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復讐ヲ嚴禁ス

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人ヲスハ國家ノ大禁ニシテ人ヲヲ罰スルハ政府ノ公權ニ候處古來ヨリ父兄ノ爲ニ讐ヲ復スルヲ以テ子弟ノ義務トナスノ風習アリ右ハ至情不得止ニ出ルト雖トモ畢竟私憤ヲ以テ大禁ヲ破リ私義ヲ以テ公權ヲ犯スニシテ固擅ノ罪ヲレス加之甚シキニ至リテハ其事ノ故誤ヲ問ハス其理ノ當否ヲ顧ミス復讐ノ名義ヲ挾ミ濫リニ相搆害スルノ弊往々有之甚以相濟事ニ候依之復讐嚴禁被 仰出候條今後不幸至親ヲ害セラルヽ於有之ハ事實ヲ詳ニシ速ニ其筋ヘ可訴出候若無其儀舊習ニ泥ミ擅スルニ於テハ相當ノ罪料ニ可處候條心得違無之樣可致事

読み下し文

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人を殺すは、国家の大禁にして、人を殺す者を罰するは、政府の公権に候処(そうろうところ)、古来より父兄のために讐(あだ)を復(ふく)するをもって、子弟の義務となすの風習あり。右は至情(しじょう)やむを得ずに出(いづ)るといえども、畢竟(ひっきょう)私憤をもって大禁を破り、私義をもって公権を犯す者にして、固(もとより)擅殺(せんさつ)の罪を免(のが)れず。加之(しかのみならず)甚(はなはだ)しきに至りてはその事の故誤(こご)を問わず、その理の当否を顧(かえり)みず、復讐の名義を挾(さしはさ)み、濫(みだ)りに相(あい)構害(こうがい)するの弊(へい)往々(おうおう)これあり、甚(はなはだ)もって相(あい)済まされざる事に候(そうろう)。これより復讐厳禁を仰(おおせ)出(いだされ)候(そうろう)条(じょう)、今後、不幸にして至親(ししん)を害せらるる者これあるにおいては、事実を詳(つまびらか)にし、速(すみやか)にその筋へ訴え出るべく候(そうろう)。もし、その儀なく、旧習に泥(なず)み擅殺(せんさつ)するにおいては、相当の罪料に処すべき候(そうろう)条(じょう)、心得(こころえ)違いこれなきよう致(いたす)べきこと。

現代語訳

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人を殺すことは国の厳重な禁制であり、人を殺す者を罰することは政府の公権であるが、その一方、古来から父や兄の仇討が、子や弟がその恩義に報いることとされる習わしがある。この習わしは深い恩情の抑え難い発露であるが、要するに私憤により厳重な禁制を破り、独り善がりに公権を犯すものであり、そもそも身勝手な殺人の罪を免除されることはない。

さらに、酷いものにいたっては、故意か過失かを問わず、道理に合うことか合わないことかを振り返ることもせず、復讐を言い訳にして、濫りに謀殺する弊害がしばしばあり、まったく見過ごすことができない。

かかる事態により、(陛下から)復讐厳禁の拝命があり、今後、不幸にも父母などの近親者を殺害された者がある場合は、事実を詳細に明らかにして、速やかに所轄に訴え出ること。

もし、訴えることなく、因習に執着し身勝手な殺人を行った場合は、罪の程度に応じて処罰されるので、誤解を招かないよう順守すること。

この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。