国民の刑事裁判参加に関する法律 (大韓民国)
制定 2007年6月1日法律第8495号
施行 2008年1月1日
第1章 総則
[編集]第1条 (目的) この法律は、司法の民主的正当性と信頼とを高めるために国民が刑事裁判に参加する制度を施行するに当たって、参加による権限及び責任を明確にし、裁判手続きの特例及びその他の必要な事項に関して規定することを目的とする。
第2条 (定義) この法律で使う用語の定義は、次のとおりである。
- 「陪審員」とは、この法律により刑事裁判に参加するものとして選定された者をいう。
- 「国民参加裁判」とは、陪審員が参加する刑事裁判をいう。
第3条 (国民の権利及び義務) ① 何人も、この法律で定めるところにより国民参加裁判を受ける権利を有する。
② 大韓民国国民は、この法律で定めるところにより国民参加裁判に参加する権利及び義務を有する。
第4条 (他の法令との関係) 国民参加裁判に関してこの法律に特別な規定がないときは、「法院組織法」・「刑事訴訟法」等の他の法令を適用する。
第2章 対象事件及び管轄
[編集]第5条 (対象事件) ① 次の各号に定める事件を国民参加裁判の対象事件(以下「対象事件」という。)とする。
- 「刑法」第144条第2項後段(特殊公務執行妨害致死)、第164条第2項後段(現住建造物等放火致死)、第172条第2項後段(爆発性物件破裂致死)、第172条の2第2項後段(ガス・電気等放流致死)、第173条第3項後段(ガス・電気等供給妨害致死)、第177条第2項後段(現住建造物等溢水致死)、第188条後段(交通妨害致死)、第194条後段(飲用水混毒致死傷)、第250条(殺人、尊属殺害)、第252条(嘱託・承諾による殺人等)、第253条(偽計による嘱託殺人等)、第259条(傷害致死・尊属傷害致死)、第262条のうち第259条に係る部分(暴行致死)、第275条第1項後段及び第2項後段(遺棄等致死)、第281条第1項後段及び第2項後段(逮捕・監禁等致死)、第301条(強姦等傷害・致傷)、第301条の2(強姦等殺人・致死)、第305条のうち第301条・第301条の2に係る部分(未成年者姦淫醜行傷害・致傷・殺人・致死)、第324条の4(人質殺害・致死)、第337条(強盗傷害・致傷)、第338条(強盗殺人・致死)、第339条(強盗強姦)、第340条第2項及び第3項(海上強盗傷害・致傷・殺人・致死・強姦)、第368条第2項後段(重損壊致死)
- 「特定犯罪加重処罰等に関する法律」第2条第1項第1号(わいろ)、第4条の2第2項(逮捕・監禁等の致死)、第5条第1号(国庫等損失)、第5条の2第1項・第2項・第4項・第5項(略取・誘引)、第5条の5(強盗傷害・致傷・強盗強姦)、第5条の9第1項・第3項(報復犯罪)、「特定経済犯罪加重処罰等に関する法律」第5条第4項第1号(背任収財)、「性暴行犯罪の処罰及び被害者保護等に関する法律」第5条(特殊強盗強姦等)、第6条(特殊強姦等)、第9条(強姦等傷害・致傷)、第10条(強姦等殺人・致死)
- 「法院組織法」第32条第1項第3号による合議部管轄事件のうち大法院規則で定める事件
- 第1号から第3号までに当たる事件の未遂罪・教唆罪・幇助罪・予備罪・陰謀罪に当たる事件
- 第1号から第4号までと「刑事訴訟法」第11条による関連事件として併合して審理する事件
② 被告人が国民参加裁判を求めず、又は第9条第1項による排除決定があるときは、国民参加裁判をしない。
第6条 (公訴事実の変更等) ① 法院は、公訴事実の一部撤回又は変更により対象事件に当たらなくなったときであっても、この法律による裁判を引き続き進行する。ただし、法院は、審理の状況その他の事情を考慮して、国民参加裁判により進行するのが適当ではないと認めるときは、決定で、事件を地方法院本院合議部が国民参加裁判によらずに審判するものとすることができる。
② 第1項ただし書きの決定に対しては、不服を申し立てることができない。
