- 底本: 大和田建樹 著 ほか『工業唱歌』,東京音楽書院,明41.12. 国立国会図書館デジタルコレクション:info:ndljp/pid/855216
- 註: 以下のリストに掲載される漢字はJIS X 0208外の異体字であり、Unicode表のBMP(基本多言語面、0面)が正しく表示できない環境によっては正しく記されない可能性がある。尚U+FA30からU+FA60の文字は、JIS X 0213対応のフォント(IPAフォント等)による記述を行っている。
- 凡例
- 親字 → 異体字 (Unicode番号) ; 異体字の説明。
- 頼 → 賴 (U+8CF4) ; 8、9画目が「刀」となる字体
- 毎 → 每 (U+6BCF) ; 「毋」の部分が「母」となる字形
- 歩 → 步 (U+6B65) ; 7画目を除いた字形
- 強 → 强 (U+5F3A) ; 「厶」の部分が「口」となる字形
- 研 → 硏 (U+784F) ; 旁が「餠」の旁から1、5画目を除いた部分となる字形
- 内 → 內 (U+5167) ; 「人」の部分が「入」となる字形
- 勤 → 勤 (U+FA34) ; 艸冠が「廿」となる字形
- 勉 → 勉 (U+FA33) ; 「免」の部分が「俛」の旁部分となる字形
- 侮 → 侮 (U+FA30) ; 「毋」の部分が「母」となる字形
- 海 → 海 (U+FA45) ; 「毋」の部分が「母」となる字形
- 器 → 器 (U+FA38) ; 「大」の部分が「犬」となる字形
- 社 → 社 (U+FA4C) ; 偏が「示」となる字形
- 都 → 都 (U+FA26) ; 「者」の部分が「偖」の旁部分となる字形
- 郎 → 郞 (U+90DE) ; 偏が「良」となる字形
- 者 → 者 (U+FA5B) ; 「偖」の旁部分となる字形
- 諸 → 諸 (U+FA22) ; 「者」の部分が「偖」の旁部分となる字形
- 益 → 益 (U+FA17) ; 「縊」の旁部分となる字形
- 註: 異体字セレクタに対応したブラウザ及びフォントを利用することで、原文に近い字体を表現することができます。対応していない場合は、基底となる文字がそのまま表示されます。
- 註: この文書ではルビが使用されています。ここでは「単語」の形で再現しています。一部の古いブラウザでは、ルビが正しく見えない場合があります。
- 第一 技 術󠄁 の 力 大 和 田 建󠄁 樹
一、 | 太刀佩き銃執る | | 人ありてこそ | 、 | 國 家
の 侮辱を | | | 外より受けず。 |
| 田 畑に耕󠄁す | | 人ありてこそ | 、 | 居ながら得らるる | | | 命 の 禾 糓。 |
| 賴もしきは | | 技󠄂 術󠄁 の 力 | 。」 |
二、 | 海 外 萬 里の | | 波濤を越えて | 、 | 我等が家庭󠄁に | | | 持ち運󠄁ばるる、 |
| 日 用 便󠄁 利の | | 數 千 の 器 | 。 | 金銀かがやく | | | 家 身 の 飾󠄁 り。 |
| 賴もしきは | | 技󠄂 術󠄁 の 力 | 。」 |
三、 | 思へば我が織󠄂る | | 此 の 布 錦 | 、 | 何くの誰が身を | | | 明日まとふらん。 |
| 妙なる色どり | 、 | 亂 れ ぬ 糸 目 | 、 | 天工うばひし | | | 其 花󠄁 紅 葉。 |
