万葉集/第四巻

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第四巻


[歌番号]04/0491

[題詞](吹芡刀自歌二首)

[原文]河上乃 伊都藻之花乃 何時<々々> 来益我背子 時自異目八方

[訓読]川上のいつ藻の花のいつもいつも来ませ我が背子時じけめやも

[仮名]かはかみの いつものはなの いつもいつも きませわがせこ ときじけめやも

[左注]なし

[校異]<> -> 々々 [西(右書)][類][紀][細]

[事項]相聞 作者:吹芡刀自 勧誘 序詞

[訓異]かはかみの[寛],

いつものはなの[寛],

いつもいつも[寛],

きませわがせこ,[寛]きませわかせこ,

ときじけめやも,[寛]ときわかめやも,


[歌番号]04/0501

[題詞]柿本朝臣人麻呂歌三首

[原文]未通女等之 袖振山乃 水垣之 久時従 憶寸吾者

[訓読]娘子らが袖布留山の瑞垣の久しき時ゆ思ひき我れは

[仮名]をとめらが そでふるやまの みづかきの ひさしきときゆ おもひきわれは

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]相聞 作者:柿本人麻呂 歌垣 枕詞 序詞

[訓異]をとめらが,[寛]をとめらか,

そでふるやまの,[寛]そてふるやまの,

みづかきの,[寛]みつかきの,

ひさしきときゆ,[寛]ひさしきよより,

おもひきわれは[寛],


[歌番号]04/0510

[題詞](丹比真人笠麻呂下筑紫國時作歌一首[并短歌])反歌

[原文]白<細>乃 袖解更而 還来武 月日乎數而 徃而来猿尾

[訓読]白栲の袖解き交へて帰り来む月日を数みて行きて来ましを

[仮名]しろたへの そでときかへて かへりこむ つきひをよみて ゆきてこましを

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 / 妙 -> 細 [元][紀][類][古]

[事項]相聞 作者:丹比笠麻呂 羈旅 別離 枕詞

[訓異]しろたへの[寛],

そでときかへて,[寛]そてときかへて,

かへりこむ[寛],

つきひをよみて,[寛]ほとをかそへて,

ゆきてこましを[寛],


[歌番号]04/0511

[題詞]幸伊勢國時當麻麻呂大夫妻作歌一首

[原文]吾背子者 何處将行 己津物 隠之山乎 今日歟超良<武>

[訓読]我が背子はいづく行くらむ沖つ藻の名張の山を今日か越ゆらむ

[仮名]わがせこは いづくゆくらむ おきつもの なばりのやまを けふかこゆらむ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 / 哉 -> 武 [西(訂正)][元][金][類]

[事項]相聞 作者:當麻麻呂妻 行幸 伊勢 留守 重出 枕詞 地名

[訓異]わがせこは,[寛]わかせこは,

いづくゆくらむ,[寛]いつちゆくらむ,

おきつもの[寛],

なばりのやまを,[寛]かくれのやまを,

けふかこゆらむ[寛],


[歌番号]04/0512

[題詞]草嬢歌一首

[原文]秋田之 穂田乃苅婆加 香縁相者 彼所毛加人之 吾乎事将成

[訓読]秋の田の穂田の刈りばかか寄りあはばそこもか人の我を言成さむ

[仮名]あきのたの ほたのかりばか かよりあはば そこもかひとの わをことなさむ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌

[事項]相聞 作者:草嬢 恋情 尫柜蹋 序詞

[訓異]あきのたの[寛],

ほたのかりばか,[寛]ほたのかりはか,

かよりあはば,[寛]かよりあはは,

そこもかひとの[寛],

わをことなさむ,[寛]われをことなさむ,


[歌番号]04/0513

[題詞]志貴皇子御歌一首

[原文]大原之 此市柴乃 何時鹿跡 吾念妹尓 今夜相有香裳

[訓読]大原のこのいち柴のいつしかと我が思ふ妹に今夜逢へるかも

[仮名]おほはらの このいちしばの いつしかと あがおもふいもに こよひあへるかも

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:志貴皇子 恋情 逢会 植物 序詞

[訓異]おほはらの[寛],

このいちしばの,[寛]このいつしはの,

いつしかと[寛],

あがおもふいもに,[寛]わかおもふいもに,

こよひあへるかも[寛],


[歌番号]04/0514

[題詞]阿倍女郎歌一首

[原文]吾背子之 盖世流衣之 針目不落 入尓家良之 我情副

[訓読]我が背子が着せる衣の針目おちず入りにけらしも我が心さへ

[仮名]わがせこが けせるころもの はりめおちず いりにけらしも あがこころさへ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 / 入 [紀] 入来

