中華民国憲法

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中華民国憲法
一九四六(民国三五)年十二月二十五日制定
一九四七(民国三六)年一月一日国民政府公布
一九四七(民国三六)年十二月二十五日施行

前 言[編集]

中華民国国民大会は、国民全体の付託を受け、中華民国を創立した孫中山先生の遺教に依拠して、国権を強固にし、民権を保障し、社会の安寧を確立し、人民の福利を増進するために、この憲法を制定し、全国に頒布施行して、永く普く遵守することを誓う。

第一章 総則[編集]

第一条(国体)
中華民国は、三民主義に基づく民有、民治、民享の民主共和国とする。
第二条(主権在民)
中華民国の主権は、国民全体に属する。
第三条(国民)
中華民国の国籍を有する者は、中華民国国民とする。
第四条(領土)
中華民国の領土は、その固有の領域による。国民大会の決議を経なければ変更することができない。
第五条(民族平等)
中華民国の各民族は、一律に平等である。
第六条(国旗)
中華民国の国旗は、紅地の左方上角に青天白日をしるしたものと定める。

第二章 人民の権利義務[編集]

第七条(平等権)
中華民国の人民は、男女、宗教、種族、階級、党派の区別なく、法律上一律に平等である。
第八条(人身の自由)
人民の身体の自由は、保障されるべきであり、現行犯の逮捕について法律に別段の定めがある場合を除いて、司法又は警察機関が法定手続によらなければ、逮捕拘禁することができない。法院の法定手続によらなければ、審問、処罰することができない。法定手続によらない逮捕、拘禁、審問、処罰に対しては、拒絶することができる。
人民が犯罪の嫌疑により逮捕拘禁されたときは、その逮捕拘禁機関は、逮捕拘禁の原因を書面で本人及び本人指定の親類友人に告知し、且つ遅くとも二十四時間内に管轄法院に移送して尋問しなければならない。本人又は第三者もまた管轄法院に対して二十四時間内に逮捕した機関より移送させ審問することを 申請することができる。
法院は、前項の申請に対して拒絶することができず、且つ先に逮捕拘禁機関に調査報告を命ずることもできない。逮捕拘禁機関は、法院の移送審問に対して拒絶又は遅延ができない。
如何なる機関によるかを問わず、人民が不法に逮捕拘禁されたときは、その本人又は第三者は、法院に対して追究することを申請することができる。法院は、これを拒絶することができず、且つ二十四時間内に逮捕拘禁した機関に対して追究し、法律によって処理しなければならない。
第九条(人民は軍事裁判を受けない)
人民は、現役軍人を除いて、軍事裁判を受けない。
第十条(居住及び移転の自由)
人民は、居住及び移転の自由を有する。
第十一条 (表現の自由)
人民は言論、研究、著作及び出版の自由を有する。
第十二条(秘密通信の自由)
人民は、秘密通信の自由を有する。
第十三条(宗教信仰の自由)
人民は、宗教信仰の自由を有する。
第十四条(集会及び結社の自由)
人民は、集会及び結社の自由を有する。
第十五条(生存権、労働権及び財産権)
人民の生存権、労働権及び財産権は保障する。
第十六条(請願、行政訴願及び訴訟の権利)
人民は、請願、行政訴願及び訴訟の権利を有する。
第十七条(選挙、罷免、創制、複決の権利)
人民は、選挙、罷免、創制、複決の権利を有する。
第十八条(試験を受け、公職に就く権利)
人民は、試験を受け、公職に就く権利を有する。
第十九条(納税の義務)
人民は、法律の定めるところにより納税の義務を負う。
第二十条(兵役に服する義務)
人民は、法律の定めるところにより兵役に服する義務を負う。
第二十一条(国民教育を受ける権利及び義務)
人民は、国民教育を受ける権利及び義務を有する。
第二十二条(基本的な人権の保障)
およそ人民のその他の自由及び権利は、社会秩序及び公共の利益を妨げない限り、均しく憲法の保障を受ける。
第二十三条(基本的な人権の制限)
以上の各条に列挙した自由及び権利は、他人の自由を妨害することを防止し、緊急危難を回避し、社会秩序を維持し、又は公共利益を増進するために必要がある場合を除いて、法律を以て制限することができない。
第二十四条(公務員の責任及び国家賠償の責任)
およそ公務員が違法に人民の自由又は権利を侵害したときは、法律によって懲戒を受けることを除いて、刑事及び民事責任を負わなければならない。被害人民は、その受けた損害について法律の定めるところにより、国家に対して賠償を請求することができる。

