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明治元訳新約聖書 (大正4年)/馬太傳福音書

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以下[千六百四十七]
新約全書しんやくぜんしょ馬太傳福音書マタイでんふくいんしょ

第一章

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アブラハムなるダビデイエス、キリスト系圖けいず
2 アブラハム、イサクをうみイサク、ヤコブをうみヤコブユダとその兄弟きゃうだいうめ
3 ユダタマルよりパレスザラうみパレスエスロンうみエスロンアラムうみ
4 アラムアミナダブうみアミナダブナアソンうみナアソンサルモンうみ
5 サルモンラハブよりボアズうみボアズルツよりオベデうみオベデエッサイうみ
6 エッサイダビデわううみダビデわうウリヤつまよりソロモンうみ
7 ソロモンレハベアムうみレハベアムアビアうみアビアアサうみ
8 アサヨサパテうみヨサパテヨラムうみヨラムウツズヤうみ
9 ウツズヤヨタムうみヨタムアカズうみアカズヘゼキヤうみ
10 ヘゼキヤマナセうみマナセアモンうみアモンヨシアうめ
11 バビロンうつさるゝときヨシアエホヤキン其兄弟そのきゃうだいうみ
12 バビロンうつされたるのちエホヤキンシアテルうみシアテルゼルバベルうみ
13 ゼルバベルアビウデうみアビウデエリアキンうみエリアキンアゾルうみ
14
アゾルザドクうみザドクアキムうみアキムエリウデうみ
15 エリウデエリアザルうみエリアザルマツタンうみマツタンヤコブうみ
16 ヤコブマリアをっとヨセフうめこのマリアよりキリストとなふイエスうまたまひき
17 其世系そのよつぎかぞふればアブラハムよりダビデいたるまで十四代じふよだいダビデよりバビロンうつさるゝときまで十四代バビロンに徒されしよりキリストまで十四代なり


18 それイエス キリストうまたまへることごと其母そのははマリアヨセフ聘定いいなづけなせるのみにていまともにならざりしとき聖靈せいれいかんじてはらみしが其孕そのはらみたるをあらはれけれバ
19 をっとヨセフ義人ただしきひとなるゆゑこれ
[千六百四十八]はづかしむることをこのまひそか離縁りえんせんとおもへり
20 かく此事このこと思念おもひめぐらせるをりに主の使者つかひかれがゆめあらはれいひけるハダビデヨセフ爾妻なんぢつまマリアめとることをおそるヽなかれそのはらめところの者ハ聖靈せいれいよるなり
21 かれ子をうま其名そのなイエスと名づくべしそはそのたみつみよりすくハんとすればなり
22 すべ此事このこと預言者よげんしゃよりて主のいひたまひしことば
23 処女をとめはらみて子をうま其名そのなインマヌエルとなふべしとあるかなはせんためなり其名をとけバ神われらとともをるとのこころなり
24 ヨセフねむりよりおきて主の使者つかひめいぜしことしたが其妻そのつまめとりたれど
25 冢子うひごうまるゝまでとこともにせざりきその生まれし子をイエスづけたり

第二章

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それイエスヘロデわうときユダヤベテレヘムうまたまひしがそのとき博士はかせたちひがしかたよりエルサレムきた
2 いひけるハユダヤびとわうとてうまたまへもの何処いづくいまわれらひがしかたにて其星そのほしたれバかれはいせんためきたれり
3 ヘロデわうこれをきゝいたまたエルサレムたみもみなしか
4 すべて祭司さいしをさたみ学者がくしゃとをあつめヘロデとひけるハキリストうまるべきところ何処いづこなる
5
こたへけるはユダヤベテレヘムなり蓋預言者そはよげんしゃしるされたることば
6 ユダヤベテレヘムなんぢユダヤ郡中ぐんちゅうにて至小いとちひさきものにあらわがイスラエルたみやしなふべききみそのうちよりいでんと
7 こゝおいヘロデひそか博士等はかせたち召星よびほしあらはれしときこまかとひ
8 彼等かれらベテレヘムつかはさんとしていひけるはゆき嬰兒をさなごの事をつぶさたづねこれにあはわれつげわれまたゆきてはいすべし
9 かれらわうおほせきゝゆけさきひがしかたにてたりしほしかれらにさきだちて嬰兒をさなご居所をるところにいたり其上そのうへとゞまりぬ
10
彼等かれらこのほしいたよろこ
11 すでいえいりければ嬰兒をさなご其母そのははマリアともをるひれふしてをさな
[千六百四十九]はいたからはこひらき黄金わうごん乳香にうかう没薬もつやくなど禮物れいもつさゝげたり
12 博士夢はかせゆめヘロデかへなかれとの黙示つげかうむりてほかみちより其國そのくにかへれり


13 彼等かれらされるのち主の使者つかひヨセフゆめあらはれていひけるハヘロデ嬰兒をさなごもとめころさんとするゆえおき嬰兒をさなご其母そのははとをたづさエジプトのがれまたわがなんぢしめさんときまで彼處かしことゞま
14 ヨセフおき夜嬰兒よるをさなご其母そのははとをたづさエジプトゆき
15 ヘロデしぬるまで其所そことどまれり是主預言者これしゅよげんしゃよりわれわがエジプトより召出よびいだせりと云給いひたまひしにかなはせんためなり
16 こゝおいヘロデ博士はかせあざむかれたるをしりおほいにいかりひとつかはして博士にくはしとひたるときはかベテレヘム其境そのさかひうちなる二歳以下にさいした嬰兒をさなごことゞゝころせり
17 すなは預言者よげんしゃエレミヤのことば
18 なげかなしいたうれふこえラマきこラケルその兒子こどもなげきその兒子のなきによりてなぐさめずといひしにかなへり
19 かくヘロデしにしかバ主の使者つかひヨセフゆめエジプトにてあらはいひけるハ
20 おき嬰児をさなご其母そのははとをたづさへてイスラエルにゆけ嬰兒をさなご生命いのちもとむものすでしね
21 かれおきて嬰兒をさなご其母そのははとをたづさへてイスラエルいたりしが
22 アケラヲちゝヘロデかはりユダヤわうたりときゝければ彼處かしこゆくことをおそ又夢またゆめつげこうむりてガリラヤうちさけ
23 ナザレいへむらいたりておれかれナザレびとよばれんと預言者よげんしゃよりいはれたることばかなはせんためなり

第三章

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當時そのころバプテスマのヨハ子きたりてユダヤ宣傳のべつたへて
2 いひけるは天國てんこくちかづけり悔改くいあらためよ
3 しゅみちそなへその路線みちすぢなおくせよとよべひとこえありと預言者よげんしゃイザヤいひし人なり
4
このヨハ子駱駝らくだ毛衣けごろもをきこしかはおびをつかね蝗蟲いなご野蜜のみつ食物しょくもつとせり
5 斯時このときエルサレムおよユダヤこぞりまたヨルダン四方しほうより人々出ひとゞゝいでヨハ子つき
6 おのつみくいあらはしヨルダ
[千六百五十]にてかれよりバプテスマをさづけられたり
7 バプテスマをうけんとしてパリサイおよびサドカイの人々ひとゞゝおほきたれるを彼等かれらいひけるはまむしすえたがなんぢらにきたらんとするいかりさくべきことをつげしや
8 され悔改くいあらためかなむすべよ
9 爾曹なんぢらわれらが先祖せんぞアブラハムありいふことをおもなか我爾曹われなんぢらつげかみよくこのいしをもアブラハムならしめたまふなり
10 いまをのおかゆゑすべ善果よきみざるきられて投入なげいれらるべし
11 われ爾曹なんぢら悔改くいあらためさせんとてみず爾曹なんじらにバプテスマをさづわれよりのち來者くるものわれまさり能力ちからありわれ其履そのくつとるにもたらかれ聖靈せいれいをもて爾曹なんぢらにバプテスマをさづけ
12 にはもち其禾場そのうちばきよむぎあつめ其倉そのくらにいれからきえざるにてやくべし


13 斯時このときイエスヨハ子にバプテスマをうけんとてガリラヤよりヨルダンきたたま
14 ヨハ子いなみいひけるはわれなんぢよりバプテスマをうくべきものなるに爾反なんぢかえって我にきた
15 イエスこたへけるハしばらゆる如此かくすべてのただしこと我等盡われらつくべきなりここおいヨハ子かれゆるせり
16 イエスバプテスマをうけみづよりあがれるとき天忽てんたちまこれためにひらけかみみたま鴿はとごとくだり其上そのうへきたるを
17 又天またてんよりこえありて我心わがこゝろかなふわが愛子あいしなりといへ

第四章

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さてイエス聖靈せいれいみちびかれ惡魔あくまこころみられんためゆけ
2 四十日四十夜食しじゅうにちしじゅうやくらふことをせずのちうゑたり
3 こころむるものかれにきたりていひけるハなんぢもしかみならバめいじて此石このいしをパンと
4 イエスこたへけるハひとはパンのみにていくるものにあら惟神ただかみくちよりいづすべてことばよるしるされたり
5 こゝおい惡魔あくまかれを聖京きよきみやこたづさへゆき殿みや頂上いただきたゝせていひけるは
6 なんぢもしかみならバおのしたなげそはなんぢがためかみその使者等つかひたちめいぜん彼等手かれらてにてささなんぢあしいしふれざるやうすべ
[千六百五十一]しとしるされたり
7 イエスかれいひけるハしゅたるなんぢかみこゝろむべからずと亦録またしるせり
8 惡魔あくままたかれ最高いとたかやまたづさへゆき世界せかい諸国くにぐにとその榮華えいぐわとをせて
9 なんぢもし俯伏ひれふしわれはいせば此等これらみななんぢにあたふべしといふ
10 イエスかれいひけるハサタン退しりぞしゅたるなんぢかみはい惟之ただこれにのみつかふべしとしるされたり
11 つひ惡魔あくまかれをはな天使てんのつかひたちきたつか


12 イエスヨハ子とらはれしこときゝガリラヤゆき
13 ナザレさりゼブルンナフタリとのさかひなる海邊うみべカペナウンいたこゝおれ
14 これ預言者よげんしゃイザヤことば
15 ゼブルンナフタリ地海ちうみ沿そひたるヨルダンむかふ地異邦人ちいはうじんガリラヤ
16 此等これら幽暗くらきにをるたみおおいなるひかりをみ死地しのち死陰しのかげするものうへひかりいでたりといひしにかなはせんためなり


