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官報 (1890年05月17日)

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官報 號外 明治二十三年五月十七日 火曜日 內閣官報局

法律

朕府縣制ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム

御名御璽
明治二十三年五月十七日

內閣總理大臣兼內務大臣 伯爵山縣有朋


法律第三十五號

府縣制
第一章 總則
第一條 
府縣ノ廢置分合及府縣境界ノ變更ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
府縣境界ニ當ル郡市町村ノ境界ヲ變更スルトキハ府縣境界モ亦自ラ變更スルモノトス
本條ノ處分ニ付其財產處分ヲ要スルトキハ內務大臣之ヲ定ム但特ニ法律ノ規定アルモノハ此限ニ在ラス
第二章 府縣會
第二條 
府縣會ハ府縣內郡市ニ於テ選擧シタル議員ヲ以テ之ヲ組織ス
郡市ニ於テ選擧スヘキ府縣會議員ノ定數ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム但各郡市ヲシテ少クトモ一人ノ議員ヲ選擧セシムヘシ
第三條 
府縣會議員ノ選擧ハ市ニ在テハ市會及市參事會會同シ市長ヲ會長トシ郡ニ在テハ郡會及郡參事會會同シ郡長ヲ會長トシ左ノ規定ニ依リ之ヲ行フヘシ但會長ハ投票ニ加ハラサルモノトス
一 投票ハ選擧人自ラ會長ノ面前ニ於テ之ヲ投票函ニ投入ス
投票ハ匿名トス
二 左ノ投票ハ之ヲ無効トス
一 記載セル人名ノ讀ミ難キモノ
二 被選人ノ何人タルヲ確認シ難キモノ
三 被選權ナキ人名ヲ記載スルモノ
四 被選人氏名ノ外他ノ文字ヲ記入スルモノ但爵位職業身分住所又ハ敬稱ハ此限ニ在ラス
本項一ヨリ三ニ至ルノ場合ニ於テ票中他ニ列記ノ被選人ニ付テハ仍其効アリトス
三 有効投票ノ多數ヲ得タル者ヲ以テ當選トス投票ノ數相同キモノハ年長者ヲ取リ年齡相同キトキハ會長自ラ抽籤シテ其當選ヲ定ム
第四條 
府縣內市町村ノ公民中選擧權ヲ有シ其府縣ニ於テ一年以來直接國稅十圓以上ヲ納ムル者ハ府縣會ノ被選權ヲ有ス
住居ヲ移シタル爲市町村ノ公民權ヲ失ヒタル者其住居同府縣內ニ在リ且他ノ要件ヲ失ハサルトキハ仍府縣會ノ被選權ヲ有ス
其府〈東京府ハ警視廳トモ〉縣ノ官吏及有給吏員神官諸宗ノ僧侶又ハ敎師ハ府縣會議員タルコトヲ得ス
前項ノ外ノ官吏ニシテ當選シ之ニ應セントスルトキハ本屬長官ノ許可ヲ受クヘシ
府縣會議員ハ衆議院議員ト相兼ヌルコトヲ得ス
第五條 
府縣會議員ハ名譽職トス其任期ハ四年トシ每二年其半數ヲ改選ス若其員數二分シ難キトキハ初會ニ於テ多數ノ一半ヲ解任セシム初會ニ於テ解任スヘキ者ハ府縣會議長府縣會ニ於テ自ラ抽籤シテ之ヲ定ム
解任ノ議員ハ再選セラルヽコトヲ得

