国際紛争平和的処理条約

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独逸皇帝普魯西国皇帝陛下〔以下署名国元首名省略〕ハ、一般平和ノ維持ニ協力スルノ堅実ナル意思ヲ有シ、全力ヲ竭シテ国際紛争ノ友好的処理ヲ幇助スルニ決シ、文明国団ノ各員ヲ結合スル連帯責務ヲ認識シ、法ノ領域ヲ拡張スルト共ニ、国際的正義ノ感ヲ鞏固ナラシメムコトヲ欲シ、諸独立国ノ間ニ於ケル各国ノ頼ルヲ得ヘキ仲裁裁判ノ常設制度手続ニ関スル一般且正則ナル組織ノ有益ナルコトヲ考慮シ、万国平和会議ノ至尊ナル発議者ト共ニ国安民福ノ基礎タル公平正理ノ原則ヲ国際的合意ニ依リテ定立スルノ須要ナルヲ認メ、之カ為審査委員会及仲裁裁判部ノ実地ノ運用ヲ一層確実ニ保障シ、且簡易ナル手続ニ易ナラシメムコトヲ希望シ、国際紛争平和的処理ニ関スル第一回平和会議ノ事業ニ若干ノ修正ヲ加ヘ、且之ヲ増補スルヲ必要ト認メタリ。締約国ハ、之カ為新ナル条約ヲ締結スルニ決シ、各左ノ全権委員ヲ任命セリ。

 〔全権委員名省略〕

因テ各全権委員ハ、其ノ良好妥当ナリト認メラレタル委任状ヲ寄託シタル後、左ノ条項ヲ協定セリ


第一章
一般平和ノ維持

第一条 国家間ノ関係ニ於テ兵力ニ訴フルコトヲ成ルヘク予防セムカ為、締約国ハ、国際紛争ノ平和的処理ヲ確保スルニ付、其ノ全力ヲ竭サムコトヲ約定ス。

第二章
周旋及居中調停

第二条 締約国ハ、重大ナル意見ノ衝突又ハ紛争ヲ生シタル場合ニ於テ、兵力ニ訴フルニ先チ、事情ノ許ス限其ノ交親国中ノ一国又ハ数国ノ周旋又ハ居中調停ニ依頼スルコトヲ約定ス。

第三条 締約国ハ、右依頼ニ関係ナク、紛争以外ニ立ツ一国又ハ数国カ、事情ノ許ス限、自己ノ発意ヲ以テ周旋又ハ居中調停ヲ紛争国ニ提供スルコトヲ有益ニシテ且希望スヘキコトト認ム。
紛争以外ニ立ツ国ハ、交戦中ト雖、其ノ周旋又ハ居中調停ヲ提供スルノ権利ヲ有ス。
紛争国ハ、右権利ノ行使ヲ友誼ニ戻レルモノト看做スコトヲ得ス。

第四条 居中調停者ノ本分ハ、紛争国ノ主張ヲ調停シ、且其ノ間ニ悪感情ヲ生シタルトキ之ヲ融和スルニ在ルモノトス。

第五条 居中調停者ノ職務ハ、其ノ提供シタル調停方法ノ受諾セラレサルコトヲ紛争当事者ノ一方又ハ居中調停者ニ於テ認メタル時終了スルモノトス。

第六条 周旋及居中調停ハ、紛争国ノ依頼ニ因ルト紛争以外ニ立ツ国ノ発意ニ出ツルトヲ問ハス、全ク勧告ノ性質ヲ有スルニ止リ、決シテ拘束力ヲ有スルコトナシ。

第七条 居中調停ノ受諾ハ、反対ノ約定アルニ非サレハ、之カ為動員其ノ他戦争ノ準備ヲ中止シ遅延シ又ハ阻害スルノ結果ヲ生スルコトナシ。
開戦ノ後右ノ受諾アリタルトキハ、反対ノ約定アルニ非サレハ、之カ為進行中ノ軍事的行動ヲ中止スルコトナシ。

第八条 締約国ハ、事情ノ許ス限左ノ手続ニ依ル特別居中調停ノ適用ヲ慫慂スルコトニ一致スル。平和ヲ破ルノ虞アル重大ナル紛争ヲ生シタル場合ニ於テハ、紛争国ハ、平和関係ノ断絶ヲ予防スル為、各一国ヲ選定シ、他方ノ選定シタル国ト直接ノ交渉ヲ開クノ任務ヲ委託ス。右委任ノ期間ハ、反対ノ規定アルニ非サレハ、三十日ヲ超エサルモノトシ、其ノ期間中、紛争国ハ、紛争事件ヲ居中調停国ニ一任シタルモノト看做シ、之ニ関スル一切ノ直接交渉ヲ中止ス。右居中調停国ハ、紛争ヲ処理スルニ全力ヲ竭スヘキモノトス。
平和関係ノ現実ニ断絶シタル場合ニ於テ、右居中調停国ハ、尚平和ヲ回復スルノ機会アル毎ニ之ヲ利用スルノ共同任務ヲ負フモノトス。

第三章
国際審査委員会

第九条 締約国ハ、名誉又ハ重要ナル利益ニ関係セス、単ニ事実上ノ見解ノ異ナルヨリ生シタル国際紛争ニ関シ、外交上ノ手段ニ依リ妥協ヲ遂クルコト能ハサリシ当事者カ事情ノ許ス限国際審査委員会ヲ設ケ、之ヲ公平誠実ナル審理ニ依リテ事実問題ヲ明ニシ、右紛争ノ解決ヲ容易ニスルノ任ニ当ラシムヲ以テ、有益ニシテ且希望スヘキコトト認ム。