17 斯時このときよりイエスはじめみち宣傳のべつた天国てんこくちかづけり悔改くいあらためよといひたまへり
18 イエスガリラヤ海邊うみべあゆみペテロと云ふシモンその兄弟きゃうだいアンデレ二人ふたりにて海にあみうてるをたり彼等かれら漁者すなどりびとなり
19 これいひけるハわれしたがわれなんぢらをひとすなどものなさ
20 彼等かれらやがてあみすてイエスしたが
21 こゝよりすゝみけるにまたほかの兄弟二人即きゃうだいふたりすなはゼベダイヤコブ其兄弟そのきゃうだいヨハ子ちゝゼベダイともふねにてあみつくろへるをてこれをよびしに
22 彼等かれらやがふねちゝとをおきイエスしたがへり


23 イエスガリラヤあまねめぐ其會堂そのくわいだうにてをしへをなし天国てんこく福音ふくいん宣傳のべつたへかつたみうちなる諸々もろゝゝやまひもろゝゝのわずらひいやしぬ
24 その聲名きこえあまねくスリヤにひろがりしかバ人々ひとゞゝすべてのわづらへる者萬殊ものさまゞゝやまひまた痛悩いたみなやめものあるいはおにつかれたるもの癲癇てんかん癱瘋ちゅうぶやまひかゝれるものかれ携來つれきたりければこれいやせり
25 ガリラヤデカポリスヱルサレムユダヤヨルダンむかふよりおほくくの人々ひとゞゝきたりしたが
以下[千六百五十二]

第五章

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イエス許多おほくひとやまのぼたまひければ弟子でしたちも其下そのもときたれり
2 イエスくちひらきて彼等かれらをしいひけるは
3 こころまづしものさいはひなり天國てんこくすなは其人そのひとものなれバなり
4 かなしものさいはひなりそのひと安慰なぐさめべければなり
5 柔和にうわなるものさいはひなりそのひとつぐことをべければなり
6 飢渇うゑかわくごとく慕者したふものさいはひなり其人そのひとあくことをべければなり
7 衿恤あわれみあるものさいはひなり其人そのひと衿恤あはれみべければなり
8 こころきよものさいはひなり其人そのひとかみることをべければなり
9 和平やはらぎもとむものさいはひなり其人そのひとかみとなへらるべければなり
10 ただしきことのためせめらるゝものさいはひなり天國てんこくすなは其人そのひとものなればなり
11 わがためにひとなんぢらを詬誶のゝしりまた迫害せめいつはりて各様さまゞゝ惡言あしきことをいはん其時そのとき爾曹福なんぢらさいはひなり
12 よろこたのしてんおい爾曹なんぢら報賞むくいおほければなりそは爾曹なんぢらよりさき預言者よげんしゃをも如此かくせめたりき


13 爾曹なんぢらしほなりしほもし其味そのあぢうしなはゞなにもてもとあぢかへさんのちようなしそとすてられてひとふまるゝ而已のみ
14 爾曹なんぢらひかりなりやまうへたてられたるしろかくるゝことを
15 ともしびともしてますしたにおくものなし燭臺しょくだいおきいえあるすべてのものてらさん
16 かくごと人々ひとゞゝまえ爾曹なんぢらひかりかゞやかせれば人々ひとゞゝなんぢらの善行よきおこなひてんいま爾曹なんぢらちゝあがむべし


17 われ律法おきて預言者よげんしゃすつためきたれりとおもなかれわれきたりこれすつるにあら成就じゃうじゅせんためなり
18 われまこと爾曹なんぢらつげ天地てんちつきざるうち律法おきて一點一畫いってんいっくわくとげつくさずしてすたることなし
19 是故このゆゑひともしいましめ至微いとちいさひとつやぶまたそのごとひとにもをしへなば天国てんこくにおいて至微いとちいさものいはれんおおよこれおこな且人かつひとをしふもの天国てんこくおいおほいなるものいはるべし
20 われなんぢらにつげ学者がくしゃとパリサイ人のただしきよりも爾曹なんぢらただしきことすぐれずばかなら天國てんこくいることあたは


21 いにしへひとつげころすことなかころもの審判さばきあづからんといへることある
[千六百五十三]爾曹なんぢらきゝところなり
22 されわれなんぢらにつげすべゆゑなくして其兄弟そのきゃうだいいかもの審判さばきあづからんまたその兄弟きょうだい愚者おろかものよというもの集議しゅうぎあづからん又狂妄またしれものよといふもの地獄じごくあづかるべし
23 ゆゑなんぢもし禮物そなへものたずさへてだんゆきたるときかしこにて兄弟きゃうだいうらまるゝことあるを憶起おもひいださば
24 その禮物そなへものだんまえおきまづゆきなんぢ兄弟きゃうだいやはらのちきたりてなんぢ禮物そなへものさゝげ
25 なんぢうったふるものとも途間みちにあるときはやくやわらげよおそらくはうったふるものなんぢを審官しらべやくわた審官しらべやくまたなんぢ下役したやくわたつひなんぢひとやいれられん
26 われまことになんぢつげ分釐ぶんりまでもつくのはざればかなら其処そこいづることあたはざるなり


27
いにしへひとつげ姦淫かんいんすることなかれいへることあるは爾曹なんぢらきゝところなり
28 されわれなんぢらにつげおほよをんな色情しきじゃうおこすものは中心こゝろのうちすでに姦淫かんいんしたるなり
29 もしみぎなんぢをつみおとさば抜出ぬきいだしてこれすて蓋五体そはごたいひとつうしなふは全身ぜんしん地獄じごく投入なげいれらるゝよりはまされり
30 もしみぎなんぢをつみおとせばこれきりすて蓋五体そはごたいひとつうしなふは全身ぜんしん地獄じごく投入なげいれらるゝよりはまされり


31 またいへることありおほよひとそのつまいださんとせばこれ離縁状りえんじゃうあたふべしと
32 され我爾曹われなんぢらつげ姦淫かんいんゆゑならで其妻そのつまいだものこれ姦淫かんいんなさしむるなり又出またいだされたるをんなめともの姦淫かんいんおこなふなり


33 またいにしへひとつげいつはりちかひたつることなかれなんぢちかところかならしゅとぐべしといへることある爾曹なんぢらきゝところなり
34 されわれなんぢらにつげさらちかふことなかてんさしちかなか是神これかみ座位みくらゐなればなり
35 してちかふことなかれこれかみ足凳あしだいなればなりヱルサレムさしちかふことなかれこれ大王おほきみ京城みやこなればなり
36 なんぢかしらさしちかなかれそはひとすぢのだにしろくくろくすることあたはざればなり
37 爾曹なんぢらただ是[は]々 否[は]々しかり[は]しかり いな[は]いなといへこれよりすぐるはあくよりいづるなり


38 にてつくのにてつくのへといへるこ
[千六百五十四]とある爾曹なんぢらきゝところなり
39 されわれなんぢらにつげあくてきすることなかひとなんぢのみぎほゝうたまたほかのほゝめぐらしてこれむけ
40 なんぢうったへ裏衣したぎとらんとするものには外服うはぎをもまたとらせよ
41
ひとなんぢに一里いちり公役こうえきしひなばこれとも二里にりゆけ
42 なんぢもとむものあたからんとするものしりぞくなか


43 なんぢとなりいつくしみて其敵そのあだうらむべしといへることある爾曹なんぢらきゝところなり
44 されどわれなんぢらにつげ爾曹なんぢらあだいつくし爾曹なんぢらのろものしゅく爾曹なんぢらにくもの善視よく虐遇迫害なやめせむるものゝため祈禱きたうせよ
45 如此かくするはてんいま爾曹なんぢらちちとならんためなり夫天それてんちち其日そのひ善者よきものにも惡者あしきものにもてらあめただしものにもただしからざる者にもふらたまへり
46 爾曹なんぢらおのれをあいするものあいするはなに報賞むくいかあらん税吏みつぎとりしかせざらん
47 安否あんぴ兄弟きゃうだいにのみとふひとよりなんすぐれたることかあらん税吏みつぎとりしかせざらん
48 是故このゆゑてんいま爾曹なんぢらちち完全まったきがごとく爾曹なんぢら完全まったくすべし


第六章

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なんぢらひとせんため其義そのただしきひとまへなすことをつつしめもししからずばてんいま爾曹なんぢらちちより報賞むくい
2 是故このゆゑ施濟ほどこしなすときひとあがめため會堂くわいだう街衢ちまたにて偽善者ぎぜんしゃごとらっぱおのまへふかしむるなかわれまことに爾曹なんぢらつげ彼等かれらすでにその報賞むくいたり
3 なんぢ施濟ほどこしをするときみぎなすことをひだりしらするなか
4 如此かくするは其施濟そのほどこしかくれんがためなりさらかくれたるにたまふなんぢちち明顯あらはむくいたまふべし


5 なんぢいのとき僞善者ぎぜんしゃごとくするなか彼等かれらひとられんがため會堂くわいだう街衢ちまたすみたちいのることをこのむわれまこと爾曹なんぢらつげ彼等かれらすでにその報賞むくいたり
6 なんぢいのとき嚴密ひそかなるへやにいりとぢ隱微かくれたるにいまなんぢちちいのさら隱微かくれたるにたまふなんぢちち明顯あらはむくいたまふべし
7 爾曹祈なんぢらいのとき異邦人いはうじんごと重複語くりかへしごといふなかれかれ
[千六百五十五]ことばおほきをきかれんとおもへり
8 是故このゆゑ彼等かれらならふことなか爾曹なんぢらちちねがはざるさき其需用物そのなくてはならぬものしりたまへばなり
9 され爾曹なんぢらかくいのるべしてんまします我儕われらちちねがはくは爾名みな尊崇あがめさせたま
10 爾國みくにきたらせたま爾旨みこころてんなるごとくにもなさたま
11 我儕われら日用にちようかて今日けふあたへたまへ
12 我儕われら負債おひめある者を我儕がゆるすごとく我儕の負債をもゆるしたまえ


13 我儕われら試探こころみあはせずあくより拯出すくいいだし給へくにちからけんさかえかぎりりなくなんぢものなればなりアメン
14 爾曹なんぢらもしひとつみゆるさばてんまします爾曹なんぢらちちまたなんぢらをゆるたまはん
15 されどもしひとつみゆるさずは爾曹なんぢらちち爾曹なんぢらつみゆるたまはざるべし


