光厳法皇の遺誡。
- 本文および書き下し文は、岩佐美代子『光厳院御集全釈』(2000年)による。
一、老僧滅後、莫㆘倣㆓尋常式㆒、以煩㆓作㆖荼毗等儀式㆒。只須㆘就㆓山阿㆒収瘞㆖。松栢自生㆓於塚上㆒、風雲時往来者、為㆓予之好賓㆒、甚所㆑愛也。如其山民村童等欲㆑結㆓聚砂之戲縁㆒、構㆓小塔㆒、不㆑過㆓尺寸㆒、亦不㆑及㆑禁㆑之。此一節、只為㆑不㆑欲㆘動㆓衆人㆒労㆗其労力㆖。但要㆓省略㆒耳。其或便㆑於㆑省㆑力、則火葬又可也。一切法事不㆑須㆑為㆑之。
一、中陰仏事不㆑必㆘卜㆓一場㆒結㆗一衆㆖也。専修㆓大円覚㆒之場、是修㆓予追福㆒之場也。堅持㆓仏禁戒㆒之人、是修㆓予追福㆒之人也。但此小院依㆓檀信㆒、令㆓衲衆止住㆒者、現前同伴、一箇両箇、耐㆑守㆑閑者、宜㆘在㆓于茲㆒禅誦作上㆑息。以㆑故自㆓中陰㆒、及㆓大小祥等諸忌辰㆒、除㆓霊供諷経等㆒之外、不㆑由㆔更経㆓営斎会㆒。倘於㆓老僧㆒存㆓一分追修報恩㆒之人、但只在㆓宴寂蕭疎之中㆒、人々各以㆑励㆓平生弁道㆒、最為㆔吾所㆓庶幾㆒。千万於㆑是足也。抑苟欲㆘暫仮㆓静縁㆒一片参㆗祖道㆖之輩、不㆔必待㆓吾所_㆑誡。若別有㆔檀施投㆓嚫物忌陰㆒者、先須㆔如㆑法施㆓仏及僧㆒、有㆓余力㆒者、宜㆔以補㆓当寺之資縁㆓。是則所㆔以護㆓惜常住㆒也。可㆘以為㆓老僧㆒養上㆑志、莫㆑謂㆘必尽㆓点心数多㆒添㆓斎料㆒而後報上㆑吾也。勉㆑之。
一、老僧の滅後、尋常の式に倣ひ、以て荼毗等の儀式を煩ひ作すること莫れ。只須らく山阿に就いて収瘞すべし。松栢自ら塚上に生じ、風雲時に往来するは、予の好賓たり、甚だ愛する所なり。如し其れ山民村童等聚砂の戲縁を結ばんと欲し、小塔を構ふること、尺寸に過ぎざれば、亦之を禁ずるに及ばず。此の一節、只衆人を動かして其の労力を労するを欲せざるが為なり。但省略を要する耳。其れ或いは力を省すに便なれば、則ち火葬又可なり。一切の法事は之を為すを須ひざれ。
一、中陰の仏事は一場を卜し一衆を結ぶことを必せざるなり。専ら大円覚を修するの場は、是れ予が追福を修するの場なり。堅く仏禁戒を持するの人は、是れ予が追福を修するの人なり。但此の小院に檀信に依り、衲衆を止住せしめば、現前同伴、一箇両箇、閑を守るに耐ふる者、宜しく茲に在りて禅誦息を作すべし。故を以て中陰より、大小祥等諸忌辰に及ぶまで、霊供諷経等を除くの外、更に斎会の経営に由らざれ。倘老僧に於いて一分の追修報恩を存ぜんの人、但只宴寂蕭疎の中に在りて、人々各平生の弁道に励むを以て、最も吾が庶幾する所と為す。千万是に於いて足るなり。抑苟も暫く静縁を仮りて一片祖道に参ぜんと欲するの輩、必ず吾が誡める所を持たず。若し別に檀施の嚫物を忌陰に投ずる有らば、先ず須らく法の如く仏及び僧に施すべし、余力有らば、宜しく以て当寺の資縁に補すべし。是則ち以て常住を護惜する所なり。以て老僧の為に志を養ふべし、必ず点心数多を尽くし斎料を添へて而る後に吾に報ずると謂ふ莫れ。之に勉めよ。
この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
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