[事項]相聞 作者:阿倍女郎 恋情

[訓異]わがせこが,[寛]わかせこか,

けせるころもの,[寛]きせるころもの,

はりめおちず,[寛]はりめおちす,

いりにけらしも,[寛]いりにけらしな,

あがこころさへ,[寛]わかこころさへ,


[歌番号]04/0515

[題詞]中臣朝臣東人贈阿倍女郎歌一首

[原文]獨宿而 絶西紐緒 忌見跡 世武為便不知 哭耳之曽泣

[訓読]ひとり寝て絶えにし紐をゆゆしみと為むすべ知らに音のみしぞ泣く

[仮名]ひとりねて たえにしひもを ゆゆしみと せむすべしらに ねのみしぞなく

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:中臣東人 阿倍女郎 恋情 不安 不吉 贈答

[訓異]ひとりねて[寛],

たえにしひもを[寛],

ゆゆしみと[寛],

せむすべしらに,[寛]せむすへしらに,

ねのみしぞなく,[寛]ねのみしそなく,


[歌番号]04/0516

[題詞]阿倍女郎答歌一首

[原文]吾以在 三相二搓流 絲用而 附手益物 今曽悔寸

[訓読]我が持てる三相に搓れる糸もちて付けてましもの今ぞ悔しき

[仮名]わがもてる みつあひによれる いともちて つけてましもの いまぞくやしき

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]相聞 作者:阿倍女郎 中臣東人 贈答

[訓異]わがもてる,[寛]わかもてる,

みつあひによれる[寛],

いともちて[寛],

つけてましもの,[寛]つけてましものを,

いまぞくやしき,[寛]いまそくやしき,


[歌番号]04/0517

[題詞]大納言兼大将軍大伴卿歌一首

[原文]神樹尓毛 手者觸云乎 打細丹 人妻跡云者 不觸物可聞

[訓読]神木にも手は触るといふをうつたへに人妻といへば触れぬものかも

[仮名]かむきにも てはふるといふを うつたへに ひとづまといへば ふれぬものかも

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:大伴安麻呂 人妻

[訓異]かむきにも,[寛]さかきにも,

てはふるといふを[寛],

うつたへに[寛],

ひとづまといへば,[寛]ひとつまといへは,

ふれぬものかも[寛],


[歌番号]04/0518

[題詞]石川郎女歌一首 [即佐保大伴大家也]

[原文]春日野之 山邊道乎 与曽理無 通之君我 不所見許呂香聞

[訓読]春日野の山辺の道をよそりなく通ひし君が見えぬころかも

[仮名]かすがのの やまへのみちを よそりなく かよひしきみが みえぬころかも

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 与 [西(貼紙)][元] 於

[事項]相聞 作者:石川郎女(邑婆) 大伴安麻呂 地名 奈良

[訓異]かすがのの,[寛]かすかのの,

やまへのみちを[寛],

よそりなく[寛],

かよひしきみが,[寛]かよひしきみか,

みえぬころかも[寛],


[歌番号]04/0519

[題詞]大伴女郎歌一首 [今城王之母也今城王後賜大原真人氏也]

[原文]雨障 常為公者 久堅乃 昨夜雨尓 将懲鴨

[訓読]雨障み常する君はひさかたの昨夜の夜の雨に懲りにけむかも

[仮名]あまつつみ つねするきみは ひさかたの きぞのよのあめに こりにけむかも

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:大伴女郎 勧誘

[訓異]あまつつみ,[寛]あまさはり,

つねするきみは[寛],

ひさかたの[寛],

きぞのよのあめに,[寛]よふへのあめに,

こりにけむかも[寛],


[歌番号]04/0521

[題詞]藤原宇合大夫遷任上京時常陸娘子贈歌一首

[原文]庭立 麻手苅干 布<暴> 東女乎 忘賜名

[訓読]庭に立つ麻手刈り干し布曝す東女を忘れたまふな

[仮名]にはにたつ あさでかりほし ぬのさらす あづまをみなを わすれたまふな

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 慕 -> 暴 [元]

[事項]相聞 作者:常陸娘子 藤原宇合 餞別 植物

[訓異]にはにたつ[寛],

あさでかりほし,[寛]あさてかりほし,

ぬのさらす,[寛]しきしのふ,

あづまをみなを,[寛]あつまをとめを,

わすれたまふな[寛],


[歌番号]04/0531

[題詞](天皇賜海上女王御歌一首 [寧樂宮即位天皇也])海上<王>奉和歌一首 [志貴皇子之女也]

[原文]梓弓 爪引夜音之 遠音尓毛 君之御幸乎 聞之好毛

[訓読]梓弓爪引く夜音の遠音にも君が御幸を聞かくしよしも

[仮名]あづさゆみ つまびくよおとの とほとにも きみがみゆきを きかくしよしも

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 女王 -> 王 [桂][元][古][紀]

[事項]相聞 作者:聖武天皇 海上女王 贈答

[訓異]あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,

つまびくよおとの,[寛]つまひくよとの,

とほとにも[寛],

きみがみゆきを,[寛]きみかみゆきを,

きかくしよしも,[寛]きくはしよしも,


[歌番号]04/0541

[題詞](高田女王贈今城王歌六首)

[原文]現世尓波 人事繁 来生尓毛 将相吾背子 今不有十方

[訓読]この世には人言繁し来む世にも逢はむ我が背子今ならずとも

[仮名]このよには ひとごとしげし こむよにも あはむわがせこ いまならずとも

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:高田女王 今城王 尫柜蹋 贈答

[訓異]このよには[寛],

ひとごとしげし,[寛]ひとことしけみ,

こむよにも[寛],

あはむわがせこ,[寛]あはむわかせこ,

いまならずとも,[寛]いまならすとも,


[歌番号]04/0551

[題詞](五年戊辰<大>宰少貳石川足人朝臣遷任餞于筑前國蘆城驛家歌三首)