16 なんぢら斷食だんじきするとき僞善者ぎぜんしゃごと憂容うきさまをするなか彼等かれら斷食だんじきひとみせため顔色かほいろそこなわれまことに爾曹なんぢらつげ彼等かれらすで其報賞そのむくいたり
17 なんぢ斷食だんじきするときかしらあぶらをぬりかほあら
18 如此かくするはなんぢ斷食人だんじきひとみえずして隱微かくれたるにいまなんぢちちあらはれんがためなりされ隱微かくれたるにたまふなんぢちち明顯あらはむくいたまふべし


19 しみくひさびくさりぬすびとうがちてぬすところたからたくはふることなか
20 しみくひさびくさり盗穿ぬすびとうがちぬすまざるところてんたからたくはふべし
21 そはなんぢらのたからあるところにこころまたあるべけれバなり


22 ひかりなりもしなんぢの目瞭めあきらかならバ全身ぜんしん亦明またあきらかなるべし
23 もしなんぢの目眊めあしからバ全身暗ぜんしんくらかるべし是故このゆえなんぢうちひかりもしくらからバ其暗そのくらきこと如何いかおほいならず
24 ひと二人ふたりしゅつかふることあたはそはこれをにくみかれをいつくしこれしたしかれうとむべけバなりなんぢらかみたから兼事かねつかふることあたはず
25 是故このゆゑわれなんぢらにつげ生命いのちためなにくらなにのみまた身體からだためなにんと憂慮おもひわづらふことなか生命いのちかてよりまさ身體からだころもよりもまされるものならず
26 天空そらとりまくことなくかることをくらたくはふることなししかるに爾曹なんぢらてん
[千六百五十六]のちちこれやしなたまへり爾曹之なんぢらこれよりもおほいすぐるゝものならず
27 爾曹なんぢらのうちたれよくおもひわづらひて其生命そのいのち寸陰すんいん延得のべえんや
28 また何故なにゆえころものことをおもひわづらうふや百合花ゆり如何いかにしてそだつかをおもつとめつむがざるなり
29 われ爾曹なんぢらつげソロモン榮華えいぐわきはみときだにもその其裝そのよそをひこのはなひとつしかざりき
30 かみ今日野けふのあり明日爐あすろ投入なげいれらるゝくさをも如此かくよそはせたまへバまし爾曹なんぢらをや嗚呼信仰あゝしんかううすきもの
31 されなにくらなにのみなにをんとておもひわづらふなか
32 これみな異邦人いはうじんもとむるものなり爾曹なんぢらてんちちすべ此等これらのものゝ必需なくてならぬことをしりたまへり
33 爾曹なんぢらまづかみくに其義そのたゞしきとをもとめさら此等これらのものハみななんぢらにくはへらるべし
34 是故このゆゑ明日あすのことを憂慮おもひわづらふなかれ明日あす明日あすのことをおもひわづらへ一日いちにち苦勞くろう一日いちにちにてたれ


第七章

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ひとすることなかおそらくハ爾曹なんぢら亦議またぎされん
2 爾曹なんぢらひとするごとおのれせらるべし爾曹なんぢらひとはかるごとくおのれはからるべし
3 なんぢ兄弟きゃうだいにある物屑ちりおのにある梁木うつばりしらざるハなんぞや
4 おのれにある梁木うつばりのあるに如何いか兄弟きゃうだいむかひなんぢにある物屑ちりわれとらせよといふことをんや
5 僞善者ぎぜんしゃまづおのれのより梁木うつばりをとれさら兄弟きゃうだいより物屑ちり取得とりうるやうあきらかにみゆべし
6 いぬ聖物きよきものあたふるなかれまたぶたまへ爾曹なんぢら眞珠しんじゅ投與なげあたふなかおそらくハあしにてこれふみふりかへりて爾曹なんぢらかみやぶらん
7 もとめさらあたへられたづねさらバあひもんたゝけさらひらかるゝことを
8 そはすべてもとむものハえたづぬものハあひもんたゝものひらかるべければなり
9 爾曹なんぢらのうちたれ其子そのこパンをもとめんにいしあたへんや
10 またうをもとめんにへびあたへんや
11 され爾曹惡なんぢらあしものながら善賜よきたまもの其子そのこあたふるをしるましててんいま爾曹なんぢらちちもとむもの善物よきものあたへざらん
12 是故このゆゑ
[千六百五十七]にすべひとられんとおもふことハ爾曹なんぢらまたひとにもそのごとく是律法これおきて預言者よげんしゃなるなり


13 せまもんよりれよ沈淪ほろびいたみちひろくそのもんおほいなりこれよりるものおほ
14 いのちいたみちせまくそのもんちひさ其路そのみちうるものまれなり


15 いつはり預言者よげんしゃつゝしめ彼等かれら綿羊めんやう姿すがたにて爾曹なんぢらきたれどもうち殘狼あらきおほかみなり
16 これそのよりしるべしたれ荊棘いばらより葡萄ぶだうをとり蒺蔾あざみより無花果いちじくとることをせん
17 すべ善樹よきき善果よきみむす悪樹あしきき悪果あしきみむすべり
18 善樹よきき悪果あしきみむすバず悪樹あしきき善果よきみむすぶことあたはざるなり
19 おほよ善果よきみむすばざるきられて投入なげいれらる
20 是故このゆゑ其果そのみよりこれしるべし


21 われよびしゅしゅよといふものことゞゝ天國てんこくいるあらたゞこれに入者いるもの我天わがてんいまちちむねしたがもののみなり
22 其日そのひわれにかたりしゅしゅしゅよりてをしへしゅよりおにをおひしゅよりおほ異能ことなるわざなししにあらずやといふものおほからん
23 其時そのときかれらにつげわれかつ爾曹なんぢらしらあくをなすものわれ離去はなれされいは
24 是故このゆゑすべてわがこのことばきゝおこなものいはうへいへたてたる智人かしこきひとたとえん
25 あめふり大水おほみづいでかぜふきて其家そのいへうてどもたふるることなし是磐これいは基礎いしずゑなしたればなり
26 すべわがこのことばきゝおこなはざるものすなうへいへたてたるおろかなるひとたとへん
27 あめふり大水おほみづいでかぜふきて其家そのいへうてついにはたふれてその傾覆大たふれおほいなり
28 イエスこれらのこと語竟かたりはてたまへるときあつまりたる人々ひとゞゝそのおしへおどろきあへり
29 そハ學者がくしゃごとくならず權威けんゐもてものごとおしへたまへバなり

第八章

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イエスやまくだりしときおほく人々ひとゞゝこれにしたがへり
2 癩病らいびょうものきたりはいしていひけるハしゅもしこころかなふときハ われきよくなしべし
3 イエスのべかれにつけ我旨わがこころかなへりきよくなれといひけれバ癩病らいびょうたゞちにきよまれり
4 イエスかれいひけるはつつしみひとつぐるなかれただゆきておのれ祭司さいしかつモーセが
[千六百五十八] めいぜし禮物そなへものさゝげ彼等かれら證據しょうこをせよ
5 イエスカペナウンいりしとき百夫ひゃくにんかしらきたりねがふいひけるは
6 しゅ我僕癱瘋わがしもべちゅうぶをやみいへふしゐてはなはなやめり
7 イエスいひけるハわれゆきてこれいやすべし
8 百夫ひゃくにんかしらこたへけるハしゅわれなんぢを屋下やねのした入奉いれまつるハおそおほ唯一言ただひとこといだたまハゞ我僕わがしもべいえ
9 そはわれひと權威けんいしたにあるものなるに我下わがした亦兵卒またへいそつありてこれゆけいへばゆきかれきたれといへきた我僕わがしもべこれなせいへすなはなすゆゑなり
10 イエスこれをきゝあやししたがへる人々ひとゞゝいひけるハわれまことに爾曹なんぢらつげイスラエルうちにだにいまかゝ篤信あつきしんあはざるなり
11 われ爾曹なんぢらつげおほく人々東ひとゞゝひがしより西にしよりきた[り:落植字?]アブラハムイサクヤコブとも天国てんこく
12 くに諸子こどもそと幽暗くらき逐出おいいだされ其処そこにて哀哭切齒かなしみはがみすることらん
13 イエス百人ひゃくにんかしらゆけなんぢが信仰しんかうごとなんぢなるべしといひたまへる其時そのときしもべいえたり


14 イエスペテロいへいりその岳母しうとめねつわづらふしゐたるを
15 そのさはりければすなはねつされりをんなおきて彼等かれらつか
16 日暮ひくれたるとき人々鬼ひとゞゝおにつかれたるものおほ携來つれきたりければイエスことばにておに逐出おひいだやまひあるものことゞゝいやせり
17 預言者よげんしゃイザヤよりみづか我儕われらわづらひうけわれらのやまひおふいひたまひしにかなはせんがためなり


18 さてイエスおほく人々ひとゞゝおのれめぐれるを弟子でしめいむかふきしゆかんとしたまひしに
19 ある學者がくしゃきたりていひけるが何処いづこ往給ゆきたまふとも我從われしたがはん
20 イエスこれいひけるはきつねあなあり天空そらとりありされひとまくらするところなし
21 また弟子でし一人ひとりいひけるハしゅまづゆきてちゝはうむることをわれゆる
22 イエスいひけるはわれしたがしにたるもの其死そのしにものはうむらせよ


23 イエスふねのりければ弟子等でしらこれしたが
24 このときおほいなる颶風はやておこりてふねおおふばかりなるなみたちしにイエスいねたり
25 弟子等でしたちこれにちかづきておこいひ
[千六百五十九]けるハしゅすくいたまへ我儕亡われらほろびんとす
26 イエスかれらいひけるは信仰しんかううすきものよなんぞおそるるやつひおきかぜうみとをいましめければおほい平息おだやかになりぬ
27 人々奇ひとゞゝあやしみいひけるは如何いかなるひとかぜうみこれしたがひたり


28 イエスむかふきしなるガダラびといたれるときおにつかれたる二人ふたりのものはかよりいでかれむかたけきことはなはだしくして其途そのみちひとすぐるをあたハざりしほどなり
29 かれら呼叫さけびいひけるはかみイエス我儕われらなんぢとなんかゝはりあらんいまだときいたらざるに我儕われらせめんとて此處こゝきたるか
30 はるかはなれてぶたおほくのむれしょくけれバ
31 おにイエスねがひいひけるはもしわれらを逐出おひいださんとならバぶたむれいることをゆる
32 彼等かれらゆけいひければおにいでゝぶたむれいりしにすべてのむれ山坡さかよりかけうみにいりみづにたり
33 牧者かふものどもむら逃去にげゆき此事このことおにつかれたりしもののことをつげけれバ
34 イエスあはんとてむら者擧ものこぞりいできたりかれ此境このさかひいでんことをねがへり


