子ども・若者育成支援推進法
第一章 総則
[編集](目的)
- 第一条
- この法律は、子ども・若者が次代の社会を担い、その健やかな成長が我が国社会の発展の基礎をなすものであることにかんがみ、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の理念にのっとり、子ども・若者をめぐる環境が悪化し、社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者の問題が深刻な状況にあることを踏まえ、子ども・若者の健やかな育成、子ども・若者が社会生活を円滑に営むことができるようにするための支援その他の取組(以下「子ども・若者育成支援」という。)について、その基本理念、国及び地方公共団体の責務並びに施策の基本となる事項を定めるとともに、子ども・若者育成支援推進本部を設置すること等により、他の関係法律による施策と相まって、総合的な子ども・若者育成支援のための施策(以下「子ども・若者育成支援施策」という。)を推進することを目的とする。
(基本理念)
- 第二条
- 子ども・若者育成支援は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
- 一 一人一人の子ども・若者が、健やかに成長し、社会とのかかわりを自覚しつつ、自立した個人としての自己を確立し、他者とともに次代の社会を担うことができるようになることを目指すこと。
- 二 子ども・若者について、個人としての尊厳が重んぜられ、不当な差別的取扱いを受けることがないようにするとともに、その意見を十分に尊重しつつ、その最善の利益を考慮すること。
- 三 子ども・若者が成長する過程においては、様々な社会的要因が影響を及ぼすものであるとともに、とりわけ良好な家庭的環境で生活することが重要であることを旨とすること。
- 四 子ども・若者育成支援において、家庭、学校、職域、地域その他の社会のあらゆる分野におけるすべての構成員が、各々の役割を果たすとともに、相互に協力しながら一体的に取り組むこと。
- 五 子ども・若者の発達段階、生活環境、特性その他の状況に応じてその健やかな成長が図られるよう、良好な社会環境(教育、医療及び雇用に係る環境を含む。以下同じ。)の整備その他必要な配慮を行うこと。
- 六 教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の各関連分野における知見を総合して行うこと。
- 七 修学及び就業のいずれもしていない子ども・若者その他の子ども・若者であって、社会生活を円滑に営む上での困難を有するものに対しては、その困難の内容及び程度に応じ、当該子ども・若者の意思を十分に尊重しつつ、必要な支援を行うこと。
(国の責務)
- 第三条
- 国は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、子ども・若者育成支援施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
- 第四条
- 地方公共団体は、基本理念にのっとり、子ども・若者育成支援に関し、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その区域内における子ども・若者の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(法制上の措置等)
- 第五条
- 政府は、子ども・若者育成支援施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
(年次報告)
- 第六条
- 政府は、毎年、国会に、我が国における子ども・若者の状況及び政府が講じた子ども・若者育成支援施策の実施の状況に関する報告を提出するとともに、これを公表しなければならない。
第二章 子ども・若者育成支援施策
[編集](子ども・若者育成支援施策の基本)
- 第七条
- 子ども・若者育成支援施策は、基本理念にのっとり、国及び地方公共団体の関係機関相互の密接な連携並びに民間の団体及び国民一般の理解と協力の下に、関連分野における総合的な取組として行われなければならない。
(子ども・若者育成支援推進大綱)
- 第八条
- 子ども・若者育成支援推進本部は、子ども・若者育成支援施策の推進を図るための大綱(以下「子ども・若者育成支援推進大綱」という。)を作成しなければならない。
- 子ども・若者育成支援推進大綱は、次に掲げる事項について定めるものとする。
- 一 子ども・若者育成支援施策に関する基本的な方針
- 二 子ども・若者育成支援施策に関する次に掲げる事項
- イ 教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の各関連分野における施策に関する事項
- ロ 子ども・若者の健やかな成長に資する良好な社会環境の整備に関する事項
- ハ 第二条第七号に規定する支援に関する事項
- ニ イからハまでに掲げるもののほか、子ども・若者育成支援施策に関する重要事項
- 三 子ども・若者育成支援施策を総合的に実施するために必要な国の関係行政機関、地方公共団体及び民間の団体の連携及び協力に関する事項