[原文]山跡道之 嶋乃浦廻尓 縁浪 間無牟 吾戀巻者

[訓読]大和道の島の浦廻に寄する波間もなけむ我が恋ひまくは

[仮名]やまとぢの しまのうらみに よするなみ あひだもなけむ あがこひまくは

[左注]右三首作者未詳

[校異]なし

[事項]相聞 石川足人 餞別 羈旅 序詞 恋情 福岡 地名 神亀5年

[訓異]やまとぢの,[寛]やまとちの,

しまのうらみに,[寛]しまのうらわに,

よするなみ[寛],

あひだもなけむ,[寛]あひたなけむに,

あがこひまくは,[寛]わかこひまくは,


[歌番号]04/0561

[題詞](<大>宰大監大伴宿祢百代戀歌四首)

[原文]不念乎 思常云者 大野有 三笠社之 神思知三

[訓読]思はぬを思ふと言はば大野なる御笠の杜の神し知らさむ

[仮名]おもはぬを おもふといはば おほのなる みかさのもりの かみししらさむ

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:大伴百代 福岡 太宰府 地名 恋情

[訓異]おもはぬを[寛],

おもふといはば,[寛]おもふといはは,

おほのなる[寛],

みかさのもりの[寛],

かみししらさむ,[寛]かみししるらみ,


[歌番号]04/0571

[題詞](<大>宰帥大伴卿被任大納言臨入京之時府官人等餞卿筑前國蘆城驛家歌四首)

[原文]月夜吉 河音清之 率此間 行毛不去毛 遊而将歸

[訓読]月夜よし川の音清しいざここに行くも行かぬも遊びて行かむ

[仮名]つくよよし かはのおときよし いざここに ゆくもゆかぬも あそびてゆかむ

[左注]右一首防人佑大伴四綱

[校異]なし

[事項]相聞 作者:大伴四綱 大伴旅人 餞宴 送別 福岡 地名

[訓異]つくよよし,[寛]つきよよし,

かはのおときよし,[寛]かはをときよし,

いざここに,[寛]いさここに,

ゆくもゆかぬも,[寛]ゆくもとまるも,

あそびてゆかむ,[寛]あそひてゆかむ,


[歌番号]04/0581

[題詞]大伴坂上家之大娘報<贈>大伴宿祢家持歌四首

[原文]生而有者 見巻毛不知 何如毛 将死与妹常 夢所見鶴

[訓読]生きてあらば見まくも知らず何しかも死なむよ妹と夢に見えつる

[仮名]いきてあらば みまくもしらず なにしかも しなむよいもと いめにみえつる

[左注]なし

[校異]賜 -> 贈 [桂][元][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]相聞 作者:坂上大嬢 大伴家持 夢 恋情 贈答

[訓異]いきてあらば,[寛]いきてあれは,

みまくもしらず,[寛]みまくもしらす,

なにしかも[寛],

しなむよいもと[寛],

いめにみえつる,[寛]ゆめにみえつる,


[歌番号]04/0591

[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)

[原文]吾念乎 人尓令知哉 玉匣 開阿氣津跡 夢西所見

[訓読]我が思ひを人に知るれか玉櫛笥開きあけつと夢にし見ゆる

[仮名]わがおもひを ひとにしるれか たまくしげ ひらきあけつと いめにしみゆる

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:笠女郎 大伴家持 尫柜蹋 贈答 枕詞

[訓異]わがおもひを,[寛]わかおもひを,

ひとにしるれか,[寛]ひとにしらすや,

たまくしげ,[寛]たまくしけ,

ひらきあけつと[寛],

いめにしみゆる,[寛]ゆめにしみゆる,


[歌番号]04/0601

[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)

[原文]従情毛 吾者不念寸 山河毛 隔莫國 如是戀常羽

[訓読]心ゆも我は思はずき山川も隔たらなくにかく恋ひむとは

[仮名]こころゆも わはおもはずき やまかはも へだたらなくに かくこひむとは

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 贈答

[訓異]こころゆも,[寛]こころにも,

わはおもはずき,[寛]われはおもはす,

やまかはも[寛],

へだたらなくに,[寛]へたたらなくに,

かくこひむとは[寛],


[歌番号]04/0610

[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)

[原文]近有者 雖不見在乎 弥遠 君之伊座者 有不勝<自>

[訓読]近くあれば見ねどもあるをいや遠く君がいまさば有りかつましじ

[仮名]ちかくあれば みねどもあるを いやとほく きみがいまさば ありかつましじ

[左注]右二首相別後更来贈

[校異]目 -> 自 [西(訂正)][元][紀]

[事項]相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 贈答

[訓異]ちかくあれば,[寛]ちかくあれは,

みねどもあるを,[寛]みねともあるを,

いやとほく,[寛]いやとほに,

きみがいまさば,[寛]きみかいまれなは,

ありかつましじ,[寛]ありてもたへし,


[歌番号]04/0611

[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)大伴宿祢家持和<歌>二首

[原文]今更 妹尓将相八跡 念可聞 幾許吾胸 欝悒将有

[訓読]今さらに妹に逢はめやと思へかもここだ我が胸いぶせくあるらむ

[仮名]いまさらに いもにあはめやと おもへかも ここだあがむね いぶせくあるらむ

[左注]なし

[校異]<> -> 歌 [西(右書)][元][金]

[事項]相聞 作者:大伴家持 笠女郎 贈答

[訓異]いまさらに[寛],

いもにあはめやと[寛],

おもへかも[寛],

ここだあがむね,[寛]ここたわかむね,

いぶせくあるらむ,[寛]いふかしからむ,


[歌番号]04/0612

[題詞]((笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)大伴宿祢家持和<歌>二首)