第三章 国民大会[編集]

第二十五条
国民大会は、この憲法の規定により全国の国民を代表して政権を行使する。
第二十六条
国民大会は、次に掲げる代表を以て組織する:
  1. 各県市及びこれと同等の区域は、それぞれ代表一人を選出する。但しその人口が五十万人を超えるときは五十万人を増す毎に代表一人を増加選出する。県市と同等の区域は、法律で定める。
  2. 蒙古選出の代表は盟毎に四人、特別旗毎に一人とする。
  3. 西蔵選出の代表の定数は、法律で定める。
  4. 各民族が辺境地区で選出する代表の定数は、法律で定める。
  5. 国外に居留する国民の選出する代表の定数は、法律で定める。
  6. 職業団体が選出する代表の定数は、法律で定める。
  7. 婦女団体が選出する代表の定数は、法律で定める。
第二十七条
国民大会の職権は、次の通りである:
  1. 総統、副総統の選挙。
  2. 総統、副総統の罷免。
  3. 憲法の改正。
  4. 立法院が提出する憲法改正案の複決:
創制、複決の両権は、前項第三、第四号の規定を除いて、全国半数の県市が創制、複決の両権を行使するに至るときを俟って国民大会が規則を制定し、且つこれを行使する。
第二十八条
国民大会代表は、六年毎に一回改選する。
毎期の国民大会代表の任期は、次期国民大会開会の日までとする。
現職の官吏は、その任地所在の選挙区において国民大会代表として当選することができない。
第二十九条
国民大会は、毎期の総統任期満了の九十日前に集会する。これは総統が召集する。
第三十条
国民大会は、次の事由の一があるときに臨時会を召集する:
  1. 本憲法第四十九条の規定により、総統、副総統を補選すべきとき。
  2. 監察院の決議により、総統、副総統に対する弾劾案が提出されたとき。
  3. 立法院の決議により憲法改正案が提出されたとき。
  4. 国民大会の代表五分の二以上が召集を請求したとき。
国民大会臨時会を前項第一号又は第二号により召集すべきときは、 立法院院長が集会を通告し、第三号又は第四号により召集すべきときは、総統が召集する。
第三十一条
国民大会の開催地点は、中央政府所在地とする。
第三十二条
国民大会代表は、会議において行った言論及び表決について大会外に対して責任を負わない。
第三十三条
国民大会代表は、現行犯を除いて、会期中、国民大会の許可を経なければ逮捕又は拘禁されない。
第三十四条
国民大会の組織、国民大会代表の選挙、罷免及び国民大会の職権行使手続は、法律でこれを定める。

第四章 総統[編集]

第三十五条
総統は、国家元首であって、外に対して中華民国を代表する。
第三十六条
総統は、全国の陸海空軍を統率する。
第三十七条
総統は法により法律を公布し、命令を発布する。その際、行政院院長の副署又は行政院院長及び関係ある部、会の首長の副署を経なければならない。
第三十八条
総統は、この憲法の規定により条約締結及び宣戦、講和の権限を行使する。
第三十九条
総統は、法により戒厳令を宣布する。但し立法院の可決又は追認を経なければならない。立法院が必要と認めたときは、決議により総統に戒厳の解除を要請することができる。
第四十条
総統は、法により大赦、特赦、減刑及び復権の権限を行使する。
第四十一条
総統は、法により文武官吏を任免する。
第四十二条
総統は、法により栄典を授与する。
第四十三条
国家に天災、疫病が発生し、又は国家財政経済上重大な変動があり急速な処分を必要とする場合は、総統は、立法院休会期間中にあっては、行政院会議の決議を経て緊急命令法により、緊急命令を発布し、必要な処置をとることができる。但し命令発布後一箇月内に立法院に提出して追認を求めなければならない。立法院が同意しないときは、その緊急命令は、直ちに効力を失う。
第四十四条
総統は、院と院との間の紛争に対して、この憲法に規定がある場合を除いて、関係各院院長を召集し協議解決することができる。
第四十五条
中華民国国民は、満四十歳に達したときは、総統又は副総統に選ばれることができる。
第四十六条
総統、副総統の選挙は、法律で定める。
第四十七条
総統、副総統の任期は六年とし、連選されたときは一期重任することができる。
第四十八条
総統は就任時に宣誓しなければならない。その誓詞は、次の通りである:
「余は謹んで至誠を以て全国人民に対し宣誓する。余は必ず憲法を遵守し、職務を忠実に行い、人民の福利を増進し、国家を防衛して国民の付託に決して背かない。もし誓言に相違することがあれば、国家の最も厳しい制裁を甘んじて受けるものである。ここに謹んで誓う。」
第四十九条
総統欠位のときは、副総統が総統の任期満了までその任を継ぐ。総統、副総統が共に欠位したときは、行政院院長がその職権を代行し、旦つこの憲法第三十条の規定により国民大会臨時会を召集して総統、副総統を補選する。その任期は、前任総統の残任期間とする。総統が事故により職権を行うことができないときは、副総統がその職権を代行する。総統、副総統が、共にその職権を行うことができないときは、行政院院長が代行する。
第五十条
総統は、任期満了の日に解職される。もし任期満了による後任総統が未だ選出されていないとき、又は選出後総統、副総統が共に未だ就任していないときは、行政院院長が総統の職権を代行する。
第五十一条
行政院院長が総統の職権を代行するときは、その期限は三箇月を超えることができない。
第五二条
総統は、内乱又は外患罪を犯した場合を除いて、罷免又は解職を経た後でなければ刑事上の訴追を受けない。

