詩学/第十二章

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 悲劇の組織的要素として取扱はれる、諸部分に就いては、前章に於いて、述べ終つた。然し、悲劇は、その量、即ち、外形的に、如何なる部分に分けられるかと言へば次ぎのやうな部分に分けられる。序詞《プロロゴス》、齣《エペイソデイオン》、結尾《エクソドス》並びに登場歌《パロドス》と間の歌《スタシモン》との二つに分かれた舞謡曲の部分とである。この登場歌《パロドス》と間の歌《スタシモン》とは、すべての悲劇に共通に用ひられるが、舞台に於いて歌はれる歌謡と、哀悼歌《コモス》*1とは、悲劇のあるものにのみ存する。序詞《プロロゴス》とは、コーラスの登場歌《パロドス》に先んずる、すべての部分を言ふ。齣《エペイソデイオン》とは、全き舞謡曲と舞謡曲との間に挟つた、すべての部分を言ふ。結尾《エクソドス》とは、最後の舞謡曲の後に来るすべての部分を言ふ。舞謡曲の部分に於いて、登場歌《パロドス》とは、コーラスが歌ふ最初の叙述すべてを言ひ、間の歌《スタシモン》とは、短短長格韻脚もしくは、長短格韻脚を含まない舞謡曲の部分を言ふ。哀悼歌《コモス》とは、コーラスと俳優との合唱で歌はれる所の慟哭〔どうこく〕の歌を言ふ。悲劇の構成要素として用ひられる諸部分は前に挙げられたが、悲劇の量、即、如何なる区分に分けられるかは、今、述べた所である。


■訳注

■編注

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