皇位確定法
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皇位確定法(Act of Settlement)(紀元千七百一年ウヰリヤム第三世王卽位第十三年)
皇位ニ一層進ミタル限定ヲ爲シ又臣民ノ權利自由ヲ更ニ確保スル爲メノ法律
- 第一條
- 陛下及至仁ナル故后メリー女王ノ御宇ノ第一年(幸福ナル紀念)ニ於テ「臣民ノ權利及自由ヲ宣示シ且ツ王位ノ繼承ヲ確定スル法律」ト名ツクル議會ノ法律制定セラレ其ノ中ニ次ノ事項(他ニモ規定セラレタル事項アルカ中ニ)ヲ規定、確立且ツ宣示セリ卽チ英蘭、法朗西及愛爾蘭ノ諸王國及是等ニ屬スル諸領土ノ王位及王政ハ陛下及故女王ノ共ニ在世シタマフ間ハ陛下及同女王ニ存シ且ツ引續キ其ノ生存シ殘リタマフ一方ニ存スヘク陛下及女皇ノ崩御ノ後ハ故女王ノ肉緣ノ繼嗣ニ存在シ且ツ殘留スヘク若シ又此ノ如キ繼嗣ナキトキハデンマルクノ女公アン殿下及其ノ肉緣ノ繼嗣ニ傳ヘ其ノ之ナキトキハ陛下ノ肉緣ノ子孫ニ傳フヘシト同法律ハ更ニ進ムテ凡ソ當時又ハ後日羅馬宗又ハ羅馬寺院ニ一致スル者又ハ之ト交通ヲ保ツ者又ハ羅馬法王敎ヲ公信シ將タ同敎徒ト結婚スル者ハ此ノ國及愛爾蘭及是等ニ屬スル諸領土又ハ其ノ一部ノ王位及政權ヲ相續、掌握、享受シ或ハ右等ノ中ニ於テ何等ノ王權、權能又ハ管轄權ヲ領有使用將タ執行スルコトヲ拒マルヘク且ツ此ノ法律ニ依リ永遠ニ是等ノ能力ヲ有セサルモノト規定セリ又總テ此ノ如キ場合ニ於テハ此ノ國ノ人民ハ悉ク其ノ忠勤ノ義務ヲ免除セラルヘシト規定シ更ニ進ムテ王位及政權ハ「プロテスタント」敎徒ニシテ且ツ當然之ヲ繼承享有スヘキ人常ニ之ヲ相續且ツ享受スヘシ若シ是等ノ人羅馬敎徒ト一致交通ヲ保チ信仰ヲ公ニシ又ハ結婚スルトキハ自然ニ死亡シタル者ト同視スヘシト規定シタリ右ノ法律及其ノ中ニ包含スル確定事項ノ制定後ハ陛下ノ良民ハ陛下カ人民ノ宗敎、權利、自由ノ完全且ツ自由ナル享受ヲ復舊セムカ爲メニシタマフ良業及力行ニ成效ヲ與フル神明ノ天職ニ依リ是レ等ノ完全自由ナル享受ヲ復舊スルヲ得タルヲ以テ此ノ上ニ次ノ一事ヲ希望スルノ外更ニ復タ他ニ得ムト欲スル更ニ大ナル現世ノ福祉ヲ知ラサリシ之レ他ナシ此ノ良民カ平和(神明ノ力ニ依リ)ノ恩ヲ受ケ其ノ祖先多年ノ間歐羅巴ノ改革、宗敎及自由ノ主ナル確立者タル今上陛下ト此ノ國ノ臣民ノ常ニ貴重スル至仁ナル女王陛下トニ出ツル皇裔ヲ得ムコトヲ切望セリ然ルニ女王及前途最モ多望ナリシグロスター公ウヰリヤムハ全能ノ神之ヲ取リ去リタマヒ陛下及此ノ臣民ノ言フヘカラサル悲歎愁悼ヲ來セリ此ノ臣民ハ斯カル困扼ニ際シテ尙ホ陛下及女王長壽ヲ保チタマヒ陛下又ハ女王ニ前記法律中ニ規定スル各限定ニ依リ王位及王政權ヲ繼承スヘキ相續者ヲ得セシムルハ全ク全能ナル神明ノ意ナリト思惟シ終始此ノ慶福ニ付キテ天惠ヲ祈