第五章 行政[編集]

第五三条
行政院は、国家の最高行政機関である。
第五十四条
行政院に院長、副院長各一人、各部会首長若干人及び部会を主管しない政務委員若干人を置く。
第五十五条
行政院院長は、総統が指名し、立法院の同意を経て任命する。
立法院の休会期間中に行政院院長が辞職又は欠員になったときには、行政院副院長がその職務を代理する。但し総統は、四十日内に立法院に会議の召集を要請し、行政院院長の人選を提出して、その同意を求めなければならない。行政院院長の職務は、総統の提出した行政院院長の人選が立法院の同意を得るまでは、行政院副院長が暫時代理する。
第五十六条
行政院副院長、各部会首長及び部会を主管しない政務委員は、行政院院長の推薦により総統が任命する。
第五十七条
行政院は、次の規定により立法院に対して責任を負う:
  1. 行政院は、立法院に施政方針及び施政報告を提出する責任がある。立法委員は、開会中行政院院長及び行政院各部会首長に対して質問する権限を有する。
  2. 立法院が、行政院の重要政策に賛同しないときは、決議を以て行政院にその変更を要求することができる。行政院は、立法院の決議に対して総統の裁可を経て立法院に再議を要求することができる。再議の場合に、出席立法委員の三分の二が原決議を維持したときは、行政院院長は直ちにその決議を受諾するか、又は辞職しなければならない。
  3. 行政院が立法院で決議した法律案、予算案、条約案について執行困難と認めた場合は、総統の許可を経て、その決議案が行政院に送達されてから十日内に立法院に再議を要求することができる。再議のときに出席立法委員の三分の二が原案を維持したときは、行政院院長は直ちにその決議を受諾するか、又は辞職しなければならない。
第五十八条
行政院に行政院会議を設け、行政院院長、副院長、各部会首長及び部会を主管しない政務委員がこれを組織し、院長が主席となる。
行政院院長、各部会首長は、立法院に提出すべき法律案、予算案、戒厳案、大赦案、宣戦案、講和案、条約案及びその他の重要事項又は各部会に渉る共同関係事項を、行政院会議に提出して議決しなければならない。
第五十九条
行政院は、会計年度開始三箇月前に翌年度の予算案を立法院に提出しなければならない。
第六十条
行政院は、会計年度終了後四箇月内に、決算を監察院に提出しなければならない。
第六十一条
行政院の組織は、法律で定める。

第六章 立法[編集]