第六條 
議員中闕員アルトキハ遲クトモ六箇月以內ニ補闕選擧ヲ行フヘシ
補闕議員ハ其前任者ノ殘任期間在職スルモノトス
第七條 
府縣會議員ノ選擧ハ府縣知事ノ吿示ニ依リ之ヲ行フヘシ其吿示ハ遲クトモ選擧ノ日ヨリ十四日前ニ之ヲ發スヘシ
第八條 
選舉ヲ終リ當選人ノ定マリタルトキハ郡長市長ハ直ニ當選人ニ通知シ及府縣知事ニ報吿スヘシ
當選人其當選ノ通知ヲ受ケタルトキハ五日以內ニ其當選ヲ承諾スルヤ否ヲ府縣知事ニ屆出ヘシ
一人ニシテ數箇所ノ選擧ニ當リタルトキハ同期限內ニ何レノ選擧ニ應スヘキコトヲ府縣知事ニ屆出ヘシ
前二項ノ屆出ヲ其期限內ニ爲サヽルトキハ總テ選擧ヲ辭スル者ト視做スヘシ
第九條 
當選人其當選ヲ辭シ又ハ承諾ノ屆出ヲ爲サヽルトキハ府縣知事ハ其郡市ヲシテ十日以內ニ更ニ選擧ヲ行ハシムヘシ
第十條 
當選人確定シタルトキハ府縣知事ハ直ニ當選證書ヲ付與シ及管內ニ吿示スヘシ
第十一條 
選擧人選擧ノ効力ニ關シテ訴願セントスルトキハ選擧ノ日ヨリ十四日以內ニ之ヲ府縣知事ニ申立ルコトヲ得
第十二條 
當選人其當選ノ際資格ノ要件ヲ有セサリシコト發覺スルトキハ其當選ヲ無効トス
當選人當選後資格ノ要件ヲ失フトキハ議員ノ職ヲ失フモノトス
第十三條 
府縣會ニ於テ其議員中議員ノ資格ヲ有セサル者アルコトヲ發見スルトキハ其議決ヲ以テ之ヲ府縣知事ニ通知スヘシ
第十四條 
府縣會議員被選權ノ有無及選舉ノ効力ハ府縣參事會之ヲ裁決ス
府縣參事會ノ裁決ニ不服ナル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十五條 
府縣會ノ議決スヘキ事件左ノ如シ
一 府縣ノ歲入出豫算ヲ定ムル事
二 決算報吿ヲ認定スル事
三 府縣稅ノ賦課徵收方法ヲ定ムル事
四 府縣有不動產ノ賣買交換讓渡讓受竝ニ質入書入ノ事
五 歲入出豫算ヲ以テ定ルモノヲ除ク外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ及權利ノ棄却ヲ爲ス事
六 府縣有財產ノ管理及營造物ノ維持方法ヲ定ムル事
其他法律命令ニ依リ府縣會ノ權限ニ屬スル事項ヲ議決ス
第十六條 
府縣會ハ其權限ニ屬スル事件ヲ府縣參事會ニ委任スルコトヲ得
第十七條 
府縣會ハ官廳ノ諮問アルトキハ意見ヲ陳述スヘシ
府縣會ハ其府縣ノ全部又ハ一部ノ公益ニ關スル事件ニ付府縣知事又ハ內務大臣ニ建議スルコトヲ得
第十八條 
府縣會議員ハ選擧人ノ指示若ハ委囑ヲ受クヘカラサルモノトス
第十九條
府縣會ハ改選後ノ初會ニ於テ議長及副議長各一名ヲ互選スヘシ其任期ハ議員ノ任期ニ從フ
議長副議長其ニ故障アルトキハ臨時議長ヲ互選スヘシ
第二十條
府縣知事若ハ特ニ知事ノ委任ヲ受ケタル府縣ノ官吏若ハ吏員ハ府縣會ノ議事ニ參與スルコトヲ得但議決ニ加ルコトヲ得ス
前項ノ列席者ニ於テ發言ヲ求ムルトキハ議長ハ何時ニテモ之ヲ許スヘシ
第二十一條 
府縣會ハ每年一回秋季ニ於テ通營會ヲ開ク通常會ノ會期ハ三十日以內トス其他必要アルトキハ其事件ニ限リ七日以內ヲ會期トシテ臨時會ヲ開クコトヲ得
府縣會ハ府縣知事之ヲ招集ス其招集ハ開會ノ日ヨリ十四日前迄ニ吿示スヘシ但急施ヲ要スル場合ハ比限ニ在ラス
府縣會ハ府縣知事之ヲ開閉ス
第二十二條
府縣會ハ議員三分ノ一以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開キ議決ヲ爲スコトヲ得ス
第二十三條 
府縣會ノ議決ハ過牛數ニ依ル可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第二十四條
議員ハ自己及其父母兄弟若ハ妻子ノ一身上ニ關スル事件ニ付テハ會議ノ承諾ヲ經ルニ非サレハ府縣會ノ議事ニ參與シ及議決ニ加ハルコトヲ得ス
第二十五條
府縣會ニ於テ選擧ヲ行フトキハ第三條ノ規定ニ依ルヘシ
第二十六條 
府縣會ノ會議ハ公開ス但左ノ場合ハ比限ニ在ラス
一 府縣知事ヨリ傍聽禁止ノ要求ヲ受ケタルトキ
二 議長又ハ議員五名以上ノ發議ニ由リ傍聽禁止ヲ可決シタルトキ
議長又ハ議員ノ發議ハ討論ヲ用ヰスシテ其可否ヲ決スヘシ
第二十七條 
東京府京都府大阪府府會ノ職權ニ屬スル事件ニシテ專ラ東京市京都市大阪市ニ關スルモノト專ラ其他ノ部分ニ關スルモノト分別スルコトヲ要スルモノアルトキハ府會ノ議決ニ依リ之ヲ分別スルコトヲ得
前項ノ分別ニ依リ專ラ東京市京都市大阪市ニ關スルモノハ其郡部議員ニ於テ其事件ノ議事ニ參與シ及議決ニ加ハルコトヲ得ス其他ノ部分ニ關スルモノハ市部議員ニ於テ其事件ノ議事ニ參與シ及議決ニ加ルヨトヲ得ス此場合ニ於テハ郡部議員市部議員ニ於テ各臨時議長ヲ互選スヘシ
比法律中東京府京都府大阪府府會ノ市部議員トアルハ東京市京都市大阪市市會ニ於テ選擧シタル議員ヲ云ヒ郡部議員トアルハ東京市京都市大阪市ヲ除キ其他ノ部分ニ於テ選擧シタル議員ヲ云フ
第二十八條 
議長ハ議事ノ順序ヲ定メ會議及選擧ノ事ヲ總理シ其日ノ會議ヲ開閉シ竝ニ延會シ議場ノ秩序ヲ保持ス
第二十九條 
議員ハ會議中無禮ノ語ヲ用ヰ及他人ノ身上ニ涉リ言論スルコトヲ得ス
第三十條 
會議中此法律若ハ議事規則ニ違ヒ其他議場ノ秩序ヲ紊ル議員アルトキハ議長ハ之ヲ警戒シ又ハ制止シ又ハ發言ヲ取消サシム命ニ從サルトキハ議長ハ當日ノ會議ヲ終ルマテ發言ヲ禁止シ又ハ議場ノ外ニ退去セシムヘシ若强抗ニ涉ル者アルトキハ警察官ニ命シテ之ヲ退去セシムルコトヲ得
議場騷擾ニシテ整理シ難キトキハ議長ハ當日ノ會議ヲ中止シ又ハ之ヲ閉ツルコトヲ得
第三十一條 
議員中議場ノ秩序ヲ紊ルコト二回以上ニ及フ者アルトキ議長又ハ議員ノ發議ニ依リ議會ノ議決ヲ以テ七日以內其出席ヲ停止スルヨトヲ得
第三十二條 
會議ノ傍聽人公然可否ヲ表シ又ハ喧騷ニ涉リ其他議事ノ妨害ヲ爲ス者アルトキハ議長ハ之ヲ制止シ若命ニ從ハサルトキハ警察官ニ命シテ之ヲ退場セシムルコトヲ得
傍聽席騷擾ナルトキハ議長ハ總テノ傍聽人ヲ退場セシムルコトヲ得
第三十三條 
府縣知事若特ニ其委任ヲ受ケタル官吏若ハ吏員及議員ハ議場ノ秩序ヲ紊リ又ハ議場ノ妨害ヲ爲ス者アルトキハ議長ノ注意ヲ喚起スルコトヲ得
第三十四條 
第三十條第三十二條ニ依リ議長ノ命ニ應セシムル爲府縣知事〈東京府ハ警視總監〉ハ每會期警察官ニ議場掛專務ヲ命スヘシ
第三十五條 
府縣會ニ書記ヲ置キ議長ニ隷屬シテ庶務ヲ掌理セシム
書記ハ議長之ヲ選任ス
第三十六條 
府縣會ハ書記ヲシテ議事錄ヲ製シ議決及選擧ノ顚末竝ニ出席議員ノ氏名ヲ記錄セシムヘシ議事錄ハ議長及議員二名以上之ニ署名スヘシ其議員ハ會議ノ前議會ニ於テ豫メ之ヲ定メ議事錄中ニ其氏名ヲ記載シ置クヘシ
第三十七條 
府縣會ハ議事規則及傍聽人取締規則ヲ設ケ內務大臣ノ認可ヲ受テ之ヲ施行スヘシ
第三章 府縣參事會吏員及委員
第三十八條 
府縣ニ府縣參事會ヲ置キ府縣知事高等官二名及名譽職參事會員ヲ以テ之ヲ組織ス
府ノ名譽職參事會員ハ八名トス郡部議員ニ於テ其議員中ヨリ四名ヲ互選シ市部議員ニ於テ其議員中ヨリ四名ヲ互選スヘシ
縣ノ名譽職參事會員ハ四名トス縣會ニ於テ其議員中ヨリ之ヲ互選スヘシ
第三十九條 
府縣參事會員タル高等官ハ府縣廳ニ奉職ノ高等官中ヨリ內務大臣之ヲ命ス
第四十條 
府縣參事會ハ府縣知事ヲ以テ議長トス議長故障アルトキハ高等官會員之ヲ代理ス
第四十一條 
府縣會ハ每通常會ニ於テ名譽職參事會員ノ補充員府ハ八名縣ハ四名ヲ互選シ其名譽職參事會員ノ闕員アルトキハ府縣知事ニ於テ補充員中投票多數ノ順次ニ依リ之ヲ補充スヘシ但其既ニ補充シタル者ハ前任者ノ任期中在職スルモノトス
第四十二條 
名譽職參事會員ノ任期ハ議員ノ任期ニ從フ但任期滿限ノ後ト雖後任者就職ノ日マテ在職スルモノトス