第一〇条 国際審査委員会ハ、紛争当事者間ノ特別条約ヲ以テ之ヲ構成ス。
審査条約ハ、審理スヘキ事実ヲ明定シ、委員会組織ノ方法及期限並委員ノ権限ヲ定ム。
審査条約ハ、又場合ニ依リ委員会ノ開会地及之ヲ変更スルノ権能、委員会ノ使用スヘキ国語及委員会ニ於テ使用スルコトヲ許スヘキ国語、各当事者カ事実ノ説明書ヲ提出スヘキ期日其ノ他当事者間ニ約定セル一切ノ条件ヲ定ム。
当事者カ補助委員ノ任命ヲ必要ト認ムルトキハ、審査条約ヲ以テ其ノ任命方法及権限ヲ定ム。

第一一条 審査条約ヲ以テ委員会ノ開会地ヲ指定セサリシトキハ、海牙ニ於テ開会スルモノトス。
審査委員会ハ、当事者ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ、一旦定メタル開会地ヲ変更スルコトヲ得ス。
審査条約ヲ以テ使用スヘキ国語ヲ定メサリシトキハ、委員会之ヲ定ム。

第一二条 審査委員会ハ、反対ノ規定アルニ非サレハ、本条第四十五条及第五十七条ニ定メタル方法ニ依リ之ヲ組織スルモノトス。

第一三条 委員ノ一人又ハ補助委員アル場合ニ於テ、其ノ一人死亡シ辞任シ又ハ原因ノ如何ニ拘ラス支障アルトキハ、其ノ任命ノ為ニ定メタル方法ニ依リ之ヲ補闕ス。

第一四条 当事者ハ、自己ヲ代表シ且自己ト審査委員会トノ間ノ媒介者タルヘキ特別代理人ヲ審査委員会ニ簡派スルコトヲ得。
当事者ハ又、顧問ハ弁護人ヲ任命シテ、委員会ニ於テ自己ノ利益ヲ開陳弁護士セシムルコトヲ得。

第一五条 常設仲裁裁判所国際事務局ハ、之ヲ海牙ニ開会スル委員会ノ書記局ニ充テ、且其ノ庁舎及施設ヲ審査委員会執務ノ為締約国ノ用ニ供スヘシ。

第一六条 委員会ハ、海牙以外ノ地ニ開会スルトキハ、書記官長一人ヲ任命シ、其ノ事務所ヲ以テ委員会ノ書記局ニ充ツ。
書記局ハ、委員長ノ指揮ノ下ニ委員会会場ノ設備、調書ノ作成及審査継続中ノ保管ヲ掌リ、記録ハ、後之ヲ海牙国際事務局ニ引渡スヘキモノトス。

第一七条 締約国ハ、審査委員会ノ設置及執務ヲ容易ナラシムル為、当事者ニ於テ別段ノ規則ヲ採用セサル限、左ノ規定ヲ審査手続ニ適用スルコトヲ慫慂ス。

第一八条 委員会ハ、特別審査条約又ハ条約中ニ規定セサル手続ノ細目ヲ定メ、且証拠調ニ関スル一切ノ手続ヲ行フ。

第一九条 審査ハ、対審ノ上之ヲ行フ。
各当事者ハ、予定ノ期日ニ於テ場合ニ依リ事実ノ説明書及如何ナル場合ニ於テモ事実ノ真相ヲ示スニ有益ナリト認メタル証書、文書其ノ他ノ書類並陳述ヲ為サシメムト欲スル証人及鑑定人ノ名簿ヲ委員会及他ノ当事者ニ送付スヘシ。

第二〇条 委員会ハ、当事者ノ承諾ヲ得タル上、取調ノ為有益ナリト認メタル地ニ一時移転シ、又ハ一人若ハ数人ノ委員ヲ同地ニ派遣スルコトヲ得。但シ右取調ヲ為スヘキ地ノ所属国ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス。

第二一条 一切ノ事実上ノ検証及実地ノ臨検ハ、当事者ノ代理人及顧問出席ノ上又ハ之ニ対シ正式ニ呼出ヲ為シタル後之ヲ行フコトヲ要ス。

第二二条 委員会ハ、有益ナリト認ムル説明文又ハ報告ヲ一方又ハ他方ノ当事者ニ請求スルコトヲ得。

第二三条 当事者ハ、係争事実ヲ完全ニ知悉シ且精確ニ会得スルニ必要ナル一切ノ方法及便宜ヲ其ノ為シ得ヘシト認ムル限充分ニ審査委員会ニ提供スルヘキモノトス。
当事者ハ、委員会ノ呼出ヲ受ケタル自国領土ニ在ル証人又ハ鑑定人ノ出頭ヲ保障スル為、国内法規ニ依リ為シ得ル手段ヲ尽スヘキモノトス。
証人又ハ鑑定人ニシテ委員会ニ出頭スルコト能ハサルトキハ、当事者ハ、其ノ当該官権ヲシテ之カ訊問ヲ為サシムヘシ。

第二四条 委員会カ締約国タル第三国ノ領土ニ於テ為スコトアルヘキ一切ノ通告ハ、委員会ヨリ直接ニ該当国政府ニ宛テ之ヲ為スヘシ。実地ニ就キ一切ノ証拠蒐集手続ヲ行フトキ亦問シ。
右請求ヲ受ケタル国ハ、其ノ国内法規ニ遵ヒ為シ得ヘキ方法ニ依リ其ノ請求ヲ履行スヘク、且其ノ主権又ハ安寧ニ害アリト認ムル場合ヲ除クノ外之ヲ拒ムコトヲ得ス。
委員会ハ、又常ニ其ノ開会地ノ所属国ノ媒介ニ依頼スルコトヲ得。