第六十二条
立法院は、国家最高の立法機関であり、人民の選挙した立法委員によって組織し、人民を代表して立法権を行使する。
第六十三条
立法院は、法律案、予算案、戒厳案、大赦案、宣戦案、講和案、条約案及び国家のその他の重要事項を議決する権限を有する。
第六十四条
立法院の立法委員は、次の規定によって選出する。
  1. 各省、各直轄市の選出者。その人口が三百万以下のときは五人、 その人口が三百万を超えるときは、百万人を増す毎に一人増加して選出する。
  2. 蒙古各盟旗の選出者。
  3. 西蔵の選出者。
  4. 各民族の辺境地区選出者。
  5. 国外に居留する国民の選出者。
  6. 職業団体の選出者
立法委員の選挙及び前項第二号乃至第六号の立法委員の定数の分配は、法律で定める。第一項各号における婦女の定数は、法律で定める。
第一項各号における婦女の定数は、法律で定める。
第六十五条
立法委員の任期は三年とし、連選された者は重任することができる。その選挙は、毎任期満了前三箇月内にこれを完成する。
第六十六条
立法院に院長、副院長各一人を置き、立法委員が互選する。
第六十七条
立法院は、各種委員会を設けることができる。
各種委員会は、諮問のために政府の職員及び社会的に関係がある人士を会に招請することができる。
第六十八条
立法院の会期は毎年二回とし、自ら集会を行う。第一回は、二月から五月末、第二回は、九月から十二月末までとし、必要があるときは、延長することができる。
第六十九条
立法院は、次の事由の一があるときは、臨時会を開くことができる:
  1. 総統の要請。
  2. 立法委員の四分の一以上の請求。
第七十条
立法院は、行政院の提出した予算案に対して、支出増加の提議をしてはならない。
第七十一条
立法院開会の時には、関係院院長及び各部会首長は、列席して意見を陳述することができる。
第七十二条
立法院は、法律案通過後これを総統及び行政院に移送し、総統は、受領後十日内にこれを公布しなければならない。但し総統はこの憲法第五十七条の規定によって処理することができる。
第七十三条
立法委員は、院内において行った言論及び表決について院外に対して責任を負わない。
第七十四条
立法委員は、現行犯を除いて、立法院の許諾を経なければ逮捕又は拘禁されない。
第七十五条
立法委員は、官吏を兼任することができない。
第七十六条
立法院の組織は、法律で定める。

第七章 司法[編集]

第七十七条
司法院は、国家最高の司法機関であり、民事、刑事、行政訴訟の審判及び公務員の懲戒を掌理する。
第七十八条
司法院は、憲法を解釈し、且つ法律及び命令を統一解釈する権限を有する。
第七十九条
司法院に院長、副院長各一人を置き、総統が指名し、監察院の同意を経て任命する。
司法院に、大法官若干名を置き、この憲法第七十八条に規定する事項を掌理し、総統の指名により監察院の同意を経て任命する。
第八十条
法官は、党派を超越し、法律により独立して審判をし、如何なる干渉をも受けない。
第八十一条
法官は、終身職とし、刑事又は懲戒処分若しくは禁治産の宣告を受けるのでなければ免職されない。法律によらなければ停職、転任又は減俸されない。
第八十二条
司法院及び各級法院の組織は、法律で定める。

第八章 考試[編集]

第八十三条
考試院は、国家最高の考試機関であり、考試、任用、選考昇任、考課、俸給、昇格転任、保障、褒奨、慰謝、退職、養老等の事項を掌理する。
第八十四条
考試院に院長、副院長各一人及び考試委員若干名を置き、総統が指名し監察院の同意を経て任命する。
第八十五条
公務員の選抜は、公開競争による考試制度を実行し、且つ省区により個別的に定数を規定した上、区域を分けて試験を行い、試験を経た合格者でなければ任用することができない。
第八十六条
次の資格は、考試院の法による選考を経て調査決定しなければならない:
  1. 公務人員の任用資格。
  2. 專門職業及び技術人員の開業資格。
第八十七条
考試院は、所管事項に関して立法院に法律案を提出することができる。
第八十八条
考試委員は、党派を超越し、法律により独立して職権を行使しなければならない。
第八十九条
考試院の組織は、法律で定める。

第九章 監察[編集]

