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花󠄁火

提供:Wikisource


花󠄁火


わたしはこつそり宿を

ぬけでる

祕密な喜びを持ちだす

子供のやうに


つゆばれの日曜󠄁のまひる

には麥が立てかけられ

南天の花󠄁が日かげにこぼれる


人のゐない小徑を通󠄁り

川つぷちに出る


さておもむろにとり出した

一束の線香花󠄁火

私は祕密な喜びに

點火する子供のやうに

こつそり花󠄁火をもてあそぶ


鼻かすめるはかない煙硝󠄁の匂ひよ

水にちる捉へがたないたまゆらの悲しい火花󠄁よ


私はかうして一本一本

わたしのうれひに火をともし

水に流しやる

祕密の喜びにふける

子供のやうに

この著作物は、1943年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。