③ 第1項ただし書きの決定があったときは、当該裁判に参加した陪審員及び予備陪審員は解任されたものとみなす。
④ 第1項ただし書きの決定の前に行った訴訟行為は、その決定後も、その効力に影響がない。
第7条 (必要的国選弁護) この法律による国民参加裁判について、弁護人がないときは、法院は、職権で弁護人を選定しなければならない。
第8条 (被告人意思の確認) ① 法院は、対象事件の被告人に対し、国民参加裁判を求めるか否かに関する意思を書面等の方法で必ず確認しなければならない。この場合において、被告人意思の具体的な確認方法は大法院規則で定めるが、被告人の国民参加裁判を受ける権利が最大限保障されるようにしなければならない。
② 被告人は、公訴状副本の送達を受けた日から7日以内に、国民参加裁判を求めるか否かに関する意思を記載した書面を提出しなければならない。この場合において、被告人が書面を郵便で発送したときは、教導所又は拘置所にいる被告人が書面を教導所長・拘置所長又はその職務を代理する者に提出した時に法院に提出したものとみなす。
③ 被告人が第2項の書面を提出しないときは、国民参加裁判を求めないものとみなす。
④ 被告人は、第9条第1項の排除決定若しくは第10条第1項の回付決定があり、又は公判準備期日が終結され若しくは第1回公判期日が開かれた後は、従前の意思を変えることができない。
第9条 (排除決定) ① 法院は、公訴申立て後から公判準備期日が終結された翌日までの間、次の各号のいずれか一に当たる場合には、国民参加裁判をしないものとする決定をすることができる。
- 陪審員・予備陪審員・陪審員候補者又はその親族の生命・身体・財産に対する侵害又は侵害の憂慮があって、出席の困難があり又はこの法律による職務を公正に遂行することができないおそれがあると認められる場合
- 共犯関係にある被告人のうち一部が国民参加裁判を求めないために、国民参加裁判の進行に困難があると認められる場合
- その他国民参加裁判により進行するのが適切ではないと認められる場合
② 法院は、第1項の決定をする前に、検事・被告人又は弁護人の意見を聞かなければならない。
③ 第1項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第10条 (地方法院支院管轄事件の特例) ① 第8条により被告人が国民参加裁判を求める意思を表示した場合において、地方法院支院合議部が第9条第1項の排除決定をしないときは、国民参加裁判手続き回付決定をして事件を地方法院本院合議部に移送しなければならない。
② 地方法院支院合議部が審判権を有する事件のうち地方法院支院合議部が第1項の回付決定をした事件については、地方法院本院合議部が管轄権を有する。
第11条 (通常手続き回付) ① 法院は、被告人の疾病等により公判手続きが長期間停止され、又は被告人に対する拘束期間の満了、その他の審理の諸般の状況に照らして国民参加裁判を引き続き進行するのが不適切であると認めるときは、職権で又は検事・被告人若しくは弁護人の申立てにより、決定で事件を地方法院本院合議部が国民参加裁判によらずに審判するものとすることができる。
② 法院は、第1項の決定をする前に、検事・被告人又は弁護人の意見を聞かなければならない。
③ 第1項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
④ 第1項の決定があったときは、第6条第3項及び第4項を準用する。
第3章 陪審員
[編集]第1節 総則
[編集]第12条 (陪審員の権限及び義務) ① 陪審員は、国民参加裁判をする事件に関し、事実の認定、法令の適用及び刑の量定に関する意見を提示する権限を有する。
② 陪審員は、法令を守り、独立して、誠実に職務を遂行しなければならない。
③ 陪審員は、職務上知り得た秘密を漏らし、又は裁判の公正を害する行為をしてはならない。
