ヨハネの第一の手紙 (電網訳)

提供:Wikisource

聖書<電網聖書

ヨハネの第一の手紙

電網聖書 - Public Domain

第1章[編集]

1はじめからあったもの,わたしたちが聞いたもの,わたしたちの目で見たもの,わたしたちが見,わたしたちの手が触れたもの,すなわち,命の言葉について, 2(そして,その命は現わされ,わたしたちは見たので,証言し,あなた方にその命,すなわち父と共にあり,わたしたちに現わされた永遠の命を知らせているのです。) 3わたしたちは見聞きしたことをあなた方に知らせます。それは,あなた方もわたしたちと交わりを持つようになるためです。わたしたちの交わりはと共にあり,そのみイエス・キリストと共にあります。 4そして,わたしたちがこれらの事をあなた方に書くのは,わたしたちの喜びが満たされるためです。

5わたしたちが彼から聞いており,あなた方に知らせる音信とは,は光であって,その方の内には少しも闇がないということです。 6もし,自分がその方と交わりを持っていると言いながら,闇の中を歩むなら,わたしたちは偽っており,真理を告げていません。 7しかし,その方が光の中におられるように,わたしたちが光の中を歩むなら,わたしたちは互いに交わりを持ち,そのみイエス・キリストの血がわたしたちをあらゆる罪から清めるのです。 8もし自分には罪がないと言うなら,わたしたちは自分を欺いており,真理はわたしたちの内にありません。 9もしわたしたちが自分の罪を告白するなら,その方は誠実また公正な方なので,わたしたちのあらゆる罪を許してくださり,わたしたちをあらゆる不正から清めてくださいます。 10もし自分は罪を犯したことがないと言うなら,わたしたちはその方を偽り者にするのであり,その方の言葉はわたしたちの内にありません。

第2章[編集]

1わたしの小さな子供たちよ,わたしがこれらの事をあなた方に書き送るのは,あなた方が罪を犯さないようにするためです。だれかが罪を犯すなら,わたしたちにはのもとに助言者[1],公正なるイエス・キリストがおられます。 2彼はわたしたちの罪のため,いいえ,わたしたちの罪のためだけではなく,全世界のためのあがないの犠牲[2]です。 3これこそ,わたしたちが彼を知っているということを知る方法です。すなわち,わたしたちが彼のおきてを守っているかどうかです。 4「彼を知っている」と言いながら彼のおきてを守っていない者は,偽り者であって,真理はその人の内にありません。 5しかし,だれでも彼の言葉を守っている者は,の愛が本当にはっきりとその人の内に全うされています。これこそ,わたしたちが彼の内にいることを知る方法です。 6自分が彼の内にとどまっていると言う者は,彼が歩まれたとおりに自らも歩むべきです。

7兄弟たち,わたしがあなた方に書き送るのは新しいおきてではなく,あなた方がはじめから持っていた古いおきてです。古いおきてとは,あなた方がはじめから聞いていた言葉です。 8それでも,わたしは新しいおきてをあなた方に書き送ります。それは,彼においてもあなた方においても真実です。なぜなら,闇が過ぎ去り,真の光がすでに輝いているからです。 9自分は光の中にいると言いながら自分の兄弟を憎む者は,今なお闇の中にいるのです。 10自分の兄弟を愛している者は光の中にとどまっており,その人にはつまずきのもとがありません。 11しかし自分の兄弟を憎む者は,闇の中にいて,闇の中を歩んでおり,自分がどこへ行こうとしているのかを知りません。闇がその人の目を見えなくしてしまったからです。

12小さな子供たちよ,わたしがあなた方に書き送るのは,あなた方の罪が彼の名のために許されたからです。

13父たちよ,わたしがあなた方に書き送るのは,あなた方がはじめからおられる方を知っているからです。

若者たちよ,わたしがあなた方に書き送るのは,あなた方が悪い者に打ち勝ったからです。

小さな子供たちよ,わたしがあなた方に書き送るのは,あなた方がを知っているからです。

14父たちよ,わたしがあなた方に書き送るのは,あなた方がはじめからおられる方を知っているからです。

若者たちよ,わたしがあなた方に書き送るのは,あなた方が強く,の言葉があなた方の内にとどまっており,あなた方が悪い者に打ち勝ったからです。

15世も世にあるものをも愛していてはなりません。だれかが世を愛するなら,の愛はその人の内にありません。 16すべて世にあるもの,すなわち肉の欲望と目の欲望,そして暮らしに関する自慢は,のものではなく,世のものだからです。 17世はその欲望と共に過ぎ去りますが,のご意志を行なう者は永遠にとどまります。

