十二箇條問答

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じふでうもんだふ

〈この問は何人か判明せざるも、第一問によれば女人なるが如し。〉


【一】とひていはく、「ねんぶつすればわうじやうすべしといふことみみなれたるやうにありながら、いかなるゆへともしらず。かやうのしやうまでもすてられぬことならば、こまかにをしへさせたまへ」

こたへていはく、「をよそしやうをいづるぎやうひとつにあらずといへども、まづごくらくわうじやうせんとねがへ、みだねんぜよといふことしやいちだいをしへにあまねくすゝめたまへり。そのゆへは、あみだぶつほんぐわんををこして、わがみやうがうねんぜんもの、わがじやうにむまれずば、しやうがくをとらじとちかひて、すでにしやうがくをなりたまふゆへに、このみやうがうをとなふるものはかならずわうじやうするなりりんじうときもろしやうじゆとともにきたりて、かならずかうせふたまふゆへに、あくごふとしてさふるものなく、えんとしてさまたぐることなし。なんによせんをもえらばず。ぜんにんあくにんをもわかたず。しんみだねんずるにむまれずといふことなし。たとへばおもきいしをふねにのせつればしづむことなく、まんのうみをわたるがごとし。ざいごふのおもきこといしのごとくなれども、ほんぐわんのふねにのりぬればしやうのうみにしづむことなく、かならずわうじやうするなり。ゆめわがざいごふによりてほんぐわんふしぎをうたがはせたまふべからず。これをりきわうじやうとはまをすなりりきにてしやうをいでんとするには、ぼんなうあくごふだんじつくしてじやうにもまいりだいにもいたるとならふ。これはかちよりけはしきみちをゆくがごとし」
〈【五障】女人の五種の障礙、一には轉輪聖王となることを得ず。二には梵天王となることを得ず。三には帝釋天となることを得ず。四には魔王となることを得ず。五には佛となることを得ず。〉


【二】とひていはく、「ざいごふをもけれども、ちゑともしびをもてぼんなうのやみをはらふことにてさふらふなれば、かやうのぐちには、つみをつくることはかさなれども、つぐのふことはなし。なにをもてこのつみをけすべしともおぼえずさふらふはいかん」

こたへていはく、「たゞほとけおんことばしんじてうたがひなければ、ほとけおんちからにてわうじやうするなり。さきのたとへのごとく、ふねにのりぬれば、しゐたるものもあきたるものもともにゆくがごとし。ちゑのまなこあるものも、ほとけねんぜざればぐわんりきにかなはず。ぐちのやみふかきものもねんぶつすればぐわんりきじようずるなり。ねんぶつするものをばみだくわうみやうをはなちてつねにてらしてすてたまはねば、あくえんにあはずして、かならずりんじゆしやうねんをえてわうじやうするなり。さらにわがちゑのありなしによりて、わうじやうぢやうぢやうをばさだむべからず。たゞしんじんのふかゝるべきなり


【三】とひていはく、「をそむきたるひとは、ひとすぢにねんぶつすればわうじやうやすきことなり。かやうのにてまをさんねんぶつはいかゞほとけこころにもかなひさふらふべきや」

こたへていはく、「じやうまにしゆといふたまをにごれるみづなぐれば、たまゆうりきにてそのみづきよくなるがごとし。しゆじやうこころはつねにみやうにそみて、にごれることかのみづのごとくなれども、ねんぶつまにしゆなぐれば、こころみづをのづからきよくなりてわうじやうをうることは、ねんぶつのちからなり。わがこころをしづめ、このさわりをのぞきて、のちねんぶつせよとにはあらず。たゞつねにねんぶつして、そのつみをばめつすべし。さればむかしよりざいひと。おほくわうじやうしたるためしいくばくかおほき。こころのしづかならざらんにつけても、よくぶつりきをたのみもはらねんぶつすべし」
〈【淨摩尼珠】摩尼(Mani)は無垢、離垢等と譯す。淨く穢れなき寶珠を云ふ。〉


【四】とひていはく、「ねんぶつへんまをせとすゝむるひともあり。またさもなくともなどまをすひともあり。いづれにかしたがひさふらふべき」

こたへていはく、「さとりもあり、ならふむねもありてまをさんことは、そのこころのうちしりがたければ、さだめがたし。ざいひとのつねにあくえんにのみしたしまれ、にはへんまをさずして、いたづらにをくらし、むなしくをあかさんことくわうりやうことにやさふらはんずらん。ぼんえんにしたがひてたいしやすきものなれば、いかにもはげむべきことなり。さればしよにおほくねんねんさうぞくしてわすれざれといへり」


【五】とひていはく、「ねんにわすれざるほどことは、わがにかなひがたくおぼえさふらへ。またねんじゆをとれどもこころにはそゞろことをのみおもふ。このねんぶつわうじやうごふにはかなひがたくやさふらはんずらん。これをきらはれば、このわうじやうぢやうなるかたもありぬべし」