第九十条
監察院は、国家最高の監察機関であり、同意、弾劾、糾弾及び会計監査権を行使する。
第九十一条
監察院に監察委員を置き、各省市議会、蒙古、西蔵の地方議会及び華僑団体が選挙する。その定数の分配は、次の規定による。
  1. 各省五人。
  2. 各直轄市二人。
  3. 蒙古各盟旗合計八人。
  4. 西蔵八人。
  5. 国外居留の国民八人。
第九十二条
監察院に院長、副院長各一人を置き、監察委員が互選する。
第九十三条
監察委員の任期は六年とし、連選された者は、重任することができる。
第九十四条
監察院がこの憲法により同意権を行使するときは、出席委員の過半数の議決により行う。
第九十五条
監察院は、監察権を行使するために、行政院及びその各部会に対してその発布する命令及び各種関係文書を調査閲覧することができる。
第九十六条
監察院は、行政院及びその各部会の所管事項に応じて若干の委員会を設け、一切の施設を調査し、その違法又は職務怠慢の有無を注意することができる。
第九十七条
監察院は、それぞれの委員会の審査及び決議を経て是正案を提出し、行政院及びその関係部会に移送してその注意、改善を促すことができる。
監察院は、中央及び地方の公務員に対し、職務怠慢又は違法の事実があると認めたときは、糾弾案又は弾劾案を提出することができる。刑事に係るときは、法院に移送して処理させなければならない。
第九十八条
監察院の中央及び地方の公務員に対する弾劾案は、監察委員一人以上が提議し、九人以上の審査及び決定を経て初めて提出することができる。
第九十九条
監察院の司法院又は考試院に所属する者の職務怠慢又は違法に対する弾劾については、この憲法の第九十五条、第九十七条及び第九十八条の規定を適用する。
第百条
監察院の総統、副総統に対する弾劾案については、監察委員全体の四分の一以上の提議と監察委員全体の過半数の審査及び決議があるとき初めて国民大会に提出することができる。
第百一条
監察委員は、院内で行った言論及び表決について院外に対して責任を負わない。
第百二条
監察委員は、現行犯を除いて、監察院の許可を経なければ逮捕又は拘禁されない。
第百三条
監察委員は、他の公職を兼任し、又は他の業務を執行することができない。
第百四条
監察院に審査長を置く。総統が指名し、立法院の同意を経て任命する。
第百五条
審査長は、行政院が決算を提出した後三箇月内に法によりその審査を完了し、且つ審査報告を立法院に提出しなければならない。
第百六条
監察院の組織は、法律で定める。

第十章 中央と地方の権限[編集]

第百七条
次の事項は、中央が立法し、且つ執行する。:
  1. 外交。
  2. 国防と国防軍事。
  3. 国籍法及び刑事、民事、商事の法律。
  4. 司法制度。
  5. 航空、国道、国有鉄道、航海、郵便及び電信行政。
  6. 中央財政と国税。
  7. 国税と省、県税の区分。
  8. 国営の経済事業。
  9. 幣制及び国家銀行。
  10. 度量衡。
  11. 国際貿易政策。
  12. 渉外の財政経済事項。
  13. その他この憲法で定めた中央に関する事項。
第百八条
次の事項は、中央が立法且つ執行し、又はその執行を省県に委ねる:
  1. 省県自治通則。
  2. 行政区画。
  3. 森林、工鉱及び商業。
  4. 教育制度。
  5. 銀行及び取引所制度。
  6. 船舶業及び海洋漁業。
  7. 公用事業。
  8. 合作事業。
  9. 二省以上に渉る水陸交通運輸。
  10. 二省以上に渉る水利、河川及び農牧事業。
  11. 中央及び地方官吏の選考昇任、任用、糾弾及び保障。
  12. 土地法。
  13. 労働法及びその他の社会立法。
  14. 公用のための土地収用。
  15. 全国人口調査及び統計。
  16. 移民及び開墾拓殖。
  17. 警察制度。
  18. 公共衛生。
  19. 救助、慰謝及び失業救済。
  20. 文化的古書、古物及び古蹟の保存。
前項各号について、省は、国家の法律に抵触しない限り、単行法規を制定することができる。
第百九条
次の事項は、省が立法且つ執行し、又はその執行を県に委ねる:
  1. 省の教育、衛生、実業及び交通。
  2. 省の財産の経営及び処分。
  3. 省の市政。
  4. 省の公営事業。
  5. 省の合作事業。
  6. 省の農林、水利、漁業牧畜及び工事。
  7. 省の財政及び税金。
  8. 省の公債。
  9. 省立銀行。
  10. 省の警察行政の実施。
  11. 省の慈善及び公益事項。
  12. その他国家法によって付与された事項。
前項各号について、二省以上に渉る場合は、法律に別段の規定があるときを除いて、関係各省が共同で処理することができる。
各省において第一項各号の事務を処理する場合に経費が不足するときは、立法院の議決を経て国庫が補助する。
第百十条
次の事項は、県が立法し、且つ執行する:
  1. 縣の教育、衛生、実業及び交通。
  2. 縣の財産の経営及び処分。
  3. 縣の公営事業。
  4. 縣の合作事業。
  5. 縣の農林、水利、漁牧及び工事。
  6. 縣の財政及び県税。
  7. 縣の公債。
  8. 縣立銀行。
  9. 縣の警衛の実施。
  10. 縣の慈善及び公益事項。
  11. その他国家の法律及び省の自治法により付与された事項。
前項各号について二県以上に渉る場合は、法律に別段の規定があるときを除いて、関係各県が共同で処理することができる。
第百十一条
第百七条、第百八条、第百九条及び第百十条に列挙した事項を除いて、列挙されていない事項が発生した場合は、その事務が全国共通の性質を有するときは中央に、全省共通の性質を有するときは省に、一県限りの性質を有するときは県に、それぞれ属する。紛議が生じたときは、立法院が解決する。

