マカビー第二書 第二章

提供:Wikisource
  • : この文書ではルビが使用されています。ここでは「単語ルビ」の形で再現しています。一部の古いブラウザでは、ルビが正しく見えない場合があります。

第二章[編集]

1 記錄きろくによれば、預言者よげんしやエレミヤもまたとらは人々ひと〴〵めいじて、まへべたるらしめたり。
2 この預言者よげんしやとらは人々ひと〴〵律法おきてあたへて、しゆ誡命いましめわするることなく、金銀きんぎん偶像ぐうぞうとその装飾さうしよくとをときにても、そのこゝろまどはすことなきやうにめいじたり。
3 かれまたほかのかかることばをもて人々ひと〴〵はげまし、律法おきてをそのこゝろよりはなれざらしめたり。
4 またその記錄きろくうちには、預言者よげんしやかみよりの警戒いましめにより、かつてモーセがのぼきてかみ嗣業ゆづりし、かのやまおもむとき幕屋まくや契約けいやくはこかれしたがふべしとめいじたることしるされあり。
5 エレミヤ此處こゝきたりて、いは洞穴ほらあな見出みいだし、幕屋まくや契約けいやくはこ香壇かうだんとをそのなかをさめ、かたくこれにとざしたり。
6 かれともきたりし人々ひと〴〵あるもの、道標みちしるべつくらんとてきたりしが、これを見出みいだざりき。
7 されどエレミヤこれをりしとき彼等かれらめていへり『その場所ばしよかみふたゝびそのたみともあつめ、慈悲じひしめたまときまでけつしてられざるべし。
8 そのときしゆ此等これらのことをあきらかにし、しゆ榮光えいくわうくもとをあらはたまはん。』

モーセこれをしめされしごとく、ソロモンその場所ばしよおほい聖別せいべつせられんことをもとめしとき
9 かれ智慧ちゑあるものなりしかば、みや奉献ほうけん竣成しゆんせいとの犧牲いけにへをささぐべきことをしめされぬ。
10 モーセしゆいのりしときてんよりくだりて犧牲いけにへつくししごとく、ソロモンのいのりときにもくだきたりて燔祭はんさいのものをつくせり。
11 (モーセいへり『罪祭ざいさいしよくさるべきものにあらざれば、ほかのものとともおな方法はうはふにてつくさるべし』と。)
12 ソロモン八日間かかんこれをまもれり。

13 しかしておなことども、公文書こうぶんしよにも、また、ネヘミヤにかゝは記錄きろくうちにもしるされたり。ネヘミヤは圖書館としよくわんてて、諸王しよわう預言者よげんしやたちについての諸書しよしよ、ダビデの諸書しよしよおよせいなる賜物おくりものについての諸王しよわう書翰等しよかんなどあつめたり。
14 これとおな方法はうはふにてユダも我等われらのために、さきにおこりし戰爭たゝかひのために散逸さんいつせし諸書しよしよあつめたれば、其等それら諸書しよしよいまなほ我等われらともにあり。
15 されば汝等なんぢらもし必要ひつえうあらば、これをたづさいたらんために使者つかひつかはすべし。

16 我等われらまさ宮潔みやきよめまもらんとしれば汝等なんぢらおくる。汝等なんぢら此等これらまもらばさいはひならん。
17 いまかみはそのすべてのたみすくひ、すべてのものに、嗣業ゆづり王國わうこく祭司職さいししよく聖所せいじよとを回復くわいふくたまひたれば、
18 律法おきてによりて約束やくそくたまひしがごとく、かみすみやか我等われら憐憫あはれみれ、の四はうより我等われらとも聖所せいじよあつたまはんとの希望のぞみ我等われらつなり。そはしゆ我等われらをもろもろのおほいなる災害わざはひよりすくたまひて、ところきよたまひたればなり。

19 ユダ・マカビオとその兄弟きやうだいたちにかゝはことどもにつきては、おほいなる宮潔みやきよめ聖壇せいだん奉献ほうけん
20 アンテオコス・エピパネス、およびそのユパトルにたいする戰爭たしかひ
21 ユダヤびと宗教しうけうのためにたがひをとこらしきはたらきをなしし者等ものらたいするてんよりきたりし啓示けいしなどによりて、彼等かれら少數せうすうにもかゝはらず、全國ぜんこくすくひて、異國人ことくにびと群衆むれ追拂おひはらひ、
22 全世界ぜんせかい有名いうめいなるかみみや再興さいこうし、まち自由じいうにし、またまさくつがへされんとする律法おきて回復くわ[い]ふくしたり。これしゆ、あらゆる忍耐にんたいをもて彼等かれら慈悲じひしめたまひたればなり。
23 此等これらのことどもはクレネのヤソンによりて、五くわんふみしるされしが、我等われらこゝろみにこれを一卷いつくわんつゞめんとす。
24 すなは我等われらはそのれう浩澣こうかんなるを考慮かうりよし、歷史れきし物語ものがたりたいするものが、かへつてその資料しれうおほきがゆゑ經驗けいけんする困難こんなんおもひ、
25 もつぱら、讀者どくしや興味きようみあたへ、史實しじつ記憶きおく便べんにし、かくてすべての讀者どくしやえきせんことにこゝろもちひたり。
26 さればこれをつゞむるために我等われらのとりしらう容易やういわざにあらず、しんひたひあせ不眠ふみん努力どりよくとをえうしたり。
27 (それはさながら、饗筵きやうえんそなへて他人たにんえきもとむるものにとりて、そのらうかろからざるがごとくなりき。)されどこれは、おほくのものの感謝かんしやあたひすることなれば、我等われらよろこびて、困難こんなんなるらうしのび、
28 おのおのの項目こうもくにつきての正確せいかくなる記事きじはこれを歷史家れきしかゆだね、ここには抄錄せうろくれいしたがひてらうをとることとせり。
29 そはあたらしき家屋かおく工師長こうしちやうは、全構造ぜんこうざうこゝろもちひざるべからず、また装飾さうしよく彩色さいしきとをつかさどものは、その装飾さうしよく相應ふさはしきものをもとむるなり。われおもふに、我等われらにとりてもひとしかるべし。
30 要點えうてんさだめて、こと全貌ぜんばう、かつ特殊とくしゆ事柄ことがら細心さいしん注意ちゆういはらふは、物語ものがたり原著者げんちよしや相應ふさはし。
31 されど表現法いひあらはしかた簡易かんいにし、記事きじ詳述しやうじゆつくるは、抄錄せうろくつくものゆるされざるべからず。
32 されば我等われら、ここに物語ものがたりはじむるにあたり、すでべたるところをもてれりとすべし。そは物語ものがたり長々なが〴〵しき序文じよぶんして、物語ものがたりそのものを省略せうりやくするはおろかなることなればなり。