第13条 (陪審員の数) ① 法定刑が死刑・無期懲役又は無期禁錮に当たる対象事件についての国民参加裁判には9人の陪審員が参加し、その他の対象事件についての国民参加裁判には7人の陪審員が参加する。ただし、法院は、被告人又は弁護人が公判準備手続きにおいて公訴事実の主要内容を認めたときは、5人の陪審員が参加するものとすることができる。
② 法院は、事件の内容に照らして特別な事情があると認める場合には、検事・被告人又は弁護人の同意があるときに限り、決定で陪審員の数を7人又は9人のうち第1項と異なる定めをすることができる。
第14条 (予備陪審員) ① 法院は、陪審員の欠員等に備え、5人以内の予備陪審員を置くことができる。
② この法律で定める陪審員についての事項は、その性質に反しない限り、予備陪審員について準用する。
第15条 (旅費・日当等) 大法院規則で定めるところにより、陪審員・予備陪審員及び陪審員候補者に旅費・日当等を支給する。
第2節 陪審員の資格
[編集]第16条 (陪審員の資格) 陪審員は、満20歳以上の大韓民国国民のうちから、この法律で定めるところにより選定される。
第17条 (欠格事由) 次の各号のいずれか一に当たる者は、陪審員に選定されることができない。
- 禁治産者又は限定治産者
- 破産者であって復権しないもの
- 禁錮以上の実刑を宣告されてその執行が終了し(終わったものとみなす場合を含む。)又は執行を免除された後5年を経過しない者
- 禁錮以上の刑の執行猶予を宣告されてその期間が完了した日から2年を経過しない者
- 禁錮以上の刑の宣告猶予を受けてその宣告猶予期間中の者
- 法院の判決により資格を喪失又は停止された者
第18条 (職業等による除外事由) 次の各号のいずれか一に当たる者を陪審員として選定してはならない。
- 大統領
- 国会議員・地方自治体の長及び地方議会議員
- 立法府・司法部・行政府・憲法法院・中央選挙管理委員会・監査院の政務職公務員
- 法官・検事
- 弁護士・法務士
- 法院・検察公務員
- 警察・矯正・保護観察公務員
- 軍人・軍務員・消防公務員又は「郷土防衛軍設置法」により動員され、又は教育訓練義務を履行中の郷土防衛軍
第19条 (除斥事由) 次の各号のいずれか一に当たる者は、当該事件の陪審員に選定されることができない。
- 被害者
- 被告人若しくは被害者の親族又はこのような関係にあった者
- 被告人又は被害者の法定代理人
- 事件に関する証人・鑑定人・被害者の代理人
- 事件に関する被告人の代理人・弁護人・補助人
- 事件に関する検事又は司法警察官の職務を行った者
- 事件に関して前審の裁判又はその基礎になる調査・審理に関与した者
第20条 (免除事由) 法院は、職権又は申立てにより、次の各号のいずれか一に当たる者に対し、陪審員の職務の遂行を免除することができる。
- 満70歳以上の者
- 過去5年以内に陪審員候補者となって選定期日に出席した者
- 禁錮以上の刑に当たる罪で起訴されて事件が終結しない者
- 法令によって逮捕又は拘禁されている者
- 陪審員の職務の遂行が自己又は第三者に危害をもたらし、又は職業上回復することができない損害を被ることとなるおそれがある者
- 重病・傷害又は障害により法院に出席し難い者
- その他のやむを得ない事由で陪審員職務を遂行し難い者
第21条 (報告・書類送付要求) 地方法院長又は裁判長は、国家、地方自治体、公共団体、その他の法人・団体に陪審員候補者・陪審員・予備陪審員の選定又は解任に関する判断のために必要な事項の報告又はその保管書類の送付を要求することができる。
第3節 陪審員の選定
[編集]第22条 (陪審員候補予定者名簿の作成) ① 地方法院長は、陪審員候補予定者名簿を作成するために、行政自治副長官に対し、毎年、その管轄区域内に居住する満20歳以上の国民の住民登録情報から一定数の陪審員候補予定者の姓名・生年月日・住所及び性別に関する住民登録情報を抽出して電子ファイルの形態で送付するよう要請することができる。
② 第1項の要請を受けた行政自治副長官は、30日以内に、住民登録資料を地方法院長に送付しなければならない。