第十一章 地方制度[編集]

第一節 省[編集]

第百十二条
省は、省民代表大会を召集し、省県自治通則により省自治法を制定することができる。但し憲法に抵触することはできない。
省民代表大会の組織及び選挙は、法律で定める。
第百十三条
省自治法は、次の各号を含まなければならない:
  1. 省に省議会を設ける。省議会議員は、省民が選挙する。
  2. 省に省政府を設け、省長一人を置く。省長は、省民が選挙する。
  3. 省と県の関係。
省に属する立法権は、省議会が行使する。
第百十四条
省自治法は、制定後直ちに司法院に送付しなければならない。司法院が憲法違反の個所があると認めたときは、違憲の条文の無効を宣布しなければならない。
第百十五条
省自治法施行中にいずれかの条文のために重大な障害が発生したときは、司法院は、関係者を召集し、意見陳述の後、行政院院長、立法院院長、司法院院長、考試院院長及び監察院院長で委員会を組織し、司法院院長を主席とし、対策案を提出して解決する。
第百十六条
省の法規は、国家法律に抵触するときは、無効とする。
第百十七条
省の法規が国家法律に抵触するか否かについて疑義が発生したときは、司法院が解釈する。
第百十八条
直轄市の自治は、法律で定める。
第百十九条
蒙古各盟旗の地方自治制度は、法律で定める。
第百二十条
西蔵の自治制度は、保障しなければならない。

第二節 県[編集]

第百二十一条
県は、県の自治を実行する。
第百二十二条
県は、県民代表大会を召集し、省県自治通則によって県自治法を制定することができる。但し憲法及び省自治法に抵触できない。
第百二十三条
県民は、県の自治事項に関し、法律により創制、複決の権利を行使し、県長及びその他の県自治公務員に対して法律により選挙、罷免の権利を行使する。
第百二十四条
県に県議会を設ける。県議会議員は、県民が選挙する。
県に属する立法権は、県議会が行使する。
第百二十五条
国家の法律又は省の法規に抵触する県の単行規則は無効とする。
第百二十六条
県に県政府を設け、県長一人を置く。県長は、県民が選挙する。
第百二十七条
県長は、県の自治を処理し、且つ中央及び省の委任事項を執行する。
第百二十八条
市は、県に関する規定を準用する。

第十二章 選挙、罷免、創制、複決[編集]

第百二十九条
この憲法に規定する各種選挙は、憲法に別段の規定がある場合を除いて、普通、平等、直接及び無記名投票の方法で行う。
第百三十条
中華民国の国民で満二十歳に達した者は、法により選挙権を有する。この憲法及び法律に別段の規定がある場合を除いて、満二十三歳に違した者は、法により被選挙権を有する。
第百三十一条
この憲法に規定する各種選挙の候補者は、一律に公開方式で選挙する。
第百三十二条
選挙においては脅迫、利益誘導を厳禁する。選挙訴訟は、法院によって審判される。
第百三十三条
被選挙人は、原選挙区において法により罷免することができる。
第百三十四条
各種選挙においては、婦女の当選者定数を規定しなければならない。その方法は、法律を以て定める。
第百三十五条
陸地における特殊な生活習慣を有する国民の代表の定数及び選挙方法は、法律を以て定める。
第百三十六条
創制、複決の両権の行使については、法律を以て定める。

第十三章 基本国策[編集]

第一節 国防[編集]

第百三十七条
中華民国の国防は、国家の安全を防衛し、世界の平和を維持することを目的とする。
国防の組織は、法律を以て定める。
第百三十八条
全国陸海空軍は、個人、地域、党派関係を超越して国家に忠節を尽し、人民を愛護しなければならない。
第百三十九条
如何なる党派及び個人であるかを問わず、武装力量を以て政争の具としてはならない。
第百四十条
現役軍人は、文官を兼任することができない。

