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明治元訳新約聖書(大正4年)/提摩太前書

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ウィキペディアテモテへの第一の手紙のページがあります。
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[二千十九]
新約全書使徒しんやくぜんしょしとパウロテモテおくれる前書さきのふみ

第一章

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我儕われら救主すくひぬしなるかみおよび我儕われらのぞみなるイエス キリストめいしたがひてイエス キリスト使徒しととなれるパウロ
信仰しんかうより眞子まことのこなるテモテふみおくねがはくハちゝなるかみおよび我儕われらしゅキリスト イエスより恩寵めぐみ衿恤あはれみ平康やすきうけ


われマケドニヤゆきしときなんぢなほエペソとゞまひとめいじて彼處かしこ異教ことなるをしへつたふることなく
また信仰しんかうにあるかみみちたてずして辨論べんろんしゃうずる奇談あやしきはなしきはまりなき系圖けいづこゝろよすることなからしめよとすゝめたりいまかくごとおこなハんことをねが
誡命いましめ主意しゅいあいなりすなはきよこゝろ善良心よきりゃうしんいつはりなき信仰しんかうよりいづ
或人あるひとこれをすてむなしろんうつ
律法おきて教師けうしならんとしてかへっ其語そのかたところその定論さだめいふところのことみづかしら
それわれら律法おきてよきものなりしるたゞしたがひて律法おきてもちふべし
律法おきて義人たゞしきひとためまうけたるにあら不法ふほうなるもの不服ふふくなるもの不敬ふけいなるもの罪惡ざいあくなるもの不潔ふけつなるもの邪僻よこしまなるものちゝころせるものはゝころせるものひところせるもの
奸淫かんいんおこなふもの男色なんしょくこのむものひとぬすむものいつはりいふもの僞誓いつはりちかものまたこのほか正理まことのをしへもとることあるためまうけたり
十一 これわれたくたまところさいはひなるかみさかえ福音ふくいんしたがへるなり


十二 われ能力ちからたまへる我儕われらしゅキリスト イエスしゃそはわれをつとめにんじて忠信ちゅうしんなるものとなしたまへバなり
十三 われむかし謗讟けがしたるもの窘迫せめたるもの狎侮なれあなどりたるものなりしが我信われしんぜざるときしらずしてこれおこなへるゆゑになほ衿恤あはれみうけたり
十四 我儕われらしゅめぐみおよびキリスト イエスありたもところ我儕われら信仰しんかうあいきはめおほいになれり
十五 キリスト イエス罪人つみびとすくはんためにきたれりしんずべく亦疑またうたがハずしてうくべきはなしなり罪人つみびとのうちわれかしらなり
十六 しかれども衿恤あはれみうけしハキリスト イエ
[二千二十]
首先いやさきわれ寛容くわんようことゞゝあらはのちかれをしんじて永生かぎりなきいのちうくものわれ模楷かたとなしたまへるなり
十七
ねがはくハ萬世ばんせいわうすなハちくちみえざるひとつかみかぎりなく尊貴たふとき榮光さかえあらんことをアメン


十八 我子わがこテモテさきなんぢさせところ預言よげんよりなんぢめい此預言このよげんにより信仰しんかう善良心よきりゃうしんをもて善戰よきたたかひたゝかふべし
十九 或人あるひとよき良心りゃうしんすて信仰しんかううしなへり
二十 かくごとひとうちヒメナヨアレキサンデルありわれかれらをサタンわたせり是彼等これかれらをして謗讟けがすこといはざらしめんためこらすなり

第二章

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われことすゝ萬人もろゝゝため龥告ねがひ祈禱いのり懇求もとめ感謝かんしゃせよわうおよびすべ權威けんゐもつものゝためにハわけこれなすべし
これわれら敬虔つゝしみ端莊うやゝゝしきしづかやすらかにおくらんためなり
これ美事よきことなり我儕われら救主すくひぬしなるかみ意旨みこゝろかなふことなり
萬人もろゝゝのひとすくひをうけ眞理まことさとるにいたるハかみのぞたまところなり
それかみ一位ひとりなり又神またかみひととのあひだ一位ひとり中保なかだちありすなはひとなるキリスト イエスなり