③ 地方法院長は、毎年、住民登録資料を活用して陪審員候補予定者名簿を作成する。
第23条 (陪審員候補者の決定及び出席通知) ① 法院は、陪審員候補予定者名簿のうち必要な数の陪審員候補者を無作為抽出方式により定め、陪審員及び予備陪審員の選定期日を通知しなければならない。
② 第1項の通知を受けた陪審員候補者は、選定期日に出席しなければならない。
③ 法院は、第1項の通知以後陪審員の職務従事予定期間を終えるまで第17条から第20条までに当たる事由があると認められる陪審員候補者に対しては、直ちにその出席通知を取り消し、速やかに当該陪審員候補者にその旨を通知しなければならない。
第24条 (選定期日の進行) ① 法院は、合議部員をして選定期日の手続きを進行させることができる。この場合において、受命法官は、選定期日に関し、法院又は裁判長と同一の権限を有する。
② 選定期日は、公開しない。
③ 選定期日においては、陪審員候補者の名誉が損傷されたり私生活が侵害されたりすることがないよう配慮しなければならない。
④ 法院は、選定期日の続行のために新しい期日を定めることができる。この場合において、選定期日に出席した陪審員候補者に対して新しい期日を通知したときは、出席通知書の送逹があったときと同一の効力を有する。
第25条 (質問票) ① 法院は、陪審員候補者が第28条第1項で定める事由に当たるか否かを判断するために質問票を用いることができる。
② 陪審員候補者は、正当な事由がない限り、質問票に記載された質問に答えてこれを法院に提出しなければならない。
第26条 (候補者名簿送付等) ① 法院は、選定期日の2日前までに、検事及び弁護人に対し、陪審員候補者の姓名・性別・出生年度が記載された名簿を送付しなければならない。
② 法院は、選定手続きに質問票を用いるときは、選定期日を進行する前に、陪審員候補者が提出した質問票の写しを検事及び弁護人に交付しなければならない。
第27条 (選定期日の参加者) ① 法院は、検事・被告人又は弁護人に選定期日を通知しなければならない。
② 検事及び弁護人は、選定期日に出席しなければならず、被告人は、法院の許可を受けて出席することができる。
③ 法院は、弁護人が選定期日に出席しないときは、国選弁護人を選定しなければならない。
第28条 (陪審員候補者に対する質問及び忌避申立て) ① 法院は、陪審員候補者が第17条から第20条までの事由に当たるか否か又は不公平な判断をする恐れがあるか否か等を判断するために、陪審員候補者に質問することができる。検事・被告人又は弁護人は、法院をして必要な質問をするように要請することができ、法院は、検事又は弁護人をして直接質問させることができる。
② 陪審員候補者は、第1項の質問に対し、正当な事由がないのに陳述を拒否し、又は虚偽の陳述をしてはならない。
③ 法院は、陪審員候補者が第17条から第20条までの事由に当たり、又は不公平な判断をするおそれがあると認められるときは、職権又は検事・被告人・弁護人の忌避申立てにより、当該陪審員候補者に対し、不選定決定をしなければならない。検事・被告人又は弁護人の忌避申立てを棄却するときは、理由を告知しなければならない。
第29条 (異議申立て) ① 第28条第3項の忌避申立てを棄却する決定に対しては、即時異議申立てをすることができる。
② 第1項の異議申立てに対する決定は、忌避申立て棄却決定をした法院がする。
③ 異議申立てに対する決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第30条 (無理由付忌避申立て) ① 検事及び弁護人は、それぞれ次の各号の範囲内で、陪審員候補者に対し、理由を提示しない忌避申立て(以下「無理由付忌避申立て」という。)をすることができる。
- 陪審員が9人の場合は5人
- 陪審員が7人の場合は4人
- 陪審員が5人の場合は3人
② 無理由付忌避申立てがあったときは、法院は、当該陪審員候補者を陪審員として選定することができない。
