象牙の位置 (牧野虚太郎)
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- 沈黙が破られて一杯の水がくまれ
- 泡沫の中に鏡の態度が迫る
- 透明を遠く呼びながら
- みづからを越えて
- 胎動の新しさに出発した
- あなたの細い時間を返して
- 高い道を歩く
- すべてがすべてに倒れ
- 噴水を集めては転落の日を數へてゐた
- 私は靜かに黎明を繰つてゐる
- 眠りが許され
- 野菜の生活が許され
- あなたの奏する腰の雰囲気では
- 交叉点が小さく響き
- あなたの笑ひをすぎて
- 私の職業に涼しさが消える
- 出血の夜みなれない友を迎へた
- 自殺のために
- しかし一塊の抽象を叩き
- あなたを忘れる成熟のなかで
- 眼鏡の疲れをふき
- 夜のあたひに叫ぼうとする
- 樹上の淋しさよ
- 窓に答へて
- あなたの大きさを盜みたいと思ふ