詩学/第十章
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筋には、単一と、複雑との二種がある。何とならば、筋が模倣する人間の行動は、当然、この二種に分れるからである。単一なる筋とは、継続的な、全き一体として前に述べた如き様式の下に進む所の行動であつて、急転も発見も無くして、主人公の運命が変化して行く場合を言ふ。複雑なる筋とは、急転、もしくは、発見、もしくは二つのものに依つて、主人公の運命が移り変つて行く場合を言ふ。急転並びに発見は、筋の結構そのものから生れ、前の出来事の、必然的、もしくは、蓋然的の結果でなければならぬ。[さうして、決して、単に、時の点に於いてのみ、前の出来事のあとに来てゐる丈けではいけない。]一つの出来事が起るに就いても「これがために」と言ふ場合と「このあとで」と言ふ場合とには、大きな相違がある。
■編注
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