第二五条 証人及鑑定人ノ呼出ハ、当事者ノ請求ニ依リ又ハ職権ヲ以テ委員会之ヲ為シ、且如何ナル場合ニ於テモ証人及鑑定人所在地ノ所属国政府ノ媒介ニ依ルモノトス。
証人ノ尋問ハ、委員会ノ定ムル順序ニ従ヒ、代理人及顧問出席ノ上順次各別ニ之ヲ行フ。

第二六条 証人ノ訊問ハ、委員会之ヲ行フ。
委員会ノ委員ハ、各証人ニ対シ、其ノ供述ヲ明瞭ナラシメ若ハ之ヲ補充スル為、又ハ事実ノ真相ヲ明ニスルニ必要ナル程度ニ於テ証人ニ関係アル一切ノ事項ヲ取調フル為、適当ナリト認ムル質問ヲ為スコトヲ得。
当事者ノ代理人及顧問ハ、証人ノ供述ヲ中断シ又ハ証人ニ直接ノ質問ヲ為スコトヲ得ス。但シ、其ノ有益ナリト認ムル補足的質問ヲ証人ニ対シ、為サムコトヲ委員長ニ請求スルコトヲ得。

第二七条 証人ハ、供述ヲ為スニ当リ何等ノ文案ヲモ朗読スルコトヲ得ス。但シ、報告スヘキ事実ノ性質上覚書又ハ文書ヲ用ヰルコトヲ必要トスルトキハ、委員長ノ許可ヲ得テ之ヲ使用スルコトヲ得。

第二八条 証人供述ノ調書ハ、即時ニ之ヲ作成シ、証人ニ読聞カスヘシ。証人ハ之ニ対シ所要ノ変更又ハ追加ヲ為スコトヲ得。右変更及追加ハ、之ヲ供述ノ次ニ記載ス。
供述ノ全部ヲ読聞カセタル後ハ、証人ヲシテ署名ヲ為サムヘシ。

第二九条 代理人ハ、審査ノ進行中又ハ其ノ終ニ於テ、事実ノ真相ヲ知ル為、有益ナリト認ムル言明、請求又ハ事実ノ要領ヲ書面ヲ以テ委員会及相手方ニ提出スルコトヲ得。

第三〇条 委員会ノ評議ハ、秘密会ニ於テ之ヲ行ヒ、且之ヲ秘密ニ付ス。一切ノ決定ハ、委員会ノ多数決ニ依ル。委員中投票ニ加ルコトヲ拒ム者アルトキハ、其ノ旨調書ニ記載スヘシ。

第三一条 委員会ハ、公開セス、且審査ニ関スル調書其ノ他文書ハ、当事者ノ同意ヲ得テ為シタル委員会ノ決定ニ依ル。

第三二条 当事者ヨリ一切ノ説明及証拠ヲ提出シ、各証人ノ訊問終了シタルトキハ、委員長ハ、審査ノ終結ヲ宣告シ、委員会ハ、評議及報告書調整ノ為停会ス。

第三三条 委員会ノ各委員ハ、報告書ニ署名ス。
委員中署名ヲ拒ム者アルトキハ、其ノ旨ヲ記載ス。但シ報告書ハ、之ニ拘ラス有効トス。

第三四条 委員会ノ報告書ハ、当事者ノ代理人及顧問出席ノ上又ハ之ニ対シ正式ニ呼出ヲ為シタル後、公開廷ニ於テ之ヲ朗読ス。
各当事者ニ報告書ノ謄本ヲ交付ス。

第三五条 委員会ノ報告書ハ、単ニ事実ノ認定ニ止リ、仲裁判決ノ性質ヲ有スルコトナシ。右認定ニ対シ如何ナル結果ヲ付スヘキヤハ、全ク当事者ノ自由タルヘシ。

第三六条 当事者ハ、各自ノ費用ヲ負担シ、且委員会ノ費用ヲ均等ニ分担ス。


第四章
国際仲裁裁判

第一節 仲裁裁判

第三七条 国際仲裁裁判ハ、国家間ノ紛争ヲ其ノ選定シタル裁判官ヲシテ法ノ尊重ヲ基礎トシ処理セシムルコトヲ目的トス。
仲裁裁判ニ依頼スルコトハ、誠実ニ其ノ判決ニ服従スルノ約定ヲ包含ス。

第三八条 締約国ハ法律問題就中国際条約ノ解釈又ハ適用ノ問題ニ関シ、外交上ノ手段ニ依リ解決スルコト能ハサリシ紛争ヲ処理スルニハ、仲裁裁判ヲ以テ最有効ニシテ且最公平ナル方法ナリト認ム。
故ニ前記ノ問題ニ関スル紛争ヲ生シタルトキハ、締約国ニ於テ、事情ノ許ス限、仲裁裁判ニ依頼セムコトヲ希望ス。

