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判事檢事登用試驗規則

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司法省令第三號

判事檢事登用試驗規則左ノ通相定ム

明治二十四年五月十五日

司法大臣伯爵山田顕義

判事檢事登用試驗規則

第一章 試驗委員

第一條 判事檢事登用試驗委員ハ委員長一名委員數名ヲ以テ之ヲ組織ス

第二條 判事檢事登用試驗委員長及委員ハ大審院控訴院ノ判事檢事司法省高等官ノ中ヨリ試驗擧行每ニ司法大臣之ヲ命ス

第三條 判事檢事登用試驗委員長ハ委員ヲ監督シ試驗ニ關スル一切ノ事務ヲ總理ス

第四條 試驗委員附屬ノ書記ハ司法屬又ハ裁判所書記ノ中ヨリ試驗擧行每ニ司法大臣之ヲ命ス

第二章 受驗資格

第五條 判事檢事登用試驗ヲ受クルコトヲ得ル者ハ成年以上ノ男子ニシテ左ノ各項ノ一ニ該ル者ニ限ル

一 第一及第三高等中學ニ於テ法科ヲ卒業シタル者
二 文部大臣ノ認可ヲ經タル學則ニ依リ法律學ヲ教授スル私立學校ノ卒業證書ヲ有スル者
三 外國ノ大學校又ハ之ト同等ナル學校ニ於テ法律學ヲ修メ卒業證書ヲ有スル者