名譽職參事會員ハ補充員ヲ以テ其闕員ヲ補充シ仍闕員ヲ生シタル場合ニ於テハ二箇月以內ニ臨時其選擧ヲ行フヘシ
第四十三條 
府縣參事會ノ職務權限左ノ如シ
一 府縣會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ其委任ヲ受ケタルモノヲ議決スル事
二 府縣會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ府縣知事ニ於テ府縣會ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキ府縣會ニ代テ議決ヲ爲ス事
三 府縣會ノ定メタル方法ノ範圍內ニ於テ府縣有財產ノ管理又ハ營造物ノ維持ニ關シ必要ナル事件ニ付議決ヲ爲ス事
四 府縣ノ費用ヲ以テ支辨スル工事ノ次第順序其他必要ナル事件ニ付議決ヲ爲ス事
五 府縣知事及其他官廳ノ諮問ニ對シ意見ヲ述フル事
六 府縣知事ヨリ發スル府縣會議案ニ付府縣知事ニ意見ヲ述ヘ及會議ニ報吿スル事
七 臨時必要アルトキ府縣ノ出納ヲ檢査スル事
其他法律命命ニ依リ府縣參事會ノ權限ニ屬スル事務ヲ處理ス
第四十四條 
府縣參事會ハ府縣知事之ヲ招集ス
會員半數以上ノ請求アルトキハ府縣知事ハ府縣參事會ヲ招集スヘシ
第四十五條 
府縣參事會ノ會議ハ傍聽ヲ許サス
第四十六條 
府縣參事會ハ議長又ハ其代理者及名譽職會員半數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開キ議決ヲ爲スルコトヲ得ス但第四十三條第二ノ議決ヲ爲ストキハ高等官會員ハ其議決ニ加ハラサルモノトス
府縣參事會ノ議決ハ過半數ニ依ル可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
議決ノ事件ハ之ヲ議事錄ニ登記シ議長及名譽職參事會員二名以上之ニ署名スヘシ
第四十七條 
府縣參事會員ハ自己及其父母兄弟若ハ妻子ノ一身上ニ關スル事件ニ付府縣參事會ノ議事ニ參與シ及議決ニ加ハルコトヲ得ス
前項規定ノ爲出席ノ參事會員減少シテ前條第一項ノ數ヲ得サルトキハ府縣知事ハ補充員ヲ以テ臨時之ニ充テ仍其數ヲ得サルトキハ府縣會議員ニシテ該事件ニ關係ナキ者ノ內ヨリ臨時ニ指名シ名譽職參事會員ノ不足ヲ補充シテ第三十八條ノ定數ニ滿タシムヘシ
第四十八條 
市制町村制ノ規定ニ依リ府縣參事會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ二府縣以上ノ郡市町村ニ交涉スルモノアルトキハ其府縣知事ノ具狀ニ依リ內務大臣ニ於テ其事件ヲ管轄スヘキ府縣參事會ヲ指定スヘシ
第四十九條 
東京府京都府大阪府參事會ノ職權ニ屬スル事件ニシテ專ラ東京市京都市大阪市ニ關スルモノハ其郡部名譽職參事會員ニ於テ其事件ノ議事ニ參與シ及議決ニ加ハルコトヲ得ス其東京市京都市大阪市外ノ市町村若ハ郡ニ關スルモノハ市部名譽職參事會員ニ於テ其事件ノ議事ニ參與シ及議決ニ加ハルコトヲ得ス
此法律中東京府京都府大阪府府會ノ市部名譽職參事會員トアルハ市部議員ニ於テ選擧シタル名譽職參事會員ヲ云ヒ郡部名譽職參事會員トアルハ郡部議員ニ於テ選擧シタル名譽職參事會員ヲ云フ
第五十條 
府縣知事ハ府縣會及府縣參事會ノ議決ヲ施行シ及府縣有財產及營造物ヲ管理シ竝ニ府縣ノ費用ヲ以テ支辨スル工事ヲ執行ス
府縣ニ於テ他人ニ對シ義務ヲ負擔スヘキ證書及委任狀ニハ知事ノ外名譽職參事會員二名以上之ニ署名捺印スヘシ
前項ノ文書中府縣會又ハ參事會ノ職權ニ屬スル事件ニシテ其議決ヲ經タルモノハ總テ其旨ヲ記入スヘシ
第五十一條 
府縣會ニ於テ名譽職參事會員ヲ選擧セス又ハ參事會成立セス又ハ招集ニ應セサルトキハ參事會成立シ又ハ招集ニ應スル迄府縣知事ハ府縣參事會ノ權限ニ屬スル事件ヲ專決處分スルコトヲ得
非常事變ニ際シ府縣參事會ヲ招集スルノ暇ナク又ハ名譽職參事會員ノ出席半數以上ニ至ラサルトキハ府縣知事ハ府縣參事會ノ權限ニ屬スル事件ヲ專決處分スルコトヲ得
本條ノ處分ハ次回ノ府縣會會議ニ於テ之ヲ報吿スヘシ
第五十二條 
府縣知事ハ府縣會ノ議決ニ依リ府縣ノ費用ヲ以テ府縣有財產又ハ營造物ノ管理若ハ土木工事ニ必要ナル有給ノ府縣吏員ヲ置クコトヲ得但府縣吏員ハ府縣知事ニ於テ之ヲ任免監督ス
府縣吏員ノ給料手當退隱料等ハ府縣會ノ議決スル所ニ依ル其身元保證金ヲ要スルトキ其金額ヲ定ムルモ赤同シ