第三九条 仲裁裁判条約ハ、既ニ生シタル又ハ将来生スルコトアルヘキ紛争ノ為ニ之ヲ締結ス。
仲裁裁判条約ハ、総テノ紛争又ハ特種ノ紛争ノミニ関スルコトヲ得。

第四〇条 締約国間ニ仲裁裁判ニ依頼スヘキ義務ヲ現ニ規定シタル総括的又ハ特別的条約ノ有無ニ拘ラス、締約国ハ、仲裁裁判ニ付スルコトヲ得ヘシト認ムル一切ノ場合ニ、義務的仲裁裁判ヲ普及セシメムカ為、総括的又ハ特別的新協定ヲ締結スヘキコトヲ留保ス。

第二節 常設仲裁裁判所

第四一条 締約国ハ、外交上ノ手段ニ依リテ処理スルコト能ハサリシ国際紛争ヲ直ニ仲裁裁判ニ付スルヲ容易ナラシムルノ目的ヲ以テ、何時タリトモ依頼スルコトヲ得ヘク且当事者間ニ反対ノ規約ナキ限本条約ニ掲ケタル手続ニ依リテ其ノ職務ヲ行フヘキ常設仲裁裁判所ヲ第一回平和会議ニ依リ設置セラレタル儘維持スルコトヲ約定ス。

第四二条 常設裁判所ハ、特別裁判ヲ開クコトニ付、当事者間ニ協定アル場合ヲ除クノ外、一切ノ仲裁事件ヲ管轄スルモノトス。

第四三条 常設事務局ハ、之ヲ海牙ニ置ク。
国際事務局ハ、之ヲ裁判所書記局ニ充テ、裁判開廷ニ関スル通信ヲ媒介シ、記録ヲ保管シ、及一切ノ事務ヲ処理ス。
締約国ハ、其ノ相互間ニ定メタル仲裁裁判ニ関スル一切ノ約款及自国ニ関シ特別裁判ニ於テ為シタル一切ノ仲裁判決ノ認証謄本ヲ成ルヘク速ニ事務局ニ送付スルコトヲ約定ス。 締約国ハ、又裁判所ノ下シタル判決ノ執行ヲ証スルニ足ルヘキ法律、規則及文書ヲ事務局ニ送付スルコトヲ約定ス。

第四四条 各締約国ハ、国際法上ノ問題ニ堪能ノ名アリテ徳望高ク且仲裁裁判官ノ任務ヲ受諾スルノ意アル者四人以下ヲ任命ス。
前項ニ依リ任命セラレタル者ハ、裁判所裁判官トシテ名簿ニ記入シ、右名簿ハ、事務局ヨリ之ヲ各締約国ニ通告スヘシ。
事務局ハ、仲裁裁判官ノ名簿ニ変更アル毎ニ之ヲ締約国ニ通告ス。二国又ハ数国ハ協議ノ上一人又ハ数人ノ裁判官ヲ共同ニ任命スルコトヲ得。
同一人ハ、数国ヨリ任命セラルルコトヲ得。
裁判所裁判官ノ任期ハ、六年トス。但シ、再任セラルルコトヲ得。
裁判所裁判官中死亡又ハ退職シタル者アルトキハ、其ノ任命ノ為ニ定メタル方法ニ依リ、更ニ六年ヲ任期トシテ之カ補闕ヲ行フ。

第四五条 締約国カ其ノ相互間ニ生シタル紛争ヲ処理セムカ為常設裁判所ニ訴ヘムト欲スル場合ニ於テ、其ノ紛争ヲ判定スルニ付当該裁判部ヲ組織スヘキ仲裁裁判官ノ選定ハ、裁判所裁判官ノ総名簿ニ就キテ之ヲ為スコトヲ要ス。
仲裁裁判部ノ構成ニ付、当事者ノ合意ナキ場合ニ於テハ、左ノ方法ニ依ル。
当事者ハ、各自二人ノ仲裁裁判官ヲ指定スヘシ。其ノ内一人ニ限リ、自国民又ハ自国カ常設裁判所裁判官トシテ任命シタル者ノ中ヨリ之ヲ選定スルコトヲ得。右仲裁裁判官ハ、合同シテ一人上級仲裁裁判官ヲ選定ス。
投票相半シタル場合ニ於テハ、当事者ノ協議ヲ以テ指定シタル第三国ニ上級仲裁裁判官ノ選定ヲ委託ス。
右指定ニ関スル合意成立セサルトキハ、当事者ハ、各自異ナル一国ヲ指定シ、其ノ指定セラレタル国ハ、協議ヲ以テ上級仲裁裁判官ヲ選定ス。
二月ノ期間内ニ、右両国間ニ合意成立シ能ハサルトキハ、両国ハ、常設裁判所裁判官名簿ニ就キ当事者ノ指定シタル裁判官ニ非ス且当事者ノ孰レノ国民ニモ非サル者ノ中ヨリ各二人ノ候補者ヲ出シ、抽籤ヲ以テ該候補者中上級仲裁裁判官タルヘキ者ヲ定ム。

第四六条 裁判部構成セラレタルトキハ、当事者ハ、直ニ裁判所ニ訴フルノ決意、仲裁契約ノ正文及仲裁裁判官ノ氏名ヲ事務局ニ通告スヘシ。
事務局ハ遅滞ナク各仲裁裁判官ニ対シ仲裁契約及其ノ裁判部ノ他ノ裁判官ノ氏名ヲ通知スヘシ。
裁判部裁判官ハ、其ノ職務ノ執行ニ関シ、自国以外ニ於テ外交官ノ特権及免除ヲ享有ス。

第四七条 事務局ハ、仲裁裁判ニ関スル一切ノ特別裁判ニ訴フルコトヲ約定シタルトキハ、規則ニ定メタル条件ニ従ヒ、之ヲ非締約国間又ハ締約国ト非締約国トノ間ニ存スル紛争ニ及ホスコトヲ得。

