煙ノ爲メニ設ケシ場所ノ外又ハ吸煙ノ爲メ設シ車ヨリ他ノ車內ニテ吸煙スルヲ許サス且婦人ノ爲ニ設アル車及部屋等ニ男子妄リニ立入ルヲ禁ス若右等ノ禁ヲ犯シ掛リノノ戒メヲ用ヒサルハ車外並鐵道構外ニ直ニ退去セシメ且拂タル賃金ヲモ取上クヘシ

第八條  醉人不法扱方ノ事

何人ニ限ラス總シテ列車乘組中又ハ「ステーション」並鐵道構內ニテ醉態ヲ現ハシ又ハ其他ノ不法ヲ行フハ鐵道掛リノヨリ車外及鐵道構外ヘ直ニ退去セシメ且拂タル賃金ヲモ取上ヘシ

第九條  鐵道ニ屬スル物品ヲ毀損スル時ノ事

何人ニ限ラス浪リニ「ステーション」其他鐵道構內ニ標識揭示セル書附等ヲ剝シ或ハ破リ又ハ列車ノ番號札ヲ取除キ或ハ車燈ヲ消シ又ハ各車ノ諸械倉庫建家牆棚其他鐵道一切ノ附屬品ヲ毀損スルハ惡意ノ所爲ト過失トヲ論セス都テ法ニ隨テ所置スヘシ

第十條  機關車等ヘ乘込ヲ禁スルノ事

機關方並火夫ノ外ハ其筋ノ許ヲ得スシテ右機關車又ハ炭水車ニ乘リ或ハ乘ラント爲ス可ラス且車長及車掛ノノ外其筋ノ許ヲ得スシテハ荷物車又ハ旅客ノ爲ニ設サル車ニ乘リ又ハ乘ラント爲ス可ラス若此禁ヲ犯シ鐵道掛リノノ制止ヲ用ヒサルハ直チニ鐵道構外ヘ退去セシムヘシ

第十一條  鐵道地所ヘ侵入ノ取扱方ノ事

何人ニ限ラス「ステーション」又ハ鐵道構內ヘ侵入シタルハ鐵道掛リノヨリ即刻構外ヘ立去ラシムヘシ

第十二條  旅客ノ荷物ニ關係セサルノ事

旅客所持ノ荷物ハ總テ之カ爲メ別段ニ賃金ヲ拂ヒ其受取證書ヲ取置カサレハ若シ紛失毀損等アルトモ政府ニ於テ敢テ之ニ關係セサルヘシ縱令別段ニ賃金ヲ拂ヒ證書ヲ取置トモ其旅客ノ身迴リ着用衣服ノ外荷物ノ內ニアル品ノ紛失毀損等ハ政府ニ於テ敢テ之ニ關係セサルヘシ且着用衣服ト雖トモ其償ヒ金五拾圓以上ニ過ルナシ

第十三條  高金及大切ノ物品紛失ニ關不關アル事

金銀紙貨幣郵便切手爲替會通用券爲替手形約定證書金錢請拂證書地所建家沽券諸繪圖書畫金銀玉石鍍金象牙香木彫鐫細工物其餘衣類玩佩物粧飾ニ混作ノ些少ノ品類及硝子類陶酒類蠶種繭絹布生熟絲等ノ品物運送方ニ付テハ其品柄並價高等ヲ明白ニ其掛ヘ申立テ增賃金ヲ拂ヒ紛失毀損等請合シ分ノ外ハ總テ政府ニ於テ之ヲ償ハス

第十四條  牛馬獸類運送ノ事

牛馬及其他ノ獸類ヲ運送スル時ニ其持主或ハ送リ人ヨリ右獸類ノ價ヲ運送掛ヘ申出相當ノ增賃金ヲ拂ヒ紛失毀損等請合セサル時ハ若シ紛失損害有ト雖トモ政府ニ於テ敢テ之ヲ引受ルナシ右增賃金ヲ拂ヒ紛失損害等請合セシ分ト雖トモ馬或ハ牝牛一疋ニ付金五拾圓羊或ハ豚一疋ニ付金五圓以上ノ償ハ是亦政府ニ於テ引受ルナシ

第十五條  火等運輸取扱方ノ事

何人ニ限ラス火火藥其他危害ノ物品ヲ車中ニ携ルヲ許サス若シ獵ニ赴ントス火ト火藥些少許リヲ持參致シタキハ初ニ之ヲ車長カールドニ渡シ目途ノ場所ニ着ク迄預ケ置クヘシ

第十六條  爆發質アル危害物運輸ヲ禁スル事

鐵道寮ヨリ追テ公吿スルマテハ前章ニ記セル如キ少量ノ火藥ノ運送ノミヲ許スヘシ其他「ヘトロレム」「カルサイン」「ナフツア」「チユルペンタイン」

石炭油
等ヲ云

硝性及爆發質燃燒質等ノ物品ハ運輸セサルヘシ

第十七條  荷物目錄ヲ渡スヘキ事

運送ノ諸荷物ヲ鐵道掛ノヘ引渡シ又ハ請取ノ度每ニハ右荷主或ハ宰領人ヨリ其品柄數量及姓名ヲ記シテ掛リノヘ差出スヘシ

第十八條  物品損害償方定限ノ事

鐵道ニテ運送スル物品紛失損害アリト雖トモ鐵道掛ノ怠惰過失ヨリ起リシニ非レハ政府ニ於テ敢テ之ヲ償フナシ

第十九條  規則ニ隨ハサル之事

何人ニ不限諸事前條ノ規則ニ隨ハスンハ乘車及荷物運送ヲ許サヽルヘシ

第二十條  規則等ノ變革布達ノ事

此規則中變革及取捨アル時ハ遍ク吿達スヘキ樣鐵道頭扱ヒアルヘシ

第二十一條

此規則ヲ施行スルカ爲メニ夫々法度局ニ訴ヘ犯罪人罰シ方等ノ裁判ヲ乞フ手順ハ鐵道頭或ハ鐵道支配人ノ間ニテ其取扱アルヘシ

第二十二條

旅客並荷物ノ運賃ハ時宜ニ隨ヒ變革アルト雖トモ其變革每ニハ二週日前ニ吿達スヘシ尤鐵道頭鐵道支配方及ヒ運輸頭取ノ間ニ於テ前條ノ如キ吿達ナク臨時ニ常例ヨリ下等ノ運賃ヲ以テ列車ヲ仕立ツヘシ

第二十三條

此規則來ル    月    日ヨリ施行ス

右之條々此度確定候事

この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。