- 四 子ども・若者育成支援に関する国民の理解の増進に関する事項
- 五 子ども・若者育成支援施策を推進するために必要な調査研究に関する事項
- 六 子ども・若者育成支援に関する人材の養成及び資質の向上に関する事項
- 七 子ども・若者育成支援に関する国際的な協力に関する事項
- 八 前各号に掲げるもののほか、子ども・若者育成支援施策を推進するために必要な事項
- 子ども・若者育成支援推進本部は、第一項の規定により子ども・若者育成支援推進大綱を作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
(都道府県子ども・若者計画等)
- 第九条
- 都道府県は、子ども・若者育成支援推進大綱を勘案して、当該都道府県の区域内における子ども・若者育成支援についての計画(以下この条において「都道府県子ども・若者計画」という。)を作成するよう努めるものとする。
- 市町村は、子ども・若者育成支援推進大綱(都道府県子ども・若者計画が作成されているときは、子ども・若者育成支援推進大綱及び都道府県子ども・若者計画)を勘案して、当該市町村の区域内における子ども・若者育成支援についての計画(次項において「市町村子ども・若者計画」という。)を作成するよう努めるものとする。
- 都道府県又は市町村は、都道府県子ども・若者計画又は市町村子ども・若者計画を作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
(国民の理解の増進等)
- 第十条
- 国及び地方公共団体は、子ども・若者育成支援に関し、広く国民一般の関心を高め、その理解と協力を得るとともに、社会を構成する多様な主体の参加による自主的な活動に資するよう、必要な啓発活動を積極的に行うものとする。
(社会環境の整備)
- 第十一条
- 国及び地方公共団体は、子ども・若者の健やかな成長を阻害する行為の防止その他の子ども・若者の健やかな成長に資する良好な社会環境の整備について、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(意見の反映)
- 第十二条
- 国は、子ども・若者育成支援施策の策定及び実施に関して、子ども・若者を含めた国民の意見をその施策に反映させるために必要な措置を講ずるものとする。
(子ども・若者総合相談センター)
- 第十三条
- 地方公共団体は、子ども・若者育成支援に関する相談に応じ、関係機関の紹介その他の必要な情報の提供及び助言を行う拠点(第二十条第三項において「子ども・若者総合相談センター」という。)としての機能を担う体制を、単独で又は共同して、確保するよう努めるものとする。
(地方公共団体及び民間の団体に対する支援)
- 第十四条
- 国は、子ども・若者育成支援施策に関し、地方公共団体が実施する施策及び民間の団体が行う子ども・若者の社会参加の促進その他の活動を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第三章 子ども・若者が社会生活を円滑に営むことができるようにするための支援
[編集](関係機関等による支援)
- 第十五条
- 国及び地方公共団体の機関、公益社団法人及び公益財団法人、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他の団体並びに学識経験者その他の者であって、教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の子ども・若者育成支援に関連する分野の事務に従事するもの(以下「関係機関等」という。)は、修学及び就業のいずれもしていない子ども・若者その他の子ども・若者であって、社会生活を円滑に営む上での困難を有するものに対する次に掲げる支援(以下この章において単に「支援」という。)を行うよう努めるものとする。
- 一 社会生活を円滑に営むことができるようにするために、関係機関等の施設、子ども・若者の住居その他の適切な場所において、必要な相談、助言又は指導を行うこと。
- 二 医療及び療養を受けることを助けること。
- 三 生活環境を改善すること。
- 四 修学又は就業を助けること。
- 五 前号に掲げるもののほか、社会生活を営むために必要な知識技能の習得を助けること。
- 六 前各号に掲げるもののほか、社会生活を円滑に営むことができるようにするための援助を行うこと。
- 関係機関等は、前項に規定する子ども・若者に対する支援に寄与するため、当該子ども・若者の家族その他子ども・若者が円滑な社会生活を営むことに関係する者に対し、相談及び助言その他の援助を行うよう努めるものとする。
(関係機関等の責務)
- 第十六条
- 関係機関等は、必要な支援が早期かつ円滑に行われるよう、次に掲げる措置をとるとともに、必要な支援を継続的に行うよう努めるものとする。
- 一 前条第一項に規定する子ども・若者の状況を把握すること。
- 二 相互に連携を図るとともに、前条第一項に規定する子ども・若者又は当該子ども・若者の家族その他子ども・若者が円滑な社会生活を営むことに関係する者を必要に応じて速やかに適切な関係機関等に誘導すること。
- 三 関係機関等が行う支援について、地域住民に周知すること。
(調査研究の推進)