18小さな子供たちよ,今は終わりの時です。そして,反キリストが来ることを聞いていたとおり,今でも多くの反キリストが現われています。これによって,わたしたちは今が終わりの時であることを知っています。 19彼らはわたしたちから去って行きました。しかし,彼らはわたしたちの仲間ではなかったのです。もしわたしたちの仲間だったなら,彼らはわたしたちと共にとどまったはずです。しかし彼らが去って行ったのは,彼らがわたしたちの仲間ではないことが示されるためだったのです。 20あなた方は聖なる方から油を注がれているので,真理を知っています。 21わたしがあなた方に書いているのは,あなた方が真理を知っていないからではなく,むしろそれを知っているからであり,また偽りが真理に属していることは決してないからです。 22偽り者とは,イエスがキリストであるということを否認する者でなくてだれでしょう。これこそ反キリストとみを否認する者です。 23だれでもみを否認する者はを持っていません。みを告白する者はをも持っています。

24それで,あなた方に関する限り,あなた方がはじめから聞いていたことがあなた方の内にとどまっているようにしなさい。あなた方がはじめから聞いていたことがあなた方の内にとどまっているなら,あなた方もみの内,またの内にとどまるでしょう。 25これこそ,彼がわたしたちに誓われた約束,すなわち永遠の命です。 26わたしはあなた方に,あなた方を惑わそうとしている者たちに関して,これらの事を書いてきました。 27あなた方に関する限り,彼から受けた油注ぎがあなた方の内にとどまっており,あなた方はだれかに教えてもらう必要はありません。むしろ,彼の油注ぎがあなた方にすべての事柄について教えており,またそれが真実であって偽りではないように,そしてそれがあなた方を教えたとおりに,あなた方は彼の内にとどまることになります。 28それでは,小さな子供たちよ,彼の内にとどまっていなさい。それは,彼が現われる時に,わたしたちが大胆さを抱くことができ,彼の来臨の際に彼の前で恥じることのないためです。 29彼が義なる方だと知っているなら,あなた方は義を行なう者がすべて彼から生まれた者であることも知っているのです。

第3章[編集]

1がどれほど大きな愛をわたしたちに与えて,わたしたちがの子供と呼ばれるようにしてくださったかを見なさい。この理由で世はわたしたちを知っていません。世は彼を知っていないからです。 2愛する者たちよ,あなた方は今やの子供ですが,わたしたちが何になるのかはまだ明らかにされていません。しかし,彼が現わされると,わたしたちが彼のようになることは知っています。わたしたちは彼のありのままの姿を見ることになるからです。 3この希望を彼の上に置く者はみな,彼が清いのと同じように,自分を清くします。 4罪を犯す者はみな,不法をも犯すのです。罪は不法です。 5彼が現われたのはわたしたちの罪を取り去るためであることを,あなた方は知っています。そして,彼の内には罪がありません。 6だれでも彼の内にとどまっている者は罪を犯しません。罪を犯す者は,彼を見たことがなく,知ったこともありません。

7小さな子供たちよ,だれにも惑わされてはなりません。義を行なう者は,彼が義なる方であるのと同じように,義なる者です。 8罪を犯す者は悪魔に属しています。悪魔ははじめから罪を犯してきたからです。このことが終わるために,は現われたのです。それは,彼が悪魔の業をうち砕くためです。 9から生まれた者は罪を犯しません。その方の種がこの人の内にとどまっているからです。そして,この人は罪を犯すことができません。この人がから生まれたからです。 10このことにおいて,の子らと悪魔の子らは明らかです。義を行なわない者はみな,神に属していません。自分の兄弟を愛さない者も同様です。 11というのは,わたしたちが互いに愛し合うべきこと,これがあなた方がはじめから聞いていた音信だからです。 12カインのようであってはなりません。彼は悪い者に属していて,自分の兄弟を殺しました。なぜ殺したのですか。自分の業が悪く,自分の兄弟の業が正しかったからです。 13わたしの兄弟たち,世があなた方を憎むとしても驚いてはなりません。 14わたしたちは,自分たちが兄弟たちを愛しているので,死から命へと移ったことを知っています。自分の兄弟を愛さない者は死の内にとどまっています。 15だれでも自分の兄弟を憎む者は人殺しであり,あなた方は人殺しはだれも自分の内に永遠の命をとどめていないことを知っています。