第四八条 締約国ハ、其ノ二国又ハ数国ノ間ニ激烈ナル紛争ノ起ラムトスル場合ニ於テハ、常設仲裁裁判所ニ訴フルノ途アルコトヲ之ニ注意スルヲ以テ其ノ義務ナリト認ム。
故ニ締約国ハ、紛争当事者ニ対シ本条約ノ規定アルコトヲ注意シ、且平和ノ重要ナル利益ノ為常設裁判所ニ訴フルヘキコトヲ勧告スルハ、全ク周旋ノ行為ニ外ナラサルモノト認ムヘキコトヲ宣言ス。両国間ニ紛争ヲ生シタル場合ニ於テハ、其ノ一方ハ、何時ニテモ国際事務局ニ宛テ該紛争ヲ仲裁裁判ニ付スルノ意向アル旨ノ宣言ヲ含ム文書ヲ送ルコトヲ得。
事務局ハ、直ニ右宣言ヲ他ノ一方ニ通知スルコトヲ要ス。

第四九条 常設評議会ハ、和蘭国ニ駐箚スル締約国ノ外交代表者及和蘭国外務大臣ヲ以テ組織シ、国際事務局ヲ指揮監督ス。和蘭国外務大臣ハ、議長ノ職務ヲ行フ。
評議会ハ、庶務規程其ノ他必要ナル諸規則ヲ定ム。
評議会ハ、裁判所ノ職務ニ関シテ生スルコトアルヘキ事務上ノ一切ノ問題ヲ決定ス。
評議会ハ、事務局ノ役員及雇員ノ任命、停職及罷免ニ関スル全権ヲ有ス。
評議会ハ俸給及手当ヲ定メ、且全般ノ支出ヲ監督ス。
評議会ハ、正式ニ召集セラレタル会合ニ於テ九人以上ノ出席者アルトキハ、有効ノ評議ヲ為スコトヲ得。決議ハ、多数決ニ依ル。
評議会ハ、其ノ採用シタル諸規則ヲ遅滞ナク締約国ニ通知シ、毎年裁判所ノ事業、事務ノ執行及支出ニ関スル報告書ヲ締約国ニ提出ス。
報告書中ニハ又本条約第四十三条第三項及第四項ニ基キ各国ヨリ事務局ニ送付スル書類中重要事項ノ要領ヲ掲クヘシ。

第五〇条 事務局ノ費用ハ、万国郵便聯合総理局ノ為ニ定メタル比例ニ依リ、締約国之ヲ負担ス。
加盟国ノ負担スヘキ費用ハ、其ノ加盟カ効力ヲ生スル日ヨリ之ヲ計算ス。

第三節 仲裁裁判所

第五一条 仲裁裁判ノ発達ヲ助クルノ目的ヲ以テ、締約国ハ、当事者カ別段ノ規則ヲ協定セサリシ場合ニ於テ仲裁裁判手続ニ適用スヘキ左ノ仲裁規則ヲ定ム。

第五二条 仲裁裁判ニ依頼スル諸国ハ、其ノ紛争ノ目的、仲裁裁判官ヲ指定スヘキ期間、第六十三条ノ送達ヲ為スヘキ方式、順序及期間並各当事者カ費用ノ予納金トシテ寄託スヘキ金額ヲ定メタル仲裁契約ニ記名ス。
仲裁契約ハ、又必要ニ応シ仲裁裁判官指定ノ方法、裁判部ノ有スルコトアルヘキ一切ノ特別権能、其ノ開廷地、其ノ使用スヘキ国語及裁判部ニ於テ使用スルコトヲ許スヘキ国語、其ノ他当事者間ニ約定セル一切ノ条件ヲ定ム。

第五三条 常設裁判所ハ、当事者カ仲裁契約ノ作成ヲ該裁判所ニ委託スルコトニ一致シタルトキハ、之ヲ作成スルノ権限ヲ有ス。
裁判所ハ、左ノ場合ニ於テハ、外交上ノ手段ニ依リ合意ノ成立セサリシ後ハ、単ニ当事者ノ一方ヨリ請求アルトキニ於テモ、亦前項ノ権限ヲ有ス。

 一 本条約実施後締約セラレ又ハ更新セラレタル総括的仲裁裁判条約ニシテ、各紛争ニ付仲裁契約ノ作成ヲ予見シ且明白ニモ又暗黙ニモ其ノ作成ニ関スル裁判所ノ権限ヲ否認セサルモノノ中ニ規定スル紛争ニ関スルトキ。但シ、他ノ当事者ニ於テ該紛争カ義務的仲裁裁判ニ付スヘキ紛争ノ種類ニ属セスト認ムルコトヲ宣言シタルトキハ、仲裁裁判条約カ此ノ先決問題ヲ決定スルノ権能ヲ仲裁裁判部ニ付与シタル場合ヲ除クノ外、裁判所ノ干与スル限ニ在ラス。
 二 一国ニ対シ他ノ一国カラ其ノ国民ニ支払ハルヘキモノトシテ請求スル契約上ノ債務ヨリ生シタル紛争ニシテ、其ノ解決ニ付仲裁裁判ノ提議カ受諾セラレタルモノニ関スルトキ。但シ、他ノ方法ニ依リ仲裁契約ヲ定ムルコトヲ受諾ノ条件トシタルトキハ、右規定ヲ適用セス。

