法律事務取扱の取締に関する内閣答弁書(1936年5月26日衆議院)

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質問主意書

法律事務取扱の取締に関する質問主意書
右成規に拠り提出候也
昭和11年5月22日
提出者 枡谷寅吉
法律事務取扱の取締に関する質問主意書
1 昭和11年4月1日より実施せられたる法律事務取扱の取締に関する法律は弁護士の地位の向上を計り国民の法律生活の安固を保証する為に制定せられたるものなるか。本法実施の結果各地の裁判所、執達吏役場、公証人役場等の事件数遽に激減したりと言う果して実なりや。
2 従来国民の要求に依りて法律事務取扱に従事せし全国約10数万人の所謂非弁護士の法律事務取扱を禁止したる為に斯る結果を醸成したるに非ずや。
3 本法実施の結果一般国民は簡易に権利行使を遂行する機関を喪い、徒に権利の上に眠らざるを得ざる結果となり却て悪質なる債務者の不誠意を助長し信義、誠実の醇風美俗を破壊するの虞なきや。
4 僅々6000余人の弁護士のみに全国民の法律事務を取扱わしむると言うが如きは、却て国民の法律生活を破壊するものに非ずや。
5 凡そ立法精神は大衆の利益を擁護し少数の利益を犠牲にするものなるに拘らず、本法の如きは其の反対に少数の弁護士のみを保護せんとして一般国民の利便を無視する社会の実情に即せざるものなれば、之を改正する意思なきや。
6 同法第一条の正当なる業務とは個人の金融業、仲介業等を包含するや。
7 金融業者が債権擁護の目的を以て第一条の行為を為し直接又は間接に利益を得たる場合本法に牴触するや。
8 家屋管理業者が家屋管理の目的を以て第一条の行為を為し利益を得たる場合は本法に牴触するや。
9 不動産売買及金融仲介を業とする者が其の業務の遂行に当り第一条の行為を為し利益を得たる場合は本法に牴触するや。
10 有給の使用人が雇主の命令にて前項の行為を為したる場合本法に牴触するや。
11 弁護士に非ざる者が他人の委任を受け公正証書作成又は不動産登記の行為を繰返し報酬を受け其の結果紛議の発生したる場合本法に牴触するや。
12 弁護士に非ざる者が数人より個々に不動産又は動産の差押、同仮差押、同競売事件等の立会並之に附帯する事項の委任を受け右の行為を為し謝礼を受けたる場合本法に牴触するや。
13 金融業者が債務者の懇請に依り債権回収の便法として債務者又は之に従属する者より債権譲渡を受くることを繰返す行為は本法に牴触するや。
 右及質問候也

答弁書

昭和11年5月26日
内閣総理大臣 広田弘毅
衆議院議長富田幸次郎殿
衆議院議員枡谷寅吉君提出法律事務取扱の取締に関する質問に対し別紙答弁書差進候
 
〔別紙〕衆議院議員枡谷寅吉君提出法律事務取扱の取締に関する質問に対する答弁書
1、2 法律事務取扱の取締に関する法律は本年4月1日より実施せられたるものにして実施後日尚お浅く未だ各地の報告に接せざるにより統計に基きて明確なる回答を為すことを得ざるも、今日まで判明せる若干の地方に於ける状況に徴するも質問に係るか如き事実なきものと思料せらる。
3乃至5 法律事務取扱の取締に関する法律は従来、非弁護士が法律事務を取扱いたるが為に生じたる弊害を芟除し以て国民の法律生活の安固を保障することを目的としたるものにして、敢て弁護士個人の私的利益を保護することを以て其の本旨としたるものには非ず。蓋し弁護士は司法事務を輔翼する重要なる機関にして之をして専ら法律事務を取扱わしむることは国民の法律生活の安固と司法事務の的確なる運用とを期する所以なるを以てなり。本法の実施に因りて国民の良俗を破壊するものなりと云うが如きことは之を是認することを得ず。
6 個人の業務と雖、社会の通念上正当なる業務なりと認むべき場合に於ては第一条但書に所謂正当の業務に該当すれども、本条但書の適用あるが為には正当業務の遂行上之に附随して本文に掲ぐる行為を為すことが必要止むを得ざる場合に限るものと解す。
7乃至13 法第一条に「業とすること」というは収利の目的を以て同種の行為を反覆継続することを謂う。而して質問に係る諸項は具体的事案に甚しく近接するにより、裁判に依ることなく予め之か本法に牴触するか否やを明言することは之を差控へ度し。
 右及答弁候也
昭和11年5月26日
司法大臣 林頼三郎

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  1. 法律命令及官公文書
  2. 新聞紙又ハ雑誌ニ掲載シタル雑報及時事ヲ報道スル記事
  3. 公開セル裁判所、議会並政談集会ニ於テ為シタル演述

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