[原文]中々者 黙毛有益<乎> 何為跡香 相見始兼 不遂尓

[訓読]なかなかに黙もあらましを何すとか相見そめけむ遂げざらまくに

[仮名]なかなかに もだもあらましを なにすとか あひみそめけむ とげざらまくに

[左注]なし

[校異]呼 -> 乎 [金][紀]

[事項]相聞 作者:大伴家持 笠女郎 悔恨 恨牫 贈答

[訓異]なかなかに[寛],

もだもあらましを,[寛]もたもあらましを,

なにすとか[寛],

あひみそめけむ[寛],

とげざらまくに,[寛]とけさらなくに,


[歌番号]04/0613

[題詞]山口女王贈大伴宿祢家持歌五首

[原文]物念跡 人尓不<所>見常 奈麻強<尓> 常念弊利 在曽金津流

[訓読]もの思ふと人に見えじとなまじひに常に思へりありぞかねつる

[仮名]ものもふと ひとにみえじと なまじひに つねにおもへり ありぞかねつる

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 所 [元][金][紀] / <> -> 尓 [元][金][紀]

[事項]相聞 作者:山口女王 大伴家持 恋情 贈答

[訓異]ものもふと,[寛]ものおもふと,

ひとにみえじと,[寛]ひとにみせしと,

なまじひに,[寛]なましひに,

つねにおもへり[寛],

ありぞかねつる,[寛]ありそかねつる,


[歌番号]04/0614

[題詞](山口女王贈大伴宿祢家持歌五首)

[原文]不相念 人乎也本名 白細之 袖漬左右二 哭耳四泣裳

[訓読]相思はぬ人をやもとな白栲の袖漬つまでに音のみし泣くも

[仮名]あひおもはぬ ひとをやもとな しろたへの そでひつまでに ねのみしなくも

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:山口女王 大伴家持 贈答 怨恨

[訓異]あひおもはぬ[寛],

ひとをやもとな[寛],

しろたへの[寛],

そでひつまでに,[寛]そてひつまてに,

ねのみしなくも[寛],


[歌番号]04/0615

[題詞](山口女王贈大伴宿祢家持歌五首)

[原文]吾背子者 不相念跡裳 敷細乃 君之枕者 夢<所>見乞

[訓読]我が背子は相思はずとも敷栲の君が枕は夢に見えこそ

[仮名]わがせこは あひおもはずとも しきたへの きみがまくらは いめにみえこそ

[左注]なし

[校異]尓 -> 所 [元][金][紀]

[事項]相聞 作者:山口女王 大伴家持 恋情 贈答 枕詞 夢

[訓異]わがせこは,[寛]わかせこは,

あひおもはずとも,[寛]あひをもはすとも,

しきたへの[寛],

きみがまくらは,[寛]きみかまくらは,

いめにみえこそ,[寛]ゆめにみえこそ,


[歌番号]04/0616

[題詞](山口女王贈大伴宿祢家持歌五首)

[原文]劔大刀 名惜雲 吾者無 君尓不相而 年之經去礼者

[訓読]剣太刀名の惜しけくも我れはなし君に逢はずて年の経ぬれば

[仮名]つるぎたち なのをしけくも われはなし きみにあはずて としのへぬれば

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:山口女王 大伴家持 尫柜蹋 名 恋情 贈答

[訓異]つるぎたち,[寛]つるきたち,

なのをしけくも[寛],

われはなし[寛],

きみにあはずて,[寛]きみにあはすて,

としのへぬれば,[寛]としのへぬれは,


[歌番号]04/0617

[題詞](山口女王贈大伴宿祢家持歌五首)

[原文]従蘆邊 満来塩乃 弥益荷 念歟君之 忘金鶴

[訓読]葦辺より満ち来る潮のいや増しに思へか君が忘れかねつる

[仮名]あしへより みちくるしほの いやましに おもへかきみが わすれかねつる

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:山口女王 大伴家持 恋情 贈答 序詞

[訓異]あしへより[寛],

みちくるしほの[寛],

いやましに[寛],

おもへかきみが,[寛]おもへかきみか,

わすれかねつる[寛],


[歌番号]04/0618

[題詞]大神女郎贈大伴宿祢家持歌一首

[原文]狭夜中尓 友喚千鳥 物念跡 和備居時二 鳴乍本名

[訓読]さ夜中に友呼ぶ千鳥物思ふとわびをる時に鳴きつつもとな

[仮名]さよなかに ともよぶちとり ものもふと わびをるときに なきつつもとな

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌

[事項]相聞 作者:大神女郎 大伴家持 恋情 動物 贈答

[訓異]さよなかに[寛],

ともよぶちとり,[寛]ともよふちとり,

ものもふと,[寛]ものおもふと,

わびをるときに,[寛]わひたるときに,

なきつつもとな[寛],


[歌番号]04/0619

[題詞]大伴坂上郎女怨恨歌一首[并短歌]

[原文]押照 難波乃菅之 根毛許呂尓 君之聞四<手> 年深 長四云者 真十鏡 磨師情乎 縦手師 其日之極 浪之共 靡珠藻乃 云々 意者不持 大船乃 憑有時丹 千磐破 神哉将離 空蝉乃 人歟禁良武 通為 君毛不来座 玉梓之 使母不所見 成奴礼婆 痛毛為便無三 夜干玉乃 夜者須我良尓 赤羅引 日母至闇 雖嘆 知師乎無三 雖念 田付乎白二 幼婦常 言雲知久 手小童之 哭耳泣管 俳徊 君之使乎 待八兼手六