第五十三條 
府縣知事ハ府縣會ノ議決ヲ經テ臨時又ハ常設ノ委員ヲ置キ府縣事務ノ一部ヲ調査セシメ又ハ府縣有財產及營造物ノ一部ヲ管理セシムルコトヲ得其選舉又ハ選任ノ方法及任期ハ府縣會ノ議決スル所ニ依ル
委員ハ名譽職トス
第四章 府縣ノ會計
第五十四條 
府縣有財產及營造物管理ノ費用府縣會府縣參事會及委員ノ費用府縣吏員ノ給料退隱料其他諸給與及從來法律命令若ハ慣例ニ依リ竝ニ將來法律勅令ニ依リ府縣ノ負擔ト定ムル事件ノ費用ハ府縣ニ於テ之ヲ支辨スヘシ
第五十五條 
名譽職參事會員及委員ニハ旅費滯在手當及出務日當ヲ給スルコトヲ得府縣會議員ニハ旅費及滯在手當ニ限リ之ヲ給スルコトヲ得但滯在手當出務日當ヲ倂セ一日一圓五十錢ヲ超ユルコトヲ得ス
第五十六條 
府縣ノ支出ハ府縣稅其他府縣ノ收入ヲ以テ之ニ充ツ
第五十七條 
府縣稅目及其賦課徵收方法ニ關スル規定ハ此法律ニ依リ變更シタルモノヲ除クノ外從前地方稅ニ關スル規定ニ依ル
第五十八條 
府縣知事ハ府縣會ノ議決ニ依リ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受ケ其府縣ノ全部若ハ市制施行ノ地ニ家屋稅ヲ賦課スルコトヲ得但家屋稅賦課ノ地ニ於テハ戶數割ヲ賊課スルコトヲ得ス
第五十九條 
府縣內ニ土地家屋ヲ所有シ又ハ店舖ヲ定メテ營業ヲ爲ス者ハ其土地家屋營業ニ對シテ賦課スル府縣稅ヲ納ムルモノトス其法人タルトキモ亦同シ但郵便電信及官設鐵道ノ業ハ比限ニ在ラス
府縣內ニ一戶ヲ構ヘ三箇月以上ニ及フ者ハ其戶數ニ對シテ府縣稅ヲ納ムルモノトス但其課稅ハ一戶ヲ構ヘタル初ニ遡リ徵收スヘシ
第六十條 
府縣稅ノ賦課ニ付テハ納稅者カ其府縣外ニ於テ店舖ヲ定メタル營業ノ收入ヲ其標準ニ算入スルコトヲ得ス
第六十一條 
府縣會ハ各市町村內ニ於テ徵收スル府縣稅賦課ノ細目ニ係ル事項ヲ關係市町村會ノ議決ニ付スルコトヲ得
前項市町村會ノ議決ハ法律命令又ハ府縣會ノ議決ニ抵觸スルコトヲ得ス
市町村會ニ於テ府縣會ノ指定シタル期限內ニ其議決ヲ爲サヽルトキ府縣參事會之ヲ議決スヘシ
第六十二條 
營業ノ狀況又ハ收入ヲ標準トシテ賦課スル府縣稅ニ付テハ府縣知事ハ府縣會ノ議決ヲ經テ賦課額調査ノ爲其府縣內郡市ニ調査委員ヲ置クコトヲ得
第六十三條 
府縣稅ノ免除ハ市町村稅免除ノ規定ニ依ル
第六十四條 
府縣會ハ府縣內郡市町村ノ土木工事又ハ府縣內ノ敎育衞生勸業及慈善ノ事業若ハ營造物ニ對シ補助金ヲ與フルコトヲ議決スルコトヲ得
第六十五條 
府縣會ハ家屋稅又ハ戶數割ノ全部又ハ一部ノ代納トシテ府縣ノ費用ヲ以テ支辨スル事業ニ對シ夫役又ハ現品ヲ出スヲ許スコトヲ議決スルコトヲ得
第六十六條 
府縣稅ハ納稅義務ノ起リタル翌月ノ初ヨリ免稅理由ノ生シタル月ノ終迄月割ヲ以テ之ヲ徵收スヘシ但日割ヲ以テ徵收スルモノハ比限ニ在ラス
納稅義務消滅シ又ハ變更スルトキハ納稅者ヨリ之ヲ當該官廳ニ屆出ヘシ其屆出ヲ爲シタル月ノ終迄ハ從前ノ稅ヲ徵收スヘシ
物件ヲ目的トシ納期ヲ定メテ一定ノ額ヲ賦課スル府縣稅ハ其納期ニ於テ納稅義務ヲ負フ者其額ヲ納ムヘシ
府縣稅ノ前納ニ係ルモノハ其義務ノ消滅シ又ハ他人ニ移轉シタル場合ト雖之ヲ還付セス但其義務ノ移轉ヲ受ケタル者ハ其前納期限ノ終迄納稅セサルモノトス
第六十七條 
府縣稅ハ法律命令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルモノヲ除クノ外各市町村長ニ於テ市町村稅徵收ノ手續ニ依リ之ヲ徵收スヘシ
第六十八條 
府縣稅ノ賦課ニ對シ錯誤アルコトヲ發見シタル者ハ徵稅傳令書ノ交付後三箇月以內ニ之ヲ其傳令書ヲ發シタル廳ニ申立ルコトヲ得但申立ノ爲其納稅ヲ拒ムコトヲ得ス
第六十九條 
前條ノ申立ヲ爲シタル後二十一日以內ニ其更正ヲ得サルトキ又ハ其更正ヲ得ルモ之ニ不服ナルトキハ十四日以內ニ郡參事會ニ訴願シ郡參事會ノ裁決ニ不服ナルトキハ其裁決書ヲ交付シ又ハ之ヲ吿知シタル日ヨリ十四日以內ニ府縣參事會ニ訴願シ府縣參事會ノ裁決ニ不服ナルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得但市ニ在テハ府縣參事會ニ訴願シ府縣參事會ノ裁決ニ不服ナルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得