第九章

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イエスふねのりわたりて故邑ふるさといたりけれバ
2 癱瘋ちゅうぶにてとこふしたるもの人々舁來ひとゞゝかききたれりイエス彼等かれらしんずるを癱瘋ちゅうぶものいひけるハ心安こゝろやすかれなんぢ罪赦つみゆるされたり
3 ある學者がくしゃたちこころうちいひけるハ此人このひと褻瀆けがすこといへ
4 イエスそのおもひしりいひけるハ爾曹なんぢらいかなれバこころあくおもふ
5 なんぢ罪赦つみゆるされたりといふおきあゆめといふいづれやす
6 それひとにてつみゆるちからあることを爾曹なんぢらしらせんとてつひ癱瘋ちゅうぶものおきとこをとりいへかへれといひけれバ
7 おき其家そのいへかへりぬ
8 人々ひとゞゝこれをあやしかくごとちからひとたまひかみあがめたり


9 イエスこゝより進往すゝみゆきマタイなづくるひと税關やくしょるけるをわれしたがへといひければたちしたがへり
10 イエスかれいへしょくするとき税吏罪みつぎとりつみあるひとおほくきたりイエスおよびその弟子でしともしけれバ
11 パリサイの人之ひとこれ其弟そので
[千六百六十]いひけるは爾曹なんぢら何故税吏なにゆえみつぎとりつみあるひとともしょくする
12 イエスきゝ彼等かれらいひけるは康強すこやかなるもの醫者いしゃたすけもとめ唯病たゞやまいあるものこれをもとむ
13 われ衿恤あわれみこのみ祭祀まつりこのまずといふ如何いかなるこころゆきまなぶべしそれわがきたるは義人ただしきひとまねくためにあらつみあるひとまねきて悔改くいあらためさせんがためなり


14 其時そのときヨハ子弟子でしイエスきたりていひけるは我儕われらとパリサイのひとはしばゝゞ断食だんじきするに弟子でし斷食だんじきせざるは何故なにゆえ
15 イエス彼等かれらいひけるは新郎はなむこともだちその新郎はなむこともをるうちはかなしむことをんや將來新郎のちはなむこをひきとらるゝきたらん其時そのときには斷食だんじきすべきなり
16 あたらしぬのふるころもつくろものハあらじそはつくろふところのものかへってこれをやぶりそのほころもっとはなはだしからん
17 またあたらしさけふる革嚢かはぶくろいるものハあらじもししかせバふくろはりさけさけもれいでゝ其嚢そのふくろ亦壞またすたらんあたらしふくろあたらしさけいれなバふたつながらたもつべし


18 イエス彼等かれら此事このこといへときあるつかさきたりはいしていひけるは我女わがむすめいますでしねきたりかれつけたまはゞいくべし
19 イエスたちかれしたが其弟子そのでしともゆく
20 十二年血漏じふにねんちろうわづらへるをんなうしろにきたり其衣そのころもすそさはれり
21 そはもしころもにだにもさはらバいえんとおもへバなり
22 イエスかへりをんないひけるハをんな心安こゝろやすかれなんぢ信仰しんかうなんぢをいやせりすなはをんなこのときよりいゆ
23 イエスつかさいへいりしにふえふくものおよびおほくひと泣咷なきさはぐ
24 これいひけるハ退しりぞむすめしねるにあらずたゞいねたるのみ人々ひとゞゝイエス晒笑あざわら
25 彼等かれらいだしゝのちいりて其手そのてとりしに女起むすめおきたり
26 この聲名きこえあまねく其地そのちひろがりぬ
27 イエスこゝさるとき二人ふたり瞽者めしひしたがひてよびいひけるハダビデ我儕われらあはれたま
28 イエスいへいりしに瞽者めしひきたりければ彼等かれらいひたまひけるハわれこのこと行得なしうるとしんずるやこたへけるハしゅしか
29 イエス彼等かれらつけ爾曹なんぢらしんずるごと
[千六百六十一]く爾曹なんぢらなるべしといひけれバ
30 其目そのめひらけたりイエスきびしいましめこれいひけるはつゝしみひとしらするなか
31 されども彼等かれらいでてあまね其地そのちイエスひろめたり


32 瞽者めしひいづるとき人々鬼ひとゞゝおにつかれたる喑啞おふしイエス携來つれきたりしに
33 おにおひいだされて喑啞おふしものいへり衆人ひとゞゝあやしみいひけるはイスラエルうちにもいまかゝことみえざりき
34 パリサイひといひけるハ彼鬼かれおにかしらよりおに逐出おひいだせるなり


35 イエスあまね郷邑むらざとめぐりその會堂くわいだうにてをしへをなし天國てんこく福音ふくいん宣傳のべつたたみうちなるすべてやまひすべてのわづらひいやせり
36 牧者かふものなきひつじごと衆人ひとゞゝなやみ又流離またちりぢりになりしゆゑこれあはれみたまふ
37
そのとき弟子等でしたち曰給いひたまひけるは収稼かりいれものおほ工人はたらくものすくな
38 ゆゑ其稼主そのもちぬし工人はたらくもの収稼場かりいればおくらんことをねがふべし

第十章

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さてイエスその十二弟子じふにでし召彼等よびかれらけがれたるおに逐出おひいだまたすべてのやまひすべてのわづらひいやちからたまへり
2 その十二使徒じふにしとごとはじめにはペテロづけたまひしシモンその兄弟きゃうだいアンデレゼベダイヤコブその兄弟きゃうだいヨハ子
3 ピリポバルトロマイトマス税吏みつぎとりマタイアルパイなるヤコブタッダイづくるレッパイ
4 カナンシモンイスカリオテユダこれすなはちイエスわたしゝものなり


5 イエスこの十二じふにつかはさんとしてめいいひけるは異邦いはうみちゆくなかれまたサマリアびとむらいるなかれ
6 ただイスラエルいへまよへるひつじゆけ
7 ゆき天国近てんこくちかきあり宣傳のべつたへ
8 やまひものいや癩病らいびょうきよくしにたるものよみがへらせおに逐出おひいだすことをせよ爾曹價なんぢらあたひなしにうけたれば亦價またあたひなしにほどこすべし
9 爾曹金なんぢらきんまたはぎんまたはぜにたくはおぶなか
10 行嚢二たびぶくろふたつ裏衣履杖したぎくつつゑ亦然またしかりそは工人はたらくもの其食物そのしょくもつるはうべなり
11 おほよ郷邑むらざといたらバ其中そのうち好人よきものたづねいづるまでハ其処そことどま

12
[千六百六十二] ひといへにいたらば其平安そのやすきとへ
13 そのいへもし平安やすきべきものならば爾曹なんぢらねが平安やすき其家そのいへいたらん平安やすきくべからざるものならば爾曹なんぢらねが平安やすき爾曹なんぢらかへるべし
14 もし爾曹なんぢらうけ爾曹なんぢらことばきかざるものあらバそのいへまたは其邑そのむらさるときあしちりはら
15 われまこと爾曹なんぢらつげ審判さばき日到ひいたらばソドムゴモラ此邑このむらよりもかへっやすからん


16 われ爾曹なんぢらつかはすはひつじおほかみなかいるるがごとゆゑへびごとさと鴿はとごと馴良おとなしかれ
17 つゝしみひと戒心こゝろせよ蓋人そはひとなんぢらを集議所しふぎしょわたまたその會堂くわいだうにてむちうつべければなり
18 また わが縁故ゆゑより侯伯つかさおよびわうまへひかるべしこれかれらと異邦人いはうじんあかしをなさんがためなり
19 ひとなんぢらをわたさば如何いかになにかをいはんとおもわづらふなかそのときいふべきこと爾曹なんぢらたまはるべし
20 これなんぢらみづかいふあら爾曹なんぢらちゝみたまそのうちありいふなり
21
兄弟きゃうだい兄弟きゃうだいわたちゝわた両親ふたおやうったかつこれをころさしむべし
22 またなんぢら我名わがなためすべてひとにくまれんされをはりまでしのものすくはるべし
23 このまちにてひとなんぢらをせめなばほかまちのがれわれまことに爾曹なんぢらつげ爾曹なんぢらイスラエル諸邑むらゝゝ廻盡めぐりつくさゞるうちひときたるべし
24
弟子でしよりまさらずしもべあるじまさらざるなり
25 弟子でし其師そのしごとしもべ其主そのあるじごとくならばたりぬべし人主ひとあるじよびベルゼブルいはまし其家そのいへものをや
26 是故このゆゑ彼等かれらおそることなかれそハおほはれてあらはれざるものなくかくれしられざるものなければなり
27 われ幽暗くらきおい爾曹なんぢらつげしことを光明あかるきのべみゝをつけてきゝしことを屋上やのうへ宣播いひひろめ
28 ころしてもたましひころすことあたはざるものおそるゝなかたゞなんぢらたましひからだとを地獄じごくほろぼものおそれよ
29 二羽にはすずめ一銭いっせんにてうるあらずやしかるに爾曹なんぢらちゝゆるしなくば其一羽そのいちはおつることあら
30 爾曹なんぢらかしらまたみなかぞへらる
31 ゆゑおそるゝなか
[千六百六十三] 爾曹なんぢらおほくすずめよりもまされり
32 さらおほよひとまへわれしるいはものわれ亦天またてんいま我父わがちゝまへこれしるいは
33 ひとまへわれしらずといはものわれ亦天またてんいま我父わがちゝまへこれしらずといふべし


34 泰平おだやかいださんため我來われきたれりとおもふなかれ泰平おだやかいださんとにあらやいばいださんためきたれり
35
それわがきたるはひと其父そのちゝそむかせむすめ其母そのはゝそむかせよめ其姑そのしうとめそむかせんがためなり
36 ひとあだ其家そのいへものなるべし
37 われよりも父母ちゝはゝいつくしものわれかなはざるものなりわれよりも子 女むすこむすめいつくしものわれかなはざるものなり
38 その十字架じふじかとりわれしたがハざるものわれかなはざるものなり
39 その生命いのちものこれうしなわがために生命いのちうしなものこれべし
40 爾曹なんぢらうくものわれうくなりまたわれうくものわれつかはしゝものうくるなり
41 預言者よげんしゃなるをもてその預言者よげんしゃうくもの預言者よげんしゃ報賞むくいをうけ義 人たゞしきひとなるをもてその義 人たゞしきひとうくもの義 人たゞしきひと報賞むくいうく
42 わが弟子でしなるをもてちひさ一人ひとりものひやゝかなる水一杯みづいっぱいにてものまするものまこと爾曹なんぢらつげかなら其報賞そのむくいうしなはじ