③ 法院は、検事・被告人又は弁護人に対し、順序を変えて無理由付忌避申立てをすることができる機会を与えなければならない。
第31条 (選定決定及び不選定決定) ① 法院は、出席した陪審員候補者のうちから当該裁判に必要な陪審員及び予備陪審員の数に当たる陪審員候補者を無作為に選び、これらを対象として、職権、忌避申立て又は無理由付忌避申立てによる不選定決定をする。
② 第1項の不選定決定があったときは、その数まで第1項の手続きを繰り返す。
③ 第1項及び第2項の手続きにより必要な数の陪審員及び予備陪審員候補者が確定されたときは、法院は、無作為の方法で陪審員及び予備陪審員を選定する。予備陪審員が2人以上のときは、その順番を定めなければならない。
④ 法院は、陪審員及び予備陪審員に対し、誰が陪審員に選定されたのか否かを知らせないものとする。
第4節 陪審員の解任等
[編集]第32条 (陪審員の解任) ① 法院は、陪審員又は予備陪審員が次の各号のいずれか一に当たるときは、職権又は検事・被告人・弁護人の申立てにより、陪審員又は予備陪審員を解任する決定をすることができる。
- 陪審員又は予備陪審員が第42条第1項の宣誓をしないとき
- 陪審員又は予備陪審員が第41条第2項各号の義務に違反し、その職務を担当させることが適当ではないと認められるとき
- 陪審員又は予備陪審員が出席義務に違反し、継続してその職務を行うのが適当ではないとき
- 陪審員又は予備陪審員に第17条から第20条までの事由に当たる事実があり、又は不公平な判断をするおそれがあるとき
- 陪審員又は予備陪審員が質問票に虚偽の記載をし、又は選定手続きにおける質問に対し、正当な事由がないのに陳述を拒否し、若しくは虚偽の陳述をしたことが明らかとなり、継続してその職務を行うのが適当ではないとき
- 陪審員又は予備陪審員が法廷で裁判長が命じた事項に従わず、又は暴言若しくはその他の不当な言行をする等公判手続きの進行を妨害したとき
② 第1項の決定をするには、検事・被告人又は弁護人の意見を聞き、出席した当該陪審員又は予備陪審員に陳述の機会を付与しなければならない。
③ 第1項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第33条 (陪審員の辞任) ① 陪審員及び予備陪審員は、職務を引き続き遂行し難い事情があるときは、法院に対し、辞任を申し立てることができる。
② 法院は、第1項の申立てに理由があると認めるときは、当該陪審員又は予備陪審員を解任する決定をすることができる。
③ 第2項の決定をするに当たっては、検事・被告人又は弁護人の意見を聞かなければならない。
④ 第2項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第34条 (陪審員の追加選定等) ① 第32条及び第33条により陪審員が不足したときは、予備陪審員は、あらかじめ定めた順序により陪審員になる。この場合において、陪審員になる予備陪審員がいないときは、陪審員を追加して選定する。
② 国民参加裁判の途中で、審理の進行の程度に照らして陪審員を追加選定して裁判に関与させることが不適切であると判断するときは、法院は、次の各号の区分により、残る陪審員のみにより継続して国民参加裁判を進行する旨の決定をすることができる。ただし、陪審員が5人未満になるときは、この限りでない。
- 1人の陪審員が不足したときは、検事・被告人又は弁護人の意見を聞かなければならない。
- 2人以上の陪審員が不足したときは、検事・被告人又は弁護人の同意を得なければならない。
第35条 (陪審員等の任務終了) 陪審員及び予備陪審員の任務は、次の各号のいずれか一に当たるときに終了する。
- 終局裁判を告知したとき
- 第6条第1項ただし書き又は第11条により通常手続き回付決定を告知したとき
第4章 国民参加裁判の手続き
[編集]第1節 公判の準備