第二節 外交[編集]

第百四十一条
中華民国の外交は、独立自主の精神、平等互恵の原則に基づき、 親睦の厚い国交を行い、条約及び国連憲章を尊重し、以て海外居住国民の権益を保護し、国際協力を促進し、国際正義を提唱して世界の平和を確保しなければならない。

第三節 國民經濟[編集]

第百四十二条
国民経済は、民生主義を基本原則とし、地権の平均化及び資本の節制を実施して国家政策、国民生活の充足を図らなければならない。
第百四十三条
中華民国領土内の土地は、国民全体に属する。人民が法により取得した土地の所有権は、法律の保障と制限を受けなければならない。私有地は、地価に応じて納税しなければならず、且つ政府は、地価額に従って買収することができる。
土地に付着する鉱物及び経済上公衆の利用に供される天然のエネルギーは、国家の所有に属し、人民が土地所有権を取得したことによって影響されない。
土地の価値が労力、資本を施したことによって増加したものでないときは、国家が地価増加税を徴収して人民の共同享受に帰させなければならない。
国家は、土地の分配及び整理について、自作農及び自ら土地を使用する者を 扶助することを原則とし、且つその適当な経営面積を規定しなければならない。
第百四十四条
公用事業及びその他独占的企業は、公営を原則とする。法律により許可されたときは、国民が経営することができる。
第百四十五条
国家は、私人の財富及び私営事業に対して、民生政策の安定発展を妨害すると認めるときは、法律を以て制限しなければならない。
合作事業は、国家の奨励と扶助を受けなければならない。
国民の生産事業及び対外貿易は、国家の奨励、指導及び保護を受けなければならない。
第百四十六条
国家は、科学技術を運用し、水利を治めて土地の生産力を増進し、農業の環境を改善し、土地の利用を企画し、農業資源を開発して農業の工業化を促進しなければならない。
第百四十七条
中央は、省と省との間の経済の平衡的発展を図るため、貧困な省に対して適当に補助を与えなければならない。
省は、県と県との間の経済の平衡的発展を図るため、貧困な県に対し適当に補助しなければならない。
第百四十八条
中華民国領域内においては、一切の貨物の自由流通を認めなければならない。
第百四十九条
金融機構は、法により国家の管理を受けなければならない。
第百五十条
国家は、庶民のための金融機構を普く設立して失業を救済しなければならない。
第百五十一条
国家は、国外に居留する国民に対して、その経済事業の発展を扶助し、且つ保護しなければならない。

第四節 社会安全[編集]

第百五十二条
労働の能力を有する人民に対して、国家は、適当な労働の機会を与えなければならない。
第百五十三条
国家は、労働者及び農民の生活を改善し、その生産技能を増進させるために、労働者及び農民を保護する法律を制定し、労働者及び農民を保護する政策を実施しなければならない。
女性、児童が労働に従事するときは、その年齢及び身体の状態に応じ特別の保護を与えなければならない。
第百五十四条
労使双方は、協調提携の原則に基づいて、生産事業を発展させなければならない。労使紛争の調停と仲裁は、法律で定める。
第百五十五条
国家は、社会の福利を図るために、社会保険制度を実施しなければならない。老者、弱者、身体障害者、生活無能力者及び非常災害を受けた人民に対して、国家は、適当な扶助と救済を与えなければならない。
第百五十六条
国家は、民族の生存発展の基礎を確立するために、母性を保護し、且つ女性、児童の福利政策を実施しなければならない。
第百五十七条
国家は、民族の健康を増進させるために、普く衛生保健事業及び公医制度を推進しなければならない。

第五節 教育文化[編集]

