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特定の地域に渡航する者に対して発給する身分証明書に関する政令

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特定の地域に渡航する者に対して発給する身分証明書に関する政令をここに公布する
御名御璽
昭和二十六年十二月一日

政令第三百六十六号

特定の地域に渡航する者に対して発給する身分証明書に関する政令

 内閣は、旅券法(昭和二十六年法律第二百六十七号)附則第七項及び第八項の規定に基き、この政令を制定する。

(目的)

第一條 この政令は、特定の地域に渡航する者に対して発給する身分証明書(以下「身分証明書」という。)の発給、効力その他身分証明書に関し必要な事項を定めることを目的とする。

(定義)

第二條 この政令において、左の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 本邦 本州、北海道、四国及び九州並びにこれらに附属する島で外務省令で定めるものをいう。
二 特定の地域 北緯三十度以南の南西諸島及びその他特に外務大臣が定める地域をいう。
三 公用身分証明書 国の用務のため特定の地域に渡航する者及びその者が渡航の際同伴し、又は渡航後その所在地に呼び寄せる配偶者、子又は使用人に対して発給される身分証明書をいう。
四 一般身分証明書 公用身分証明書以外の身分証明書をいう。
五 各省各庁の長 本邦から公用身分証明書によつて特定の地域に渡航する者(その者が同伴され、又は呼び寄せられる配偶者、子又は使用人である場合には、その者を同伴し、又は呼び寄せる者)が所属する各省各庁(衆議院、参議院、裁判所、会計検査院並びに内閣、総理府、法務府、各省及び経済安定本部をいう、以下同じ。)の長たる衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、会計検査院並びに内閣総理大臣、法務総裁、各省大臣及び経済安定本部総裁をいう。但し、その者が各省各庁のいずれにも所属しない場合には、外務大臣とする。
六 都道府県 本邦から一般身分証明書によつて特定の地域に渡航する者の本籍地又は住所若しくは居所の所在地を管轄する都道府県をいう。
七 都道府県知事 前号に定める都道府県の知事をいう
八 交付官庁 一般身分証明書の交付をした都道府県知事をいう。

(一般身分証明書の発給の申請)

第三條 一般身分証明書の発給を受けようとする者は、左の各号に掲げる書類及び写真を、都道府県に出頭の上都道府県知事を経由して外務大臣に提出して、一般身分証明書の発給を申請しなければならない。但し、急を要し、且つ、都道府県知事又は外務大臣がその必要を認めるときは、直接外務省に出頭の上外務大臣に提出することができる。

一 一般身分証明書発給申請書一通
二 身元申告書二通
三 戸籍謄本又は戸籍抄本(提出の日前六月以内に作成されたものとする。以下同じ。)一通
四 申請者の写真(提出の日前六月以内に作成されたものとする。以下同じ。)一通
五 申請者の写真(提出の日前六月以内に撮影されたライカ形の無帽、且つ、正面上半身もので裏面に氏名を記入したものとする。以下同じ。)二葉
六 健康診断書一通
七 渡航費用の支拂能力を立証する書類一通
八 渡航先の官憲が発給した入域に関する許可証又はこれに関する書類(以下「入域許可証」という。)一通
九 前各号に掲げるものを除く外、渡航先及び渡航目的によつて特に必要とされる書類
十 その他参考となる書類を有する者にあつては、その書類

2 前項第二号、第三号及び第七号に掲げる書類は、外務大臣が特に指定する場合に該当する場合において、都道府県知事(直接外務大臣に提出する場合には、外務大臣)が、第二号及び第三号に掲げる書類についてはその者の身分上の事実、 第七号に掲げる書類についてはその者が渡航費用の支拂能力を有する事実がそれぞれ明らかであると認めるときは、提出することを要しない。

(公用身分証明書の発給の請求)

第四條 公用身分証明書の発給の請求は、各省各庁の長が外務大臣に、左の各号に掲げる書類及び写真を提出してするものとする。

一 公用身分証明書発給請求書一通
二 公用身分証明書の発給を受けようとする者の写真二葉
三 使用人にあつては、戸籍謄本又は戸籍抄本一通
四 健康診断書一通
五 予防接種済証一通
六 入域許可証一通

(身分証明書の発行)

第五條 身分証明書(一般身分証明書及び公用身分証明書をいう。以下同じ。)は、外務大臣が、前二條の規定による発給の申請又は請求に基いて発行する。

(身分証明書の交付)

第六條 前條の規定により発行された一般身分証明書は、都道府県知事が、当該一般身分証明書の発給を申請した者の出頭を求めて当該申請者に交付する。但し、都道府県知事又は外務大臣が認めるときは、外務大臣が都道府県知事の名義で交付することができる。

2 前條の規定による発行された公用身分証明書は、各省各庁の長を通じて外務大臣が、当該公用身分証明書の発給を受ける者に公布する。

(有効期間等の変更等)