第七十條 
府縣稅ノ免稅若ハ納稅延期ハ特別ノ事情アルモノニ限リ府縣知事ニ於テ府縣參事會ノ議決ヲ經テ之ヲ許スコトヲ得
府縣稅ノ滯納處分ハ國稅滯納處分法ニ依ル
第七十一條 
東京府京都府大阪府ニ在テハ府ノ支出ニ充ツヘキ府稅ヲ市部及郡部ニ分賦ス其分賦ノ割合ハ府會ニ於テ之ヲ議決シ內務大臣ノ認可ラ受ケテ施行スヘシ
前項市部ノ分賦額ハ市ニ於テ之ヲ市ノ豫算ニ編入シ市稅トシテ徵收シ其總額ヲ府金庫ニ納ムヘシ郡部ノ分賦額ハ此法律ノ規定ニ依リ之ヲ徵收ス但市部議員ハ其徵收ニ關スル議事ニ參與シ及議決ニ加ラサルモノトス此場合ニ於テ若議長副議長市部議員ナルトキハ郡部議員ニ於テ臨時議長ヲ互選スヘシ
第七十二條 
市制施行ノ府縣ニ在テハ郡廳舍建築修繕費郡吏員給料旅費及廳費ハ市ヲ除キ其他ノ部分ノミヲシテ其負擔ニ任セシムヘシ
前項ノ府縣ニ在テハ其府縣ノ支出費目中市ト其他ノ部分ト利害ノ厚薄ヲ異ニシ均一ノ負擔ニ任セシムルコトヲ得サルモノアルトキハ其費目ニ限リ其一方ノ負擔ヲ增加スルコトヲ得但負擔ノ割合ハ府縣會ニ於テ之ヲ議決シ內務大臣ノ許可ヲ受クヘシ若之ヲ許可スヘカラスト認ムルトキハ內務大臣之ヲ確定ス
第一項ノ負擔ニ任セシメ及第二項ニ依リ一方ノ負擔ヲ增加スルハ賦課ノ稅率ヲ增加スルニ止メ其會計ヲ異ニスルコトヲ得ス但東京府京都府大阪府ニ在テハ前條ニ依ル
前項ニ依リ稅率ヲ增加スヘキ稅目ハ府縣會ノ議決スル所ニ依ル
第七十三條 
府縣內ノ或ル部分ニ對シ特ニ利益アル土木事業ヲ起ストキハ府縣會ノ議決ニ依リ該部分ニ對多通常府縣稅賦課ノ外其利益ノ厚薄ニ應シ特ニ夫役現品ヲ增課スルコトヲ得
第七十四條 
府縣ハ其舊債元額ヲ償還スル爲又ハ天災事變ノ爲巳ムヲ得サル支出又ハ府縣ノ永久ノ利益ト爲ルヘキ支出ヲ要スルニ方リ通常ノ歲入ヲ增加スルトキハ府縣ノ負擔ニ堪ヘサルノ場合ニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依リ府縣會ノ議決ヲ以テ府縣債ヲ起スコトヲ得
府縣債ヲ起スノ議決ヲ爲ストキハ倂セテ起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定ムヘシ
府縣債償還ノ初期ハ三年以內ト爲シ年々ノ償還步合ヲ定メ起債ノ時ヨリ三十年以內ニ還了スヘシ
歲入出豫算內ノ支出ヲ爲スカ爲必要ナル一時ノ借入金ニシテ其年度內ノ收入ヲ以テ償還スヘキモノハ本條ノ例ニ依ルノ限ニ在ラス但府縣參事會ノ議決ヲ經ルコトヲ要ス
第七十五條
府縣知事ハ每年其翌年度ニ係ル歲入出豫算ヲ調製スヘシ但府縣ノ會計年度ハ政府ノ會計年度ニ同シ
豫算ハ府縣會ノ議決ニ付スルノ前府縣參事會ノ審査ニ付スヘシ若府縣知事ト府縣參事會ト意見ヲ異ニスルトキハ知事ハ參事會ノ意見ヲ豫算ニ添ヘ府縣會ニ提出スヘシ追加又ハ臨時ノ豫算ニ付テモ亦同シ
內務大臣ハ省令ヲ以テ豫算調製ノ式ヲ定メ竝ニ費目流用ニ關スル規定ヲ設クルコトヲ得
第七十六條
豫算ハ每年府縣會ノ議決ヲ取リ之ヲ內務大臣ニ報吿シ竝ニ府縣ノ公吿式ニ依リ其要領ヲ吿示スヘシ追加又ハ臨時ノ豫算ヲ議決シタル場合ニ於テモ亦同シ
府縣ノ費用ヲ以テ支辨スル事業ニシテ數年ヲ期シ施行スヘキモノ又ハ數年ヲ期シテ其費用ヲ支出スヘキモノハ府縣會ノ議決ヲ以テ其年期間各年度ノ支出額ヲ定メ繼續費ト爲スコトヲ得
豫算ヲ府縣會ニ提出スルトキハ府縣知事ハ倂セテ其府縣有財產表ヲ提出スヘシ
第七十七條 
歲入出豫算中ニ豫備費ヲ設クヘシ豫備費ハ府縣知事ニ於テ府縣參事會ノ議決ヲ經テ已ムヲ得サル豫算外ノ支出又ハ豫算超過ノ支出ニ充ツルコトヲ得但府縣會ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
第七十八條
府縣ノ收支命令ハ府縣知事之ヲ發スヘシ
第七十九條 
會計事務ヲ管理スル官吏ハ前條ノ命令アルニ非サレハ支拂ヲ爲スコトヲ得ス及其命令アルモ支出ノ豫算ナキカ又ハ豫備費支出及費目流用ノ規定ニ依ラサルトキハ支拂ヲ爲スコトヲ得ス
第八十條 
決算ハ會計事務ヲ管理スル官吏ニ於テ會計年度後三筒月以內ニ之ヲ府縣知事ニ提出シ府縣知事ハ府縣參事會ヲシテ之ヲ檢査セシメ次回ノ通常府縣會ノ認定ニ付スヘシ
決算報吿書竝ニ之ニ關スル府縣會ノ議決ハ府縣知事ヨリ之ヲ內務大臣ニ報吿シ竝ニ決算ハ府縣ノ公吿式ニ依リ其要領ヲ吿示スヘシ
第五章 監督
第八十一條 
府縣ノ行政ハ內務大臣之ヲ監督ス
第八十二條 
府縣ノ行政ニ關スル訴願ハ其事件ノ處分若ハ裁決ヲ受ケタル日ヨリ二十一日以內ニ其理由ヲ具シテ內務大臣ニ提出スヘシ
此法律ニ指定スル場合ニ於テ府縣知事ノ處分又ハ府縣參事會ノ裁決ニ不服アリテ行政裁判所ニ出訴セントスル者ハ裁決ヲ受ケタル日ヨリ二十一日以內ニ出訴スヘシ
