小学校ノ学科及其程度
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[編集]文部省令第八号
勅令第十四号小学校令第十二条ニ基キ小学校ノ学科及其程度ヲ定ムルコト左ノ如シ
明治十九年五月二十五日文部大臣森有礼
小学校ノ学科及其程度
第一条 尋常小学校ノ修業年限ヲ四箇年トシ高等小学校ノ修業年限ヲ四箇年トス
第二条 尋常小学校ノ学科ハ修身読書作文習字算術体操トス土地ノ情況ニ因テハ図画唱歌ノ一科若クハ二科ヲ加フルコトヲ得
第三条 高等小学校ノ学科ハ修身読書作文習字算術地理歴史理科図画唱歌体操裁縫女児トス土地ノ情況ニ因テハ英語農業手工商業ノ一科若クハ二科ヲ加フルコトヲ得唱歌ハ之ヲ欠クモ妨ケナシ
第四条 土地ノ情況ニ因テハ小学校ニ温習科ヲ設ケ六箇月以上十二箇月以内児童ヲシテ既修ノ学科ヲ温習シ且之ヲ補修セシムルコトヲ得
但尋常小学校ニ於テハ修業年限ノ外高等小学校ニ於テハ修業年限ノ内ニテ之ヲ設クヘシ
第五条 尋常小学校ニ於テハ児童ノ数八十人以下高等小学校ニ於テハ六十人以下ハ教員一人ヲ以テ之ヲ教授スルコトヲ得
第六条 小学校ニ於テ教員二人ヲ置クトキハ二学級ヲ設クヘシ児童ノ数百二十人ヲ超フルトキハ三学級トナスヘシ
但教員三人以上ヲ置クトキハ本文ニ準シテ学級ヲ設クヘシ
第七条 小学校ハ一箇年内凡八週間及日曜日大祭日祝日ハ休業スヘシ
但土曜日ハ午後休業スルコトヲ得
第八条 小学校ノ授業時間ハ毎日凡五時トス
第九条 各学科ノ毎週授業時間凡左ノ如シ
尋常小学校 | 高等小学校 | ||
修身 | 一時三十分 | 一時三十分 | |
読書 作文 習字 |
十四時 | 十時 | |
算術 | 六時 | 六時 | |
地理 歴史 |
四時 | ||
理科 | 二時 | ||
図画 | 二時 | ||
唱歌 体操 |
六時 | 五時 | |
裁縫 | 二時乃至六時 |
第十条 各学科ノ程度左ノ如シ
修身 小学校ニ於テハ内外古今人士ノ善良ノ言行ニ就キ児童ニ適切ニシテ理会シ易キ簡易ナル事柄ヲ談話シ日常ノ作法ヲ教ヘ教員身自ラ言行ノ模範トナリ児童ヲシテ善ク之ニ習ハシムルヲ以テ専要トス
読書 尋常小学科ニ於テハ仮名仮名ノ単語短句簡易ナル漢字交リノ短句及地理歴史理科ノ事項ヲ交ヘタル漢字交リ文高等小学科ニ於テハ稍之ヨリ高キ漢字交リ文
作文 尋常小学科ニ於テハ仮名ノ単語短句簡易ナル漢字交リノ短句漢字交リ文口上書類及日用書類高等小学科ニ於テハ漢字交リ文及日用書類
習字 尋常小学科ニ於テハ仮名日用文字口上書類及日用書類行書高等小学科ニ於テハ日用文字及日用書類楷書行書草書
算術 尋常小学科ニ於テハ珠算ヲ用ヒ加法減法乗法除法普通ノ度量衡貨幣日用適切ノ雑題及暗算高等小学科ニ於テハ筆算ヲ用ヒ算用数字簡易ナル命位記数加法減法乗法除法分数小数比例利息算雑題簿記ノ概略及暗算
地理 地理ハ学校近傍ノ地形其郷土郡区府県本邦地理地球ノ形状昼夜四季ノ原由大洋大洲ノ名目等及外国地理ノ概略
歴史 歴史ハ建国ノ体制神武天皇ノ即位王朝ノ政治藤原氏ノ専権覇府ノ創立徳川氏ノ治績王政維新外国交通貿易及世態文物人情風俗ノ変遷等ニ関シ重要ナル事柄及忠良賢哲ノ事蹟
理科 理科ハ果実穀物菜蔬草木人体禽獣虫魚金銀銅鉄等人生ニ最モ緊切ノ関係アルモノ日月星空気温度水蒸気雲露霜雪霰氷雷電風雨火山地震潮汐燃焼錆腐敗喞筒噴水音響返響時計寒暖計晴雨計蒸気器械眼鏡色虹槓杆滑車天秤[1]磁石電信機等日常児童ノ目撃シ得ル所ノモノ
図画 図画ハ自在画及用器画
唱歌 唱歌ハ単音唱歌複音唱歌
体操 体操ハ幼年ノ児童ニハ遊戯稍長シタル児童ニハ軽体操男児ニハ隊列運動ヲ交フ
裁縫 裁縫ハ運針法襦袢単物袷等通常衣服類ノ縫方裁方及補綴方
- 底本中の旧字を新字に改めた。
- 脚註:
- ↑ 『官報』では「秤」がノ木偏ではなく木偏。『法令全書』ではノ木偏。
関連項目
[編集]- 小学校令 (明治19年勅令第14号)
- 小学校ノ学科及其程度実施ノ方法ハ府知事県令ヲシテ定メシム (明治19年文部省訓令第5号)