| 賴もしきは | | 技󠄂 術󠄁 の 力 | 。」 |
- 第二 真󠄁 の 技 𧗷 者 大 和 田 建󠄁 樹
- 一、並べる機械の中に立つ、我等が衣は破れたり。
- 夜晝動かす手と足は、油と塵とに汚れたり。」
- 二、學力淺く官位なく、富もなければ名もあらず、
- されど飽󠄁食󠄁暖󠄁衣して、心は平󠄁和に滿たされぬ。
- 三、廻󠄀る車のたゆみなく、右と左を爭はで、
- 勤勉事に忍󠄁びなば、成󠄁功つひに身に落ちん。」
- 四、賴めや我なす事每に、誠󠄁の一字を守りつつ、
- 鞴の音󠄁も槌音󠄁も、天に響󠄃かん其時を。」
- 第三 工 業 の 花 大 和 田 建󠄁 樹
- 一、千變萬化󠄁かぎりなき、自然の不思議に驚きて、
- 及󠄁ばぬものと恐󠄁れしは、過󠄁ぎし昔の人ごころ。」
- 二、今は宇宙の現象󠄂も、其の理を究め使󠄁役して、
- 我が人生の利器と爲す、文󠄁明開化󠄁世のすすみ。」
- 三、陸には鐵道󠄁網󠄂張りて、千里の道󠄁も遠󠄁からず、
- 海には船󠄂舶波を蹴て、海外萬里も皆となり。」
- 四、トン子ル山に貫き通󠄁し、釣橋河に架けわたし、
- 自然の障󠄂りもゆめとのみ、消󠄁えゆく人智の大進󠄁步。」
- 五、雲間を照らす電も、用ひて我手の物とせし、
- 電燈・電話・電信機、ただ是れ學理の賜物ぞ。」
- 六、かくまで月日にすすみなば、空󠄁飛ぶ舟も作られて、
- 雲より雲に旅󠄁行する、道󠄁ひらけんも時の間ぞ。」
- 七、海陸武器のたたかひも、實業平󠄁和の戰も、
- 勝󠄁敗ひとへに工業の、力を仰ぐ今の時。」
- 八、胸の勳章、手の指環、身に着る織󠄂物染物も、
- 何れか益ある技󠄂術󠄁者の、咲󠄁かせし譽れの花󠄁ならぬ。」
- 九、國の盛󠄁衰、世の榮枯、全󠄁力その手に支󠄂配する、
- 工業技術󠄁の未來こそ、思へば社會の勝󠄁利者ぞ」
- 一〇、よしや油に塗るとも、よしや藥に汚るとも、
- 天下の進󠄁步を掌中に、握る身こそは愉󠄁快なれ。」
- 一一、いざ我友よ、諸共に、この快樂と名譽ある、
- 工業世界に身を立てて、理想の天地を作るべし。」
- 第四 文 化 の 恩 人 大 和 田 建󠄁 樹
- 一、ゼームス、ワット
- かぶせし蓋を押し上げて、沸き立つ湯氣の力より、
- いく年月の辛苦經て、蒸氣機關を發明し、
- 不㧞の功を奏したる、ワットは世界の大偉人。」
- 二、ジヨージ、スチブンソン
- 父󠄁は炭󠄁坑火夫たりし、貧󠄁家の內に身を起󠄁し、
- ただ熱心と勉强と、鐵道󠄁事業の發明に、
- 不朽の名譽を博󠄁したる、スチブンソンは世の恩者。」
- 三、ジヤックハード
- 貧󠄁賤その身を玉成󠄁し、製し出だせる機織󠄂機、
- リヨンの都を風靡して、時の帝󠄁に皇后に、
- 知遇󠄁を得たるシヤックハード〔ママ〕、天下の志士の好模範。」
- 四、トーマス、エヂソン
- 身は鐵道󠄁の小ボーイ、實驗室を我部屋に、
- つくりて硏きし學成󠄁りて、發明遂󠄂げたる電燈の、
- めぐみを遺󠄁すエヂソンは、地球を照らす光なり。」
- 五、左 甚 五 郞
- わがたのしみは貧󠄁しきに、ありと歌ひて里人の、
- 笑ふも知らず顧みず、一心刀を手に執りて、
- 彫󠄁刻つとめし甚五郞、「左」の名こそ八千代なれ。」
この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
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