第十一章

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イエスその十二弟子じふにでし示畢しめしをはりしとき此處こゝをさりみちをしひろめんがため彼等かれら諸邑むらゝゝゆけ
2 さてヨハ子ひとやにてキリストなしわざきゝその弟子でし二人ふたりかれつかはして
3 いはせけるはきたるべきものなんぢなるかまたわれらほかまつべき
4 イエス彼等かれらこたへいひけるは爾曹なんぢらきくところみるところのことヨハ子ゆきつげ
5 瞽者めしひハみ跛者あしなへはあゆみ癩病人らいびょうにんきよまり聾者つんぼハきゝしにたるもの復活いきかへされ貧 者まづしきもの福音ふくいんきかせらる
6 おほよわがためにつまづかざるものさいはひなり


7 彼等かれらかへれるのちイエスヨハ子こと人々ひとゞゝいひけるハ爾曹何なんぢらなにんとていでしやかぜうごかさるゝあしなる
8 さら爾曹何なんぢらなにんとていでしや美 服やはらかきころもたるもの王宮わうのいへあり
9 さらなにんとて
[千六百六十四] いでしや預言者よげんしゃなるかしかりわれ爾曹なんぢらつげかれ預言者よげんしゃよりも卓越すぐれたるものなり
10 それなんぢにさきだちてみちそなふ使者つかひわれなんぢのまへおくらんとしるされたるハすなはこれなり
11まこと爾曹なんぢらつげをんなうみたるものうちいまだバプテスマのヨハ子よりおほいなるものおこらざりきされ天國てんこく最小いとちひさものかれよりハおほいなるなり
12 バプテスマのヨハ子ときよりいまいたるまで人々ひとゞゝはげみ天國てんこくとらんとすはげみたるものこれとれ
13 それすべて預言者よげんしゃ律法おきて預言よげんしたるハヨハ子ときまでなれバなり
14 もしなんぢら我言わがことばうくることをこのまバきたるべきエリヤこれなり
15 みゝありてきこゆるものきくべし


16 われこのなにたとへんや童子街わらべちまた其侶そのともよび
17 われらふえふけども爾曹なんぢらをどらずかなしみをすれども爾曹胸なんぢらむねうたずといふたり
18 そはヨハ子きたりくらふことのむことをざればおにつかれたるものなりと人々言ひとゞゝいへ
19
ひときたりてくらふことをしのむことをれバ又食またしょくたしなさけこの人税吏罪ひとみつぎとりつみあるものともなりといふされども智慧ちゑ智慧ちゑたゞしらるゝなり


20 厥時そのときイエスおほく異 能ことなるわざなしたまひたる諸邑むらゝゝ悔改くいあらためざるによりいましめいひけるハ
21 あゝわざはひなるかなコラジン噫禍あゝわざはひなるかなベテサイダ爾曹なんぢらうちなし異能ことなるわざもしツロシドンなししならバ彼等かれらはやあさをきはひかむりて悔改くいあらためしなるべし
22 われ爾曹なんぢらつげ審判さばきにはツロシドン刑罰けいばつ爾曹なんぢらよりもかへっやすからん
23 すでてんにまであげられしカペナウン又陰府またよみおとさるべしそはなんぢになし異 能ことなるわざもしソドムなししならバ今日けふまでも尚保存なほたもちしならん
24 われなんぢにつげ審判さばきソドムなんぢよりもかへっやすかるべし


25 そのときイエスこたへいひけるハ天地てんちしゅなるちゝ此事このこと智者かしこきもの達者さときものかくして赤子をさなごあらはしたまふをしゃ
26 ちゝしかりそれかくごとき聖旨みこゝろかなへるなり
27 ちゝわれ萬物ばんぶつあたへたまへりちゝ
[千六百六十五] ほかしるものなくまたおよびあらはところほかちゝ識者しるものなし


28 すべつかれたるものまたおもきおへものわれなんぢらをやすません
29 われ心柔和こゝろにうわにして謙遜者へりくだるものなれバ我軛わがくびきおひわれならへなんぢらこゝろ平安やすきべし
30 そはわがくびきやすくわがかろけれバなり


第十二章

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當時そのときイエス安息日あんそくにちむぎはたけすぎしが其弟子等飢そのでしたちうゑ摘食つみくひはじめたり
2 パリサイのひとこれをイエスいひけるはなんぢ弟子でし安息日あんそくにちまじきことなせ
3 これこたへけるはダビデおよびともありものうゑしときなしこといまよまざる
4 すなはかみ殿みやいり祭司さいしほかおのれおよびともにおるものくらふまじきそなへのパンをくらへり
5 また安息日あんそくにち祭司さいし殿みやうちにて安息日あんそくにちをかせどもつみなきこと律法おきておいよまざる
6 われ爾曹なんぢらつげ殿みやよりおほいなるものこゝあり
7 われ衿恤あはれみこのみ祭祀まつりこのまずとは如何いかなることかこれしらつみなきものつみせざるべし
8 それひと安息日あんそくにちしゅたるなり


9 こゝさり彼等かれら會堂くわいだういりしに
10 一手かたてなへたるひとありければ彼等かれらイエスうったへんとてこれとひけるは安息日あんそくにちにハいやすことをなすべき
11 彼等かれらいひけるは爾曹なんぢらうちひとつひつじもてものあらんにもしその羊安息日ひつじあんそくにちあなおちいらバこれ挈上とりあげざる
12 ひとひつじよりすぐること幾何いかばかりぞやされ安息日あんそくにちぜんなすよし
13 つひにそのひとなんぢのべよといひけれバのばせりすなはほかごといゆ
14 パリサイのひといでゝイエスころさんとはかれり
15 イエスこれしりこゝさりしにおほく人々ひとゞゝこれにしたがすべ疾病やまひあるものをみないや
16 われひとあらはすことなかれといましめたり
17 これ預言者よげんしゃイザヤいひことば
18 えらび我僕わがしもべすなはち我心わがこゝろかなひたるいつくしものわれこれ我靈わがみたまあたへん彼異邦人かれいはうじん審判さばきしめすべし
19 かれきそふことなくさけぶことなし人街ひとちまたおい其聲そのこゑきくことなし
20 審判さばきをしてかち
[千六百六十六] げしむるまではいためあしをることなくけぶれるあさけすことなし
21 異邦人いはうじんまたそのよるべしとあるかなはせんためなり


22 こゝおにつかれたるめしひおふしいやしてものいみゆるやうにせり
23 衆人ひとゞゝみなあやしみていひけるハダビデにハあらざる
24 パリサイのひときゝていひけるハ此人このひとおにかしらベルゼブルつかふにあらざれバおに逐出おひいだすことなし
25 イエスそのこゝろしり彼等かれらいひけるハすべ相爭あいあらそくにほろすべ相爭あいあらそむらいへたつべからず
26 サタンもしサタン逐出おひいださバみづか相爭あいあらそふなりさら其國そのくにいかでたゝんや
27 もしわれベルゼブルより惡鬼あくき逐出おひいださバ爾曹なんぢら子弟こどもたれよりこれ逐出おひいだすやそれかれらハ爾曹なんぢら裁判人さいばんにんとなるべし
28 もしわれかみみたまよりおに逐出おひいだしゝならバかみくにハもハや爾曹なんぢらいたれり
29 また勇士つよきものをまづしばらざれバ如何いか其家そのいへいりその家具かぐうばふことをんやしばりのち其家そのいへうばふべし
30 われともならざるものわれそむわれともあつめざるものちらすなり
31 是故このゆゑ爾曹なんぢらつげ人々ひとゞゝすべをかところつみかみけがすことはゆるされんされ人々ひとゞゝ聖靈せいれいけがすことハゆるさるべからず
32 ことばひとそむものゆるさるべしされことばをもて聖靈せいれいそむもの今世このよおいても亦 来 世またのちのよおいてもゆるさるべからず
33 あるひをもよしとし其果そのみをもよしとせよあるひをもあしゝとし其果そのみをもあしゝとせよ夫樹それき其果そのみよりしらるゝなり
34 あゝまむしすゑ爾曹惡なんぢらあくにしていかぜんいふことをんや夫心それこゝろみつるよりくちいはるゝものなれバなり
35 善人よきひとこゝろ善庫よきくらよりよきものをいだ惡人あしきひとハその惡庫あしきくらよりあしきものをいだせり
36 われ爾曹なんぢらつげすべひとのいふところ虚 言むなしきことば審判さばきこれうったへざるを
37 それなんぢそのいふところのことばよりとせられ又其またそのいふことばよりつみありとせらるゝなり


38 此時このときある學者がくしゃとパリサイの人答ひとこたへいひけるハ休徴しるしをな
[千六百六十七] して我儕われらせんことをなんぢねが
39 こたへ彼等かれらいひけるハ奸惡かんあくなる休徴しるしもとむされど預言者よげんしゃヨナ休徴しるしほかこれ休徴しるしあたへられじ
40 それヨナ三日三夜魚みっかみようをはらなかありごとひと三日三夜地みっかみよちうちあるべし
41 ニネベ人審判ひとさばきともたちいまつみさだめん彼等かれらヨナをしへより悔改くいあらためたりそれヨナよりおほいなるものこゝにあり
42 みなみ女王にょわうさバきのともたちいまつみさだめんかれはてよりソロモン智慧ちゑきかんとてきたれりそれソロモンよりおほいなるものこゝにあり
43 惡鬼人あくきひとよりいでかわきたるところめぐ安息やすきもとむれどもずしていひけるハ
44 いへかへらんすできたりしに空虚くうきょにして掃 浄はきゝよまかざれるを
45 つひゆきおのれよりもあしなゝつ惡鬼あくきたづさともいりこゝすまへバそのひとのち患狀ありさままへよりもさらあしかるべしこのあしきもまたかくごとくならん
46 イエス人々ひとゞゝかたりをるときそのはゝ兄弟きゃうだいかれにものいハんとてそとたちけれバ
47 或人あるひとイエスいひけるハなんぢはゝ兄弟きゃうだいかれにものいハんとてそとたて
48 イエスつげものこたへいひけるハ我母わがはゝたれ我兄弟わがきゃうだいたれぞや
49 のべその弟子でしさしいひけるハこれわがはゝわが兄弟きゃうだいなり
50 そはすべててんいまちゝむねおこなものこれわが兄弟きゃうだいわが姊妹しまいわがはゝなれバなり