行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ヘキ場合ニ於テハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得ス
第八十三條 
內務大臣ハ府縣行政ノ法律命令ニ背戾セサルヤ其事務錯亂澁滯セサルヤ否ヲ監視スヘシ內務大臣ハ之カ爲行政事務ニ關シテ報吿ヲ爲サシメ豫算及決算等ノ書類帳簿ヲ徵シ竝ニ實地ニ就テ事務ノ現況ヲ視察シ出納ヲ檢閱スルノ權ヲ有ス
第八十四條 
府縣會又ハ府縣參事會ノ議決公益ヲ害スト認ムルトキハ府縣知事ハ理由ヲ示シテ議決ノ執行ヲ停止シ之ヲ再議セシメ猶其議決ヲ改メサルトキ直ニ內務大臣ニ具狀シテ指揮ヲ請フヘシ
府縣會又ハ府縣參事會ノ議決其權限ヲ超エ又ハ法律命令ニ背クト認ムルトキハ府縣知事ハ其議決ヲ取消スヘシ此場合ニ於テ府縣知事ノ處分ニ不服ナルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第八十五條 
府縣會又ハ府縣參事會ニ於テ法律命令又ハ慣行ニ依テ府縣ノ負擔ニ屬スル行政上又ハ公益上必要ノ費用ヲ否決シ又ハ議決スト雖必要ノ給需ヲ缺クトキハ府縣知事ハ內務大臣ニ具狀シ其指揮ヲ請ヒ原案ヲ執行スルコトヲ得但內務大臣ハ原案金額ヲ不相當ト認ムルトキハ原案金額以內ニ於テ適當ノ金額ヲ定メ指揮スルコトヲ得
第八十六條 
府縣會招集ニ應セス又ハ成立セサルトキハ府縣知事ハ內務大臣ノ指揮ヲ請ヒ處分スルコトヲ得
前項ノ處分ハ次回ノ會議ニ於テ之ヲ報吿スヘシ
第八十七條 
府縣會又ハ府縣參事會ニ於テ其議決スヘキ議案ヲ議決セス又ハ府縣會ニ於テ招集前正當ノ手續ヲ以テ吿知セラレタル議案ヲ第二十一條第一項ニ定メタル期限內ニ議了セサル場合ニ於テ其事緊急ヲ要スルトキハ府縣知事ハ內務大臣ニ具狀シ其指揮ヲ請ヒ原案ヲ執行スルコトヲ得但其議決セス又ハ議了セサル議案歲入出豫算ニ係リ內務大臣ニ於テ原案金額ヲ不相當ト認ムルトキハ原案金額以內ニ於テ適當ノ金額ヲ定メ指揮スルコトヲ得
第八十八條
內務大臣ハ府縣ノ歲入出豫算中不適當ノ支出ト認ムル費目アルトキハ之ヲ削除シ及其府縣ノ資力ニ比シ不急ノ支出ト認ムル費目アルトキハ之ヲ削除若ハ滅殺スルコトヲ得此場合ニ於テハ收入科目中ニ就キ之ニ相當スル收入額ヲ滅殺スヘシ
第八十九條 
府縣會ノ解散ハ勅令ヲ以テス比場合ニ於テハ三箇月以內ニ議員ヲ改選スヘシ
前項解散ノ場合ニ於テハ名譽職參事會員モ亦解職スルモノトス
府縣會解散ノ後改選結了ニ至ル迄ノ間急施ヲ要スル事件アルトキハ府縣知事ハ專決處分スルコトヲ得
前項ノ處分ハ次回ノ會議ニ於テ之ヲ報吿スヘシ
第九十條 
左ノ事件ニ關スル府縣會ノ議決ハ內務大臣及大藏大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
一 新ニ府縣債ヲ起シ又ハ其額ヲ增加シ若ハ償還ノ方法ヲ變更スル事
二 地租四分ノ一ヲ超過スル府縣稅ヲ土地ニ賦課スル事
三 法律勅令ノ規定ニ依リ官廳ヨリ下渡ス步合金ニ對シ支出金額ヲ定ムル事
第九十一條 
左ノ事件ニ關スル府縣會ノ議決ハ內務大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
一 府縣有不動產ノ賣却讓渡竝ニ質入書入ノ事
二 第七十二條第二項ニ依リ市若ハ其他ノ部分ノ負擔ヲ增加スル事
三 第七十三條ニ依リ府縣內ノ或ル部分ニ對シ特ニ夫役現品ヲ增課スル事
四 第七十六條第二項ニ依リ繼續費ヲ定メ及其年期內ニ議決ヲ變更スル事
第六章 附則
第九十二條 
行政裁判所ヲ開設スル迄ノ間此法律ニ依リ行政裁判所ニ屬スル職務ハ現行ノ行政裁判手續ニ從ヒ控訴院ニ於テ之ヲ行フヘシ
第九十三條 
市制町村制施行ノ爲定ムル直接稅ノ種類ハ此法律ノ施行ニ付テモ亦之ヲ適用ス
市制町村制郡制及此法律施行ノ爲將來ノ諸稅ニ付直接稅ト爲スヘキモノハ內務大臣及大藏大臣之ヲ吿示スヘシ
第九十四條 
此法律ハ郡制市制ヲ施行シタル各府縣ニ施行スルモノトス其施行ノ時期ハ府縣知事ノ具申ニ依リ內務大臣之ヲ定ル
第九十五條 
此法律施行ノ後ハ市制第百二十二條第三ニ定ムル附加稅徵收ノ許可ハ東京市京都市大阪市ニ在テハ地租七分ノ三、二五(二十八分ノ十三)其他ノ市ニ在テハ其七分ノ一、五(十四分ノ三)ヲ超過スルトキ之ヲ要スルモノトス
第九十六條 
府縣內ニ在ル島嶼ノ其本地ニ對スル關係ニ付テハ勅令ヲ以テ特例ヲ設ク
郡制ヲ施行セサル島嶼ヨリ選出スヘキ府縣會議員ノ選擧ニ關シテハ別ニ勅令ヲ以テ其制ヲ定ム
第九十七條 
明治十三年四月第十五號布吿府縣會規則明治十四年二月第八號布吿區郡部會規則明治二十二年二月法律第六號府縣會議員選舉規則其他此法律ニ抵觸スル成規ハ此法律施行ノ府縣ニ於テ其施行ノ時期ヨリ總テ之ヲ廢止ス
第九十八條 
內務大臣ハ此法律施行ノ責ニ任シ之カ爲必要ナル命令ヲ發布スヘシ



