婚姻事件養子縁組事件及ヒ禁治産事件ニ關スル訴訟規則

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朕民事訴訟法の補則として婚姻事件養子縁組事件及び禁治産事件に關する訴訟規則を裁可し茲に之を公布せしむ此法律は明治二十六年一月一日より施行すべきことを命ず

御名御璽

明治二十三年十月八日

 内閣総理大臣伯爵山縣有朋

 司法大臣伯爵山田顕義

法律第百四號

婚姻事件養子縁組事件及び禁治産事件に關する訴訟規則

 第一章 婚姻事件及び養子縁組事件の訴訟手續

第一條 婚姻の無効、離婚又は同居を目的とする訴訟は夫が普通裁判籍を有する地の地方裁判所の管轄に専屬す

縁組の無効又は離縁を目的とする訴訟は養子を為したる者が普通裁判籍を有する地の地方裁判所に専屬す

婚姻又は縁組の不成立に關する訴訟は被告が普通裁判籍を有する地の地方裁判所に専屬す

第二條 婚姻事件及び縁組事件に付ては檢事は口頭辯論に立會ふの外受命判事若くは受託判事の面前に於て為す審問にも亦立會ふことを得檢事には職權を以て總ての期日を通知す可し

檢事は婚姻又は縁組を維持する為め新なる事實及び證據方法を提出することを得

調書には檢事の氏名及び其申立を記載す可し

第三條 婚姻の不成立、無効、離婚及び同居の訴は之を併合することを得縁組の不成立、無効及び離縁の訴も亦同じ

婿養子縁組の場合に於ては婚姻の不成立、無効、離婚又は同居の訴に縁組の不成立、無効又は離縁の訴を併合することを得

本條の訴に他の訴を併合し及び他の種類の反訴を提起することを得ず但本條の訴の原因たる事實より生ずる損害賠償及び養料の請求に付ては此限に在らず

第四條 判決に接著する口頭辯論の終結に至るまでは訴に於て提出したる以外の理由を主張することを得

第五條 婚姻の無効若くは離婚の訴又は縁組の無効若くは離縁の訴に付き棄却の言渡を受けたる原告は前訴訟に於て又は訴の併合に因り主張するを得べかりし事實を獨立なる訴の理由として主張することを得ず被告に在ては反訴の理由と為すを得べかりし事實に付ても亦同じ

