光厳天皇宸筆処分状

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分讓 興仁親王

一  因幡國
一  法金剛院領〈加熱田社領、目錄在別、〉
右一瞬計略所定宛如斯、儉以之守身、靜以之養性、陪妾無多、以要仕之、於臣者以直仁親王輔翼󠄂之臣、作水魚之交、莫要各別給仕之近臣、唯以佞臣之害、湏爲終身之愼、縱雖有骨肉芳契之族、而納󠄁順耳之利言、若違朕󠄂之遺訓者、匪啻一身之仇、旣是天下之仇矣、𤎼愼之々々々、抑所載右之國衙及院領等、一瞬之後必可返與直仁親王焉、

康永二年四月日       [花押]

書き下し文[編集]

分譲 興仁おきひと親王

一、 因幡国
一、 法金剛院領〈熱田社領を加ふ、目録別に在り〉
右、一瞬の計略定め宛つ所くのごとし、つつましくこれを以って身を守り、静之を以って性を養ふ。陪妾ばいしょう多く無く、要を以って之を仕ふ。臣に於いては直仁なほひと親王輔翼ほよくの臣を以って、水魚の交はりをし、各別給仕の近臣を要するなかれ。唯だ佞臣ねいしんの害を以って、すべからく終身の慎みとすべし。たとひ骨肉芳契はうけいの族有りて、順耳の利言を納むといへども、し朕の遺訓に違はば、だ一身のかたきあらず、既に是れ天下の仇なり。とくと之を慎め、熟と之を慎め。そもそも、右に載す所の国衙こくが及び院領等、一瞬の後、必ず直仁親王に返与すべし。

康永二年四月日       [花押]


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