[訓読]おしてる 難波の菅の ねもころに 君が聞こして 年深く 長くし言へば まそ鏡 磨ぎし心を ゆるしてし その日の極み 波の共 靡く玉藻の かにかくに 心は持たず 大船の 頼める時に ちはやぶる 神か離くらむ うつせみの 人か障ふらむ 通はしし 君も来まさず 玉梓の 使も見えず なりぬれば いたもすべなみ ぬばたまの 夜はすがらに 赤らひく 日も暮るるまで 嘆けども 験をなみ 思へども たづきを知らに たわや女と 言はくもしるく たわらはの 音のみ泣きつつ た廻り 君が使を 待ちやかねてむ

[仮名]おしてる なにはのすげの ねもころに きみがきこして としふかく ながくしいへば まそかがみ とぎしこころを ゆるしてし そのひのきはみ なみのむた なびくたまもの かにかくに こころはもたず おほぶねの たのめるときに ちはやぶる かみかさくらむ うつせみの ひとかさふらむ かよはしし きみもきまさず たまづさの つかひもみえず なりぬれば いたもすべなみ ぬばたまの よるはすがらに あからひく ひもくるるまで なげけども しるしをなみ おもへども たづきをしらに たわやめと いはくもしるく たわらはの ねのみなきつつ たもとほり きみがつかひを まちやかねてむ

[左注]なし

[校異]歌 [西] / 乎 -> 手 [金]

[事項]相聞 作者:坂上郎女 怨恨 恋情 挽歌的手法 枕詞

[訓異]おしてる[寛],

なにはのすげの,[寛]なにはのすけの,

ねもころに[寛],

きみがきこして,[寛]きみかききしを,

としふかく[寛],

ながくしいへば,[寛]なかくしいへは,

まそかがみ,[寛]まそかかみ,

とぎしこころを,[寛]ときしこころを,

ゆるしてし[寛],

そのひのきはみ[寛],

なみのむた[寛],

なびくたまもの,[寛]なひくたまもの,

かにかくに,[寛]とにかくに,

こころはもたず,[寛]こころはもたす,

おほぶねの,[寛]おほふねの,

たのめるときに[寛],

ちはやぶる,[寛]ちはやふる,

かみかさくらむ,[寛]かみやかれなむ,

うつせみの[寛],

ひとかさふらむ,[寛]ひとかいむらむ,

かよはしし,[寛]かよひせし,

きみもきまさず,[寛]きみもきまさす,

たまづさの,[寛]たまつさの,

つかひもみえず,[寛]つかひもみえす,

なりぬれば,[寛]なりぬれは,

いたもすべなみ,[寛]いともすへなみ,

ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,

よるはすがらに,[寛]よるはすからに,

あからひく[寛],

ひもくるるまで,[寛]ひもくるるまて,

なげけども,[寛]なけけとも,

しるしをなみ,[寛]しるしをなしみ,

おもへども,[寛]おもへとも,

たづきをしらに,[寛]たつきをしらに,

たわやめと,[寛]たをやめと,

いはくもしるく[寛],

たわらはの,[寛]わらはの,

ねのみなきつつ,[寛]ねのみなくつつ,

たもとほり,[寛]たちとまり,

きみがつかひを,[寛]きみかつかひを,

まちやかねてむ[寛],


[歌番号]04/0621

[題詞]西海道節度使判官佐伯宿祢東人妻贈夫君歌一首

[原文]無間 戀尓可有牟 草枕 客有公之 夢尓之所見

[訓読]間なく恋ふれにかあらむ草枕旅なる君が夢にし見ゆる

[仮名]あひだなく こふれにかあらむ くさまくら たびなるきみが いめにしみゆる

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]相聞 作者:佐伯東人妻 羈旅 恋情 別離 贈答 枕詞


[訓異]あひだなく,[寛]ひまもなく,

こふれにかあらむ,[寛]こふるにかあらむ,

くさまくら[寛],

たびなるきみが,[寛]たひなるきみか,

いめにしみゆる,[寛]ゆめにしみゆる,


[歌番号]04/0631

[題詞]湯原王贈娘子歌二首 [志貴皇子之子也]

[原文]宇波弊無 物可聞人者 然許 遠家路乎 令還念者

[訓読]うはへなきものかも人はしかばかり遠き家路を帰さく思へば

[仮名]うはへなき ものかもひとは しかばかり とほきいへぢを かへさくおもへば

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌

[事項]相聞 作者:湯原王 娘子 怨恨 贈答

[訓異]うはへなき[寛],

ものかもひとは[寛],

しかばかり,[寛]しかはかり,

とほきいへぢを,[寛]とほきいへちを,

かへさくおもへば,[寛]かへすとおもへは,


[歌番号]04/0641

[題詞]娘子復報贈<歌>一首

[原文]絶常云者 和備染責跡 焼大刀乃 隔付經事者 幸也吾君

[訓読]絶ゆと言はばわびしみせむと焼大刀のへつかふことは幸くや我が君

[仮名]たゆといはば わびしみせむと やきたちの へつかふことは さきくやあがきみ

[左注]なし

[校異]和歌 -> 歌 [元][金][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]相聞 作者:娘子 湯原王 怨恨 離別 枕詞

