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大塚徹・あき詩集 亡失の詩作者:大塚徹昭和5年1930年
緋鯉は ほとばしる噴水感情(フキアゲ)をかんじて 眞夏の太陽にジャンプした。 さんさんと五色の虹を身にあびて、 緋鯉は輝やかに昇天した。 おかあさん。 いたつきの瞳は幾年月の春を死んでいたこと か。 絶えいるセキズイの痛みに、めざむる 泉のかたほとり。 ろんろんとひびいてくる搖籠(ぶらんこ)の唄をきいた。 ほとばしる噴水の空に てんてんとさんざめく金の鱗粉よ。 あゝ 失われし金の緋鯉よ。 いたずらに歳月のみながれて――。
〈昭和五年、愛誦〉