新譯日本書紀 (飯田弟治訳)
序文[編集]
近頃、古文の今文に譯せらるゝもの甚だ多し、蓋し平易を尚び通俗を好む時勢の傾向なるべし。
日本書紀は、六國史中の第一にして、我が建國の起原を記述したるものなれば、國民必讀の書なり。然るに其文佶屈聱牙にして、讀み難きは、甚だ遺憾とする所なりき。曩に飯田武郷翁、畢生の力を盡して、日本書紀通釋を著はし、多くの異本を比較して本文を挍し、訓讀を正し、穏健なる解釋を加へられたり。書紀の註釋にして、その書の右に出づるものなかるべし. されど。其書浩瀚にして求め易からず。此度、翁の令息弟治ぬし、新に書紀の本文を普通文に譯し、更に傍訓を施して、何人にも容易く讀み得らるゝやうにつとめられしは、誠に便宜なることなり。その本文の正確にして訓讀の雅馴なるは、専ら翁の通釋に準據せられしゆゑならむかし。此書の如きは、わが上古史を窺はんとするものゝ捷徑にして、亦時勢の要求に應じたるものといふべき歟。
明治四十五年六月
文學博士 松 本 愛 重
緒言[編集]
日本書紀三十卷は、實に我國最古の正史にして、神代の剏より持統天皇紀に畢り、編纂の功成りしは、元正天皇の養老四年五月二十一日にして、一品舎人親王勅を奉じて總裁となり、太安麻呂朝臣の祐となりて修せられたるものなり。親王並びに安麻呂朝臣が勅を奉ぜしは、文武元明二帝の朝に屬せるが、純粹なる漢文を以て撰ばむとせられしより、容易に功を畢ふるに至らず、荏苒として歳月を經るまゝに、其の間、古事記、假名日本紀の如き、卷數少くして専ら古語を旨とせるもの一二部成りぬ。されどそれはそれにて、此の日本書紀は、天武天皇の御趣旨を基本として撰ぜられし史書なれば、朝廷に於ても此紀を正史と定め、その以後は更めて古記を選ばしめ給ふ御擧は止みにき。かゝれは本書を以て我國最古の正史とは謂ふなり。
本書を繙かば、開闢の元始より神代の事蹟、尋ぎて我が皇祖皇宗の國家を建て、黎民を撫育したまへる治迹も窺ひ識るべく、我が國體の精華、民族の特性等も明かに察するを得べし。かゝる貴重の寶典なるに拘らず、從来たゞ一部専門學者の書架に藏せらるゝのみにて、普く一般國民の通讀するに至らざりしは、全く原書の讀み難く、原本の坊間に流布せるもの僅少なるに因らずんばあらず。
夫れ歴史は、其の故きことを新しく人心に生きしむるを以て、始めて其の意義あるべきものなり。是を以て菲才を顧みず、父翁の志をつぎて之を新譯し、これ傍訓を施し、割註を加へ、檢出に便ならしむ爲めに索引を添へつ。其の訓讀に至ては、父翁が校訂したる蓬室本に據り、雅馴にして訓み易きを旨とせり。譯者は千有餘年前に成れる古史が、明治の聖代に復活して、讀書界に歡迎せられむことを希ふものなり。
蓬室の舊廬に於て
飯 田 弟 治識
讃日本書紀歌[編集]
讃日本書紀歌 飯 田 武 郷
玉こそはこの世のたから、こがねこそうづの寶
と、人みなの思ひてあれど、天のした千よろづ
國に、こがねなき國はあらめや、眞玉なき國は
あらめや、しろがねも黄金もあれど、七種の玉
もあれども、あめつちと日月とともに、傳へま
すたからのくらゐ、動きなきそのことわりを、
神の代のことのまにまに、あやまたずしるしゝ
御史、あめ地にたぐひあらめや、うづたから御
寶ぬしぞ、このやまとぶみ。
新譯日本書紀卷第一[編集]
神代上[編集]
神代七代 の章 [編集]
八州起源 の章 [編集]
四神出生 の章 [編集]
瑞珠盟約 の章 [編集]
寶鏡開始 の章 [編集]
寶劒出現 の章 [編集]
新譯日本書紀卷第二[編集]
神代下[編集]
天孫降臨 の章 [編集]
海宮遊行 の章 (續)[編集]
神皇承運 の章 [編集]
新譯日本書紀卷第三[編集]
神日本磐余彦天皇 [編集]
神武天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第四[編集]
神渟名川耳天皇 [編集]
綏靖天皇紀 [編集]
磯城津彦玉手看天皇 [編集]
安寧天皇紀 [編集]
大日本彦耜友天皇 [編集]
懿徳天皇紀 [編集]
觀松彦香殖稻天皇 [編集]
孝昭天皇紀 [編集]
日本足彦國押人天皇 [編集]
孝安天皇紀 [編集]
大日本根子彦太瓊天皇 [編集]
孝靈天皇紀 [編集]
大日本根子彦國牽天皇 [編集]
孝元天皇紀 [編集]
稚日本根子彦大日日天皇 [編集]
開化天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第五[編集]
御間城入彦五十瓊殖天皇 [編集]
崇神天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第六[編集]