第五四条 前条ノ場合ニ於テハ、第四十五条第三項乃至第六項ニ定メタル方法ニ依リテ指定セラルル五人ノ委員ヲ以テ組織スヘキ委員会ニ於テ、仲裁契約ヲ作成ス。
第五ノ委員ハ、当然委員長タルモノトス。

第五五条 仲裁裁判ノ職務ハ、之ヲ当事者カ随意ニ指定シ又ハ本条約ニ依リテ設置シタル常設仲裁裁判所ノ裁判官中ヨリ選定シタル一人又ハ数人ノ仲裁裁判官ニ委託スルコトヲ得。
裁判部ノ構成ニ付、当事者ノ合意ナキトキハ、第四十五条第三項乃至第六項ニ規定スル方法ニ従フモノトス。

第五六条 君主其ノ他国ノ元首ニシテ仲裁者ニ選定セラレタルトキハ、仲裁裁判手続ハ、仲裁者之ヲ定ム。

第五七条 上級仲裁裁判官ハ、当然裁判長タルモノトス。
裁判部ニ上級仲裁裁判官ナキトキハ、裁判部自ラ其ノ裁判長ヲ指定ス。

第五八条 第五十四条ニ規定スル委員会ニ於テ仲裁契約ヲ作成シタル場合ニハ、反対ノ規約アルニ非サレハ、該委員会自ラ仲裁裁判部ヲ組織ス。

第五九条 仲裁裁判官死亡シ、辞職シ、又ハ原因ノ如何ニ拘ラス支障ヲ生シタル者アルトキハ、其ノ指定ノ為ニ定メタル方法ニ依リ之カ補闕ヲ行フ。

第六〇条 裁判部ハ、当事者ニ於テ指定ヲ為ササルトキハ、之ヲ海牙ニ開ク。
裁判部ハ、第三国ノ領土ニ於テハ、其ノ合意ヲ得ルニ非サレハ、開廷スルコトヲ得ス。
裁判部ハ当事者ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ、一旦定メタル開廷地ヲ変更スルコトヲ得ス。

第六一条 仲裁契約ヲ以テ使用スヘキ国語ヲ定メサリシトキハ、裁判部之ヲ定ム。

第六二条 当事者ハ、自己ト裁判部トノ間ノ媒介者タルヘキ特別代理人ヲ裁判部ニ簡派スルコトヲ得。
当事者ハ又、顧問又ハ弁護人ヲ任命シ、裁判部ニ於テ其ノ権利及利益ヲ弁護セシムルコトヲ得。
常設裁判所裁判官ハ、之ヲ裁判所裁判官ニ任命シタル国ノ為ニスルノ外、代理人、顧問又ハ弁護人ノ職務ヲ行フコトヲ得ス。

第六三条 仲裁裁判手続ハ、原則トシテ準備書面提出及弁論ノ二段ニ分ツ。
準備書面提出トハ、各代理人ヨリ陳述書、答弁書及必要アルトキハ弁駁書ヲ裁判部裁判官及相手方ニ送達スルヲ謂フ。当事者ハ、右書面ニ其ノ申立中ニ援用シタル一切ノ文書其ノ他ノ書類ヲ添附ス。送達ハ、仲裁契約ヲ以テ定メタル順序及期間ニ於テ直接ニ又ハ国際事務局ヲ経テ之ヲ行フモノトス。
仲裁契約ヲ以テ定メタル期間ハ、合意アルトキハ当事者ニ於テ、又裁判部カ正当ナル決定ヲ与フル為必要アリト認ムルトキハ裁判部ニ於テ、之ヲ伸長スルコトヲ得。
弁論トハ、裁判部ニ於ケル当事者ノ事由ノ口頭演述ヲ謂フ。

第六四条 当事者ノ一方ヨリ提出シタル一切ノ文書ハ、其ノ認証謄本ヲ他ノ一方ニ送達スヘキモノトス。

第六五条 特別ナル事情アル場合ヲ除クノ外、裁判部ハ、準備書面提出終結ノ後ニ非サレハ開廷セス。

第六六条 弁論ハ、裁判長之ヲ指揮ス。
弁論ハ、当事者ノ承諾ヲ経テ為シタル裁判部ノ決定ニ依ルノ外、之ヲ公開セス。
弁論ハ、之ヲ裁判長ノ任命スル書記官ノ作成スル調書ニ記載シ、裁判長及書記官ノ一名之ニ署名ス。此ノ調書ニ限公正ナル性質ヲ有ス。

第六七条 裁判部ハ、準備書面提出終結ノ後ハ、当事者ノ一方ヨリ相手方ノ承諾ヲ得スシテ提出セムト欲スル新ナル一切ノ証書其ノ他ノ書類ニ付、弁論ヲ拒絶スルコトヲ得。

第六八条 裁判部ハ、当事者ノ代理人又ハ顧問カ其ノ注意ヲ求ムルコトアルヘキ新ナル証書其ノ他書類ヲ参酌スルノ自由ヲ有ス。

第六九条 裁判部ハ、又当事者ノ代理人ニ一切ノ証書ノ提出ヲ請求シ、且必要ナル一切ノ説明ヲ求ムルコトヲ得。其ノ拒絶アリタル場合ニハ、其ノ旨ヲ記録ス。

第七〇条 当事者ノ代理人及顧問ハ、其ノ申立ヲ弁護スル為有益ナリト認ムル一切ノ事由ヲ口頭ニテ仲裁裁判部ニ陳述スルコトヲ得。

第七一条 当事者ノ代理人及顧問ハ、抗弁ヲ為シ、又ハ中間争議ヲ起スコトヲ得。之ニ関スル裁判部ノ決定ハ、確定的ニシテ更ニ之ヲ論議スルコトヲ得サルモノトス。

第七二条 裁判部裁判官ハ、当事者ノ代理人及顧問ニ質問ヲ為シ、且疑ハシキ事項ニ関シテ説明ヲ求ムルコトヲ得。
弁論ノ進行中裁判部裁判官カ為シタル質問又ハ発言ハ、裁判部全体又ハ裁判官各員ノ意見ヲ表明シタルモノト認ムルコトヲ得ス。