第六條 裁判所構成法第六十六條ニ該ル者ハ試驗ヲ受クルコトヲ得ス

第三章 第一回試驗

第七條 第一回試驗ハ司法省ニ於テ之ヲ行フ試驗ノ期日ハ試驗委員長之ヲ定メ官報ヲ以テ之ヲ公吿ス

第八條 試驗志願者ハ其志願書ニ左ノ證書ヲ添ヘ之ヲ試驗委員長ニ差出スヘシ

一 履歴書
二 第五條ニ定メタル要件ノ證明書

第九條 試驗ハ受驗者ノ學識ヲ試驗スルヲ以テ目的トシ筆記口述ノ二樣トス

第十條 筆記試驗ハ民法商法刑法民事訴訟法刑事訴訟法ノ各法ニ就キ之ヲ施行ス

第十一條 試驗委員筆記答案ヲ調査シタル後口述試驗ヲ爲スニ足ルヘキモノト認メタルトキハ口述試驗ノ爲メ志願者ヲ呼出スヘシ

第十二條 口述試驗ハ民法商法刑法民事訴訟法刑事訴訟法ノ中少クトモ三科目ニ就キ之ヲ施行ス

第十三條 受驗者ノ及第落第及及第者ノ優劣ハ筆記試驗口述試驗ノ成績ニ對スル委員過半数ノ意見ニ從テ之ヲ決ス

及第落第ニ付テノ意見數相半スルトキハ落第ト看做スヘシ

第十四條 志願者口述試驗ニ闕席シタルトキハ試驗ハ成立タサルモノトス

第十五條 試驗委員長ハ及第者ノ氏名及其試驗ノ成績ヲ司法大臣ニ報吿スヘシ

第十六條 帝國大學法律科卒業生ニシテ司法官ノ任用ヲ望ム者ハ第八條ノ規程ヲ準用シ志願書ヲ司法大臣ニ差出スヘシ

第四章 實地修習

第十七條 試補ハ區裁判所及地方裁判所竝其檢事局ニ於テ一名若ハ數名ノ判事又ハ檢事ニ附屬シテ事務ヲ修習スヘシ

第十八條 修習事務直接ノ指揮監督ハ地方裁判所長之ヲ爲ス檢事ノ事務ヲ修習スルトキハ檢事正之ヲ爲ス

裁判所長若ハ檢事正ハ每年末ニ試補ノ職務上及職務外ノ行状竝執務ニ關ル成績ノ證明書ヲ作リ控訴院長檢事長ヲ經由シテ之ヲ司法大臣ニ差出スヘシ

第十九條 試補ハ修習目錄ヲ作リ其取扱ヒタル事件ヲ記載スヘシ

此目錄ハ毎月直接指揮監督者ニ差出シ檢閲ヲ受クヘシ

第二十條 試補ノ疾病又ハ兵役履行ノ爲メ修習ヲ缺キタル日數一箇年間二箇月以内ハ修習日數ニ算入ス

賜暇其他ノ原因ニ由リ修習ヲ缺キタル日數一箇年間一箇月以内亦同シ

第一項第二項ノ場合併起スルトキハ通計シテ二箇月以内ニ非サレハ算入スルコトヲ得ス

第二十一條 試補ノ直接指揮監督者ハ試補職務上ノ義務ヲ怠リ又ハ職務上若ハ職務外ニ於テ其身分ニ適セサル行状アルトキハ之ヲ諭告スヘシ此場合ニ於テハ指揮監督者ハ諭告ヲ爲シタルコトヲ試補ノ履歴ニ記入スヘシ

第二十二條 試補職務上若ハ職務外ノ行状其職務ヲ執ルニ不適當ナルカ又ハ其修習ノ進歩不十分ニシテ第二回試驗ニ及第ノ見込ナキトキハ直接指揮監督者ハ控訴院長檢事長ヲ經由シテ之ヲ司法大臣ニ報吿スヘシ

司法大臣前項ノ報吿ヲ受ケタルトキハ試補ヲ免スルコトアルヘシ

第五章 第二回試驗

第二十三條 第二回試驗ハ控訴院ニ於テ之ヲ行フ

試驗ノ場所ハ司法大臣之ヲ定メ試驗ノ期日ハ試驗委員長之ヲ定ム

第二十四條 試補第二回試驗ヲ受クルニハ直接指揮監督者ヲ經由シテ志願書ヲ司法大臣ニ差出スヘシ

志願書ニハ修習目錄ト陸海軍ノ現役ヲ終ヘ又ハ之ヲ免セラレタルコトヲ證明スル書面トヲ添フヘシ

第二十五條 司法大臣ハ第二回試驗ヲ受クヘキ試補ノ氏名ヲ試驗委員長ニ通知シ試驗ヲ行ハシム

第二十六條 第二回試驗ハ受驗者ノ實務ニ習熟シタルヤ否ヤ試驗スルヲ以テ主タル目的トシ筆記口述ノ二樣トス

第二十七條 試驗委員ハ試補ニ筆記試驗ノ爲メ二件以上ノ訴訟記錄ヲ付與スヘシ

第二十八條 受驗者ハ付與セラレタル訴訟記錄ニ就キ事實及理由ヲ詳示シタル判決案ヲ答案トシテ差出スヘシ

答案ハ二十日ノ期間內ニ之ヲ差出スヘシ若シ此期間內ニ答案ヲ差出サ丶ルトキハ試驗ハ成立タサルモノトス

第二十九條 口述試驗ハ民法商法刑法民事訴訟法刑事訴訟法ノ中少クトモ三科目ニ就キ之ヲ施行ス

又訴訟記錄ニ就キ問ヲ發シ之ニ答ヘシムヘシ其記錄ハ試驗期日ノ三日前ニ之ヲ付與ス

第三十條 左ノ場合ニ於テハ司法大臣ハ試驗委員長ノ報吿ニ因リ試補ヲ免ス

一 第二回試驗ニ及第セサルトキ
二 第二回試驗ノ成立タサルトキ

第三十一條 前條第二ノ場合ニ於テ試補已ムヲ得サル事故アリシコトヲ證明シ試驗委員之ヲ正當ト認メタルトキハ其旨ヲ司法大臣ニ報吿スヘシ

司法大臣前項ノ報吿ヲ受ケタルトキハ其試補ニ一回ヲ限リ次期ノ試驗マテ引續キ修習ヲ爲サシムルコトアルヘシ

第三十二條 第一回試驗ニ關ル第十一條及第十三條乃至第十五條ノ規程ハ第二回試驗ニモ亦之ヲ適用ス


司法省令第三號参照

法律第六號裁判所構成法(明治二十三年二月十日官報)抄錄

第六十六條 左ニ掲ケタル者ハ判事又ハ檢事ニ任セラル丶コトヲ得ス

第一 重罪ヲ犯シタル者但シ國事犯ニシテ復權シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
第二 定役ニ服スヘキ輕罪ヲ犯シタル者
第三 身代限ノ處分ヲ受ケ負債ノ義務ヲ免レサル者

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