- 第十七条
- 国及び地方公共団体は、第十五条第一項に規定する子ども・若者が社会生活を円滑に営む上での困難を有することとなった原因の究明、支援の方法等に関する必要な調査研究を行うよう努めるものとする。
(人材の養成等)
- 第十八条
- 国及び地方公共団体は、支援が適切に行われるよう、必要な知見を有する人材の養成及び資質の向上並びに第十五条第一項各号に掲げる支援を実施するための体制の整備に必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(子ども・若者支援地域協議会)
- 第十九条
- 地方公共団体は、関係機関等が行う支援を適切に組み合わせることによりその効果的かつ円滑な実施を図るため、単独で又は共同して、関係機関等により構成される子ども・若者支援地域協議会(以下「協議会」という。)を置くよう努めるものとする。
- 地方公共団体の長は、協議会を設置したときは、内閣府令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。
(協議会の事務等)
- 第二十条
- 協議会は、前条第一項の目的を達するため、必要な情報の交換を行うとともに、支援の内容に関する協議を行うものとする。
- 協議会を構成する関係機関等(以下「構成機関等」という。)は、前項の協議の結果に基づき、支援を行うものとする。
- 協議会は、第一項に規定する情報の交換及び協議を行うため必要があると認めるとき、又は構成機関等による支援の実施に関し他の構成機関等から要請があった場合において必要があると認めるときは、構成機関等(構成機関等に該当しない子ども・若者総合相談センターとしての機能を担う者を含む。)に対し、支援の対象となる子ども・若者に関する情報の提供、意見の開陳その他の必要な協力を求めることができる。
(子ども・若者支援調整機関)
- 第二十一条
- 協議会を設置した地方公共団体の長は、構成機関等のうちから一の機関又は団体を限り子ども・若者支援調整機関(以下「調整機関」という。)として指定することができる。
- 調整機関は、協議会に関する事務を総括するとともに、必要な支援が適切に行われるよう、協議会の定めるところにより、構成機関等が行う支援の状況を把握しつつ、必要に応じて他の構成機関等が行う支援を組み合わせるなど構成機関等相互の連絡調整を行うものとする。
(子ども・若者指定支援機関)
- 第二十二条
- 協議会を設置した地方公共団体の長は、当該協議会において行われる支援の全般について主導的な役割を果たす者を定めることにより必要な支援が適切に行われることを確保するため、構成機関等(調整機関を含む。)のうちから一の団体を限り子ども・若者指定支援機関(以下「指定支援機関」という。)として指定することができる。
- 指定支援機関は、協議会の定めるところにより、調整機関と連携し、構成機関等が行う支援の状況を把握しつつ、必要に応じ、第十五条第一項第一号に掲げる支援その他の支援を実施するものとする。
(指定支援機関への援助等)
- 第二十三条
- 国及び地方公共団体は、指定支援機関が前条第二項の業務を適切に行うことができるようにするため、情報の提供、助言その他必要な援助を行うよう努めるものとする。
- 国は、必要な支援があまねく全国において効果的かつ円滑に行われるよう、前項に掲げるもののほか、指定支援機関の指定を行っていない地方公共団体(協議会を設置していない地方公共団体を含む。)に対し、情報の提供、助言その他必要な援助を行うものとする。
- 協議会及び構成機関等は、指定支援機関に対し、支援の対象となる子ども・若者に関する情報の提供その他必要な協力を行うよう努めるものとする。
(秘密保持義務)
- 第二十四条
- 協議会の事務(調整機関及び指定支援機関としての事務を含む。以下この条において同じ。)に従事する者又は協議会の事務に従事していた者は、正当な理由なく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
(協議会の定める事項)
第四章 子ども・若者育成支援推進本部
[編集](設置)
- 第二十六条
- 内閣府に、特別の機関として、子ども・若者育成支援推進本部(以下「本部」という。)を置く。
(所掌事務等)
- 第二十七条
- 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
- 一 子ども・若者育成支援推進大綱を作成し、及びその実施を推進すること。
- 二 前号に掲げるもののほか、子ども・若者育成支援に関する重要な事項について審議すること。
- 三 前二号に掲げるもののほか、他の法令の規定により本部に属させられた事務
- 本部は、前項第一号に掲げる事務を遂行するため、必要に応じ、地方公共団体又は協議会の意見を聴くものとする。
(組織)
- 第二十八条
- 本部は、子ども・若者育成支援推進本部長、子ども・若者育成支援推進副本部長及び子ども・若者育成支援推進本部員をもって組織する。
(子ども・若者育成支援推進本部長)
- 第二十九条
- 本部の長は、子ども・若者育成支援推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。