[訓異]たゆといはば,[寛]たゆといへは,

わびしみせむと,[寛]わひしみせむと,

やきたちの[寛],

へつかふことは[寛],

さきくやあがきみ,[寛]よしやわかきみ,


[歌番号]04/0651

[題詞]大伴坂上郎女歌二首

[原文]久堅乃 天露霜 置二家里 宅有人毛 待戀奴濫

[訓読]ひさかたの天の露霜置きにけり家なる人も待ち恋ひぬらむ

[仮名]ひさかたの あめのつゆしも おきにけり いへなるひとも まちこひぬらむ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]相聞 作者:坂上郎女 枕詞

[訓異]ひさかたの[寛],

あめのつゆしも,[寛]あまのつゆしも,

おきにけり[寛],

いへなるひとも,[寛]いへにあるひとも,

まちこひぬらむ[寛],


[歌番号]04/0661

[題詞](大伴坂上郎女歌六首)

[原文]戀々而 相有時谷 愛寸 事盡手四 長常念者

[訓読]恋ひ恋ひて逢へる時だにうるはしき言尽してよ長くと思はば

[仮名]こひこひて あへるときだに うるはしき ことつくしてよ ながくとおもはば

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:坂上郎女 恋情

[訓異]こひこひて[寛],

あへるときだに,[寛]あへるときたに,

うるはしき,[寛]うつくしき,

ことつくしてよ[寛],

ながくとおもはば,[寛]なかくとおもはは,


[歌番号]04/0671

[題詞](湯原王歌一首)和歌一首 [不審作者]

[原文]月讀之 光者清 雖照有 惑情 不堪念

[訓読]月読の光りは清く照らせれど惑へる心思ひあへなくに

[仮名]つくよみの ひかりはきよく てらせれど まとへるこころ おもひあへなくに

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 惑 [紀] 或

[事項]相聞 湯原王

[訓異]つくよみの,[寛]つきよみの,

ひかりはきよく[寛],

てらせれど,[寛]てらせとも,

まとへるこころ,[寛]まとふこころは,

おもひあへなくに,[寛]たへすおもほゆ,


[歌番号]04/0681

[題詞](大伴宿祢家持与交遊別歌三首)

[原文]中々尓 絶年云者 如此許 氣緒尓四而 吾将戀八方

[訓読]なかなかに絶ゆとし言はばかくばかり息の緒にして我れ恋ひめやも

[仮名]なかなかに たゆとしいはば かくばかり いきのをにして あれこひめやも

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:大伴家持 交遊 恋情

[訓異]なかなかに[寛],

たゆとしいはば,[寛]たへてとしいはは,

かくばかり,[寛]かくはかり,

いきのをにして[寛],

あれこひめやも,[寛]わかこひめやも,


[歌番号]04/0691

[題詞]大伴宿祢家持贈娘子歌二首

[原文]百礒城之 大宮人者 雖多有 情尓乗而 所念妹

[訓読]ももしきの大宮人は多かれど心に乗りて思ほゆる妹

[仮名]ももしきの おほみやひとは おほかれど こころにのりて おもほゆるいも

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]相聞 作者:大伴家持 娘子 恋情 枕詞 贈答

[訓異]ももしきの[寛],

おほみやひとは[寛],

おほかれど,[寛]おほかれと,

こころにのりて[寛],

おもほゆるいも[寛],


[歌番号]04/0701

[題詞]河内百枝娘子贈大伴宿祢家持歌二首

[原文]波都波都尓 人乎相見而 何将有 何日二箇 又外二将見

[訓読]はつはつに人を相見ていかにあらむいづれの日にかまた外に見む

[仮名]はつはつに ひとをあひみて いかにあらむ いづれのひにか またよそにみむ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]相聞 作者:河内百枝娘子 大伴家持 恋情

[訓異]はつはつに[寛],

ひとをあひみて[寛],

いかにあらむ,[寛]いかならむ,

いづれのひにか,[寛]いつれのひにか,

またよそにみむ[寛],


[歌番号]04/0710

[題詞]安都扉娘子歌一首

[原文]三空去 月之光二 直一目 相三師人<之> 夢西所見

[訓読]み空行く月の光にただ一目相見し人の夢にし見ゆる

[仮名]みそらゆく つきのひかりに ただひとめ あひみしひとの いめにしみゆる

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 之 [西(右書)][元][紀][温]

[事項]相聞 作者:安都扉娘子 夢

[訓異]みそらゆく[寛],

つきのひかりに[寛],

ただひとめ,[寛]たたひとめ,

あひみしひとの[寛],

いめにしみゆる,[寛]ゆめにしみゆる,


[歌番号]04/0711

[題詞]丹波大女娘子歌三首

[原文]鴨鳥之 遊此池尓 木葉落而 浮心 吾不念國

[訓読]鴨鳥の遊ぶこの池に木の葉落ちて浮きたる心我が思はなくに

[仮名]かもどりの あそぶこのいけに このはおちて うきたるこころ わがおもはなくに

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]相聞 作者:丹波大女娘子 動物 恋情 序詞

[訓異]かもどりの,[寛]かもとりの,

あそぶこのいけに,[寛]あそふこのいけに,

このはおちて[寛],

うきたるこころ,[寛]うかへるこころ,

わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,


[歌番号]04/0712

[題詞](丹波大女娘子歌三首)

