平重衡に示す御詞 (法然上人全集)

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平重衡に示す御詞

誠に御出家こそ功徳廣大なれ共。御ゆるされなくば。四部の弟子なれば。御髪をつけながらも。戒を持せ給はん事子細有べからず。難受人身を受ながら。むなしく三途に歸給はんこと。かなしみても猶餘りあり。歎きても又つくべからず。然に穢土を厭ひ淨土を欣ひ。惡心をすて善心を發し給はん事は。三世の諸佛も定めて随喜し給ふべし。其にとりて出離の道まち也といへども。末法濁亂の機には稱名をもて勝たりとす。罪業深重の輩も愚癡闇鈍の族も。唱ればむなしからざるは彌陀の本願也。罪ふかければとて卑下し給ふべからず。十惡五逆も迴心すれば徃生し。一念十念も心をいたせば來迎す。經には四重五逆諸衆生。一聞名號必引接と説き。釋には忽遇徃生善知識。急勸專稱彼佛名と判せり。たとひ無間の重罪なりといへども。稱名の功徳にはかつべからず。利劒即是彌陀號。たもてば魔緣ちかづかず。一聲稱念罪皆除。唱へば罪業のこりなし。罪障を消滅して極樂の徃生をとげんこと。他力本願にしくはなし。御榮華昔も今も異事なき御身也。然共有爲のさかひのかなしきは。いまだ生をかへざるに。かゝるうき目を御らんずるうへは。穢土はうたてき所ぞとうれえ思召捨て。ふかく彌陀の本願をたのみましまさば。御徃生疑有べからず。これ全く源空が私の詞にあらず。彌陀因位の悲願。或は釋尊成道の時説をき給へる經教なり。一念も疑心なく。一心に稱名をたしなみ給ふべし。

〈九巻傳に出づ〉

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