[編集]第36条 (公判準備手続き) ① 裁判長は、第8条により被告人が国民参加裁判を求める意思を表示したときは、事件を公判準備手続きに付さなければならない。ただし、公判準備手続きに付する前に第9条第1項の排除決定があったときは、この限りでない。
② 公判準備手続きに付した後、被告人が国民参加裁判を求めない意思を表示し、又は第9条第1項の排除決定があったときは、公判準備手続きを終結することができる。
③ 地方法院本院合議部が地方法院支院合議部から第10条第1項によって移送を受けた事件については、既に公判準備手続きを経った場合であっても、必要なときは、公判準備手続きに付することができる。
④ 検事・被告人又は弁護人は、証拠をあらかじめ収集・整理する等、公判準備手続きが円滑に進行するように協力しなければならない。
第37条 (公判準備期日) ① 法院は、主張及び証拠を整理して審理計画を樹立するため、公判準備期日を指定しなければならない。
② 法院は、合議部員をして公判準備期日を進行させることができる。この場合において、受命法官は、公判準備期日に関し、法院又は裁判長と同一の権限を有する。
③ 公判準備期日は、公開する。ただし、法院は、公開することにより手続きの進行の妨げになるおそれがあるときは、公判準備期日を公開しないものとする。
④ 公判準備期日には、陪審員は参加しない。
第2節 公判手続き
[編集]第38条 (公判期日の通知) 公判期日は、陪審員及び予備陪審員に通知しなければならない。
第39条 (訴訟関係人の座席) ① 公判廷は、判事・陪審員・予備陪審員・検事・弁護人が出席して開廷する。
② 検事と被告人及び弁護人とは、対等に向き合って着席する。ただし、被告人尋問をするときは、被告人は、証人席に着席する。
③ 陪審員及び予備陪審員は、裁判長と検事・被告人及び弁護人の間の左側に着席する。
④ 証人は、裁判長と検事・被告人及び弁護人の間の右側で、陪審員及び予備陪審員と向かい合って着席する。
第40条 (公判廷での速記・録音) ① 法院は、特別な事情がない限り、公判廷での審理を速記士をして速記させ、又は録音装置若しくは映像録画装置を用いて録音又は映像録画しなければならない。
② 第1項による速記録・録音テープ又はビデオテープは、公判調書とは別に保管されなければならず、検事・被告人又は弁護人は、費用を負担して、速記録・録音テープ又はビデオテープの写しを請求することができる。
第41条 (陪審員の手続上の権利及び義務) ① 陪審員及び予備陪審員は、次の各号の行為をすることができる。
- 被告人・証人に対し、必要な事項を尋問するよう裁判長に要請する行為
- 必要と認めるときは、裁判長の許可を受けてそれぞれ筆記をし、これを評議に用いる行為
② 陪審員及び予備陪審員は、次の各号の行為をしてはならない。
- 審理途中に法廷を離れ、又は評議・評決又は討議が完結する前に裁判長の許諾なく評議・評決又は討議場所を離れる行為
- 評議が始まる前に当該事件に関する自己の見解を明らかにし、又は議論する行為
- 裁判手続き外で当該事件に関する情報を収集し、又は調査する行為
- この法律で定めた評議・評決又は討議に関する秘密を漏らす行為
第42条 (宣誓等) ① 陪審員及び予備陪審員は、法律により公正にその職務を遂行することを誓う旨の宣誓をしなければならない。
② 裁判長は、陪審員及び予備陪審員に対し、陪審員及び予備陪審員の権限・義務・裁判手続き、その他の職務遂行を円滑にするために必要な事項を説明しなければならない。
第43条 (簡易公判手続き規定の排除) 国民参加裁判には「刑事訴訟法」第286条の2を適用しない。
第44条 (陪審員の証拠能力判断排除) 陪審員又は予備陪審員は、法院の証拠能力に関する審理に関与することができない。
第45条 (公判手続きの更新) ① 公判手続きが開始された後、新たに裁判に参加する陪審員又は予備陪審員がいるときは、公判手続きを更新しなければならない。