第百五十八条
教育文化は、国民の民族精神、自治精神、国民道徳、健全な体格と科学及び生活知能を発展させなければならない。
第百五十九条
国民の教育を受ける機会は、一律に平等である。
第百六十条
六歳から十二歳の学齢児童は、一律に基本教育を受ける。 学費の納付を免除する。貧困者に対して、政府は、書籍を供給する。
既に学齢を超え、未だに基本教育を受けていない国民は、一律に補習教育を受け、学費の納付を免除し、書籍もまた政府が供給する。
第百六十一条
各級政府は、広く奨学金受給者の定数を設け、以て学力、操行共に優秀で進学する資力のない学生を扶助しなければならない。
第百六十二条
全国の公私立の教育文化機関は、法律により国家の監督を受ける。
第百六十三条
国家は、各地区の教育の均衡発展を重視すると共に、社会教育を推進し、以て一般国民の文化水準を高めなければならない。辺境及び貧困地区の教育文化の経費は、国庫が補助する。その重要な教育文化事業は、中央が行い、又は補助することができる。
第百六十四条
教育、科学、文化の経費は、中央にあってはその予算総額の百分の十五以下、省にあってはその予算総額の百分の二十五以下、市県にあってはその予算総額の百分の三十五以下であってはならない。法によって設置した教育文化基金及び財産は、保障されなければならない。
第百六十五条
国家は、教育、科学、芸術に従事する者の生活を保障し、且つ国民経済の発展に応じて随時その待遇を高めなけれならない。
第百六十六条
国家は、科学の発明と創造を奨励し、且つ歴史、文化、芸術に関する古蹟、古物を保護しなければならない。
第百六十七条
国家は、次の事業又は個人に対し奨励又は補助をする:
  1. 国内の私人経営にかかる教育事業で成績優良なもの。
  2. 外国に居留する国民の教育事業で成績優良なもの。
  3. 学術又は技術の発明をした者。
  4. 教育に従事し長くその職に留まり成績優良な者。

第六節 辺境地区[編集]

第百六十八条
国家は、辺境地区における各民族の地位に対して法的保障を与えなければならず、且つその地方自治事業について特別の扶助を与えなければならない。
第百六十九条
国家は、辺境地区における各民族の教育、文化、交通、水利、衛生及びその他経済、社会事業に対して積極的に振興し、且つその発展を扶助しなければならない。土地の使用に対しては、その気候、土壌の性質及び人民の生活習慣に適する方法に従って保障し、且つ発展させなければならない。

第十四章 憲法の施行及び改正[編集]

第百七十条
この憲法でいう法律とは、立法院を通過し、総統が公布した法律をいう。
第百七十一条
法律が憲法に抵触したときは、無効とする。
法律が憲法に抵触するか否かの疑義が生じたときは、司法院が解釈する。
第百七十二条
命令が憲法又は法律に抵触したときは、無効とする。
第百七十三条
憲法の解釈は、司法院が行う。
第百七十四条
憲法の改正は、次の手続の一によって行わなければならない:
  1. 国民大会代表総数五分の一の発議により、三分の二の出席及び出席代表の四分の三の議決によって改正することができる。
  2. 立法院立法委員四分の一の発議により、四分の三の出席及び出席委員四分の三の議決に基づいて、憲法改正案を作成して国民大会にその承認を提議することができる。この憲法改正案は、国民大会開会の半年前に公告しなければならない。
第百七十五条
この憲法に規定する事項であって別に実施手続を定める必要があるときは、法律で定める。
この憲法施行の準備手続は、憲法制定国民大会が議定する。

台湾において効力のある中華民国著作権法では以下のように定められています(日本語訳は著作権情報センター提供の増山周訳による)。

  1. 次の各号に掲げるものは、著作権の目的とはならない。
    1. 憲法、法律、規則または公文書
    2. 中央または地方の政府機関が作成した前号の著作物の翻訳物または編集物
    3. 標語および通常の記号、名称、公式、数表、書式、帳簿または暦
    4. 事実の伝達にすぎないニュース報道のために作成される言語による著作物
    5. 法律または規則に基づいて行われる各種の試験の問題およびその補足問題
  2. 前項第1号にいう「公文書」は、公務員がその職務において起草する告示、講演原稿、プレス・リリース原稿およびその他の文書を含む。

この著作物は、以上のいずれかに該当するため、台湾においてパブリックドメインの状態にあります。


この著作物又はその原文は、本国又は著作物の最初の発行地の著作権法によって保護されない著作物であり、保護期間が0年の著作物と見なされるため、日本国においてパブリックドメインの状態にあります。(日本国著作権法第58条及びウィキペディアの解説参照。)


この著作物又はその原文は、米国政府、又は他国の法律、命令、布告、又は勅令(Edict of government参照)等であるため、ウィキメディアサーバの所在地である米国においてパブリックドメインの状態にあります。このような文書には、"制定法、裁判の判決、行政の決定、国家の命令、又は類似する形式の政府の法令資料"が含まれます。詳細は、“Compendium of U.S. Copyright Office Practices”、第3版、2014年の第313.6(C)(2)条をご覧ください。