16これによって,わたしたちは愛を知っています。彼がわたしたちのために自分の命を捨ててくださったからです。それで,わたしたちも自分の兄弟たちのために自分の命を捨てるべきです。 17しかし,世の資産がありながら,窮乏にある自分の兄弟を見て,その者に対する同情の気持ちを閉ざすなら,どうしての愛がその人の内にとどまるでしょう。 18わたしの小さな子供たちよ,言葉や舌だけによらず,行ないと真実とによって愛そうではありませんか。 19そして,これによってわたしたちは,自分が真理に属していることを知っており,その方の前で自分の心を説得しています。 20自分の心がわたしたちを罪に定めても,はわたしたちの心よりも大いなる方であって,すべての事を知っておられるからです。 21愛する者たちよ,自分の心がわたしたちを罪に定めないなら,わたしたちはに対して大胆さを抱き, 22わたしたちが求めることは何でも,その方から受けます。わたしたちがその方のおきてを守り,その方の目に喜ばれる事柄を行なっているからです。 23これがその方のおきてです。すなわち,わたしたちがその方のみイエス・キリストの名を信じ,彼がわたしたちに命じられたとおり,互いに愛し合うべきことです。 24その方のおきてを守っている者はその方の内にとどまっており,その方はその人の内にとどまっています。これによってわたしたちは,その方がわたしたちに与えてくださったにより,その方がわたしたちの内にとどまっていることを知ります。

第4章[編集]

1愛する者たちよ,すべての霊を信じてはなりません。むしろ,その霊がに属するものかどうかを試しなさい。多くの偽預言者が世に出ているからです。 2あなた方はこれによってに属するを知っています。すなわち,イエス・キリストが肉体において来られたことを告白する霊はすべてに属しています。 3そして,イエス・キリストが肉体において来られたことを告白しない霊はすべてに属していません。しかもこれは反キリストの霊であり,それが来ることをあなた方が聞いていた者です。今やそれはすでに世にいるのです。 4小さな子供たちよ,あなた方はに属しており,彼らに打ち勝ったのです。あなた方の内にいる方は,世の内にいる者より大いなる方だからです。 5彼らは世に属しています。それゆえに彼らは世について語り,世は彼らの言うことを聞きます。 6わたしたちはに属しています。を知っている者はわたしたちに耳を傾けます。に属していない者はわたしたちに耳を傾けません。これによって,わたしたちは真理の霊と迷いの霊を知っています。

7愛する者たちよ,わたしたちは互いに愛し合おうではありませんか。愛はに属しているからです。そして,愛する者はみなから生まれており,を知っています。 8愛さない者はを知っていません。神は愛だからです。 9の愛はこれによってわたしたちの内に示されました。すなわち,はそのひとりを世に遣わして,わたしたちが彼を通して生きるようにしてくださったことです。 10愛は,わたしたちがを愛したことにあるのではなく,その方がわたしたちを愛し,ご自分のみをわたしたちの罪のためのあがないの犠牲[3]として遣わしてくださったことにあるのです。 11愛する者たちよ,がこのようにわたしたちを愛してくださったのであれば,わたしたちも互いに愛し合うべきです。 12いまだを見た者はいません。わたしたちが互いに愛し合うなら,はわたしたちの内にとどまってくださり,その愛がわたしたちの内に全うされているのです。 13わたしたちはこれによって,わたしたちがその方の内にとどまっており,その方がわたしたちの内にとどまっておられることを知っているのです。すなわち,その方がわたしたちにご自分のを与えてくださったことによってです。 14わたしたちは,がみを世の救い主として遣わされたことを見たので,証言しています。 15イエスがであることを告白する者はだれでも,はその人の内にとどまっておられ,その人もの内にとどまっています。 16わたしたちは,がわたしたちのために抱いておられる愛を知っており,信じています。は愛であり,愛の内にとどまる者はの内にとどまっており,もその人の内にとどまっておられます。 17このことにおいて,愛はわたしたちの間に全うされているのです。すなわち,わたしたちが裁きの日に大胆さを抱くことができるようにすることです。この世でのわたしたちは,彼がそうであるのと全く同じようだからです。 18愛には恐れがなく,完全な愛はわたしたちの恐れを投げ捨てます。恐れには処罰が伴うからです。恐れる者は愛の内に全うされていません。 19わたしたちがを愛しているのは,その方がまずわたしたちを愛してくださったからです。 20「わたしはを愛している」と言いながら自分の兄弟を憎むなら,その人は偽り者です。というのは,見たことのある自分の兄弟を愛していない者が,どうして見たことのないを愛することができるでしょうか。 21を愛している者は自分の兄弟をも愛するべきであるという,このおきてをわたしたちは彼から受けているのです。