こたへていはく、「ねんにすてざれとをしゆることは、ひとのほどにしたがひてすゝむることなればわがにとりてこころのをよび、のはげまんほどは、こころにはからはせたまふべし。またねんぶつときあくごふのおもはるゝこといつさいぼんのくせなり。さりながらもわうじやうこころざしありてねんぶつせば、ゆめさはりとはなるべからず。たとへばおややくそくをなすひといさゝかそむくこころあれども、さきのやくそくへんがいするほどこころなければ、おなじおやなるがごとし。ねんぶつしてわうじやうせんとこころざしてねんぶつぎやうずるに、ぼんなるがゆへにとんじんぼんなうおこるといへども、ねんぶつわうじやうやくそくをひるがへさざれば、かならずわうじやうするなり。」


【六】とひていはく、「これほどにやすくわうじやうせば、ねんぶつするほどのひとはみなわうじやうすべきに、ねがふものもおほく、ねんずるものもおほきなかに、わうじやうするものゝまれなるは、なにのゆへとかおもさふらふべき」

こたへていはく、「ひとこころほかにあらはるゝことなければそのじやしやうさだめがたしといへども、きやうにはさんじんしてわうじやうすとみえてさふらふめり。このこころせざるがゆへに、ねんぶつすれどもわうじやうざるなりさんじんまをすは、いちにはじやうしんにはじんしんさんにはかうほつぐわんしんなり。はじめにじやうしんといふはしんじつしんなりしやくして、ないとゝのほれるこころなりなにごとをするにも、まことしきこころなくてはじやうずることなし。ひとなみこころをもて、ゑどのいとはしからぬをいとふよしをし、じやうのねがはしからぬをねがふしきをして、ないとゝのほらぬをきらひて、まことのこころざしをもてゑどをもいとひじやうをもねがへとをしふるなりつぎじんしんといふはほとけほんぐわんしんずるこころなり。われはあくごふぼんなうなれどもほとけぐわんりきにて、かならずわうじやうするなりといふだうをきゝてふかくしんじて、つゆちりばかりもうたがはぬこころなりひとおほくさまたげんとしてこれをにくみ、これをさへぎれども、これによりてこころのはたらかざるをふかきしんとはまをすなりつぎかうほつぐわんしんといふは、わがしゆするところのぎやうかうして、ごくらくにむまれんとねがふこころなり。わがぎやうのちから、わがこころのいみじくてわうじやうすべしとはおもはず。ほとけぐわんりきのいみじくおはしますによりて、むまるべくもなきものもうまるべしとしんじて、いのちをはらばほとけかならずきたりてむかへたまふべしとおもふこころを、こんがういつさいのものにやぶられざるがごとく、このこころをふかくしんじてりんじうまでもとほりぬれば、じふにんじふにんながらむまれ、ひやくにんひやくにんながらむまるゝなり。さればこのこころなきものは、ほとけねんずれどもじゆんわうじやうをばとげず、をんえんとはなるべし。このこころのをこりたることはわがにしるべし。ひとはしるべからず」


【七】とひていはく、「わうじやうをねがはぬにはあらず、ねがふといへどもそのこころゆうみやうならず。またねんぶついやしとおもふにはあらず。ぎやうじながらをろそかにしてあかしくらしさふらへば、かゝるなれば、いかにもこのさんじんしたりとまをすべくもなし。さればこのたびのわうじやうをばおもひたえさふらふべきにや」

こたへていはく、「じやうをねがへどもはげしからず、ねんぶつすれどもこころのゆるらかなることをなげくは、わうじやうこころざしのなきにはあらず。こころざしのなきものはゆるらかなるをもなげかず、はげしからぬをもかなしまず、いそぐみちにはあしのをそきをなげく。いそがざるみちにはこれをなげかざるがごとし。またこのめばをのづからほつしんすとまをこともあれば、ぜんぞうしんしてかならずわうじやうすべし。ごろじふあくぎやくをつくれるものも、りんじうにはじめてぜんしきにあひてわうじやうすることあり。いはんやわうじやうをねがひ、ねんぶつまをしてわがこころのはげしからぬことをなげかむひとをば、ほとけもあはれみさつもまもりて、さはりをのぞきしきにあひてわうじやうをうべきなり


【八】とひていはく、「ねんぶつぎやうじやはつねにいかやうにかおもひさふらふべき」

こたへていはく、「あるときにはけんじやうなることをおもひて、このよのいくほどなきことをしれあるときにはほとけほんぐわんをおもひて、かならずむかへたまへとまをせ。あるときにはにんしんのうけがたきことはりをおもひて、このたびむなしくやまんことをかなしめ。ろくだうをめぐるに、にんしんをうることぼんてんよりいとをくだしてたいかいのそこなるはりのあなをとをさんがごとしといへり。あるときはあひがたきぶつぽふにあへり。このたびしゆつごふをうへずば、いつをかすべきとおもふべきなり。ひとたびあくだうしぬれば、そうこふをふれども、さんぽうおんをきかず。いかにいはんやふかくしんずることをえんや。あるときにはわがしゆくぜんをよろこぶべし。かしこきもいやしきもひとおほしといへども、ぶつぽふしんじやうをねがふものはまれなりしんずるまでこそかたからめ、そしりにくみてあくだういんをのみつくる。しかるにこれをしんじこれをたふとびて、ほとけをたのみわうじやうこころざす。これひとへにしゆくぜんのしからしむるなり。たゞこんじやうのはげみにあらず。わうじやうすべきのいたれるなりとたのもしくよろこぶべし。かやうのことをおりにしたがひ、ことによりておもふべきなり