第七三条 裁判部ハ、仲裁契約及事件ニ関シテ援用シ得ヘキ其ノ他ノ証書及書類ヲ解釈シ、且法律上ノ原則ヲ適用シテ、自己ノ権限ヲ定ムルコトヲ得。

第七四条 裁判部ハ、裁判指揮ノ為手続上ノ命令ヲ発シ、各当事者カ弁論ヲ終結スヘキ方式、順序及期間ヲ定メ、且証拠調ニ関スル一切ノ手続ヲ行フコトヲ得。

第七五条 当事者ハ紛争決定ノ為必要ナル一切ノ方法ヲ其ノ為シ得ヘシト認ムル限充分ニ裁判部ニ提出スヘシ。

第七六条 裁判部カ締約国タル第三国ノ領土ニ於テ為スヘキ一切ノ通告ハ、裁判部ヨリ直接ニ当該国政府ニ宛テ之ヲ為スヘシ、実地ニ就キ一切ノ証拠蒐集手続ヲ行フトキ亦同シ。右ニ関スル請求ヲ受ケタル国ハ、其ノ国内法規ニ遵ヒ為シ得ヘキ方法ニ依リ其ノ請求ヲ履行スヘク、且其ノ主権又ハ安寧ニ害アリト認ムル場合ヲ除クノ外之ヲ拒ムコトヲ得ス。
裁判部ハ、又常ニ其ノ開廷地ノ所属国ノ媒介ニ依頼スルコトヲ得。

第七七条 当事者ノ代理人及顧問カ各其ノ申立ヲ支持スル一切ノ説明及証拠提出ヲ終リタルトキハ、裁判長ハ、弁論ノ終結ヲ宣告ス。

第七八条 裁判部ノ評議ハ、秘密会ニ於テ行ヒ、且之ヲ秘密ニ付ス。一切ノ決定ハ、裁判官ノ多数決ニ依ル。

第七九条 仲裁判決ニハ理由ヲ附シ、裁判官ノ氏名ヲ掲ケ、裁判長及裁判部書記局員又ハ其ノ職務ヲ行フ書記官之ニ署名ス。

第八〇条 判決ハ、当事者ノ代理人及顧問出席ノ上又ハ之ニ対シ正式ノ呼出ヲ為シタル後、公開廷ニ於テ之ヲ朗読ス。

第八一条 正式ニ言渡ヲ為シ且当事者ノ代理人ニ通告シタル判決ハ、確定的ニ終審トシテ紛争ヲ決定ス。

第八二条 判決ノ解釈及執行ニ関シ当事者間ニ起ルコトアルヘキ一切ノ紛争ハ、反対ノ規約アルニ非サレハ、該判決ヲ言渡シタル裁判部ノ裁判ニ付スヘシ。

第八三条 当事者ハ、仲裁契約ニ於テ仲裁判決ニ対スル再審ノ請求ヲ留保スルコトヲ得。
右ノ場合ニ於テハ、反対ノ規約アルニ非サレハ、判決ヲ為シタル裁判部ニ請求ヲ為スコトヲ要ス。右請求ハ、判決ニ対シ決定的影響ヲ与フルヘキ性質ヲ有スル新事実ニシテ弁論終結ノトキ裁判部及再審ヲ請求スル当事者カ知ラサリシモノヲ発見シタル場合ニ限、之ヲ為スコトヲ得。
再審ノ手続ハ、裁判部ニ於テ特ニ新事実ノ存在ヲ確認シ、其ノ事実カ前項ニ掲ケル特質ヲ有スルコトヲ認識シ、且之ニ因リ請求カ受理スヘキモノナルコトヲ宣言スル決定ヲ為スニ非サレハ、之ヲ開始スルコトヲ得ス。
再審ノ請求ヲ為スヘキ期間ハ、仲裁契約ニ於テ之ヲ定ム。

第八四条 仲裁判決ハ、紛争当事者ニ対シテノミ効力ヲ有ス。
若紛争当事者以外ノ諸国カ加リタル条約ノ解釈ニ関スルモノナルトキハ、紛争当事者ハ、適当ノ時期ニ之ヲ各記名国ニ通告スヘシ。右諸国ハ、各訴訟ニ参加スルノ権利ヲ有ス。一国又ハ数国カ此ノ権能ヲ利用シタルトキハ、判決中ニ包含スル解釈ハ、其ノ国ニ対シテモ亦等シク効力ヲ有スルモノトス。

第八五条 当事者ハ各自ノ費用ヲ負担シ、且裁判部ノ費用ヲ均等ニ分担ス。

第四節 仲裁裁判簡易手続

第八六条 締約国ハ、簡易ナル手続ニ依リ得ヘキ性質ノ紛争ニ関シ、仲裁裁判ノ運用ヲ容易ナラシムル為、別段ナル規約ナキ場合ニ適用スヘキ次ノ規定ヲ設ク。但シ、第三節ノ条項ニシテ右規定ニ牴触セサルモノハ、之ヲ適用ス。

