日本国及「ソヴィエト」社会主義共和国連邦間ノ関係ヲ律スル基本的法則ニ関スル条約
條約第五號
日本國及「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦間ノ關係ヲ律スル基本的法則ニ關スル條約
日本國及「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦ハ兩國間ニ善隣及經濟的協力ノ關係ヲ促進セムコト ヲ希望シ右關係ヲ律スル基本的法則ニ關スル條約ヲ締結スルコトニ決シ之ガ爲左ノ如ク其ノ全權 委員ヲ任命セリ
日本國皇帝陛下
支那共和國駐剳特命全權公使從四位勳一等芳澤謙吉
「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦ノ中央執行委員會
支那共和國駐剳大使「レフ、ミハイロヴィチ、カラハン」
右各委員ハ互ニ其ノ全權委任状ヲ示シ之ガ良好妥當ナルコトヲ認メタル後左ノ如ク協定セリ
第一條
兩締約國ハ本條約ノ實施ト共ニ兩國間ニ外交及領事關係ノ確立セラルヘキコトヲ約ス
第二條
「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦ハ千九百五年九月五日ノ「ポーツマス」條約カ完全ニ效力ヲ存 續スルコトヲ約ス
千九百十七年十一月七日前ニ於テ日本國ト露西亞國トノ間ニ締セラレタル條約、協約及協定ニ シテ右「ポーツマス」條約以外ノモノハ兩締約國ノ政府間ニ追テ開カルヘキ會議ニ於テ審査セラルヘク且變化シタル事態ノ要求スルコトアルヘキ所ニ從ヒ改訂又ハ廢棄セラレ得ヘキコトヲ約ス
第三條
兩締約國ノ政府ハ本條約實施ノ上ハ千九百七年ノ漁業協約ノ締結以後一般事態ニ付發生シタルコ トアルヘキ變化ヲ考量シ右漁業協約ノ改訂ヲ爲スヘキコトヲ約ス
右改訂協約ノ締結ニ至ル迄ノ間「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦政府ハ日本國臣民ニ對スル漁 區ノ貸下ニ關シ千九百二十四年ニ確立セラレタル實行方法ヲ維持スヘシ
第四條
兩締約國ノ政府ハ本條約實施ノ上ハ左記ノ原則ニ從ヒ通商航海條約ノ締結ヲ爲スヘク且右條約ノ 締結ニ至ル迄ノ間兩締約國ノ一般交通ハ右原則ニ依リ律セラルヘキコトヲ約ス
(一)兩締約國ノ一方ノ臣民又ハ他方ノ法令ニ從ヒ(イ)其ノ領域内ニ至リ、旅行シ且居住
スルノ完全ナル自由ヲ有スヘク(ロ)身體及財產ノ安全ニ對シ恆常完全ナル保護ヲ享有スヘ シ
(二)兩締約國ノ一方ハ私有財產權竝通商、航海、產業及其ノ他ノ平和的業務ニ從事スルノ自由
ヲ最廣キ範圍ニ於テ且相互條件ノ下ニ他方ノ臣民又ハ人民ニ對シ自國領域内ニ於テ自國ノ法 令ニ從ヒ付與スヘシ
(三)自國ニ於ケル國際貿易ノ制度ヲ自國ノ法令ヲ以テ定ムルノ各締約國ノ權利ヲ害スルコトナ ク、兩國ノ通商、航海及產業ヲ成ルヘク最惠國ノ地歩ニ置クハ兩締約國ノ意嚮ナルニ依リ兩 締約國ハ兩國間ノ經濟上又ハ其ノ他ノ交通ノ増進ヲ妨クルニ至ルコトアルヘキ禁止、制限又 ハ課金ヲ他方締約國ニ對シ差別的ニ行フコトナカルヘキモノトス
又兩締約國ノ政府ハ兩國間ニ於ケル經濟上ノ關係ヲ調整シ且促進スル爲通商及航海ニ關聯スル特 別ノ協定ヲ締結スルノ目的ヲ以テ事態ノ要求スルコトアルヘキ所ニ從ヒ隨時商議ヲ爲スコトヲ約 ス
第五條
兩締約國ハ互ニ平和及友好ノ關係ヲ維持スルコト、自國ノ法權内ニ於テ事由ニ自國ノ生活ヲ律ス ル當然ナル國ノ權利ヲ充分ニ尊重スルコト、公然又ハ陰密ノ何等カノ行爲ニシテ苟モ日本國又ハ 「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦ノ領域ノ何レカノ部分ニ於ケル秩序及安寧ヲ危殆ナラシムルコ トアルヘキモノハ之ヲ爲サス且締約國ノ爲何等カノ政府ノ任務ニ在ル一切ノ人及締約國ヨリ何等 カノ財的援助ヲ受クル一切ノ團體ヲシテ右ノ行爲ヲ爲サシメサルコトノ希望及意嚮ヲ嚴肅ニ確認 ス
又締約國ハ其ノ法權内ニ在ル地域ニ於テ(イ)他方ノ領域ノ何レカノ部分ニ對スル政府ナリト稱スル 團體若ハ集團又ハ(ロ)右團體若ハ集團ノ爲政治上ノ活動ヲ現ニ行フモノト認メラルヘキ外國人タル 臣民若ハ人民ノ存在ヲ許ササルヘキコトヲ約ス
第六條
兩國間ノ經濟上ノ關係ヲ促進スル爲又天然資源ニ關スル日本國ノ需要ヲ考量シ「ソヴィエト」社會 主義共和國聯邦政府ハ「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦ノ一切ノ領域内ニ於ケル鐵產、森林及其 ノ他ノ天然資源ノ開發ニ對スル利權ヲ日本國ノ臣民、會社及組合ニ許與スルノ意嚮ヲ有ス
第七條
本條約ハ批准セラルヘシ
各締約國ノ右批准ハ成ルベク速ニ其ノ北京駐箚外交代表者ニ由リ他方ノ政府ニ通知セラルヘク且 本條約ハ右通知中後ニ爲サレタルモノノ日ヨリ完全ニ實施セラルヘシ
批准書ノ正式交換ハ成ルヘク速ニ北京ニ於テ行ハルヘシ
右證據トシテ各全權委員ハ英吉利語ヲ以テシタル本條約二通ニ署名調印セリ
千九百二十五年一月二十日北京ニ於テ作成ス
芳澤謙吉(印)
エル、カラハン(印)
JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A03021580700、御署名原本・大正十四年・条約第五号・日本国及「ソヴィエト」社会主義共和国聯邦間ノ関係ヲ律スル基本的法則ニ関スル条約(国立公文書館)
この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。
- 法律命令及官公󠄁文󠄁書
- 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
- 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁
この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。