リタリ又此ノ臣民ハ常ニ陛下カ斯ク諸王國ノ現在及將來ニ於ケル平和ニ付キ深ク軫念ヲ勞サセタマフコトヲ了認シ殊ニ國家ノ慶福宗敎ノ安固ノ爲メニ「プロテスタント」派ノ王位繼承ニ關シ更ニ充分ナル規定ヲ設クヘシトスルノ叡慮ノ存スルヲ知ル者ナリ又此ノ臣民ハ前記法律ニ於ケル限定ノ範圍ヲ出テヽ別ニ據ルヘキ規定ヲ見サル場合ニ於テ王位ニ對シ虛僞ノ權利ヲ主張スル者ヲ生シ爲メニ王位繼承ノコトニ付キ疑念爭議ヲ來スコトアルヲ防キ又豫メ此ノ繼承ノコトヲ確定シ置キテ以テ陛下ノ臣民カ事ニ臨ミ安全ニ依賴シ自ラ保護スルヲ得ヘキ方法ヲ求ムルニ備フルハ此ノ國ノ平和安固ノ爲メニ必要ニシテ缺クヘカラサルコトナリト思惟ス是等ノ故ヲ以テ「プロテスタント」派ノ王位繼承ニ付キ更ニ進ムテ規定スル所アラムコトヲ欲シ陛下ノ最モ忠誠ナル臣民タル僧俗貴族及庶民ハ集同シタル現議會ニ於テ陛下ニ奏請スルニ至尊陛下ハ集同シタル現議會ニ於ケル僧俗貴族及庶民ノ勸奬及承諾ヲ經且ツ其ノ權能ニ依リ次ノ如ク規定且ツ宣示スルコトヲ得又實ニ斯ク規定且ツ宣示セラレムコトヲ以テス卽チ故王ゼームス第一世ノ女故ボヘミヤ女王ナル至尊ヱリサベスノ女ニシテハノヴワーノ女主至尊ソフヰヤ女公ハ「プロテスタント」派ノ英蘭、法朗西及愛爾蘭諸國及是等ニ屬スル諸領土ノ王位及王威繼承ノ順序ニ於テ今上陛下及デンマルク女公アンノ後アン女皇ノ肉緣ノ繼嗣及今上陛下ノ肉緣ノ繼嗣ナキ場合ニ次位ニ來ルヘキ者トス卽チ今上陛下及デンマルク女公殿下崩御セラレアン女公及陛下共ニ肉緣ノ繼嗣ナキトキハ英蘭、法朗西及愛爾蘭王國及是レ等ニ屬スル諸領土ノ王位及王政ハ是等國土ノ王家ノ尊嚴及之ニ屬スル榮譽、王權、大權、權力、管轄權及權能ト共ニ至尊ナルソフヰヤ女公及其ノ肉緣ノ繼嗣ノ「プロテスタント」敎徒タル者ニ存在シ殘留シ引續クヘシ僧俗貴族及庶民ハ此ノ國ノ總テノ人民ノ名ニ於テ彼レ等自ラヨリ其ノ子々孫々ニ至ルマテ至恭至誠此ノ事ヲ遵行スヘキコトヲ表明シ且ツ誠實ニ次ノ約束ヲ爲ス卽チ今上陛下アン殿下崩御ノ後各〻其ノ肉緣ノ繼嗣ナキトキハ貴族及庶民ハ此法律中ニ特定包含スル王位ノ限定及繼承ニ從ヒ其ノ力ヲ盡シ生命財產ヲ提ケテ「プロテスタント」敎徒ナルソフヰヤ女公及其ノ肉緣ノ繼嗣ヲ輔翼且ツ保護シ何人タリトモ之ニ對シ何等反對ノ企ヲ爲ス者ヲ防遏スヘシ
- 第二條
- 然レトモ凡ソ此ノ法律ノ限定ニ依リ前記王位ヲ繼承スヘキ者羅馬宗又ハ羅馬寺院ト現ニ一致シ又ハ將來一致スヘキトキ又ハ之ト交通ヲ保チ或ハ法王敎ヲ公信シ將タ羅馬敎徒ト結婚スルトキハ之ヲシテ法律カ斯ノ如キ場合ニ就キ規定且ツ確定スル不能力者タラシムヘシ又凡ソ此ノ法律ニ依リテ此ノ王國ノ王位ヲ受クヘキニ至リ之ヲ繼ク所ノ此ノ國ノ國王及女王ハ各〻其ノ卽位式ニ於テ今上陛下及故女王メリーノ共同ノ御宇第一年ニ制定セラレタル「卽位式宣誓ヲ確定スルノ法律」ト號スル議會ノ法律ニ從ヒ國王及女王ノ爲メニ行フ卽位宣誓式ヲ踐ムヘク又前キニ第一ニ引照記載セル法律中ノ宣示ヲ其ノ規定スル方法及形式ニ於テ行ヒ且約シ且ツ反覆スヘシ卽チ之ニ依リテ玆ニ此ノ規定ヲ設クルナリ
