詩人

提供: Wikisource
ナビゲーションに移動 検索に移動


詩人


闇黑の中に

一點の光を見つけると、

その中から

何か詩趣を見出さなければ

おかない俺だ。


俺は

一介の儚い詩人なのだ。


俺は只、

太陽と地球の間に

生滅する事實を

紙の上に書き連󠄁ねている

馬鹿な男なのだ。

馬鹿な奴は澤山ある。

西行、良寬、芭蕉、皆然りだ。

ミレーも然り、コローもさうだ。

彼等は皆

藝術󠄁に夢中となつて、

西行、芭蕉は寂しい路を辿り、

良寬は世の人の嘲罵の的󠄁となり、

ミレー、コローは

自分の身を惡い境遇󠄁に置いた。


併し!

彼等には藝術󠄁と云ふものがあった。

忘れられない藝術󠄁があつたのだ。

それで彼等は自分の身を

尠しも顧󠄁みなかつたのだ。

藝術󠄁は

それ程󠄁價値のあるものだらうか。


藝術󠄁が好いものか、惡いものか、

そんな事は知らない。

いや、俺は考へない。

只、俺は、

天地の間から詩趣を見出せば好い。

そんなに俺は馬鹿げた男なのだ。

この著作物は、1943年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。