第七條 一般身分証明書の発行後本邦を出国する前に左の各号の一に該当する者は、当該一般身分証明書を所持するものにあつては当該一般身分証明書を返納の上(一般身分証明書の発行後まだその交付を受けていない者にあつては、当該一般身分証明書の交付を受けた後これを返納の上)第三條の規定に従つて新たに一般身分証明書の発給を申請しなければならない。

一 当該一般身分証明書の有効期間、渡航目的又は渡航先の変更を受けようとする者
二 有効期間、渡航目的又は渡航先以外の記載事項に変更を生じ、当該一般身分証明書の書換を受けようとする者
三 当該一般身分証明書を紛失し、焼失し、又は著しくき損したことに因り一般身分証明書の再発給を受けようとする者

2 公用身分証明書の有効期間、渡航目的若しくは渡航先の変更、書換又は再発給の場合には、各省各庁の長が、第四條の規定に従つて新たに公用身分証明書の発給を請求するものとする。この場合において、公用身分証明書の交付の後にあつては、当該公用身分証明書を返納の上、請求するものとする。

(数次往復用の身分証明書)

第八條 身分証明書の発給を受けようとする者で、外務大臣が指定する特定の用務により本邦と特定の地域の一又は二以上のものとの間を数次往復する必要があるものは、外務大臣がその必要を認めたときに限り、数次往復用として当該身分証明書の発給を受けることができる。

2 数次往復用として身分証明書の発給を受けようとするときは、その旨及び理由を一般身分証明書発給申請書及び公用身分証明書発給請求書に記載しなければならない。

(署名)

第九條 身分証明書の発給を受けようとする者は、当該身分証明書の交付を受ける際、身分証明書中の所定の場所に署名しなければならない。

(紛失又は焼失の届出)

第十條 身分証明書の発給を受けた者(以下「身分証明書の名義人」という。)は、当該身分証明書を紛失し、又は焼失した場合には、遅滞なく、当該身分証明書の交付官庁又は外務大臣にその旨を届け出なければならない。届出の後においてその身分証明書を発見した場合にも、また、同様とする。

(身分証明書の効力)

第十一條 身分証明書は、左の各号の一に該当する場合には、その効力を失う。

一 身分証明書の名義人がその発行した日から六月以内に本邦を出国しない場合には、その六月を経過したとき。
二 身分証明書に記載された有効期限が経過したとき。
三 身分証明書の名義人(数次往復用の身分証明書の名義人を除く。)が本邦に帰国したとき。
四 第七條の規定に基く新たな身分証明書の発給の申請又は請求に当つて返納された身分証明書にあつては、当該申請又は請求に係る身分証明書が発行されたとき
五 第十二條第一項の規定により返納を命ぜられた身分証明書にあつては、外務大臣が、当該身分証明書が効力を失うべきことを適当と認めたとき。

(返納)

第十二條 外務大臣は、左に掲げる場合において、身分証明書を返納させる必要があると認めるときは、身分証明書の名義人に対して、期限を付けて、身分証明書の返納を命ずることができる。

一 錯誤に基き、又は過失に因り身分証明書の発給をしたもの
二 身分証明書の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合

2 一般身分証明書の発給の申請に当つて返納すべき一般身分証明書は、交付官庁又は外務大臣に返納しなければならない。

3 身分証明書の名義人が現に所持する身分証明書が前條第一号から第五号までの一に該当して効力を失った場合には、一般身分証明書にあつてはその名義人が交付官庁又は外務大臣に、公用身分証明書にあつては各省各庁の長が外務大臣に、遅滞なくその身分証明書を返納しなければならない。

4 公用身分証明書の発給の請求に当つて公用身分証明書を返納すべき場合及び前二項の場合において、返納すべき身分証明書の名義人が保存することを希望するときは、返納を受けた交付官庁又は外務大臣は、その身分証明書に消印をしてこれを当該身分証明書の名義人に還付することができる。

(手数料)

第十三條 一般身分証明書の発給を受けようとする者は、当該一般身分証明書の交付を受ける際、左の区分に従い国に手数料を納付しなければならない。

一 一般身分証明書の発給を受けようとする者   三百円
二 数次往復用の一般身分証明書の発給を受けようとする者  五百円

2 前項の手数料は、身分証明書受領証に収入印紙をはつて納付するものとする。

3 新たに発給を必要とする原因が関係官庁の過失に因つて生じた場合には、前二項の規定にかかわらず、手数料を納付することを要しない。

(申請書等の書式)

第十四條 一般身分証明書発給申請書、身元申告書、公用身分証明書発給請求書及び身分証明書受領証の様式は、外務省令で定める。

1 この政令は、公布の日から施行する。
2 この政令施行前に特定の地域に渡航する者に対して外務大臣が発給した身分証明書でこの政令施行の際限に効力を有するものは、この政令の規定により発給した身分証明書とみなす。

外 務 大臣   吉田   茂
内閣総理大臣   吉田   茂

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