朕郡制ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム

御名御璽
明治二十三年五月十七日

內閣總理大臣兼內務大臣伯爵山縣有朋


法律第三十六號
郡制
第一章總則

第一條 郡ノ廢置分合及郡界ノ變更ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

郡界ニ當ル市町村ノ境界ヲ變更スルトキハ郡界モ亦自ラ變更スルモノトス

第二條 郡內ノ町村ヲ變シテ市ト爲シ若ハ市ヲ變シテ郡內ノ町村ト爲スハ其市會町村會ノ申請ニ依リ內務大臣之ヲ定ム

第三條 第一條第二條ノ處分ニ付其財產處分ヲ要スルトキハ府縣參事會之ヲ議決スヘシ但特ニ法律ノ規定アルモノハ此限ニ在ラス

第二章郡會

第四條 郡會郡內町村ニ於テ選擧シタル議員及大地主ニ於テ選擧シタル議員ヲ以テ之ヲ組織ス

第五條 町村ニ於テ選擧スヘキ郡會議員ノ數ハ每町村各一名トス

郡會議員ノ數二十名以上ニ及フトキハ二十名ヲ以テ制限トス此場合ニ於テ議員配當法ハ首トシテ人口ヲ標準トシ郡會ニ於テ議決シ府縣知事ノ認可ヲ受クヘシ

郡會議員ノ數十名ニ滿タサルトキハ郡會ノ議決ニ依リ府縣知事ノ認可ヲ經其數ヲ增シテ十名ニ至ルコトヲ得其配當法ハ首トシテ人口ヲ標準トシ郡會ニ於テ議決シ府縣知事ノ認可ヲ受クルヘシ

本條議員配當法ハ郡內ノ町村數ニ增減アリタル場合ノ外初回三年間爾後ハ十二年以上ニ至リ町村ノ人日ニ著シキ增減アルニ非サレハ改正セサルモノトス

議員配當法ヲ改正スルトキハ議員全數ヲ改選スヘシ

第六條 一町村ニ於テ一名以上ノ議員ヲ選擧スルハ其町村會之ヲ行ヒ數町村ニ於テ一名若ハ一名以上ノ議員ヲ選擧スルハ其各町村會會同シテ之ヲ行フヘシ

第七條 町村組合ニシテ組合會ヲ設ケ其町村一切ノ事務ヲ其同處分スルモノハ第四條乃至第六條ノ規定ニ關シテハ之ヲ一町村下同視シ其組合會ニ於テ議員選擧ヲ行フヘシ

第八條 大地主ハ町村ニ於テ選擧スヘキ議員定數ノ外其定數ノ三分ノ一ヲ互選スルモノトス若端數ヲ生スルトキハ之ヲ棄却スヘシ

選擧ヲ行フコトヲ得ヘキ大地主ニシテ其員數町村ニ於テ選擧スヘキ議員定數ノ三分ノ一以下ナルトキ其大地主選擧ニ依ラスシテ郡會議員タルモノトス但定期改選ノ期限內ニ於テハ大地主ノ員數減シテ三分ノ一以下ニ至ルト雖解散ノ爲改選スル場合ヲ除クノ外本項ヲ適用スルノ限ニ在ラス