[原文]味酒呼 三輪之祝我 忌杉 手觸之罪歟 君二遇難寸

[訓読]味酒を三輪の祝がいはふ杉手触れし罪か君に逢ひかたき

[仮名]うまさけを みわのはふりが いはふすぎ てふれしつみか きみにあひかたき

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:丹波大女娘子 枕詞 恋情

[訓異]うまさけを,[寛]うまさかを,

みわのはふりが,[寛]みわのはふりか,

いはふすぎ,[寛]いはふすき,

てふれしつみか[寛],

きみにあひかたき[寛],


[歌番号]04/0713

[題詞](丹波大女娘子歌三首)

[原文]垣穂成 人辞聞而 吾背子之 情多由多比 不合頃者

[訓読]垣ほなす人言聞きて我が背子が心たゆたひ逢はぬこのころ

[仮名]かきほなす ひとごとききて わがせこが こころたゆたひ あはぬこのころ

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:丹波大女娘子 尫柜蹋

[訓異]かきほなす[寛],

ひとごとききて,[寛]ひとことききて,

わがせこが,[寛]わかせこか,

こころたゆたひ[寛],

あはぬこのころ[寛],


[歌番号]04/0714

[題詞]大伴宿祢家持贈娘子歌七首

[原文]情尓者 思渡跡 縁乎無三 外耳為而 嘆曽吾為

[訓読]心には思ひわたれどよしをなみ外のみにして嘆きぞ我がする

[仮名]こころには おもひわたれど よしをなみ よそのみにして なげきぞわがする

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]相聞 作者:大伴家持 娘子 贈答

[訓異]こころには[寛],

おもひわたれど,[寛]おもひわたれと,

よしをなみ[寛],

よそのみにして,[寛]よそにのみして,

なげきぞわがする,[寛]なけきそわかする,


[歌番号]04/0715

[題詞](大伴宿祢家持贈娘子歌七首)

[原文]千鳥鳴 佐保乃河門之 清瀬乎 馬打和多思 何時将通

[訓読]千鳥鳴く佐保の川門の清き瀬を馬うち渡しいつか通はむ

[仮名]ちどりなく さほのかはとの きよきせを うまうちわたし いつかかよはむ

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:大伴家持 娘子 川渡り 奈良 地名 動物 贈答

[訓異]ちどりなく,[寛]ちとりなく,

さほのかはとの[寛],

きよきせを[寛],

うまうちわたし[寛],

いつかかよはむ,[寛]いかにかよはむ,


[歌番号]04/0716

[題詞](大伴宿祢家持贈娘子歌七首)

[原文]夜晝 云別不知 吾戀 情盖 夢所見寸八

[訓読]夜昼といふ別き知らず我が恋ふる心はけだし夢に見えきや

[仮名]よるひると いふわきしらず あがこふる こころはけだし いめにみえきや

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:大伴家持 娘子 恋情 夢 恋情 贈答

[訓異]よるひると[寛],

いふわきしらず,[寛]いふわきしらす,

あがこふる,[寛]わかこふる,

こころはけだし,[寛]こころはけたし,

いめにみえきや,[寛]ゆめにみえきや,


[歌番号]04/0717

[題詞](大伴宿祢家持贈娘子歌七首)

[原文]都礼毛無 将有人乎 獨念尓 吾念者 惑毛安流香

[訓読]つれもなくあるらむ人を片思に我れは思へばわびしくもあるか

[仮名]つれもなく あるらむひとを かたもひに われはおもへば わびしくもあるか

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:大伴家持 娘子 恨牫 贈答

[訓異]つれもなく[寛],

あるらむひとを[寛],

かたもひに,[寛]かたおもひに,

われはおもへば,[寛]われしおもへは,

わびしくもあるか,[寛]まとひもあるか,


[歌番号]04/0718

[題詞](大伴宿祢家持贈娘子歌七首)

[原文]不念尓 妹之咲儛乎 夢見而 心中二 燎管曽呼留

[訓読]思はぬに妹が笑ひを夢に見て心のうちに燃えつつぞ居る

[仮名]おもはぬに いもがゑまひを いめにみて こころのうちに もえつつぞをる

[左注]なし

[校異]呼 [元] 乎

[事項]相聞 作者:大伴家持 娘子 夢 恋情 贈答

[訓異]おもはぬに[寛],

いもがゑまひを,[寛]いもかゑまひを,

いめにみて,[寛]ゆめにみて,

こころのうちに[寛],

もえつつぞをる,[寛]もえつつそをる,


[歌番号]04/0719

[題詞](大伴宿祢家持贈娘子歌七首)

[原文]大夫跡 念流吾乎 如此許 三礼二見津礼 片<念>男責

[訓読]ますらをと思へる我れをかくばかりみつれにみつれ片思をせむ

[仮名]ますらをと おもへるわれを かくばかり みつれにみつれ かたもひをせむ

[左注]なし

[校異]思 -> 念 [元][紀]

[事項]相聞 作者:大伴家持 娘子 怨恨 贈答

[訓異]ますらをと[寛],

おもへるわれを[寛],

かくばかり,[寛]かくはかり,

みつれにみつれ[寛],

かたもひをせむ,[寛]かたおもひをせむ,


[歌番号]04/0721

[題詞]獻天皇歌一首 [大伴坂上郎女在佐保宅作也]