かれ萬人もろゝゝのひとかはおのれすてあがなひとなせりときいたらバあかしすべし
われこれがためたてられて宣傳のべつたふものとなり使徒しとなりまた信仰しんかう眞理まこと異邦人いはうじんをしふものとなれりわれキリストありまことをいひいつはりいは
是故このゆゑわれねがふ人潔ひときよあげいかりなくうたがひなくいづれところにてもいのらんことを
また婦女をんなはぢしりよくつゝしみてよろしきかなころもにてみづかかざかみあむことゝきん眞珠しんじゅ價貴あたひたふところも妝飾かざりとせず

善行よきわざ妝飾かざりとせんことをねがかみうやまをんな如此かくすべきことなり
十一 婦女をんなすべてのことしたがひてしずかみちまなぶべし
十二 われ婦女教をんなをしへほどこすことゝをとこうへけんとることをゆるさず婦女をんな只安靜たゞしづかにすべし
十三 そはアダムさきつくられエバのちつくられたれバなり
十四 アダムまどはされざりしなりをんなまどはされてつみおちいれり
十五 しかれどもかれもし信仰しんかうあいきよきつゝしみをるならバうむことによりすくひべし
[二千二十一]

第三章

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ひともし監督かんとくつとめねがハゞ是善務これよきつとめねがなりといふはなしまことなり
それ監督かんとくたるものせむべきところなく一個ひとりをんなをっとなるべく謹愼自つゝしみみづかせい品行正みちたゞし旅客たびゞと慇懃ねんごろあしら教訓をしへをなし
さけたしまずひとうた柔和にうわまたあらそハずざいむさぼらず
自己おのれいへ善理よくおさ端莊うやゝゝしき其子女そのこどもしたがハしむ可也べきなり
ひともし自己おのれいへをさむることをしらずバ如何いかにしてかみ教會けうくわいあづかることをんや
かつあらたをしへいりもの監督かんとくなすべからずおそらくハたかぶりて惡魔あくまおな審判さばきうくるにおちいらん
また監督かんとく外人そとのものにも令聞よききこえあるべしおそらくハ詬誶そしり惡魔あくまわなおちいらん


執事しつじたるもの亦端莊またうやゝゝしくし兩舌りゃうぜつせずさけたしまずむさぼらず
信仰しんかう奥義おくぎきよ良心りゃうしんうちもつべし
これ先試まづこゝろみてせむべきところなくば執事しつじつとめあつべし
十一 女執事じょしつじ亦端莊またうやゝゝしくしひとそしらずつゝしみてすべてのこと忠信ちゅうしんなるべし
十二 執事しつじたるもの一個ひとりをんなおっとなるべし子女こどもおのれいへ善理よくおさむべし
十三 善執事よくしつじつとめつとむものおのれ善級よきくらゐキリスト イエスもとゐしゝ信仰しんかう勇氣ゆうきべし


十四 われはやなんぢいたらんことをのぞされ如此かくかきおくるハ
十五 われもしおそからんとき爾如何なんぢいかにしてかみいへうちおこなふべきかをしらためなりかみいへ活神いけるかみ教會けうくわいなり眞理まことはしらもとゐなり
十六 うたがひもなく敬虔けいけん奥義おくぎおほいなり神肉體かみにくたいとなりてあらはみたまよりとせられ天使てんのつかひみら異邦人いはうじんなか宣傳のべつたへられひとしんぜられ榮光えいくわうなかあげられたまへり


第四章

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しかれども靈明みたまあきらかにいふのちいたらば或人あるひと信仰しんかうみちよりはなれてひとまどはれい惡鬼あくきをしへこゝろよせ
ぜんかりいつはりをいひ良心りゃうしんやか
めとることをきんしょくたつことをめいずるものさそはるゝによりてなりしょくすなはかみこれをつくしんじて眞理まことしれひと感謝かんしゃしてうけしむるものなり
それかみつく
[二千二十二]
ものハみなよきなり感謝かんしゃしてうくるときハすつべきものなし
そハかみことば祈禱いのりよりきよくなればなり
なんぢもしこれ兄弟等きゃうだいたちをしふるときハキリスト イエス良役者よきつかへびとにして信仰しんかうことばなんぢしたがひしところ善教よきをしへことばやしなはれたるものなり
みだりなるはなしおいたるをんなあやしはなしをすてかみうやまふことをみづか修行しゅぎゃうすべし
肉體にくたい修行しゅぎゃうえきすくなし惟神たゞかみうやまふことハすべてことえきあり今生いまのいのちおよび來生のちのいのちかゝ約束やくそくうるなり
これしんずべく又疑またうたがはずしてうくべきはなしなり
これため我儕われら勞苦ほねをりをし且詬誶かつそしりをうくそはわれらいけかみのぞめばなりかれ萬人すべてのひと救主すくひぬしにしてことしんずるもの救主すくひぬしなり
十一 なんぢ此等これらことめい且教かつをしふべし