活目入彦五十狹茅天皇 [編集]
垂仁天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第七[編集]
大足彦忍代別天皇 [編集]
景行天皇紀 [編集]
稚足彦天皇 [編集]
成務天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第八[編集]
足仲彦天皇 [編集]
仲哀天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第九[編集]
氣長足姫尊 [編集]
神功皇后紀 [編集]
新譯日本書紀卷第十[編集]
譽田天皇 [編集]
應神天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第十一[編集]
大鷦鷯天皇 [編集]
仁徳天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第十二[編集]
去來穗別天皇 [編集]
履中天皇紀 [編集]
瑞齒別天皇 [編集]
反正天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第十三[編集]
雄朝津間稚子宿禰天皇 [編集]
允恭天皇紀 [編集]
穴穗天皇 [編集]
安康天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第十四[編集]
大泊瀬幼武天皇 [編集]
雄略天皇 [編集]
新譯日本書紀卷第十五[編集]
白髪武廣國押稚日本根子天皇 [編集]
清寧天皇紀 [編集]
弘計天皇 [編集]
顯宗天皇紀 [編集]
億計天皇 [編集]
仁賢天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第十六[編集]
小泊瀬稚鷦鷯天皇 [編集]
武烈天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第十七[編集]
男大迹天皇 [編集]
繼體天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第十八[編集]
勾大兄廣國押武金日天皇 [編集]
安閑天皇紀 [編集]
武小廣國押盾天皇 [編集]
宣化天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第十九[編集]
天國排開廣庭天皇 [編集]
欽明天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第二十[編集]
渟中倉太珠敷天皇 [編集]
敏達天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第二十一[編集]
橘豐日天皇 [編集]
用明天皇紀 [編集]
泊瀬部天皇 [編集]
崇峻天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第二十二[編集]
豐御食炊屋姫天皇 [編集]
推古天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第二十三[編集]
息長足日廣額天皇 [編集]
舒明天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第二十四[編集]
天豐財重日足姫天皇 [編集]
皇極天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第二十五[編集]
天萬豐日天皇 [編集]
孝徳天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第二十六[編集]
天豐財重日足姫天皇 [編集]
齊明天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第二十七[編集]
天命開別天皇 [編集]
天智天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第二十八[編集]
天渟中原瀛眞人天皇 《上》[編集]
天武天皇紀 [編集]
新譯日本書紀卷第二十九[編集]
天渟中原瀛眞人天皇 [編集]
天武天皇紀 《下》[編集]
新譯日本書紀卷第三十[編集]
高天原廣野姫天皇 [編集]
持統天皇紀 [編集]
奥書[編集]

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