第六條 民事訴訟法第百十一條第二項第三項、第二百十條及び第三百三十五條乃至第三百四十一條の規定は之を適用せず

第七條 口頭辯論の期日に被告が出頭せざるときは原告の申立に因り新期日を定む可し

被告の在廷せざる場合に於て期日を定めたるときは其都度被告を呼出す可し

闕席判決は本條の手續の効あらざるときに限り被告に對して之を為すことを得

第八條 裁判所は原告若くは被告の自身出頭を命じて其原告若くは被告又は其相手方若くは檢事の主張したる事實に付き原告若くは被告を審訊することを得

審訊を受くべき原告若くは被告が受訴裁判所に出頭する能はざるとき又は受訴裁判所の所在地より遠隔の地に在るときは受命判事若くは受託判事に依り審訊を為すことを得

出頭せざる原告若くは被告に對しては審訊期日に出頭せざる證人に對する規定を適用す

第九條 和諧の調う可き見込あるときは裁判所は職權を以て離婚又は離縁の訴に關する手續を長くとも一个年間中止することを得

第十條 裁判所は婚姻又は縁組を維持する為め當事者の提出せざる事實をも斟酌し且職權を以て證據調を為すことを得但裁判前に當事者を審訊す可し

第十一條 婚姻及び縁組の不成立若くは無効又は離婚若くは離縁を言渡す判決は職權を以て之を當事者に送達す可し

第十二條 婚姻事件及び縁組事件の判決に付ては假執行の宣言を付することを得ず

第十三條 假處分に關し殊に配偶者の一方又は養子が住家を去るの許可及び養料の供給を申立てたる場合に於ては民事訴訟法第七百五十六條乃至第七百六十三條の規定を準用す

第十四條 婚姻及び縁組の不成立若くは無効又は離婚若くは離縁を言渡す判決確定したるときは裁判所の掲示板に掲示して之を公告す可し

第十五條 民法の規定に從ひ檢事の職權を以て起すことを得べし無効の訴に付ては以下數條に定めたる特別の規定に從ふ

第十六條 檢事又は第三者より訴を起すときは夫婦又は養親子を以て相手方と為す

夫婦又は養親子の一方より訴を起すときは他の一方を以て相手方と為す

第十七條 檢事は自ら訴を起さざるときと雖も訴訟を追行し殊に獨立して申立を為し及び上訴を為すことを得

第十八條 檢事上訴を為したるときは上訴手續に於て前審當事者雙方を相手方と看做す

檢事が訴訟人たる場合に於て當事者の一方が上訴を為したるときは上訴手續に於て他の一方と檢事とを相手方と看做す

第十九條 訴訟人たる檢事が敗訴する場合に於ては民事訴訟法第一編第二章第五節の規定に從ひ勝訴者たる相手方に生じたる費用は國庫の負擔とす

第二章 禁治産事件の訴訟手續

第二十條 禁治産の申立は治産を禁ぜらる可き者が普通裁判籍を有する地の區裁判所の管轄に専屬す

第二十一條 申立は書面又は口頭を以て之を為すことを得其申立には申立の理由たる事實及び證據方法の表示を包含す可し

第二十二條 裁判所は申立に表示したる事實及び證據方法に依り職權を以て心神喪失の常況に在るや否やを定むる為めに必要なる探知を為し且適當とする證據方法を調ぶ可し

裁判所は訴訟手續を開始するの前診斷書の提出を命ずることを得

檢事は總ての場合に於て申立を為して訴訟手續を追行することを得

證人及び鑑定人の訊問及び宣誓に付ては民事訴訟法第二編第一章第六節及び第七節の規定を適用す

第二十三條 裁判所は公開せざる法廷に於て一人又は數人の鑑定人の立會を以て治産を禁ぜらる可き者を訊問す可し此訊問は受託判事をして之を為さしむることを得

右訊問は裁判所の意見に從ひ實施し難く又は裁判の為めに必要ならず又は治産を禁ぜらる可き者の健康に害ありとするときは之を為さざることを得

第二十四條 禁治産の宣言は決定を以て之を為す

右宣言は豫め治産を禁ぜらる可き者 心神喪失の常況に付き一人又は數人の鑑定人を訊問したる後に非ざれば之を為すことを得ず

第二十五條 裁判所は治産を禁ぜらる可き者の身體の監護又は財産の保存に付き必要なる處分を命ずることを得

第二十六條 訴訟手續の費用は治産を禁じたる場合に於ては禁治産者之を負擔し其他の場合に於ては禁治産の申立を為したる者之を負擔す可し但檢事が申立を為したるときは國庫之を負擔す

第二十七條 禁治産に付き為したる決定は職權を以て申立人及び檢事に之を送達す可し

第二十八條 禁治産を宣言する決定は法律上の後見人あるときは其後見人に職權を以て之を通知す可し

第二十九條 申立人及び檢事は禁治産の申立を却下する決定に對し即時抗告を為すことを得

抗告裁判所の訴訟手續には第二十二條の規定を準用す

第三十條 禁治産を宣言する決定に對しては一个月の期間内に訴を以て不服を申立つることを得

訴を起すの權利は禁治産者、其後見人及び民法の規定に從ひ禁治産の申立を為すの權を有する者に屬す

右期間は禁治産者に對しては禁治産を知りたる日を以て始り其他の者に對しては後見人の選定を以て始り又法律上の後見の場合に於ては其決定を法律上の後見人に告知するを以て始まる

第三十一條 訴は區裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専屬す

第三十二條 禁治産に對して不服を申立る訴には他の訴を併合することを得ず

反訴は之を為すことを許さず

第三十三條 禁治産者が訴を起さんとするときは其申立に因り受訴裁判所の裁判長は訴訟代理人として辯護士を之に附添はしむる可し

第三十四條 第六條及び第七條の規定は本章にも之を準用す

第三十五條 第二十三條及び第二十四條第二項の規定は不服申立の訴に付ての訴訟手續に之を準用す

裁判所は區裁判所に於て為したる鑑定を十分なりと認むるときは鑑定人の訊問を為さざることを得

第三十六條 不服申立の訴を理由ありとするときは禁治産を宣言したる決定を取消す可し

然れども此の取消の判決は後見人の既に為したる行為の効力に影響を及ぼさず

第三十七條 不服申立の訴に關する訴訟費用に付ては第二十六條の規定を準用す

第三十八條 受訴裁判所は禁治産事件に付き為したる總ての終局判決を區裁判所に通知す可し

第三十九條 禁治産の解止に付ては第二十五條を除くの外本章の規定を準用す

第四十條 準禁治産事件に付ては左の特別なる規則を除くの外本章の規定を準用す

第二十二條第二項は浪費者に之を適用せず

又同條第三項、第二十五條、第三十三條及び檢事に關する規定は總ての準禁治産者に之を適用せず

準禁治産を解止する決定に對しては不服を申立つることを得ず

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