② 第1項の更新手続きは、新たに参加した陪審員又は予備陪審員に争点及び調査した証拠を理解させるとともに、その負担が過重でないようにしなければならない。
第3節 評議・評決・討議及び判決宣告
[編集]第46条 (裁判長の説明・評議・評決・討議等) ① 裁判長は、弁論が終結された後、法廷で、陪審員に対し、公訴事実の要旨及び適用法条、被告人及び弁護人の主張の要旨、証拠能力、その他の留意すべき事項に関して説明しなければならない。この場合において、必要なときは、証拠の要旨に関して説明することができる。
② 審理に関与した陪審員は、第1項の説明を聞いた後、有・無罪に関し、評議して、全員の意見が一致すればそれにより評決する。ただし、陪審員の過半数の要請があるときは、審理に関与した判事の意見を聞くことができる。
③ 陪審員は、有・無罪に関し、全員の意見が一致しないときは、評決をする前に、審理に関与した判事の意見を聞かなければならない。この場合において、有・無罪の評決は、多数決の方法による。審理に関与した判事は、評議に参加して意見を述べたときであっても、評決には参加することができない。
④ 第2項及び第3項の評決が有罪であるときは、陪審員は、審理に関与した判事とともに、量刑に関して討議し、これに関する意見を開陳する。裁判長は、量刑に関する討議の前に、処罰の範囲及び量刑の条件等を説明しなければならない。
⑤ 第2項から第4項までの評決及び意見は、法院を拘束しない。
⑥ 第2項及び第3項の評決結果並びに第4項の意見を集計した書面は、訴訟記録に編綴する。
第47条 (評議等の秘密) 陪審員は、評議・評決及び討議過程で知り得た判事及び陪審員各自の意見及びその分布等を漏らしてはならない。
第48条 (判決宣告期日) ① 判決の宣告は、弁論を終結した期日にしなければならない。ただし、特別な事情があるときは、別に宣告期日を指定することができる。
② 弁論を終結した期日に判決を宣告するときは、判決書を宣告後に作成することができる。
③ 第1項ただし書きの宣告期日は、弁論終結後14日以内としなければならない。
④ 裁判長は、判決宣告のときに被告人に陪審員の評決結果を告知しなければならず、陪審員の評決結果と異なる判決を宣告するときは、被告人にその理由を説明しなければならない。
第49条 (判決書の記載事項) ① 判決書には、陪審員が裁判に参加した旨を記載しなければならず、陪審員の意見を記載することができる。
② 陪審員の評決結果と異なる判決を宣告するときは、判決書にその理由を記載しなければならない。
第5章 陪審員等の保護のための措置
[編集]第50条 (不利益取扱いの禁止) 何人も、陪審員・予備陪審員又は陪審員候補者である事実を理由として解雇し、その他の不利益な処遇をしてはならない。
第51条 (陪審員等に対する接触の規制) ① 何人も、当該裁判に影響を及ぼし、又は陪審員若しくは予備陪審員が職務上取得した秘密を知る目的で、陪審員若しくは予備陪審員と接触してはならない。
② 何人も、陪審員又は予備陪審員が職務上取得した秘密を知る目的で、陪審員又は予備陪審員の職務に携わった人と接触してはならない。ただし、研究のために必要なときは、この限りでない。
第52条 (陪審員等の個人情報公開禁止) ① 法令で定める場合を除き、何人も、陪審員・予備陪審員又は陪審員候補者の姓名・住所その他の個人情報を公開してはならない。
② 陪審員・予備陪審員又は陪審員候補者の職務を遂行した者の個人情報は、本人が同意するときに限り、これを公開することができる。
第53条 (陪審員等に対する身辺保護措置) ① 裁判長は、陪審員若しくは予備陪審員が被告人その他の者から危害を受け、若しくは受けるおそれがあると認めるとき、又は公正な審理若しくは評議に支障をもたらし、若しくはもたらすおそれがあると認めるときは、陪審員又は予備陪審員の身辺の安全のために保護、隔離、宿泊、その他の必要な措置をとることができる。
② 検事、被告人、弁護人、陪審員又は予備陪審員は、裁判長に第1項の措置をとるように要請することができる。
第6章 研究組職
