コンテンツにスキップ

基督者の自由について/第一節

提供:Wikisource

       イエス

 基督者とはいかなる人か。また基督者が獲得して與へ給ふた自由とはいかなるものか。(これについては聖パウロが多く語ってをる)これを根本的に知り得るために、余は次の命題を説明しよう…………


 『基督者とは、萬物の上に自由な支配者であって、何人の下にもゐない者だ。
 基督者とは、奉仕するところの、萬物の僕であって、あらゆる人の下にある者だ。』


 これらの二つの命題は、明瞭に、聖パウロのコリント前書第九章(十九節)にある言、即ち『われ凡ての人に對して自主な者なれど、多くの人を得んために、自ら凡ての人の奴隷となれり』と同一だ。同様に、ロマ書第十三章(八節)、『彼らたがひに愛を負ふのほか何をも人に負ふな』。併し、愛、その愛は奉仕的だ、愛するものに従ふのである。そのことは、基督についても言はれる、ガラテヤ書第四章(四節)、『神その御子を遣わし、これを母より生まれしめ、律法の下に生まれしめ給へり』。