[原文]足引乃 山二四居者 風流無三 吾為類和射乎 害目賜名

[訓読]あしひきの山にしをれば風流なみ我がするわざをとがめたまふな

[仮名]あしひきの やまにしをれば みやびなみ わがするわざを とがめたまふな

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]相聞 作者:坂上郎女 聖武天皇 佐保 枕詞 地名 贈答

[訓異]あしひきの[寛],

やまにしをれば,[寛]やまにしをれは,

みやびなみ,[寛]よしをなみ,

わがするわざを,[寛]わかするわさを,

とがめたまふな,[寛]とかめたまふな,


[歌番号]04/0731

[題詞](大伴坂上大嬢贈大伴宿祢家持歌三首)

[原文]吾名者毛 千名之五百名尓 雖立 君之名立者 惜社泣

[訓読]我が名はも千名の五百名に立ちぬとも君が名立たば惜しみこそ泣け

[仮名]わがなはも ちなのいほなに たちぬとも きみがなたたば をしみこそなけ

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:坂上大嬢 大伴家持 尫柜蹋 名前 贈答

[訓異]わがなはも,[寛]わかなはも,

ちなのいほなに[寛],

たちぬとも[寛],

きみがなたたば,[寛]きみかなたたは,

をしみこそなけ[寛],


[歌番号]04/0741

[題詞]更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]夢之相者 苦有家里 覺而 掻探友 手二毛不所觸者

[訓読]夢の逢ひは苦しかりけりおどろきて掻き探れども手にも触れねば

[仮名]いめのあひは くるしかりけり おどろきて かきさぐれども てにもふれねば

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 遊仙窟 夢 贈答

[訓異]いめのあひは,[寛]ゆめのあひは,

くるしかりけり[寛],

おどろきて,[寛]おとろきて,

かきさぐれども,[寛]かきさくれとも,

てにもふれねば,[寛]てにもふれねは,


[歌番号]04/0751

[題詞](更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首)

[原文]相見而者 幾日毛不經乎 幾許久毛 <久>流比尓久流必 所念鴨

[訓読]相見ては幾日も経ぬをここだくもくるひにくるひ思ほゆるかも

[仮名]あひみては いくかもへぬを ここだくも くるひにくるひ おもほゆるかも

[左注]なし

[校異]<> -> 久 [西(右書)][桂][紀][温]

[事項]相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 贈答

[訓異]あひみては[寛],

いくかもへぬを[寛],

ここだくも,[寛]ここはくも,

くるひにくるひ[寛],

おもほゆるかも[寛],


[歌番号]04/0761

[題詞](大伴坂上郎女従竹田庄<贈>女子大嬢歌二首)

[原文]早河之 湍尓居鳥之 縁乎奈弥 念而有師 吾兒羽裳A怜

[訓読]早川の瀬に居る鳥のよしをなみ思ひてありし我が子はもあはれ

[仮名]はやかはの せにゐるとりの よしをなみ おもひてありし あがこはもあはれ

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:坂上郎女 大伴坂上大嬢 序詞 恋情 贈答

[訓異]はやかはの[寛],

せにゐるとりの[寛],

よしをなみ[寛],

おもひてありし[寛],

あがこはもあはれ,[寛]わかこはもあはれ,


[歌番号]04/0771

[題詞](大伴宿祢家持従久邇京贈坂上大嬢歌五首)

[原文]偽毛 似付而曽為流 打布裳 真吾妹兒 吾尓戀目八

[訓読]偽りも似つきてぞするうつしくもまこと我妹子我れに恋ひめや

[仮名]いつはりも につきてぞする うつしくも まことわぎもこ われにこひめや

[左注]なし

[校異]なし

[事項]相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 久邇京 怨恨 贈答

[訓異]いつはりも[寛],

につきてぞする,[寛]につきてそする,

うつしくも,[寛]たちしきも,

まことわぎもこ,[寛]まことわきもこ,

われにこひめや[寛],


[歌番号]04/0781

[題詞](大伴宿祢家持更贈紀女郎歌五首)

[原文]野干玉能 昨夜者令還 今夜左倍 吾乎還莫 路之長手<呼>

[訓読]ぬばたまの昨夜は帰しつ今夜さへ我れを帰すな道の長手を

[仮名]ぬばたまの きぞはかへしつ こよひさへ われをかへすな みちのながてを

[左注]なし

[校異]乎 -> 呼 [桂][元][紀]

[事項]相聞 作者:大伴家持 紀女郎 枕詞 恋愛

[訓異]ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,

きぞはかへしつ,[寛]よふへはかへる,

こよひさへ[寛],

われをかへすな[寛],

みちのながてを,[寛]みちのなかてを,


[歌番号]04/0791

[題詞]藤原朝臣久須麻呂来報歌二首

[原文]奥山之 磐影尓生流 菅根乃 懃吾毛 不相念有哉

[訓読]奥山の岩蔭に生ふる菅の根のねもころ我れも相思はざれや

[仮名]おくやまの いはかげにおふる すがのねの ねもころわれも あひおもはざれや

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌

[事項]相聞 作者:藤原久須麻呂 大伴家持 植物 序詞 贈答

[訓異]おくやまの[寛],

いはかげにおふる,[寛]いはかけにおふる,

すがのねの,[寛]すかのねの,

ねもころわれも[寛],

あひおもはざれや,[寛]あひおもはされや,