- 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
(子ども・若者育成支援推進副本部長)
- 第三十条
- 本部に、子ども・若者育成支援推進副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第九条第一項に規定する特命担当大臣であって同項の規定により命を受けて同法第四条第一項第十四号に掲げる事項に関する事務及びこれに関連する同条第三項に規定する事務を掌理するものをもって充てる。
- 副本部長は、本部長の職務を助ける。
(子ども・若者育成支援推進本部員)
- 第三十一条
- 本部に、子ども・若者育成支援推進本部員(次項において「本部員」という。)を置く。
- 本部員は、次に掲げる者をもって充てる。
- 一 国家公安委員会委員長
- 二 総務大臣
- 三 法務大臣
- 四 文部科学大臣
- 五 厚生労働大臣
- 六 経済産業大臣
- 七 前各号に掲げるもののほか、本部長及び副本部長以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者
(資料提出の要求等)
- 第三十二条
- 本部は、その所掌事務を遂行するために必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。
- 本部は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
(政令への委任)
第五章 罰則
[編集]第三十四条
- 第二十四条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
附則
[編集]附則 抄
- 第一条
- この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日[1]から施行する。
(検討)
- 第二条
- 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、我が国における子ども・若者をめぐる状況及びこの法律の施行の状況を踏まえ、子ども・若者育成支援施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
(青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律の一部改正)
- 第三条
- 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成二十年法律第七十九号)の一部を次のように改正する。
- 以下略
(青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律の一部改正に伴う経過措置)
- 第四条
- 前条の規定による改正前の青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(以下この条において「旧法」という。)第八条第一項に規定するインターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議が旧法第十二条第一項の規定により作成した同項の基本計画は、この法律の施行後は、本部が前条の規定による改正後の青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律第十二条第一項の規定により作成した同項の基本計画とみなす。
(内閣府設置法の一部改正)
- 第五条
- 内閣府設置法の一部を次のように改正する。
- 以下略
脚注
[編集]- ↑ 子ども・若者育成支援推進法の施行期日を定める政令(2009年(平成21年)12月9日政令第280号)により、2010年(平成22年)4月1日
この著作物は、日本国著作権法10条2項又は13条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同法10条2項及び13条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。
- 憲法その他の法令
- 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
- 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
- 上記いずれかのものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの
- 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道
この著作物は、米国政府、又は他国の法律、命令、布告、又は勅令等(Edict of governmentも参照)であるため、ウィキメディアサーバの所在地である米国においてパブリックドメインの状態にあります。“Compendium of U.S. Copyright Office Practices”、第3版、2014年の第313.6(C)(2)条をご覧ください。このような文書には、“制定法、裁判の判決、行政の決定、国家の命令、又は類似する形式の政府の法令資料”が含まれます。