【九】とひていはく、「かやうのぐちにはしやうけうをもみず。あくえんのみおほし。いかなるはうほふをもてか、わがこころをまもり、しんじんをももよほすべきや。」

こたへていはく、「そのやうひとつにあらず。あるひはひとにあふをみてさんをおもひやれ。あるひはひとのしぬるをじやうのことはりをさとれ。あるひはつねにねんぶつしてそのこころをはげませ。あるひはつねによきともにあひてこころをはぢしめられよ。ひとこころはおほくあくえんによりてあしきこころのをこるなり。さればあくえんをばさり、ぜんえんにちかづけといへり。これらのはうほふひとしなならず。ときにしたがひてはからふべし。」


【十】とひていはく、「ねんぶつほかぜんをば。わうじやうごふにあらずとてしゆすべからずといふことあり。これはしかるべしや」

こたへていはく、「たとへばひとのみちをゆくに、しゆじんいちにんにつきておほくのけんぞくのゆくがごとし。わうじやうごふなかねんぶつしゆじんなりぜんけんぞくなり。しからばぜんをきらふまではあるべからず」


【一一】とひていはく、「ほんぐわんあくにんをきらはねばとて、このみてあくごふをつくることはしかるべしや」

こたへていはく、「ほとけあくにんをすてたまはねども、このみてあくをつくること、これほとけでしにはあらず。いつさいぶつぱふあくせいせずといふことなし。あくせいするにかならずしもこれをとゞめざるものは、ねんぶつしてそのつみをめつせよとすゝめたるなり。わがのたへねばとて、ほとけにとがをかけたてまつらんことはおほきなるあやまりなり。わがあくをとゞむるにあたはずば、ほとけじひをすてたまはずして、このつみをめつしてむかへたまへとまをすべし。つみをばたゞつくるべしといふことは、すべてぶつぱふにいはざるところなり。たとへばひとのおやのいつさいをかなしむにそのなかによきもあり、あしきもあり、ともにじひをなすといへども、あくぎやうずるをばをいからかし、つゑをさゝげて、いましむるがごとし。ほとけじひのあまねきことをききては、つみをつくれとおぼしめすといふおもひをなさば、ほとけじひにももれぬべし。あくにんまでをもすてたまはぬほんぐわんとしらんにつけては、いよほとけけんをばはづべし。かなしむべし。ぶもじひあればとて、ぶものまへにてあくぎやうぜんに、そのぶもよろこぶべしや。なげきながらすてず。あはれみながらにくむなりほとけまたもてかくのごとし」


【一二】とひていはく、「ぼんこころあくをおもはずといふことなし。このあくほかにあらはさざるはほとけをばはぢずして、ひとをはゞかるといふものなり。これはこころのまゝにふるまふべしや」

こたへていはく、「人のきえむとおもひて、ほかをかざらんはとがあるかたもやあらん。あくをしのばんがために、たとひこころにおもふとも、ほかまではあらはさじとおもひてをさへんことは、すなはちほとけはづこころなり。とにもかくにもあくをしのびて、ねんぶつかうをつむべきなりならひさきよりあらざれば、りんじうしやうねんもかたし。つねりんじうのおもひをなして、ふするごとにじふねんをとなふべし。さればねてもさめてもわするゝことなかれといへり。おほかたはけんしゆつも、だうはたがはぬことにてさふらふなりこころあるひとは、ぶもあはれみ、しゆくんもはごくむにしたがひてあくをばしりぞき、ぜんをばこのまんとおもへり。あくにんをもすてたまはぬほんぐわんときかんにも、ましてぜんにんをばいかばかりかよろこびたまはんとおもふべきなりいちねんじふねんをもむかへたまふときかば、いはんやひやくねんせんねんをやとおもひて、こころのをよび、のはげまれんほどははげむべし。さればとてわがりやうのかはらざらんをばしらず。ほとけいんぜふをばうたがふべからず。たとひしちはちじふのよはひをすとも、おもへばゆめのごとし。いはんやらうせうぢやうなれば、いつをかぎりとおもふべからず。さらにのちするこころあるべからず。たゞひとすぢにねんぶつすべしといふこと、そのいはれいつにあらず。
これをむおりことにおもひいてて
なむあみだぶつとつねにとなへよ

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