十二 なんぢ年幼としわかきひとかろんぜられるゝなかことばおこなひあいしんきよき信者しんじゃ模楷のりとなるべし
十三 なんぢ誦讀よむこと勤勉すゝめ教訓をしへつとめめていたるをまて
十四 預言よげん長老會ちゃうらうくわい按手禮あんしゅれいとによりなんぢたまひしところたまもの忽略ゆるかせにすることなか
十五 こゝろこれよせもっぱこれつとむべしそはなんぢの上達じゃうたつすべてのひとあきらかならんためなり
十六 なんぢおのれつゝし亦教またおしふることをつゝしむべしつね此等これらことつとめよ如此かくおこなふときおのれすくまたなんぢに聽者きくものすくハん


第五章

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老人としよりせむることなかこれちゝごとくしわかきもの兄弟きゃうだいごとくし
おいたるおんなはゝごとくしてすゝめまた少女わかきをんな姊妹しまいごとくしこれすゝむるに貞潔きよきつくすべし
寡婦やもめなるまことやもめうやまふべし
され寡婦やもめあるひハまごあらば彼等かれらまづおのれいへかうおこな其親そのおやおんむくゆることをまなぶべし是神これかみ意旨みこゝろかなふことなり
まこと寡婦やもめにて獨居ひとりをるものハ惟神たゞかみ依賴よりたのよるひる龥求ねがひ祈禱いのりつねにするなり
縱樂おごりをなす寡婦やもめいけるといへどしぬものなり
なんぢ此事このことめい彼等かれらをしてせむべきところなからしむべし
ひともしおのれぞくするものかへりみざるならば信仰しんかうみちそむ不信者ふしんじゃよりも
[二千二十三]
おとれるものなり
寡婦やもめ其藉そのせきしるすことハ六十歳ろくじっさいよりわかかるべからずもとより一個ひとりをっとつまなりしものにて
善行よきおこなひきこえあるものもしくハ難人なやめるひとたすけしものもしくハつとめもろゝゝ善事よきことしたがひしものなるべし
十一 わか寡婦やもめこれことはるべしそはかれらキリストそむきこゝろみだすときハふたゝよめいりせんとすればなり
十二 彼等かれらはじめたてたる約束やくそくすつるにより審判さばきうくべし
十三 彼等かれらまた懶惰らんだならひといへ周遊あそびめぐりたゞ懶惰らんだなるのみならずみだりひと風評うはさをいひこのみひとことかゝはいふべからざることをいふなり
十四 是故このゆゑわれねがふわか寡婦やもめよめいりをなし子女こどもをうみいへをさめてきするものすこしにてもそしるべきをりしめざらんことを
十五 そハ彼等かれらのうちすでみちすてサタンしたがへるものあり
十六 しんずるをとこあるいハしんずるをんなそのいへ寡婦やもめあらバこれたすくべし教會けうくわいわづらはすべからず蓋教會そはけうくわいをしてしん寡婦やもめたすけしめんためなり
十七 善治よきをさむ長老ちゃうらうをばばいしてこれたふとことばつたをしへをなしてらうする長老ちゃうらうことたふとむべし
十八 そハ聖書せいしょしるして穀物こくもつこなうし口籠くつごかくべからず又勞者またはたらくもの其値そのあたひうくべきなりいへばなり
十九 長老ちゃうらううったふもののあらんに二人ふたり三人みたり證人あかしびとなくばうくべからず
二十 つみをかせるもの衆人ひとゞゝまへにてこれいましむべし是餘これほかひとをしておそれしめんためなり
二一 われかみキリスト イエスまたえらばれたる天使てんのつかひまへにてなんぢもと預見おしはかりさだめをなすことなくすこしにてもかたよりておこなふこと無くなくして此等これらことまもるべし
二二 輕易かるゞゝしくひと按手あんしゅするなかひとつみあづかることなかみづかまもりきよくすべし
二三 なんぢのためおよなんぢしバゝゝわづらふによりつねみづのむことなかすこしく葡萄酒ぶだうしゅもちふべし
二四 或人あるひとつみあきらかにして其人そのひとさきだちて審判さばきにゆき或人あるひとつみあとしたが
二五 かくごと善行よきわざあきらかなるなりしからざるも亦終またつひかくるゝことあた
[二千二十四]


