刑事訴訟法等の一部を改正する法律のあらまし (2004年)

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◇刑事訴訟法等の一部を改正する法律(法律第六二号)(司法制度改革推進本部)

一 刑事訴訟法の一部改正関係
1 争点及び証拠の整理手続
(一)裁判所は、第一回公判期日前に、決定で、事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として、事件を公判前整理手続に付することができることとした。(第三一六条のニ関係)
(二)検察官は、公判前整理手続において、裁判所及び被告人又は弁護人に、公判期日において証拠により証明しようとする事実を明らかにするとともに、被告人又は弁護人に、その証明のために取調べを請求した証拠を開示するほか、検察官請求証拠の証明力を判断するために重要な一定類型の証拠について、開示の必要性及び弊害を勘案して相当と認めるときは開示しなければならないこととした。(第三一六条の一三~第三一六条の一五関係)
(三)被告人又は弁護人は、(二)の証拠の開示等を受けた場合に、公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張があるときは、裁判所及び検察官に、これを明らかにしなければならないこととした。(第三一六条の一七関係)
(四)検察官は、被告人又は弁護人が明らかにした主張に関連する証拠について、開示の必要性及び弊害を勘案して相当と認めるときは開示しなければならないこととした。(第三一六条のニ〇関係)
(五)裁判所は、公判前整理手続において、証拠開示に関する裁定、事件の争点の整理、公判期日において取り調べる証拠及びその順序の決定等を行うこととした。(第三一六条の五及び第三一六条の二四~第三一六条の二七関係)
(六)第一回公判期日後においても、期日間整理手続において、公判前整理手続と同様の手続を行うことができることとした。(第三一六条のニ八関係)
(七)検察官及び被告人又は弁護人は、やむを得ない事由によって公判前整理手続又は期日間整理手続において請求することができなかったものを除き、当該手続が終わった後には、証拠調べを請求することができないこととした。(第三一六条の三二関係)
2 被告人若しくは弁護人文はこれらであった者は、検察官から開示された証拠の複製等を、被告事件の審理の準備等の目的以外の目的で、人に交付等してはならないものとし、所要の罰則を整備することとした。(第二八一条の四及び第二八一条の五関係)
3 裁判所は、審理に二日以上を要する事件については、できる限り、連日開廷し、継続して審理を行わなければならないこととした。(第二八一条の六関係)
4 裁判所は、検察官文は弁護人に対し、公判期日への出頭在廷を命じ、これに従わなかった者は、過料に処することができるものとするなど、その訴訟指揮の実効性を担保するための所要の規定を整備することとした。(第二七八条の二、第二八九条及び第二九五条関係)
5 即決裁判手続
(一)検察官は、争いのない簡易明白な事件について、被疑者の同意等がある場合に、公訴提起と同時に、即決裁判手続の申立てをすることができることとした。(第三五〇条の二関係)
(ニ)裁判所は、即決裁判手続の申立て後、できる限り早い時期に公判期日を聞き、同期日において、被告人が有罪である旨の陳述をしたときは、同手続によることが不相当と認める場合等を除き、同手続によって審判をする旨の決定をし、簡易な方法による証拠調べを行った上、原則として即日判決を言い渡さなければならないこととした。(第三五〇条の七~第三五〇条の一〇及び第三五O条の一三関係)
(三)即決裁判手続において、懲役又は禁錮の言渡しをする場合には、その刑の執行猶予の言渡しをしなければならず、また、当該判決の罪となるべき事実の誤認を理由とする上訴をすることができないこととした。(第三五〇条の一四、第四O三条の二及び第四一三条の二関係)
6 国選弁護人制度の整備
(一)被告人に対する国選弁護人の選任制度
(1)この法律により弁護人を要する場合を除いて、被告人が国選弁護人の選任の請求をするには、資力申告書を提出しなければならないこととした。(第三六条の二関係)
(2)この法律により弁護人を要する場合を除いて、その資力が基準額以上である被告人が国選弁護人の選任の請求をするには、あらかじめ、その請求をする裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に私選弁護人の選任の申出をしていなければならないこととした。(第三六条の三関係)
(ニ)被疑者に対する国選弁護人の選任制度
(1)死刑文は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件について被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならないこととした。(第三七条の二関係)
(2)被疑者が国選弁護人の選任の請求をするには、資力申告書を提出しなければならないこととし、また、その資力が基準額以上である被疑者が国選弁護人の選任の請求をするには、あらかじめ、その勾留の請求を受けた裁判官の所属する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に私選弁護人の選任の申出をしていなければならないこととした。(第三七条の三関係)
(3)(1)の選任の対象となる事件の範囲を、死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役懲役若しくは禁錮に当たる事件に改正することとした。(第三七条の二関係)
(三)弁護人選任権の告知等について所要の規定を整備することとした。(第二〇三条~第二〇五条、第二〇七条及び第二七二条関係)
ニ 検察審査会法の一部改正関係
1 検察審査会は、審査を行うに当たり、法律に関する専門的な知見を補う必要があると認めるときは、弁護士の中から審査補助員を委嘱することができることとし、所要の規定を整備することとした。(第三九条のニ~第三九条の四関係)
2 検察審査会が起訴を相当とする議決をした場合において、検察官が当該議決に係る事件について改めて不起訴処分をしたときは、当該検察審査会は、当該不起訴処分の当否を審査し、起訴議決をすることができることとした。(第四一条の二及び第四一条の六関係)
3 2の起訴議決がなされたときは、裁判所が指定した弁護士が、検察官として、起訴議決に係る事件について公訴を提起し、その維持に当たることとした。(第四一条の九及び第四一条の一〇関係)
4 検察審査員等の秘密漏示罪等の罰則について所要の規定の整備をすることとした。(第四三条~第四五条関係)
三 少年法の一部改正関係
少年の被疑者に国選弁護人が付された場合について所要の規定を整備することとした。(第四二条、第四五条~第四五条の三関係)
四 この法律は、一1~4については公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める白から、一5及び6((ニ)(3)を除く。)並びに三については公布の日から起算して二年六月を超えない範囲内において政令で定める日から、一6(二)(3)及び二については一部の規定を除き、公布の目から起算して五年を超えない範囲内において政令で定める日から、それぞれ施行することとした。



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