- 第三條
- 今上陛下及デンマルクノアン女公ノ崩御後同女公及今上陛下ノ肉緣ノ繼嗣ナキ場合ニ於テ我レ等ノ宗敎、法律及自由ヲ安保スルニ更ニ進ミタル規定ヲ設クルハ必要ノコトタルヘキニ因リ至尊ナル國王陛下ハ集同シタル議會ニ於ケル僧俗貴族及庶民ノ勸奬承諾ヲ經且ツ其ノ權能ニ依リテ次ノ如ク規定セラルヘシ卽チ
- 何人ニテモ以後此ノ王位ニ登ル者ハ法律ヲ以テ確定スル所ニ從ヒ英蘭寺院ト交通ヲ保ツヘシ
- 又此國土ノ王位及威嚴カ將來英蘭王國ノ出生者ニアラサル者ニ歸スルトキハ此ノ國民ハ議會ノ承諾アルニアラサレハ英蘭王位ニ屬セサル領土ノ防護ノ爲メニスル交戰ニ從事スルノ義務ヲ有セサルヘシ
- 又何人タリトモ將來此ノ王位ニ登ル者ハ議會ノ承諾ナクシテ英蘭、蘇格蘭或ハ愛爾蘭ノ領土ノ外ニ往カサルヘシ
- 又此ノ法律ヲ以テ規定スル一層進ミタル限定ノ效力ヲ生スル時ヨリ後ハ樞密院カ此國ノ法律及慣習ニ依リ適當ニ關與スヘキ事項ニシテ此ノ王國ノ良政ニ關スルモノハ悉ク同院ニ於テ處置セラルヘク而シテ其ノ院ニ於テ行ハレタル決議ハ之ニ付キテ勸奬承諾ヲ與フル樞密院議官ノ名ヲ署スヘシ
- 又前記ノ限定ノ效力ヲ生スル後ハ英蘭、蘇格蘭又ハ愛爾蘭ノ諸王國又ハ是レ等ニ屬スル領土ノ外ニ生レタル者(英國人ナル兩親ヨリ生レタル者ヲ除キテ假令ヒ歸化人タリトモ)ハ樞密院議官タリ又ハ議會兩院中ノ議員タルコトヲ得ス又民事ト軍事トヲ問ハス何等信托ノ官又ハ地位ヲ享ケ又彼レ又ハ彼レノ信托者ハ國王ヨリ土地、借地等ヲ受クルヲ得ス
- 又何人タリトモ國王ヨリ利得アル官又ハ地位ヲ受ケ又ハ國王ヨリ恩金ヲ受クル者ハ庶民院ノ議員トシテ奉仕スルコトヲ得ス
- 又前記ノ限定效力ヲ生スル後ハ裁判官ノ委任ハ其ノ良行ノ續ク間依然トシテ存スヘキモノナリ然レトモ議會兩院ノ奏請アルトキハ之ヲ黜免スルコトヲ得ヘシ
- 又英蘭ノ國璽ヲ以テスル特免ハ議會ニ於ケル庶民院ノ彈効ニ對シ免責ノ理由トナスニ足ラス
- 第四條
- 英國ノ法律ハ英國民ノ生レナカラ保有スル權利ニシテ此ノ國ノ王位ニ上ルヘキ國王及女王ハ此ノ國法ニ從ヒ其ノ國政ヲ掌ルヘク百官有司亦之ニ從ヒテ各〻之ニ奉仕スヘキモノナルヲ以テ僧俗貴族及庶民ハ更ニ進ムテ次ノ事項ヲ請願ス卽チ此ノ國ノ確定シタル宗敎及權利自由ヲ保安スル此ノ國ノ總テノ法律其ノ他現ニ行ハルヽ此ノ國ノ一切ノ法律ハ之ヲ追准且ツ確認シ得ヘク乃チ陛下ハ僧俗貴族及庶民ノ勸奬及承諾ヲ經且ツ其ノ權能ニ依リテ之ヲ追准且ツ確認スヘシ
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