第八七条 紛争当事者ハ、各一人ノ仲裁裁判官ヲ指定ス。右両人ノ仲裁裁判官ハ、一人ノ上級仲裁裁判官ヲ選定ス。若其選定ニ関シ合意成立セサレトキハ、仲裁裁判官ハ、常設裁判所裁判官ノ総名簿ニ就キ各当事者ノ指定シタル裁判官ニ非ス且其ノ孰レノ国民ニモ非サル者ノ中ヨリ各二人ノ候補者ヲ出シ、抽籤ヲ以テ該候補者中上級仲裁裁判官タルヘキ者ヲ定ム。
上級仲裁裁判官ハ、裁判長ト為ル。裁判部ノ決定ハ、多数決ニ依ル。

第八八条 裁判部ハ、予メ何等ノ合意ナキトキハ、其ノ構成後直ニ当事者双方ヨリ陳述書ヲ提出スヘキ期間ヲ定ム。

第八九条 各当事者ハ、一人ノ代理人ヲシテ裁判部ニ於テ自己ヲ代表セシム。右代理人ハ、裁判部ト之ヲ任命シタル政府トノ間ノ媒介者タルヘキモノトス。

第九〇条 裁判手続ハ、悉ク書面ニ依ルモノトス。但シ、各当事者ハ、証人及鑑定人ノ出頭ヲ請求スルコトヲ得。裁判部ハ、当事者双方ノ代理人並出頭セシムルヲ有益ナリト認メタル鑑定人及証人ニ対シ口頭ノ説明ヲ求ムルコトヲ得。

第五章
附則

第九一条 本条約ハ、正式ニ批准セラレタル上、締約国間ノ関係ニ於テ千八百九十九年七月二十九日ノ国際紛争平和的処理条約ニ代ルヘキモノトス。

第九二条 本条約ハ、成ルヘク速ニ批准スヘシ。
批准書ハ、海牙ニ寄託ス。
第一回ノ批准書寄託ハ、之ニ加リタル諸国ノ代表者及和蘭国外務大臣ノ署名シタル調書ヲ以テ之ヲ証ス。
爾後ノ批准書寄託ハ、和蘭国政府ニ宛テ、且批准書ヲ添附シタル通告書ヲ以テ之ヲ為ス。
第一回ノ批准書寄託ニ関スル調書、前項ニ掲ケタル通告書及批准書ノ認証謄本ハ、和蘭国政府ヨリ、外交上ノ手続ヲ以テ、直ニ之ヲ第二回平和会議ニ招請セラレタル諸国及本条約ニ加盟スル他ノ諸国ニ交付スヘシ。前項ニ掲ケタル場合ニ於テハ、和蘭国政府ハ、同時ニ通告ヲ接受シタル日ヲ通知スルモノトス。

第九三条 第二回平和会議ニ招請セラレタル諸国ニシテ記名国ニ非サルモノハ、本条約ニ加盟スルコトヲ得。
加盟セムト欲スル国ハ、書面ヲ以テ其ノ意思ヲ和蘭国政府ニ通告シ、且加盟書ヲ送付シ、之ヲ和蘭国政府ノ文庫ニ寄託スヘシ。
和蘭国政府ハ、直ニ通告書及加盟書ノ認証謄本ヲ第二回平和会議ニ招請セラレタル爾余ノ諸国ニ送付シ、且通告書ヲ接受シタル日ヲ通知スヘシ。

第九四条 第二回平和会議ニ招請セラレサリシ諸国カ本条約ニ加盟シ得ヘキ条件ハ、後日締約国間ノ協商ニ依リテ之ヲ定ム。

第九五条 本条約ハ、第一回ノ批准書寄託ニ加リタル諸国ニ対シテハ、其ノ寄託ノ調書ノ日附ヨリ六十日ノ後、又其ノ後ニ批准シ又ハ加盟スル諸国ニ対シテハ、和蘭国政府カ右批准又ハ加盟ノ通告ヲ接受シタルトキヨリ六十日ノ後ニ、其ノ効力ヲ生スルモノトス。

第九六条 締約国中本条約ヲ廃棄セムト欲スルモノアルトキハ、書面ヲ以テ其ノ旨和蘭国政府ニ通告スヘシ。和蘭国政府ハ直ニ通告書ノ認証謄本ヲ爾余ノ諸国ニ送付シ且通告書ヲ接受シタル日ヲ通知スヘシ。
廃棄ハ、其ノ通知カ和蘭国政府ニ到達シタルトキヨリ一年ノ後、右通告ヲ為シタル国ニ対シテノミ其ノ効力ヲ生スルモノトス。

第九七条 和蘭国外務省ハ、帳簿ヲ備ヘ置キ、第九十二条第三項及第四項ニ依リ為シタル批准書寄託ノ日並加盟(第九十三条第二項)又ハ廃棄(第九十六条第一項)ノ通告ヲ接受シタル日ヲ記入スルモノトス。
各締約国ハ、右帳簿ヲ閲覧シ、且其ノ認証抄本ヲ請求スルコトヲ得。

右証拠トシテ、各全権委員本条約ニ署名ス。

 〔全権委員署名他省略〕

この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 法律命令及官公文書
  2. 新聞紙又ハ雑誌ニ掲載シタル雑報及時事ヲ報道スル記事
  3. 公開セル裁判所、議会並政談集会ニ於テ為シタル演述

この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。