第十三章

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當日このひイエスいえいで海邊うみべせしに
2 おほく人々彼ひとゞゝかれ集來あつまりきたりけれバイエスふねのりすべて人々ひとゞゝきしたて
3 イエスたとへもて多端さまゞゝこと人々ひとゞゝかたりたねまく者播ものまきしが
4 まけるときみちほとりおちたねあり空中そらとりきたりてついばつくせり
5 またうすき磽地いしぢおちたねありたゞち萌出はえいでたれど
6 いでしときやかれしかバなきがゆゑかれたり
7 またいばらなかおちたねありいばらそだちてこれふさげり
8 また沃壤よきちおちたねありむすべることあるひ百倍ひゃくばいあるひハ六十倍ろくじふばいあるいハさん
[千六百六十八] 十倍じふばいせり
9 みゝありてきこゆるものきくべし
10 弟子等でしたちきたりてかれいひけるハ何故なにゆゑたとえをもて彼等かれらかたりたまふや
11 こたへいひけるハ爾曹なんぢらにハ天國てんこく奥義おくぎしることをあたへたまへど彼等かれらにハあたたまはざれバなり
12 それもてものあたへられてなほあまりあり無有者もたぬものハそのもてものをもとらるゝなり
13 彼等かれらてもききてもきかさとらざるがゆゑ我譬われたとへもて彼等かれらかたれり
14 イザヤ預言よげん爾曹なんぢらきけどもさとらずみれども
15 そはこの民目たみめにて見耳みみゝにて聽心きゝこゝろにてさとあらためてわれいやされんことをおそれそのこゝろにぶくみゝおほとぢたりといひしにかなへり
16 され爾曹なんぢら見爾曹みなんぢらみゝきくゆゑさいはひなり
17 われまこと爾曹なんぢらつげおほく預言者よげんしゃ義人たゞしきひと爾曹なんぢらみるところをんとしたりしがみることを爾曹なんぢらきくところをきかんとしたりしがきくことをざりき
18 ゆゑ爾曹なんぢら播種たねまきたとへきけ
19 天國てんこくをしへきゝさとらざれバ惡鬼あしきものきたりて其心そのこゝろまかれたるたねうば是路これみちほとりまきたるたねなり
20 磽地いしぢまかれたるたね是教これをしへきゝすみやかによろこうくれども
21 おのれなけれバ暫時しばしのみをしへため患難くわんなんあるひハせめらるゝことおこときたちまみちつまづものなり
22 またいばらなかまかれたるたね是教これをしへきけども此世このよ思慮こゝろづかい貨財たからまどひをしへふさがれてみのらざるものなり
23 沃壤よきちまかれたるたね是教これをしへきゝさとむすぶことあるひ百倍ひゃくばいあるひハ六十倍ろくじふばいあるいハ三十倍さんじゅうばいするものなり


24 またたとへ彼等かれらしめしていひけるハ天國てんこく人畑ひとはたけ美種よきたねまくたり
25 人々ひとゞゝいねたるうち其敵そのあだきたりむぎなか稗子からすむぎまきされ
26 なへはえいでみのりたるとき稗子からすむぎあらはれたり
27 主人あるじしもべきたりていひけるハしゅはたけにハ美種よきたねまかざりしか如何いかにして稗子からすむぎある
28 しもべいひけるハ敵人あだびとこれをなせ僕主人しもべあるじいひけるハしからば我儕われらゆきてこれぬきあつむるハよき
29 いなおそらくハ爾曹なんぢら稗子からすむぎぬきあつめんとてむぎをもともぬくべし
30 收穫かりいれまでふたつながらそだて
[千六百六十九] けわれかりいれのときまづ稗子からすむぎ拔集ぬきあつめやかためこれつかむぎをバくらをさめよと刈者かるものいは


31 またたとへ彼等かれらしめいひけるハ天國てんこく芥種からしだねごとひとこれをとりはたけまけ
32 よろずたねよりちひさけれどもそだちてハほかくさよりおほいにして天空そらとりきたり其枝そのえだ宿やどるほどのとなるなり


33 またたとへ彼等かれらかたりけるハ天國てんこく麪酵ぱんだねごとをんなこれをとり三斗さんとなかかくせバことゞゝ脹發ふくれいだすなり
34 イエスたとえをもてすべ此等これらこと衆人ひとゞゝかたりたまへりたとへにあらざればかたたまハず
35 これ預言者よげんしゃより我譬われたとへまうけくちひらはじめよりかくれたること言出いひいださんといはれたるにかなはせんためなり


36 つひイエス衆人ひとゞゝかへしていへいれ其弟子そのでしきたりていひけるハはたけ稗子からすむぎたとへ我儕われらときたまへ
37 これこたへいひけるハ美種よきたね播者まくものひとなり
38 はたけハこの世界せかいなり美種よきたね是天國これてんこく諸子こどもなり稗子からすむぎ悪魔あくま子類こどもらなり
39 これをまくあだ惡魔あくまなり收獲かりいれをはりなり刈者かるものてん使等つかひたちなり
40 稗子からすむぎあつめやかるごと此世このよをはりおいてもかくごとくなるべし
41 ひとその使者つかひたちをつかはして其國そのくにうちよりすべ躓礙つまづきとなるものまたあくをなすひとあつめ
42 これ投入なげいるべし其處そこにて哀哭切齒かなしみはがみすることあら
43
このとき義 人たゞしきひと其父そのちゝくにおいごとかがやかんみゝありてきこゆるものきくべし


44 また天國てんこくはたけかくれたるたからごとひとみいださばこれかくよろこかへ其所有そのもちものことゞゝうりてそのはたけかふなり


45 また天國てんこく好眞珠よきしんじゅもとめんとする商人あきうどごと
46 ひとつあたひたかき眞珠しんじゅ見出みいださバその所有もちものことゞゝうりこれかふなり


47 また天國てんこくうみうち各様さまゞゝうををとるあみごと
48 すでみつれバきしひきあげすわりてそのよきものをうつはにいれあしきものをすつるなり
49 をはりおいてもかくごとくならんてん使 等つかひたちいでゝ義 者たゞしきものうちより惡 者あしきものとりわけ
50 これ投入なげいるべし其處そこにて哀哭切齒かなしみはがみすることらん


51 イエス彼等かれら
[千六百七十] いひけるハ此事このことをみなさとりしやかれいひけるハしゅしかり
52 イエス彼等かれらいひけるはされ天國てんこくについてをしへられたる學者がくしゃあたらしきものふるものとを其庫そのくらよりいだいへあるじごと


53 イエスこのたとへ言畢いひをはりこゝさり
54 その故土ふるさとにいたり會堂くわいだうにてをしへしに人々奇ひとゞゝあやしいひけるハ此人このひと智慧ちゑふしぎなるわざ何處いづこよりきたるや
55 これ木匠たくみにあらずや其母そのはゝマリアその兄弟きゃうだいヤコブシモンユダあらずや
56 その妹 等いもうとたちハみな我儕われらともあるあらずやしかるに此人このひとすべ此等これらこと何處いづこよりきたりしや
57
つひいとふこれすつイエス彼等かれらいひけるハ預言者よげんしゃ其故土そのふるさとそのいへほかおいたふとまれざることなし
58 彼等かれらしんずることなきによりおほくふしぎなるわざこゝ行給なしたまハざりき


第十四章

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そのころ分封わけもちきみヘロデイエス聲名うはさきゝ
2 そのしもべいひけるハこれバプテスマのヨハ子なり彼死かれしよりよみがへりたりゆゑふしぎなるわざおこなふなり
3 さきヘロデその兄弟きゃうだいピリポつまヘロデヤことよりヨハ子とらしばりひとやいれたり
4 ヨハ子ヘロデ此婦このをんなめとるハよろしからずといひしによる
5 かれヨハ子ころさんとおもへたみこれを預言者よげんしゃとするにより彼等かれらおそれたりしが
6 ヘロデ誕生たんじゃういはへるときヘロデヤむすめその座上ざじゃうにてまいをなしヘロデよろこバせけれバ
7 いかなるものにてももとめまかせあたへんとヘロデこれちかひたり
8 むすめそのはゝすゝめありしによりバプテスマのヨハ子くびぼんのせこゝたまはれといふ
9 王憂わううれへけれどもすでちかひたるとせきつらなれるものためあたふることをめい
10 すなはひとつかはひとやおいヨハ子くびきら
11 そのくびぼんのせむすめあたへければむすめこれをそのはゝさゝげたり
12 ヨハ子弟子等でしたちきたりてしかばねとりこれをはうむゆきイエスつぐ
13 イエスこれをきゝひとをさけふねのり其處そこさりさびしきところ往給ゆきたまひしが衆人ひとゞゝきゝて歩行かちにてかれしたがへり


14 イエスいでおほく
[千六百七十一] のひとこれあはれ其病そのやめものいやせり
15 くるゝときその弟子でしきたりていひけるハこゝ寂寞さびしきところにしてときもハやおそ諸邑むらゝゝゆきみづかしょくもとめさせんため人々ひとゞゝさらしめよ
16 イエス彼等かれらいひけるハ人々往ひとゞゝゆかずともよしなんぢらこれしょくあたへ
17 こたへけるハ我儕此われらこゝにたゞいつゝのパンとふたつうをあるのみ
18 イエスいひけるハそれこゝ携來もちきた
19 つひ衆人ひとゞゝめいじてくさうへすわらしめいつゝのパンとふたつうををとりてんあふぎしゃしパンをわり弟子之でしこれ衆人ひとゞゝあたへ
20 みなくらひあきそのあまりたるくづひろひしに十二じふにかごみちたり
21 くらひものをんな幼童こどもほかおほよそ五千人ごせんにんなりき


22 やがイエス衆人ひとゞゝかへさんとして其弟子そのでししひふねにのせむかふきしさきわたらしむ
23 かく衆人ひとゞゝかへしけれバ祈禱いのりせんとてひそかやまのぼくれてひとりそこにいませり
24 ふね海中わだなかあり逆風ぎゃくふうためなみたゞよハさる
25 四時よじごろイエスうみうへあゆみこれいたりしに
26 弟子でしそのうみうへあゆめるをおどろ變化へんげものならんといひおそさけびたり
27 イエスやが彼等かれらいひけるハ心安こゝろやすかれわれなりおそるゝなか
28 ペテロこたへいひけるハしゅなんぢならバわれめいみづふみなんぢもといたらしめよ
29 きたれ曰給いひたまひけれバペテロふねよりおりイエスもといたらんとてなみうへあゆみたれど
30 かぜはげしきをおそしずみかゝりけれバしゅわれたすけたまへといふ
31 イエスやがのべこれをとらへいひけるハ信仰しんかううすきものなんうたがふや
32 ともふねのりけれバかぜしづまりぬ
33 ふねをりものちかよりてかれはいいひけるハまことなんぢかみなり