[編集]第54条 (司法参加企画団) ① 国民参加裁判に関する調査・研究等を遂行するために、大法院に司法参加企画団を置く。
② 司法参加企画団は、次の各号の事項に関する任務を遂行する。
- 模擬裁判の実施
- 国民参加裁判の録画及び分析
- 捜査・弁護及び裁判手続きに関する研究
- 法曹実務者に対する教育
- 国民に対する教育及び広報
- 公聴会・学術シンポジウムの開催
- その他の国民参加裁判の研究に必要な事項
③ 司法参加企画団の組職及び活動、その他の必要な事項は、大法院規則で定める。
第55条 (国民司法参加委員会) ① 国民参加裁判の施行経過に対する分析等を通じて国民参加裁判制度の最終的な形態を定めるために、大法院に国民司法参加委員会を置く。
② 国民司法参加委員会の組職及び活動、その他の必要な事項は、大法院規則で定める。
第7章 罰則
[編集]第56条 (陪審員等に対する請託罪) ① 陪審員又は予備陪審員に、その職務に関し、請託をした者は、2年以下の懲役又は500万ウォン以下の罰金に処する。
② 陪審員候補者に、その職務に関し、請託をした者も、第1項と同じである。
第57条 (陪審員等に対する脅威罪) ① 被告事件に関し、当該被告事件の陪審員・予備陪審員若しくはその職にあった者又はその親族に対し、電話・手紙・面会、その他の方法で脅迫し、又は不安感を造成する等の脅威行為をした者は、2年以下の懲役又は500万ウォン以下の罰金に処する。
② 被告事件に関し、当該被告事件の陪審員候補者又はその親族に対し、第1項の方法で脅威行為をした者も、第1項と同じである。
第58条 (陪審員等による秘密漏泄罪) ① 陪審員又は予備陪審員が職務上知り得た秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は300万ウォン以下の罰金に処する。
② 陪審員又は予備陪審員であった者が職務上知り得た秘密を漏らしたときも、第1項と同じである。ただし、研究に必要な協助をしたときは、この限りでない。
第59条 (陪審員等の金品授受等) ① 陪審員・予備陪審員又は陪審員候補者が、職務に関して財物又は財産上の利益を授受・要求・約束したときは、3年以下の懲役又は1千万ウォン以下の罰金に処する。
② 陪審員・予備陪審員又は陪審員候補者に第1項の財物又は財産上の利益を約束・供与又は供与の意思を表示した者も、第1項と同じである。
第60条 (陪審員候補者の欠席等に対する過料) ① 次の各号のいずれか一に当たるときは、法院は、決定で、200万ウォン以下の過料を賦課する。
- 出席通知を受けた陪審員・予備陪審員・陪審員候補者が、正当な事由がないのに指定された日時に出席しないとき
- 陪審員又は予備陪審員が、正当な事由がないのに第42条第1項の宣誓を拒否したとき
- 陪審員候補者が、陪審員又は予備陪審員選定のための質問書に虚偽の記載をして法院に提出し、又は選定手続きにおける質問に対し、虚偽の陳述をしたとき
② 第1項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
付則
[編集]第8495号、2007年6月1日
[編集]① (施行日) この法律は、2008年1月1日から施行する。
② (適用例) この法律は、この法律の施行後最初に公訴の申立てがあった事件から適用する。
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- 憲法・法律・条約・命令・条例及び規則
- 国又は地方公共団体の告示、公告、訓令その他これに類するもの
- 裁判所の判決、決定、命令及び審判又は行政審判手続その他これに類する手続による議決、決定等
- 国又は地方公共団体が作成したものであって第1号から第3号までに規定されたものの編輯物又は翻訳物
- 事実の伝達にすぎない時事報道
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