第六章

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おほよくびきしたにあるしもべおのれしゅ毎事ことゞゝたふとぶべきものとすべし是神これかみをしへそしられざらんためなり
信者しんじゃなるしゅもてもの其兄弟そのきゃうだいたるによりこれかろんずべからずわけこれつかふべし蓋益そはえきうくるもの信者しんじゃにてあいせらるゝものなれバなりなんぢ此事このことをしへまたすゝむべし
もしことなるをしへつたへ我儕われらしゅイエス キリスト善言よきことばかみうやまふことにかなをしへうけがはざるものあらバ
此人このひとみづからたかぶ無知むちにして議論ぎろん言辞ことば爭辨あらそひこのこれより娟嫉ばうしつ爭鬪さうとう毀謗きばう妄疑ばうぎ
またよこしまにして眞理まことはなかみうやまひてんとおもひと爭論さうろんおこるなりなんぢらかくごとひととおざかるべし
かみうやまひてたることをしるおほいなるなり
われらなにをもたづさへてきたらず亦何またなにをもたづさへてゆくことあたはざるハあきらかなり
それ衣食いしょくあらバこれをもてたれりとすべし
とまんことをほっするもの患難なやみわなまたひと滅亡めつぼう沈淪ちんりんおぼらすところにしてがいのある萬殊さまゞゝよくおちいるなり
たからしたふハもろゝゝ惡事あしきことなり或人あるひとこれをしたまよひ信仰しんかうみちはなおほく苦害くるしみをもてみづかおのれさせ
十一 かみひとこれさけ義事たゞしきことかみうやまふことゝ信仰しんかうあい堪忍かんにん柔和にうわとをしたふべし
十二 信仰しんかう善戰よきたゝかひをたゝかひ永生かぎりなきいのちとるべしなんぢこれがためめしかうむりたり又多またおほくひとまへにて善證よきあかしなしたり
十三 われ萬物よろずのものをしていのちたもたしむるかみおよびポンテオ ピラトむかひ善證よきあかし作給なしたまへるキリスト イエスまへにてなんぢめい
十四 なんぢ我儕われらしゅイエス キリストあらはるゝときまできずなくせむべきところなくしていましめまもるべし
十五 かみそのさだたまへるときいたらバかれあらはさんかみすなはさいはひあるところ獨一たゞひとり權威けんゐあるものもろゝゝわうわうもろもろのしゅしゅ
十六 獨一死ただひとりしなざるものちかづくことをざるひかりいましてひといまだしことなく又見またみることあたはざるもの
[二千二十五]
なりねがはくハ尊貴たふときかぎりなき權力ちからかれにあれアメン


十七 なんぢこのとめものめいぜよたがぶることなくさだめなきたからたのむことなくたゞわれらをたのしませんとて諸 物すべてのものゆたかたまかみたの
十八 またぜんおこな善事よきわざとみをしみなく施濟ほどこしをなしてひとともにし
十九 かくおのれため善基よきもとゐたくは未來みらいそなへをなすべし是眞これまこといのちためなりと
二十 テモテ爾託なんぢたくせられしことまもみだりなるえきなきはなしおよび智識ちしきいつはとなふる辨論べんろんとをさくべし
二一 或人あるひとこのいつはり智識ちしきしたがひて信仰しんかうあやまれりねがはくハ恩寵めぐみなんぢにあらんことをアメン





新約全書提摩太前書 終