34 つひわたりゲ子サレいたりしかバ
35 其處そのところ人々ひとゞゝイエスしりあまね四方しはうひとつかはすべやまひものたづさきたらしむ
36 たゞそのころもすそさはらんことをイエスねがへりさはりものすなはちみないやされたり

第十五章

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ときエルサレム學者がくしゃとパリサイのひとイエスきたりいひけるハ
2 なんぢ弟子でしいにしへひと
[千六百七十二] 遺傳つたへをかす何故なにゆゑ蓋食そはしょくするとき其手そのてあらはざれバなり
3 こたへ彼等かれらいひけるハ爾曹なんぢらまたなんぢらの遺傳つたへによりてかみいましめをかす何故なにゆゑ
4 それかみいましめてなんぢ父母ちゝはゝうやま又父母またちゝはゝのゝしものころさるべしと宣給のたまへり
5 しかるに爾曹なんぢらいひ人父母ひとちゝはゝむかひなんぢをやしなべきものハ禮物そなへものなりといは
6 その父母ちゝはゝうやまハずともよしとすかく爾曹遺傳なんぢらつたへによりかみいましめむなしくせり
7 僞善者ぎぜんしゃイザヤよくなんぢらについ預言よげん
8 此民このたみくちにてわれちかづくちびるにてわれうやまへども其心そのこゝろわれとほざかり
9 ひといましめをしへとなしていたづらにわれはいすといへ
10 イエス人々ひとゞゝよび彼等かれらいひけるハきゝさと
11 くちるものハひとけがさずくちよりいづるものハ是人これひとけがすなり
12 弟子でしきたりてイエスいひけるハパリサイのひとこのことばきゝ厭棄いとひすつるを爾知なんぢしる
13 こたへいひけるハてんちゝうゑざるものハみなぬかるべし
14 彼等かれらすておけ瞽者めしひてびきする瞽者めしひなりもしめしひのもの瞽者めしひてびきせバ二人ふたりともみぞおつべし
15
ペテロイエスこたへいひけるハ此譬このたとへ我儕われらときたまへ
16 イエスいひけるハ爾曹なんぢらいまさとらざる
17
すべくちいるものハはらとほりかはやおつるをいましらざるか
18 くちよりいづるものハこゝろよりいづこれひとけがすものなりされどもあらはずしてくらふハひとけがさず
19 蓋心そはこゝろよりいづところ惡念あくねん凶殺きょうさつ姦淫かんいん苟合こうがう
20 此等これらひとけがすものなりされどもあらはずしてくらふハひとけがさず
21 イエスこゝさりツロシドンゆきけるに
22 其地そのちすめカナンをんないでゝよばハりいひけるハしゅダビデわれあはれたまわがむすめおにつかれていたくるしめり
23 イエス一言ひとことかれこたへざりしかバ其弟子そのでしきたりこふいひけるハ我儕われらあとよりよばハるがゆゑかれさらたま
24 こたへいひけるハイスラエルいへまよへるひつじほかわれつかはされず
25 をんなきたりはいしていひけるハしゅわれたすけたまへ
26 こたへけるハ兒女こどものパンをとりいぬ投與なげあたふるハよろしからず
27
[千六百七十三] をんないひけるハしゅしかりされどもいぬもその主人しゅじんぜんよりおつくづくらふなり
28 つひイエスこたへいひけるハをんななんぢ信仰しんかうおほいなりねがひごとなんぢなるべし此時このときより其女そのむすめいえたり


29 イエスこゝさりガリラヤ海邊うみべにゆきやまのぼりてせり
30 おほく人々ひとゞゝ跛者あしなへ瞽者めしひ瘖者おふし殘缺者かたはおよび各様さまゞゝ疾病やまひあるものともなひきたりイエス足下あしもとおきけれバすなはこれいやしぬ
31 こゝおい瘖者おふしハものいひ殘疾かたはハいえ跛者あしなへハあゆみ瞽者めしひみえたるを人々ひとゞゝあやしイスラエルかみあがめたり


32 イエスその弟子でしよびいひけるハわれこの衆人ひとゞゝあはれ彼等かれらわれとともをること三日みっかにしてくらふものなしうゑさせてさらしむることをこのまおそらくハ途間みちにてなやま
33 その弟子でしかれにいひけるハにてこのおほくのひとあかするほどのパンを何處いづこよりんや
34 イエス彼等かれらいひけるハパン幾何いくつあるやこたへけるハなゝつ些少すこしうをあり
35 イエス人々ひとゞゝさらしめふねのりマグダラさかいいたれり


第十六章

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パリサイとサドカイのひときたりてイエスこゝろみんとててん休徴しるし我儕われらせよといひけれバ
2 彼等かれらこたへけるハ爾曹暮なんぢらゆふべにハ夕紅ゆふやけよりはれならんといひ
3 あしたにハ朝紅あさやけまたくもりより今日けふあめならんといふ僞善者ぎぜんしゃそら景色けしきわかつことをしりとき休徴しるしわかあたハざる
4 姦惡かんあくなる休徴しるしもとむるとも預言者よげんしゃヨナ休徴しるしのほか休徴しるしあたへられじつひ彼等かれらはなれてさり


5 その弟子でしむかふのきしいたりしにパンをたづさふることをわすれたり
6 イエス彼等かれらいひけるハ戒心こゝろしてパリサイとサドカイのひと麪酵ぱんだねつゝしめよ
7 弟子でしたがひにろんじていひけるハこれパンをたづさへざりしゆゑならん
8
[千六百七十四] イエスこれをしりいひけるハ信仰しんかううすきものなんたがひにパンをたづさへざりしことをろんずる
9 いまさとらざるか五千人ごせんにんいつゝのパンをあたへしとき幾籃いくかごひろひし
10 また四千人しせんにんなゝつのパンをあたへしとき幾籃いくかごひろひしや爾曹なんぢらこれをおぼえざるか
11 パリサイとサドカイのひと麪酵ぱんだねつゝしめとハパンにつきていへるにあらざるをなんさとらざる
12 こゝおい弟子でしその麪酵ぱんだねにハあらでパリサイとサドカイのひとをしへつゝしめといへるなるをさとれり


13 イエスカイザリヤピリピかたいたりしとき其弟子そのでしとふいひけるハ人々ひとゞゝひとたれいふ
14 彼等曰かれらいひけるハ或人あるひとハバプテスマのヨハ子或人あるひとエリヤ或人あるひとエレミヤまた預言者よげんしゃ一人ひとりなりといへ
15 彼等かれらいひけるハ爾曹なんぢらわれいひたれとする
16 シモンペテロこたへけるハなんぢキリスト活神いけるかみなり
17 イエスこたへかれいひけるハヨナシモンなんぢさいはひなり蓋血肉そはけつにくなんぢにしめせるにあらてんいま吾父わがちゝなり
18 われまたなんぢつげなんぢペテロなり教會けうくわいをこのいはうへたつべし陰府よみもんこれかつべからず
19 またわれ天國てんこくかぎなんぢあたへんなんぢおいつなぐことハてんおいてもつなぎなんぢがおいとくことハてんおいてもとくべし
20 つひ其弟子そのでしいましめけるハわれキリストつぐることなか


21 此時このときよりイエスその弟子でしおのれエルサレムゆき長老祭司としよりさいし長學者等をさがくしゃたちよりおほくくるしみをうけかつころされ第三日みっかめよみがへなどなすべきことしめはじ
22 ペテロイエスひきとめてしゅよからず此事このことなんぢにきたるまじといひけれバ
23 イエス反 顧ふりかへりペテロいひたまひけるハサタン我 後わがうしろ退しりぞなんぢわれつまづものなりそれなんぢらハかみことおもはずひとことおもへり
24 此時このときイエス其弟子そのでしいひけるハもしわれにしたがハんとおもものおのれ棄其十字すてそのじふじおひわれしたが
25 蓋生命そはいのち保全まったうせんとするものこれうしなわがために其生命そのいのちうしなものこれべけ
[千六百七十五] れバなり
26 若人全世界もしひとせかいぢゅううるとも其生命そのいのちうしなハばなんえきあらんまた人何ひとなに其生命そのせいめいかへんや
27 それひとちゝ榮光えいくわうてその使等つかひたちともきたらん其 時 各そのときおのゝゝおこなひよりむくゆべし
28 まこと爾曹なんぢらつげひとそのくにきたるをみるまでハこゝたつもののうちしなざるものあるべし


第十七章

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六日むいかのちイエスペテロヤコブその兄弟きゃうだいヨハ子ともなひとさけ高山たかきやまのぼたまひしが
2 彼等かれらまへにて其容貌そのすがたかハり其面日そのかほひごとかゞや其衣そのころもしろひかれり
3 モーセエリヤあらはれてイエスともかたり
4 ペテロこたへイエスいひけるハしゅ我儕われらこゝにをるよしもし尊旨みこゝろかなハゞ我儕われらみついほりつくらせたまへひとつしゅのためひとつモーセのためひとつエリヤためにせん
5 如此かくいへるときかゞやけるくもかれらをおほ聲雲こゑくもよりいでいひけるハ我旨わがこゝろかなふわが愛子あいしなり爾曹なんぢらこれにきくべし
6 弟子でしこれをきゝおほいにおそれたふふしたり
7 イエスきたりて彼等かれらつけおきよおそるゝなかれといひけれバ
8 其目そのめあげしにたゞイエスのほか一人ひとりをもざりき


9 やまくだときイエス彼等かれらめいじてひとよりよみがへるまでハ爾曹なんぢらことひとつぐべからずといへ
10 その弟子でしとふていひけるハさらエリヤさききたるべしと學者がくしゃいへるハなにぞや
11 イエスこたへいひけるハエリヤきたり萬事ばんじあらたむべし
12 されわれなんぢらにつげエリヤすできたりしにひとこれをしらずたゞこゝろまゝかれあしらへりかくごとひともまた彼等かれらより苦艱くるしみうくべし
13 こゝおい弟子でしバプテスマのヨハ子さしいひたまへるをさとれり