第5章[編集]

1イエスがキリストであることを信じる者はだれでも,から生まれた者です。父を愛している者はだれでも,その者から生まれた子供をも愛しています。 2わたしたちがを愛し,そのおきてを守っているなら,これによってわたしたちは,自分がの子らを愛していることを知ります。 3というのは,わたしたちがそのおきてを守ること,これがへの愛だからです。そのおきてはつらいものではありません。 4から生まれたものはみな,世に打ち勝ちます。世に打ち勝ったその勝利,それはすなわち,あなた方の信仰のことです。 5世に打ち勝った者とは,イエスがであることを信じる者以外のだれでしょう。 6この方こそ水と血によって来られた方,イエス・キリストです。水だけではなく,水と血とをもって来られたのです。証言するのはです。は真理だからです。 7証言する者が三人います。[4]すなわち 8,水,血であり,三者は一致しています。 9人の証言を受け入れるとしても,の証言のほうが偉大です。その方がご自分のみに関して証言されたこと,それがの証言だからです。 10のみを信じる者は自分の内にこの証言を持っています。を信じない者は,その方を偽り者としています。がご自分のみに関して与えられた証言を信じなかったからです。 11その証言とは,がわたしたちに永遠の命を与えられたこと,そして,この命がそのみの内にあるということです。 12を持っている者はその命を持っています。のみを持っていない者はその命を持っていません。 13わたしがこれらの事を,のみの名を信じているあなた方に書き送ったのは,自分たちが永遠の命を持っていることをあなた方が知るようにするため,また,のみの名を信じ続けるようにするためです。

14もしわたしたちがその方のご意志に従って何かを求めるなら,その方はわたしたちに耳を傾けてくださるということ,これがわたしたちがその方に対して抱いている大胆さです。 15そして,自分たちの求めることは何でもその方が耳を傾けてくださることをわたしたちが知っているのであれば,自分たちがその方に求めたその請願をわたしたちがすでに受けていることも知っているのです。

16もしだれかが,死に至らない罪を犯している自分の兄弟を見るなら,その人は求めなさい。そうすればはその人に,死に至らない罪を犯す者のために命を与えられるでしょう。死に至る罪があります。これについては,わたしは願うようにとは言いません。 17不義はすべて罪です。しかし,死に至らない罪もあります。 18わたしたちは,すべてから生まれた者は罪を犯すことがなく,むしろから生まれた方がその人を守ってくださり,悪い者はその人に触れることがないことを知っています。 19わたしたちは自分がに属しており,全世界が悪い者の力のうちに置かれていることを知っています。 20わたしたちは,のみが来て,わたしたちが真実な方を知るための理解力を与えてくださったことを知っています。そして,わたしたちは真実な方の内に,その方のみイエス・キリストの内にいます。この方こそ真実の,また永遠の命です。

21小さな子供たちよ,偶像から身を守りなさい。

脚注[編集]

  1. ギリシャ語の「Parakleton」,すなわち助言者助け手仲介者弁護者,または慰め手
  2. あがないの犠牲」はギリシャ語の「hilasmos」から来ている。静め,なだめること,慰,なだめの意。わたしたちの罪のためにの憤りを離れさせるための犠牲。
  3. あがないの犠牲」はギリシャ語の「hilasmos」から来ている。静め,なだめること,慰,なだめの意。わたしたちの罪のためにの憤りを離れさせるための犠牲。
  4. 少数の最近の写本だけは言葉を加えて次のようにしている。「天において証言する者が三人います。すなわち言葉聖霊であり,これら三者は一つです。また,地上で証言する者が三人います」。

電網聖書は,World English Bible(WEB)を土台とした新しい日本語訳です。この草稿は2002年3月3日版です