日本國中華民國間基本關係ニ關スル條約
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朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ裁可シ昭和十五年十一月三十日南京ニ於テ帝國全權委員ガ中華民國全權委員ト共ニ署名調印シタル日本國中華民國間基本關係ニ關スル條約ヲ附屬文書ト共ニ茲ニ公布セシム
御名御璽
昭和十五年十二月二日
條約第十號
日本國中華民國間基本關係ニ關スル條約
大日本帝國政府及
中華民國國民政府ハ
兩國相互ニ其ノ本然ノ特質ヲ尊重シ東亞ニ於テ道義ニ基ク新秩序ヲ建設スルノ共同ノ理想ノ下ニ善隣トシテ緊密ニ相提携シ以テ東亞ニ於ケル恒久的平和ヲ確立シ之ヲ核心トシテ世界全般ノ平和ニ貢獻センコトヲ希望シ
之ガ爲兩國間ノ關係ヲ律スル基本的原則ヲ訂立セント欲シ左ノ通協定セリ
第一條 | 兩國政府ハ兩國間ニ永久ニ善隣友好ノ關係ヲ維持スル爲相互ニ其ノ主權及領土ヲ尊重シツツ政治、經濟、文化等各般ニ亙リ互助敦睦ノ手段ヲ講ズベシ 兩國政府ハ政治、外交、敎育、宣傳交易等諸般ニ亙リ相互ニ兩國間ノ好誼ヲ破壞スルガ如キ措置及原因ヲ撤廢シ且將來ニ亙リ之ヲ禁絕スルコトヲ約ス |
第二條 | 兩國政府ハ文化ノ融合、創造及發展ニ付緊密ニ協力スベシ |
第三條 | 兩國政府ハ兩國ノ安寧及福祉ヲ危殆ナラシムル一切ノ共產主義的破壞工作ニ對シ共同シテ防衞ニ當ルコトヲ約ス 兩國政府ハ前項ノ目的ヲ達成スル爲各其ノ領域內ニ於ケル共產分子及其組織ヲ芟除スルト共ニ防共ニ關スル情報、宣傳等ニ付ケ緊密ニ協力スベシ 日本國ハ兩國共同シテ防共ヲ實行スル爲所要期間中兩國間ニ別ニ協議決定セラルル所ニ從ヒ所要ノ軍隊ヲ蒙疆及華北ノ一定地域ニ駐屯セシムベシ |
第四條 | 兩國政府ハ中華民國ニ派遣セラレタル日本國軍隊ガ別ニ定ムル所ニ依リ撤去ヲ完了スルニ至ル迄共通ノ治安維持ヲ必要トスル間ニ於ケル日本國軍隊ノ駐屯地域其ノ他ニ關シテハ兩國間ニ別ニ協議決定セラルル所ニ據ル |
第五條 | 中華民國政府ハ日本國ガ從前ノ慣例ニ基キ又ハ兩國共通ノ利益ヲ確保スル爲所要期間中兩國間ニ別ニ協議決定セラルル所ニ從ヒ其ノ艦船部隊ヲ中華民國領域內ニ於ケル特定地域ニ駐留セシメ得ルコトヲ承認スベシ |
第六條 | 兩國政府ハ長短相補ヒ有無相通ズルノ趣旨ニ基キ且平等互惠ノ原則ニ依リ兩國間ノ緊密ナル經濟提携ヲ行フベシ 中華民國政府ハ華北及蒙疆ニ於ケル特定資源就中國防上必要ナル埋藏資源ニ關シ兩國緊密ニ協力シテ之ヲ開發スルコトヲ約諾ス中華民國政府ハ其ノ他ノ地域ニ於ケル國防上必要ナル特定資源ノ開發ニ關シ日本國及日本國臣民ニ對シ必要ナル便宜ヲ提供スベシ 前項ノ資源ノ利用ニ關シテハ中華民國ノ需要ヲ考慮シ中華民國政府ハ日本國及日本國臣民ニ對シ積極的ニ充分ナル便宜ヲ提供スルモノトス 兩國政府ハ一般通商ヲ振興シ及兩國間ノ物資需給ヲ便宜且合理的ナラシムル爲必要ナル措置ヲ講ズベシ兩國政府ハ揚子江下流地域ニ於ケル通商交易ノ增進竝ニ日本國ト華北及蒙疆トノ間ニ於ケル物資需給ノ合理化ニ付テハ特ニ緊密ニ協力スベシ 日本國政府ハ中華民國ニ於ケル產業、金融、交通、通信等ノ復興發達ニ付兩國間ノ協議ニ依リ中華民國ニ對シ必要ナル援助乃至協力ヲ爲スベシ |
第七條 | 本條約ニ基ク日華新關係ノ發展ニ照應シ日本國政府ハ中華民國ニ於テ日本國ノ有スル治外法權ヲ撤廢シ及其ノ租界ヲ還付スベク中華民國政府ハ自國領域ヲ日本國臣民ノ居住營業ノ爲開放スベシ |
第八條 | 兩國政府ハ本條約ノ目的ヲ達成スル爲必要ナル具體的事項ニ關シ更ニ約定ヲ締結スルモノトス |
第九條 | 本條約ハ署名ノ日ヨリ實施セラルベシ |
右證據トシテ下名ハ各本國政府ヨリ正當ノ委任ヲ受ケ本條約ニ署名調印セリ
昭和十五年十一月三十日卽チ中華民國二十九年十一月三十日南京ニ於テ日本文及漢文ヲ以テ本書各二通ヲ作成ス
大日本帝國特命全權大使 阿部 信行(印)
中華民國國民政府行政院院長 汪 兆銘(印)
この著作物は、日本国の著作権法第10条1項ないし3項により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。(なお、この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により、発行当時においても、著作権の目的となっていませんでした。)
この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。