第九條 大地主トハ郡內ニ於テ町村稅ノ賦課ヲ受クル所有地ニツチ地價總計一萬圓以上ヲ有スル地主ヲ云フ

第十條 郡內町村公民ニシテ町村會ノ選舉ニ參與スルコトヲ得ヘキ者及大地主中自ラ選舉ニ加ハルコトヲ得ヘキ者ハ總テ郡會ノ被選權ヲ有ス

住居ヲ移シタル爲町村ノ公民權ヲ失ヒタル者其住居同郡內ニ在リ旦他ノ要件ヲ失ハサルトキハ仍郡會ノ被選權ヲ有ス

左ニ揭クル者ハ選擧ニ係ルト否トヲ問ハス郡會議員タルコトヲ得ス

一 所屬府〈東京府ハ警視廳トモ〉縣竝三其郡ノ官吏
二 其郡ノ有給吏員
三 神官及諸宗ノ僧侶又ハ敎師
四 小學校敎員

前項ノ外ノ官吏ニシテ當選ニ應シ又ハ第八條第二項ノ權利ヲ行ハントスルトスルトキハ本屬長官ノ許可ヲ受クヘシ

第十一條 大地主ニシテ選擧權ヲ有スルハ帝國臣民ニシテ公權ヲ有スル男子ニ限ル

年齡二十歲未滿ノ者及治產ノ禁ヲ受ケタル者ハ選擧權ヲ有セサルモノトス

大地主ノ選擧權ハ身代限處分中又ハ組稅滯納處分中又公權ノ剝奪若ハ停止ヲ附加スヘキ重輕罪ノ爲裁判上ノ訊問若ハ勾留中之ヲ停止ス

本條ノ規定ハ選擧ニ依ラスシテ郡會議員タル者ニモ適用ス

第十二條 選擧權ヲ有スル大地主ハ代人ヲ以テ選擧ヲ行フコトヲ得

陸海軍ノ現役ニ服スル者ハ代人ヲ以テスルニ非サレハ選擧ヲ行フコトヲ得ス

代人ハ帝國臣民ニシテ公權ヲ有シ町村制ニ定メタル獨立ノ男子ニ限ル但一人ニシテ數人ノ代理ヲ爲スコトヲ得ス且代人ハ委任狀ヲ以テ代理ノ證トスヘシ

本條ノ規定ハ第八條第二項ノ權利ヲ行フ場合ニモ適用スルモノトス但其代人ハ郡會ニ被選權ヲ有スル者ニシテ郡會議員タラサル者ニ限ル

第十三條 郡會議員ハ名譽職トス

町村ニ於テ選擧シタル議員ノ任期ハ六年トシ每三年其半數ヲ改選ス若其員數二分シ難キトキハ初回ニ於テ多數ノ一半ヲ解任セシム初回ニ於テ解任スヘキ者ハ郡會議長郡會ニ於テ自ラ抽籤シテ之ヲ定ム

大地主ニ於テ選擧シタル議員ノ任期ハ三年トシ每三年其全數ヲ改選ス

解任ノ議員ハ再選セラルヽコトヲ得

第十四條 議員中闕員アルトキハ遲クトモ六箇月以內ニ補闕選擧ヲ行フヘシ補闕議員ハ其前任者ノ殘任期間在職スルモノトス

第十五條 郡長ハ郡會議員改選前選擧權アル大地主ノ名簿ヲ製シ之ニ其資格ヲ記職シ其氏名ヲ吿示スヘシ

關係者ニ於テ大地主名簿ノ正否ニ關シ異議アルトキハ吿示後二十一日以內ニ郡長ニ申立テ其郡長ノ裁決ニ不服ナル者ハ府縣參事會ニ訴願シ其府縣參事會ノ裁決ニ不服ナル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得

大地主名簿ニ登錄セラレサル者ハ選舉ニ參與シ及第八條第二項三依リ郡會議員タルコトヲ得ス

大地主名簿ハ次ノ定期改選前ニ行フヘキ補闕選擧ニモ亦適用スルモノトス但大地主ノ資格ヲ失ヒ又ハ選擧權ノ要件ヲ失ヒタル者ハ之ヲ削除シ其氏名ヲ吿示スヘシ其處分ニ封シ異議アルトキハ本條第二項ノ例ニ依ル

定期改選ノ期限內新ニ選擧權ヲ得又ハ選擧ニ依ラスシテ郡會議員タルノ構利ヲ得タル者ハ解散ノ爲改選スル場合ヲ除ク外期限內ニ於テ其名簿ニ登錄セサルモノトス

第十六條 郡會議員ノ選擧ハ郡長ノ吿示ニ依リ之ヲ行フヘシ其吿示ハ遲クトモ選擧ノ日ヨリ七日前ニ之ヲ發スヘシ

第十七條 選擧ノ順序ハ先ツ町村之ヲ行ヒ次ニ大地主之ヲ行フヘシ

町村ニ於テ行フ選擧ハ町村制第四十六條ノ規定ニ從フヘシ但數町村會會同シテ行フ選擧ハ郡長又ハ郡長ノ指定スル町村長ヲ選擧會長トシテ之ヲ行フヘシ

大地主ニ於テ行フ選擧ハ郡長ヲ選擧會長トシテ之ヲ行フヘシ

この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。