14 彼等かれらおほくのひとをるところにきたりしに或人あるひとイエスもとにきたりひざまづ
15 いひけるハしゅ我子わがこあはれみたまへ癲癇てんかんにて屢 火しばゝゞひたふみづたふはなはくるしめり
16 これなんぢ弟子でし携往つれゆきたれどいやすことをざりき
17 イエスこたへいひけるハ噫信あゝしんなきまがれるなるかなわれ何時いつまでなんぢ
[千七百七十六] ともをらんやわれいつまで爾曹なんぢらしのばんやかれわがもとに携來つれきた
18 つひイエスおにいましたまへバおにいでゝ其子そのここのときよりいえたり
19 そのとき弟子でしひそかにイエスきたいひけるハ我儕われらこれを逐出おひいだすことあたハざりしハ何故なにゆゑ
20 イエス彼等かれらいひけるハ爾曹信なんぢらしんなきがゆゑなりわれまことに爾曹なんぢらつげんもし芥種からしだねごとしんあらバ此山このやま此處こゝより彼處かしこうつれといふともかならうつらんまたなんぢらにあたはざることなかるべし
21 され此類このたぐひ祈禱いのり斷食だんじきあらざれバいづることなし


22 ガリラヤ周流めぐれるときイエス彼等かれらいひけるハひと子人こひとわたされ
23 かつころされて第三みっかよみがへるべし弟子でしこれをきゝはなはかなしめり


24 彼等かれらカペナウンきたれるとき納金をさめきんあつむものどもペテロきたりいひけるハ爾曹なんぢら納金をさめきんいださゞるか
25 しからずといひペテロいへいりしときイエスまづかれいひけるハシモンなんぢ如何いかにおもふや世界せかいわうたちハぜいおよびみつぎたれよりとるおのれよりかほかものよりか
26 ペテロかれいひけるハほかひとよりとるなりイエスかれいひけるハさらかゝはることなし
27 され彼等かれらつまづかせざるため爾海なんぢうみゆきつりたれはじめにつるうをとりてそのくちひらかバ金一きんひとつべしそれとりわれなんぢため彼等かれらをさめ


第十八章

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そのとき弟子でしイエスきたりいひけるハ天國てんこくおいおほいなるものたれぞや
2 イエス嬰兒をさなごよびかれらのなかたて
3 いひけるハわれまことに爾曹なんぢらつげんもしあらたまりて嬰兒をさなごごとくならずバ天國てんこくいることを
4 されおほよそこの嬰兒をさなごごとみづかへりくだものハこれ天國てんこくおいおほいなるものなり
5 またわがためかくごと一人ひとり嬰兒をさなごうくものわれうくるなり
6 されわれしんずるこの小子ちいさきもの一人ひとりつまづかするもの磨石ひきうすをそのくびかけられてうみふかみしづめられんかたなほえきなるべし
7 此世このよわざはひなるかなそハ
[千六百七十七] つまづかすることをすれバなりつまづことかならきたらんされつまづききたらすものわざはひなるかな
8 もしなんぢなんぢのあしおのれをつまづかさバきりこれすて兩手兩足りゃうてりゃうあしありてつきざる投入なげいれられんよりハあしなへまたハ殘缺かたはにていのちいるよきなり
9 もしなんぢおのれをつまづかさバ拔出ぬきいだしてこれすて兩眼りゃうめありて地獄じごく投入なげいれられんよりハ一眼かためにていのちいるよきなり


10 爾曹なんぢらこの小 子ちいさきもの一人ひとりをもつゝしみて輕視あなどるなかれわれなんぢらにつげ彼等かれらてん使者つかひてんにありててんいま我父わがちゝかほつね覿みれバなり
11 それひとほろびたるものすくハんためきたれり
12 爾曹なんぢらいかにおもふやひともし百匹ひゃくひきひつじあらんに其一匹そのいっぴきまよハゞ九十九くじふくやまおきゆきてまよひひとつたづねざる
13 もしたづねてこれあはわれまことに爾曹なんぢらつげまよはざる九十九くじふくものよりもなほそのひとつよろこばん
14 かくごとくこの小 子ちいさきもの一人ひとりほろぶるハてんいま爾曹なんぢらちゝ尊旨みこゝろあら
15 もし兄弟きゃうだいなんぢにつみをかさバそのひとりあるときゆきいさめよもしなんぢことばきかバその兄弟きゃうだいべし
16 もしきかずバ両三人りょうさんにんくちよりあかしをなしすべてことばさだめんがため一人ひとり二人ふたりともなゆけ
17 もし彼等かれらにもきかずバ教會けうくわいつげよもし教會けうくわいきかずバこれ異邦人いはうじんかつ税吏みつぎとりのごときものとすべし
18 われまことに爾曹なんぢらつげんもし爾曹なんぢらおいつなぐことハてんおいてもつなぎ爾曹なんぢらおいとくことハてんおいてとくべし
19 われまた爾曹なんぢらつげんもし爾曹なんぢらのうち二人ふたりのものおいこゝろあは何事なにごとにてももとめてんいま吾父わがちゝ彼等かれらためこれなしたまふべし
20 そはわがため二三人にさんにんあつまれるところにハわれ其中そのうちあれバなり


21 厥時そのときペテロイエスきたりていひけるハしゅ幾次いくたびまで我兄弟わがきゃうだいわれつみをかすをゆるすべきか七次ななたびまで
22 イエスかれいひけるハなんぢ七次ななたびとハいは七次ななたび七十倍しちじふばいせよ
23 是故このゆゑ天國てんこくわうそのけらい會計くわいけい調しらべんとするがごと
24 調しらはじめしとき千萬金せんまんきん負債ひきおひしたるものわう
[千六百七十八] 曳來ひききたりしに
25 つくのかたなかりけれバこれめいじて其身そのみその妻孥つまことあらゆる所有もちものをみなうりつくのへといへ
26 その臣俯伏けらいひれふしはいいひけるハこふわれをゆるくたまハゞ皆償みなつくのふべし
27 こゝおいてそのけらい主憐しゅあはれみてこれときその負債ひきおひゆるしたり
28 其臣そのけらいいでゝおのれより銀一百ぎんいっぴゃく負債ひきおひしたるともあひけれバこれとらのんどをとり負債ひきおひかへせといふ
29 その友足下ともあしもと俯伏ひれふしねがひいひけるハわれゆるくたまハゞ皆償みなつくのふべし
30 しかるにこれうけがハずしてゆきその負債ひきおひつくのふまでかれひとやいれ
31 ほかともそのなせことはなはかなしゆき此事このことみなそのしゅつげしかば
32 しゅかれをよびいひけるハあしけらいなんぢわれにねがひしによりわれその負債ひきおひことゞゝゆるしたり
33 わがなんぢをあはれみしごとなんぢ亦友またともあはれむべきにあらずや
34 そのしゅいかりて負債ひきおひをみなつくのふまでかれ獄 吏ひとやつかさわたせり
35 もしおのゝゝ其心そのこゝろより兄弟きゃうだいゆるさずばてんちゝまたなんぢらにかくごと行給なしたまふべし


第十九章

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イエス此等これらこと言畢いいをはりしときガリラヤさりヨルダンむかふユダヤさかいいたりけるに
2 おほく人々ひとゞゝしたがひしかバ此處このところにて彼等かれらいやたまへり
3 パリサイのひときたりてイエスこゝろいひけるハひとなにのゆゑかゝはらず其妻そのつまいだすハよき
4 こたへ彼等かれらいひけるハ元始はじめひとつくたまひしものこれ男女なんにょつくれり
5 是故このゆゑ人父母ひとちゝはゝはなれて其妻そのつま合二人あひふたりのもの一體いったいなるなりといへるをいまよまざるか
6 されバはやふたつにハあら一體いったいなりかみあはたまへるものひとこれをはなすべからず
7 イエスいひけるハされ離緣狀りえんじゃうあたへつまいだせとモーセめいぜしハなにぞや
8 彼等かれらいひけるハモーセ爾曹なんぢらこゝろ不情つれなさよりつまいだすことをゆるしたるなりされど元始はじめ如此かくあらざりき
9 われなんぢらにつげんもし姦淫かんいんゆゑならで其妻そのつまいだほかをんなめともの姦淫かんいんおこなふなりまたいだされたるをんな
[千六百七十九] めともの姦淫かんいんおこなふなり
10 弟子等でしたちイエスいひけるハ人妻ひとつまおいかくごとくバめとらざるにしか
11 彼等かれらいひけるハ此言このことばひとみな受納うけいれることあたハず唯賦たゞさづけられたるもののみこれなしうべし
12 それはゝはらより生 來うまれつきたる寺人あり又人またひとにせられたる寺人じじんあり又天國またてんこくためみづからなれる寺人じじんありこれ受納うけいれることをるものハ受納うけいるべし


13 そのとき人々ひとゞゝイエスつけいのらんことをねが嬰兒をさなごかれ携來つれきたりけれバ弟子でしこれとゞめたり
14 イエスいひけるハ嬰兒をさなごゆるわれきたることをいましむるなか天國てんこくにをるものかくごとものなり
15 すなは彼等かれらつけこゝさり


16 或人あるひときたりてかれいひけるハ善師よきしわれかぎりなきせいんがためにハなに善事よきことなすべきか
17 かれいひけるハ何故なにゆゑわれをよきいふ一人ひとりほか善者よきものハなしすなはかみなりいのちいらんとおもハゞいましめまもるべし
18 かれこたへけるハなにイエスいひけるハころなか姦淫かんいんするなかぬすなかいつはりのあかしたつなか
19 なんぢ父母ちゝはゝうやま又己またおのれごとなんぢとなりあいすべし
20 少者わかものかれにいひけるハこれみなわれいとけなきよりまもれるものなりなんかけたるところわれにある
21 イエスかれいひけるハまったからんことおもハゞゆきなんぢ所有もちものうり貧 者まづしきものほどこさすれバてんおいたからあらんしかしてわれしたが
22 少者わかきものこのことばきゝうれさりかれ産業さんげふおほいなれバなりなり


23 イエスその弟子でしいひけるハまこと爾曹なんぢらつげ富 者とめるもの天國てんこくいることかた
24 また爾曹なんぢらつげ富 者とめるものかみくにいるよりハ駱駝らくだはりあな穿とほるハかえっやす
25 弟子でしこれきゝいたおどろいひけるハさらたれすくひうくべき