ユデト書 第十四章

提供:Wikisource
  • : この文書ではルビが使用されています。ここでは「単語ルビ」の形で再現しています。一部の古いブラウザでは、ルビが正しく見えない場合があります。

第十四章[編集]

1 其時そのときユデトかれらにひけるは『わが兄弟きやうだいよ、いまわれき、このくびをとり、石垣いしがきやぐらにかけよ。
2 またあさとなりて、地上ちじやうにあらはるるやいなや、なんぢこと〴〵くその武器ぶきをとり、すべての勇士ゆうしまちで、大將たいしやうて、アツスリアのらの哨兵せうへいおそはんがため、くだくばかりになし、しかもくだかずにれ。
3 アツスリアびとらは、その甲冑ようひかぶとけて陣營ぢんえいき、その隊長たいちやうらをおこし、オロペルネスの天幕てんまくはしき、そのらぬをば、恐怖おそれかれらをおそひ、かれら、なんぢらのまへよりらん。
4 そのときなんぢらとイスラエルのすべてのさかひむものとはかれらをひ、かれらをたふすべし。
5 されどなんぢ此等これらことまへに、まづアンモンびとアキオルをわがもとせよ。これはかれ、イスラエルのいへあなどりしもの、またころさんばかりとなしてかれわれらにおくりしものを、かつらんがためなり。』

6 此處こし彼等かれらオジアのいへよりアキオルをいだしけるに、かれきたりてオロペルネスのくびの、あつまれる人々ひと〴〵うち一人ひとりにあるをて、そのおもてせ、たふれてうしなへり。
7 かれら、かれを蘇生いきかへらしめしときかれはユデトの足下あしもとにひれし、これあがめていひぬ『なんぢはユダのすべての天幕てんまくうちに、またもろもろの國人くにびとうちしゆくせられん。なんぢくものはみなおどろくべし。
8 さればなんぢこれらのせしことをわれかたれ』と。そのときユデトたみうちにて、おのがなせしすべてのことかれげ、そのきしよりかれらにかたりしときまでのことしめせり。
9 かれかたへしときたみ大聲おほごゑさけび、全市ぜんしよろこびのこゑげたり。
10 アキオルはイスラエルのかみたまひしすべてのことて、ふかかみしんじ、そのやうかわ割禮かつれいほどこし、イスラエルのいへむすきたり。

11 あしたきたるやいなや、石垣いしがきうく[へ]にオロペルネスのくびをかけ、すべてのひと武器ぶきり、たいみて、やま登路のぼりみちけり。
12 アツスリアの子等こらこれとき、その班長等はんちやうら使者つかひおくれり。しかして班長等はんちやうらはその隊長等たいちやうらおよ千卒長等せんそつちやうらもとに、またすべての指揮官等しきくわんらもときたれり。
13 かくてかれらオロペルネスの天幕てんまくいたり、その執事しつじかたりてふ『我等われらしゆませ。奴隷どれいども全滅ぜんめつせられんとて、大膽だいたんにもくだきたりて、われらにたゝかひいどむなり。』
14 バゴアスりて天幕てんまくたゝけり。そはかれ、オロペルネスはユデトとともにねむれりとおもひたればなり。
15 こたへあらざれば、かれひらきて寢室しんしつりしに、オロペルネスはにてゆかいだされ、そのかしらられありき。
16 かれ大聲おほごゑさけび、うめかなしみてそのころもをさき、
17 ユデトの宿やどりし天幕てんまくりしに、彼女かのをんなざりしかば、はしでて人々ひと〴〵び、さけびていひぬ
18 『これらの奴隷どれいどもたばかりをし、ヘブルの婦女をんなはぢをネブカデネザルわういへあたへたり。そはよ、オロペルネスはくびうしなひてよこたはりる』と。
19 アツスリアびと隊長たいちやうこれらのことばきしとき、その上衣うはぎき、かれらのこゝろおほい怕惑おぢまどひ、陣營ぢんえいこと〴〵かなしみておほいなるひゞきをなせり。